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穏やかな日々と嵐の予感
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コルネリアがネバンテ国に来て、一ヶ月の時が過ぎた。聖女という存在にピンと来ていなかった国民も、すっかり歓迎ムードだ。
停戦中とはいえ、戦争中の帝国と友好関係にあるブーテェ法国は、ネバンテ国からすると敵国も同然だった。
そんな国からきた聖女をどう扱えばいいのか、最初は素朴な人柄の国民たちは悩んでいた。
しかし、1ヶ月経ち。コルネリアが兵士や国民の傷や病気を癒やし、天気を予報することで好感度がかなり上がったのだ。
今ではコルネリアの着ている水色の服が流行り、肖像画も飛ぶように売れている。
コルネリア様はネバンテ国の聖女だ!と、国民は自国に来た聖女に熱狂するようになっていた。
国民の好感度が爆上がりしたことに気がついていないコルネリアは、とある問題に悩んでいた。
(ーーな、なぜ。何も手を出されないのでしょうか!)
頼んでおいた鈴の楽器も届いたけれど、そんな雰囲気にならないから部屋の飾りになっている。
コルネリアは、すっかりヴァルターのことが好きになっていた。その分、何の進展もないのが歯がゆい。
午前の仕事が早く終わったコルネリアは、執務室へ向かっている。
(ーーどうしたらいいか、分からないけど。接触は増やすべきですわ!)
執務室へ向かうコルネリアの頬は、ぽっと赤く染まって愛らしい。使用人たちは、その愛らしさに頬を緩ませる。
「ヴァルター様のところへ行かれるんだわ」
「お似合いの夫婦よね。羨ましいわ」
毎日同じベッドで寝ている二人が、まだ清い仲だとは誰も思っていなかった。
執務室へ着くと、コルネリアはノックをしようとドアに近づく。
「はあ!まだ手を出してないって、正気か!」
少し空いたドアから聞こえた言葉に、コルネリアはノックするために出した手を止めた。
「今は。まだ早いだろう」
「いやいや。もう1ヶ月も経っているんだぞ」
執務室で話しているのは、ヴァルターと青年騎士のクルトだ。実はこの二人は幼なじみであり、二人きりの時は気軽な口調で話している。
(ーー私の話ですわよね?)
盗み聞きはよくない。と思いながらも、コルネリアは黙って耳をすませる。
「お前、まさか。まだ初恋がどうとか言ってるんじゃないだろうな」
呆れたようにクルトが言うと、ヴァルターが黙り込む。
「まじかよ。もし奥方と子供ができないんなら、側室も考えていかないといけないだろう」
(ーー側室!)
予想だにしない言葉に、コルネリアは思わずその場から駆け出した。
「側室なんて不要だ。俺にはコルネリアだけでいい」
外で会話を聞かれていたことに気がつかないヴァルターが、むっとしたように言う。
「だろうな。じゃあ、何で手を出さないんだよ」
「…だからだ」
「ん?なんて?」
「可愛すぎるからだ!」
そう叫び、真っ赤な顔でヴァルターが机に伏した。
「おいおいマジかよ。いい年して?」
クルトは乾いた笑みを浮かべ主を見るが、本気で言っていると分かると…
「うん。俺、仕事するわ」
現実逃避をするかのように、目の前の書類を取って仕事を再開した。
(ーーやばい。やばいですわ)
コルネリアの頭の中で、初恋と側室の2つの言葉がぐるぐるめぐる。
(ーー初恋はまぁ、いいですわ。初恋は実らないといいますし、今の妻は私ですし)
考え事をしながら、行くあてもなくただ歩く。
(ーー早く先に進まないと。側室が来てしまいますわ!ああ、満月の夜になったら、すぐに相談しないと)
廊下をぼうっとしながら歩くコルネリアは、前から女性が歩いてきていることに気がつかない。
どんっとぶつかり、華奢なコルネリアはその場に膝をつく。
「きゃっ。大丈夫ですか?」
そう言って心配そうにこちらを見つめる女性。コルネリアは初めて見る女性だった。
体のラインが出るワンピースを着ており、男性受けのする身体つきた。
(ーーこ、これだけの胸が私にもあれば)
そんなことを考えながらも、コルネリアは立ち上がって女性に微笑んでみせた。
「コルネリア!大丈夫か!」
いつの間にか後ろにいたヴァルターが、慌ててコルネリアのそばに行く。コルネリアの両手を握ると、身体中を見て怪我がないか確かめる。
「ヴァル様!久しぶりです!」
「ん?ああ。キァラか。久しぶりだな」
コルネリアとぶつかった女性、キァラが親しげにヴァルターに声をかける。そっとヴァルターをタッチしているのを、コルネリアは見てしまう。
「コルネリア。この子はクルトの妹のキァラだ。俺にとっても妹同然だから、仲良くしてくれると助かる」
「あなたがヴァル様の奥様ね」
そう言ってキァラは上から下までコルネリアを見つめると、にこっと笑う。
「これからこのお屋敷で働くから、よろしくね!」
【こちらこそ。よろしくね】
コルネリアがそう紙に書いていると、キァラはすぐにヴァルターの方にくっつく。
そして、ヴァルターに腕を絡めると、コルネリアを見て馬鹿にするように笑った。
停戦中とはいえ、戦争中の帝国と友好関係にあるブーテェ法国は、ネバンテ国からすると敵国も同然だった。
そんな国からきた聖女をどう扱えばいいのか、最初は素朴な人柄の国民たちは悩んでいた。
しかし、1ヶ月経ち。コルネリアが兵士や国民の傷や病気を癒やし、天気を予報することで好感度がかなり上がったのだ。
今ではコルネリアの着ている水色の服が流行り、肖像画も飛ぶように売れている。
コルネリア様はネバンテ国の聖女だ!と、国民は自国に来た聖女に熱狂するようになっていた。
国民の好感度が爆上がりしたことに気がついていないコルネリアは、とある問題に悩んでいた。
(ーーな、なぜ。何も手を出されないのでしょうか!)
