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学園編
忍者の里と妖精
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自然豊かな風の国に入国し、さらに馬車で進むとパーシヴァルの故郷だ。
「あ!パーシヴァル帰ってきたんじゃない?」
馬車が里に入ると、わーっと子供が集まってきた。風の国に住む人は陽気で、人懐っこい気質が多い。
忍者の里は、ヨーロッパな街並みが多いこの世界の中で、唯一日本を感じられる場所だ。忍者が住む街、というよりも、江戸の街並みという方がしっくりくる。
「みんな久しぶりだね」
馬車から降りていたパーシヴァルに近寄ると子供達は、続いて降りてきたベルるんを見て止まる。
「パーシヴァルがイケメンの友達連れてきた!」
「かっこいいねー。お兄さん彼女いるの?」
さすが陽気な人が多い風の国。子供たちが止まったのは一瞬で、すぐに笑顔で話しかけてくる。
「大切な人ならいるよ」
にっこりと笑顔で答えるベルるんに、質問した女の子が残念そうに「えー」と言う。
馬車を降りてすぐの場所で子供たちに捕まっていると、向こうからガタイの良い若い男性が歩いてくる。
「パーシヴァルおかえり」
「フウマ!元気だったでござるか?」
どうやらパーシヴァルと親しい仲のようで、ハグをして再会を喜び合っている。
「サツキの具合は?」
パーシヴァルの問いに、フウマは残念そうな表情で首を振る。
「悪くなる速度は薬で抑えられているが、徐々に悪くなっているのは確かだ」
「そうか。みんなすまない。サツキの様子を見に行ってもいいでござるか?」
パーシヴァルが子供たちにそう言うと、すぐにさっと子供が離れていく。
「ん。そこの御仁は?」
「ベルンハルトという、学校の同級生でござるよ」
サツキがいるパーシヴァルの家に向かいながら、ベルるんが簡単に挨拶をする。
馬車から降りた里の中心から、歩いて10分くらいだろうか。何件か家屋が並んでいるところに、パーシヴァルの家もあった。
庭のスペースはあるが、管理する人がいないのだろう。雑草が乱雑に生えている。
ガラガラ。と引き戸を開けて、家の中に入る。パーシヴァルはサツキの様子が心配なのか、道中はほとんど話さなかった。
「サツキ。帰ったでござるよ」
「兄様。おかえりなさい」
部屋の中央に敷かれた布団に、顔色の悪い女の子が横になっている。歳は10歳くらいだろうか。
パーシヴァルと同じ緑色の髪に、整った顔立ちをしているが、頬がこけてしまっている。
サツキはパーシヴァルを見ると嬉しそうに笑い、体を起こそうとするが、すぐにふらりと倒れ込む。
慌ててパーシヴァルが駆け寄り、サツキの両手をぎゅっと握る。
「はじめましてサツキちゃん。ヒールかけさせてね」
透明化を解いてサツキの前にいくと、ヒールをかける。病そのものを治すことはできないが、体力が回復すれば少しは身体が楽になるだろう。
真っ白だったサツキの顔に、少しだけ血色が戻る。
「わあ。妖精様。私初めてお会いしました」
「こんにちは。私はパーシヴァルの友達のアリサだよ。あなたのことを治しにきたの」
そう言って笑顔を浮かべると、サツキが興奮したように、わあわあと言っている。
「サツキ落ち着くでござるよ。アリサ殿、少しいいでござるか?」
そう言って、サツキの奥の襖を指差すパーシヴァル。私の登場に驚いた表情のフウマ、興奮したサツキ。そんなほぼ初対面の二人と、ベルるんを部屋に残すのは気が引ける。
「ベルるん」
「ん。行っておいて」
にこっと笑顔で、ひらひらと手を振るベルるん。私はパーシヴァルと襖を開けて、隣の部屋に移動した。
「アリサ殿。到着してすぐで申し訳ないのだが、できれば今日洞窟へ出発できないでござるか?」
道中の話では、里で一泊して次の日に洞窟へ行く予定だった。
「思った以上にサツキの容態が悪く、見ていられないでござるよ」
そう言ってパーシヴァルが辛そうに、顔を歪める。
「30分くらい休憩をして、その後にすぐ出発しようか」
「いいのでござるか?」
自分で提案をしておきながらも、受け入れられると思っていなかったのか。パーシヴァルがそう言う。
「うん。それに洞窟までの行き方を変更して、すぐに行けるようにするから」
どこまで自分の力を見せていいかわからず、テレポートは使わないで風の国に来た。けれど、早く助けたいというパーシヴァルの気持ちを考えて、テレポートで移動した方がいいと判断した。
「感謝するでござるよ!」
