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幼少期の推し編
侍女長と妖精
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部屋に戻ってしばらく2人で過ごしていると、ニナが嫌味を言いながら質素なご飯を置いて行った。
「ちょっと行ってくるね」
ニナが部屋を出ていくタイミングで、ベルるんにそう耳打ちすると後ろをついていく。
せかせかと歩いているニナは、調理場へ向かっているようだった。
途中で他の侍女や使用人に会うと、にこやかに挨拶をしている。ベルるんに対する態度とは全く違い、他の使用人達からは魅了もあり好かれているようだ。
「ヨスさん。できてますか?」
「ああ」
言葉少ないものの、ヨスもニナに笑顔で返している。ステータスを確認すると、ばっちり魅了にかかっている。
気つけ薬で一時的に正常になるものの、再びニナの目を見るも魅了にかかってしまうようだ。
やっぱり、ネックレスをどうにかしないと。
ニナがベルるんのご飯が乗ったお盆を持ち、ヨスに挨拶をして調理場から出ていく。
脳内に現れているマップでニナの部屋を確認する。マップでは侍女長の部屋、となっているその場所に向かっているようだ。
こんなに堂々とベルるんのご飯持って行ってるんだ。魅了かけられてるから仕方ないのかもしれないけど、他の止めない人も腹立つ!
ニナはご機嫌な様子で鼻歌まじりに歩いている。自室付近にいる侍女の子を見て、にこりと笑顔を浮かべる。
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
「今日テオドリコさんが来たらよろしくね」
そう言って部屋に入る。10代後半くらいだろうか、若い2人の侍女はニナが部屋に入るとひそひそと話し始めた。
「侍女長、またベルンハルト様のご飯持ってたね」
「うん。でも仕方ないよね。ベルンハルト様は奥様の不義の子だから」
「まぁね。それに私たち侍女長に良くしてもらってるし」
不義の子、と言った侍女は見下すような酷い表情だった。
「痛い!」
「え?なに?どうしたの?痛い!」
2人の脛の辺りを軽く蹴り上げて、べーと舌を出す。
ベルるんは本当に嫌な環境で1人頑張ってきたんだな、そう思いながらニナの部屋の扉を少し開けて、中に入る。
「ヨスさん、また腕を上げたわね」
ご機嫌そうにニナがメインの肉料理を食べて、にんまりと笑っている。
食事に集中してる今ならいけるかも?
私はニナの背後からパタパタと近づき、首の後ろまで行く。そぅっと留め具を触り、外す!
留め具が外れたと同時に、ネックレスに透明化をかけて服から引き抜いた。
「んん?」
違和感を感じたニナが首元に手をやり、ネックレスがないことに気がつくと立ちあがる。
「あれ?ないない。さっきまであったのに!」
落としたと思ったのか、椅子の下などを見ているか私が持っているから見つかるわけがない。
「ギルバート様から頂いたのに。ああ、どうしましょう」
部屋中を探し、ネックレスが見つからないニナはその場にへなへなと座り込んだ。
「お屋敷が何個も買えるほど高級だとおっしゃっていたから、きっとお怒りになるわ」
ニナの反応を見ると無くしたことにショックを受けており、魅了がかけられないことに関しては何も思ってなさそうだ。
もしかして、ネックレスに魅了効果があることも知らなかったのかな?