頼んでおいた鈴の楽器も届いたけれど、そんな雰囲気にならないから部屋の飾りになっている。
コルネリアは、すっかりヴァルターのことが好きになっていた。その分、何の進展もないのが歯がゆい。
午前の仕事が早く終わったコルネリアは、執務室へ向かっている。
(ーーどうしたらいいか、分からないけど。接触は増やすべきですわ!)
執務室へ向かうコルネリアの頬は、ぽっと赤く染まって愛らしい。使用人たちは、その愛らしさに頬を緩ませる。
「ヴァルター様のところへ行かれるんだわ」
「お似合いの夫婦よね。羨ましいわ」
毎日同じベッドで寝ている二人が、まだ清い仲だとは誰も思っていなかった。
執務室へ着くと、コルネリアはノックをしようとドアに近づく。
「はあ!まだ手を出してないって、正気か!」
少し空いたドアから聞こえた言葉に、コルネリアはノックするために出した手を止めた。
「今は。まだ早いだろう」
「いやいや。もう1ヶ月も経っているんだぞ」
執務室で話しているのは、ヴァルターと青年騎士のクルトだ。実はこの二人は幼なじみであり、二人きりの時は気軽な口調で話している。
(ーー私の話ですわよね?)
盗み聞きはよくない。と思いながらも、コルネリアは黙って耳をすませる。
「お前、まさか。まだ初恋がどうとか言ってるんじゃないだろうな」
呆れたようにクルトが言うと、ヴァルターが黙り込む。
「まじかよ。もし奥方と子供ができないんなら、側室も考えていかないといけないだろう」
(ーー側室!)
予想だにしない言葉に、コルネリアは思わずその場から駆け出した。
「側室なんて不要だ。俺にはコルネリアだけでいい」
外で会話を聞かれていたことに気がつかないヴァルターが、むっとしたように言う。
「だろうな。じゃあ、何で手を出さないんだよ」
「…だからだ」
「ん?なんて?」
「可愛すぎるからだ!」
そう叫び、真っ赤な顔でヴァルターが机に伏した。
「おいおいマジかよ。いい年して?」
クルトは乾いた笑みを浮かべ主を見るが、本気で言っていると分かると…
「うん。俺、仕事するわ」
現実逃避をするかのように、目の前の書類を取って仕事を再開した。
(ーーやばい。やばいですわ)
コルネリアの頭の中で、初恋と側室の2つの言葉がぐるぐるめぐる。
(ーー初恋はまぁ、いいですわ。初恋は実らないといいますし、今の妻は私ですし)
考え事をしながら、行くあてもなくただ歩く。
(ーー早く先に進まないと。側室が来てしまいますわ!ああ、満月の夜になったら、すぐに相談しないと)
廊下をぼうっとしながら歩くコルネリアは、前から女性が歩いてきていることに気がつかない。
どんっとぶつかり、華奢なコルネリアはその場に膝をつく。
「きゃっ。大丈夫ですか?」
そう言って心配そうにこちらを見つめる女性。コルネリアは初めて見る女性だった。
体のラインが出るワンピースを着ており、男性受けのする身体つきた。
(ーーこ、これだけの胸が私にもあれば)
そんなことを考えながらも、コルネリアは立ち上がって女性に微笑んでみせた。
「コルネリア!大丈夫か!」
いつの間にか後ろにいたヴァルターが、慌ててコルネリアのそばに行く。コルネリアの両手を握ると、身体中を見て怪我がないか確かめる。
「ヴァル様!久しぶりです!」
「ん?ああ。キァラか。久しぶりだな」
コルネリアとぶつかった女性、キァラが親しげにヴァルターに声をかける。そっとヴァルターをタッチしているのを、コルネリアは見てしまう。
「コルネリア。この子はクルトの妹のキァラだ。俺にとっても妹同然だから、仲良くしてくれると助かる」
「あなたがヴァル様の奥様ね」
そう言ってキァラは上から下までコルネリアを見つめると、にこっと笑う。
「これからこのお屋敷で働くから、よろしくね!」
【こちらこそ。よろしくね】
コルネリアがそう紙に書いていると、キァラはすぐにヴァルターの方にくっつく。
そして、ヴァルターに腕を絡めると、コルネリアを見て馬鹿にするように笑った。
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