「大丈夫だよ。それじゃあ、何か飲んで少し休憩したら、準備して出よう」
話がまとまり、襖を開けて元の部屋に戻った。
「あ!パーシヴァル帰ってきたんじゃない?」
馬車が里に入ると、わーっと子供が集まってきた。風の国に住む人は陽気で、人懐っこい気質が多い。
忍者の里は、ヨーロッパな街並みが多いこの世界の中で、唯一日本を感じられる場所だ。忍者が住む街、というよりも、江戸の街並みという方がしっくりくる。
「みんな久しぶりだね」
馬車から降りていたパーシヴァルに近寄ると子供達は、続いて降りてきたベルるんを見て止まる。
「パーシヴァルがイケメンの友達連れてきた!」
「かっこいいねー。お兄さん彼女いるの?」
さすが陽気な人が多い風の国。子供たちが止まったのは一瞬で、すぐに笑顔で話しかけてくる。
「大切な人ならいるよ」
にっこりと笑顔で答えるベルるんに、質問した女の子が残念そうに「えー」と言う。
馬車を降りてすぐの場所で子供たちに捕まっていると、向こうからガタイの良い若い男性が歩いてくる。
「パーシヴァルおかえり」
「フウマ!元気だったでござるか?」
どうやらパーシヴァルと親しい仲のようで、ハグをして再会を喜び合っている。
「サツキの具合は?」
パーシヴァルの問いに、フウマは残念そうな表情で首を振る。
「悪くなる速度は薬で抑えられているが、徐々に悪くなっているのは確かだ」
「そうか。みんなすまない。サツキの様子を見に行ってもいいでござるか?」
パーシヴァルが子供たちにそう言うと、すぐにさっと子供が離れていく。
「ん。そこの御仁は?」
「ベルンハルトという、学校の同級生でござるよ」
サツキがいるパーシヴァルの家に向かいながら、ベルるんが簡単に挨拶をする。
馬車から降りた里の中心から、歩いて10分くらいだろうか。何件か家屋が並んでいるところに、パーシヴァルの家もあった。
庭のスペースはあるが、管理する人がいないのだろう。雑草が乱雑に生えている。
ガラガラ。と引き戸を開けて、家の中に入る。パーシヴァルはサツキの様子が心配なのか、道中はほとんど話さなかった。
「サツキ。帰ったでござるよ」
「兄様。おかえりなさい」
部屋の中央に敷かれた布団に、顔色の悪い女の子が横になっている。歳は10歳くらいだろうか。
パーシヴァルと同じ緑色の髪に、整った顔立ちをしているが、頬がこけてしまっている。
サツキはパーシヴァルを見ると嬉しそうに笑い、体を起こそうとするが、すぐにふらりと倒れ込む。
慌ててパーシヴァルが駆け寄り、サツキの両手をぎゅっと握る。
「はじめましてサツキちゃん。ヒールかけさせてね」
透明化を解いてサツキの前にいくと、ヒールをかける。病そのものを治すことはできないが、体力が回復すれば少しは身体が楽になるだろう。
真っ白だったサツキの顔に、少しだけ血色が戻る。
「わあ。妖精様。私初めてお会いしました」
「こんにちは。私はパーシヴァルの友達のアリサだよ。あなたのことを治しにきたの」
そう言って笑顔を浮かべると、サツキが興奮したように、わあわあと言っている。
「サツキ落ち着くでござるよ。アリサ殿、少しいいでござるか?」
そう言って、サツキの奥の襖を指差すパーシヴァル。私の登場に驚いた表情のフウマ、興奮したサツキ。そんなほぼ初対面の二人と、ベルるんを部屋に残すのは気が引ける。
「ベルるん」
「ん。行っておいて」
にこっと笑顔で、ひらひらと手を振るベルるん。私はパーシヴァルと襖を開けて、隣の部屋に移動した。
「アリサ殿。到着してすぐで申し訳ないのだが、できれば今日洞窟へ出発できないでござるか?」
道中の話では、里で一泊して次の日に洞窟へ行く予定だった。
「思った以上にサツキの容態が悪く、見ていられないでござるよ」
そう言ってパーシヴァルが辛そうに、顔を歪める。
「30分くらい休憩をして、その後にすぐ出発しようか」
「いいのでござるか?」
自分で提案をしておきながらも、受け入れられると思っていなかったのか。パーシヴァルがそう言う。
「うん。それに洞窟までの行き方を変更して、すぐに行けるようにするから」
どこまで自分の力を見せていいかわからず、テレポートは使わないで風の国に来た。けれど、早く助けたいというパーシヴァルの気持ちを考えて、テレポートで移動した方がいいと判断した。
「感謝するでござるよ!」
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話がまとまり、襖を開けて元の部屋に戻った。
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