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エピローグ
しおりを挟む「ビオラ。綺麗よ」
レースのハンカチで涙を拭くアルゼリア。そのお腹は柔らかく膨らみ、隣のエドガーがしっかりと腰を抱いている。
アルゼリアの安定期に結婚式ができるように、ビオラがジェレマイアに頼み込んで時期をずらしたのだ。相変わらずのお嬢様愛に、ジェレマイアは苦笑いしながら式の調節をした。
すっかり元気になったレティシアとピュリテは、たくさんのケーキを一緒に食べている。特にレティシアは、公爵夫人から普段のおやつの量を決められているので、今日は山ほど食べると決めていた。
両手を後ろに組んで式を見守るライは、ビオラと目が合うとウインクした。
「殿下が嫌になったらいつでも言ってね。さらってあげるから」
これは式の直前に、ビオラに言った言葉だ。真剣な表情にビオラが戸惑っていると、冗談だと笑って出て行った。
「ビオラ」
「はい。お父様」
バージンロードを共に歩く公爵が、ビオラへ緊張した面持ちで手を差し出す。ビオラはその腕を取り、ゆっくりと赤いカーテンの上を歩いた。
子供たちが投げた白い花びらが舞い、ビオラはまっすぐ前を向いて歩く。そして、その先にはビオラを見て優しく微笑むジェレマイアがいた。
公爵の腕を離し、ジェレマイアの隣に立つ。
若い大神官が祝福の言葉を述べると、ジェレマイアがそっとビオラのヴェールをめくる。そして、ゆっくりと二人の唇が重なる。
(――これで私たちも夫婦に……ちょ。長い!)
軽くキスをして離れるはずの唇が離れない。しかも、舌が入ってきて、ビオラがのけぞると腰を掴まれた。
「ビオラ。ちょっと!エド!あれやりすぎだわ。止めてきてよ!」
ばんばんばん、とビオラがジェレマイアの背中を叩く。それでもキスが終わらない様子に、アルゼリアはエドガーに止めるように言った。
「ぷはっ。ちょっとジェレマイア様。きゃあ!」
ふわり、とビオラの身体が浮く。お姫様抱っこをされたビオラはバランスを崩しかけて、慌ててジェレマイアの首に腕を回した。
「おい。これで婚姻は成立したな?」
「は、はい。お二人は正式にご夫婦になられました。この後はみなさんで祝福の言葉を」
「いらん」
そう言うとジェレマイアはビオラを抱いたまま、結婚式の会場から出て行こうとする。
「ジェレマイア様!どこにいくんですか?」
「これ以上こんなにら綺麗なビオラを周りに見せたくない!」
(――な、何で恥ずかしいことを大声で!)
「あらあら。まあまあ」
ジェレマイアの言葉に公爵夫人が、おほほと笑う。
そう言って再びビオラにキスをすると、そのまま走って会場を出て城の中をずかずかと歩く。すれ違う人々は驚きながらも、祝福の言葉を述べた。
「恥ずかしいですよ。それにせっかくたくさんの人が来てくれたのに」
自室に入るとビオラはむっと頬を膨らませて、ジェレマイアを睨みつけた。そんなビオラの頬を優しくつつくと、ジェレマイアはにやりと笑う
「忘れていたか?俺は暴君なんだ」
ビオラが思わず吹き出して笑うと、ジェレマイアはそんな彼女を見て愛おしそうに笑った。
「仕方がない人ですね」
呆れたように笑ったビオラは、目の前の暴君に優しくキスをした。
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