「もしかしたら、道で落としたのかしら?」
そう言うと食べかけのご飯を机の上に置いたまま、慌ただしく部屋から出て行った。
「よし。これでおっけー」
透明化した魅惑のネックレスを見ると、チェーンの部分に小さな鍵が付けられていることに気がついた。
机の1番上には、その鍵が入りそうな穴がちょうどある。
鍵を入れて回すと、かちりと音がする。引き出しを開けると、中にはお金や手紙のようなものがたくさん入っていた。
「ニナがいつ帰ってくるか分からないし、とりあえず持っていこう」
叔父の悪事を暴く証拠の一つになるかも、と思い手紙を全てアイテムボックスに入れていく。
そして、元通りに見えるように引き出しを閉めて、鍵をかけた。
ベルるんには見せられない内容もあるかもしれないから、中庭で見よう。そう思い、びゅんっと中庭に移動した。
「なにこれ、ひどい」
大量の手紙は、ほとんどがギルバートから受け取っているものだった。そして、ギルバートはベルるんの叔父だった。
最愛なるニナへ。から始まる手紙は、最も古いものでニナが侯爵家に勤め出した時だ。この頃、ちょうど侯爵夫人が妊娠していた時期だ。
侯爵夫人に取り込むことや、生まれたばかりのベルるんの目の色を変えるため、産後すぐに魔法使いにベルるんを合わせるという指示が書かれていた。
また、たびたび魅惑のネックレスについて、愛の証だから必ず肌身離さず付けるようにと書いてあった。
その後もベルるんや侯爵夫人を孤立させること。ベルるんが亡くなり、侯爵夫人にベルるん以外の子が生まれていなければ、ギルバートが侯爵家を継ぐことが書いてある。
「だからあんなに態度がでかかったのか」
この企みがうまくいけば、ニナは侯爵の愛人になることができる。いつか消えると信じているため、侯爵夫人やベルるんにあんなに失礼な態度や行為をしていたようだ。
「これは侯爵に渡す大切な証拠になる」
ぎゅっと手紙を握り、びりびりに破りたい衝動を耐えてアイテムボックスにしまった。
「ちょっと行ってくるね」
ニナが部屋を出ていくタイミングで、ベルるんにそう耳打ちすると後ろをついていく。
せかせかと歩いているニナは、調理場へ向かっているようだった。
途中で他の侍女や使用人に会うと、にこやかに挨拶をしている。ベルるんに対する態度とは全く違い、他の使用人達からは魅了もあり好かれているようだ。
「ヨスさん。できてますか?」
「ああ」
言葉少ないものの、ヨスもニナに笑顔で返している。ステータスを確認すると、ばっちり魅了にかかっている。
気つけ薬で一時的に正常になるものの、再びニナの目を見るも魅了にかかってしまうようだ。
やっぱり、ネックレスをどうにかしないと。
ニナがベルるんのご飯が乗ったお盆を持ち、ヨスに挨拶をして調理場から出ていく。
脳内に現れているマップでニナの部屋を確認する。マップでは侍女長の部屋、となっているその場所に向かっているようだ。
こんなに堂々とベルるんのご飯持って行ってるんだ。魅了かけられてるから仕方ないのかもしれないけど、他の止めない人も腹立つ!
ニナはご機嫌な様子で鼻歌まじりに歩いている。自室付近にいる侍女の子を見て、にこりと笑顔を浮かべる。
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
「今日テオドリコさんが来たらよろしくね」
そう言って部屋に入る。10代後半くらいだろうか、若い2人の侍女はニナが部屋に入るとひそひそと話し始めた。
「侍女長、またベルンハルト様のご飯持ってたね」
「うん。でも仕方ないよね。ベルンハルト様は奥様の不義の子だから」
「まぁね。それに私たち侍女長に良くしてもらってるし」
不義の子、と言った侍女は見下すような酷い表情だった。
「痛い!」
「え?なに?どうしたの?痛い!」
2人の脛の辺りを軽く蹴り上げて、べーと舌を出す。
ベルるんは本当に嫌な環境で1人頑張ってきたんだな、そう思いながらニナの部屋の扉を少し開けて、中に入る。
「ヨスさん、また腕を上げたわね」
ご機嫌そうにニナがメインの肉料理を食べて、にんまりと笑っている。
食事に集中してる今ならいけるかも?
私はニナの背後からパタパタと近づき、首の後ろまで行く。そぅっと留め具を触り、外す!
留め具が外れたと同時に、ネックレスに透明化をかけて服から引き抜いた。
「んん?」
違和感を感じたニナが首元に手をやり、ネックレスがないことに気がつくと立ちあがる。
「あれ?ないない。さっきまであったのに!」
落としたと思ったのか、椅子の下などを見ているか私が持っているから見つかるわけがない。
「ギルバート様から頂いたのに。ああ、どうしましょう」
部屋中を探し、ネックレスが見つからないニナはその場にへなへなと座り込んだ。
「お屋敷が何個も買えるほど高級だとおっしゃっていたから、きっとお怒りになるわ」
ニナの反応を見ると無くしたことにショックを受けており、魅了がかけられないことに関しては何も思ってなさそうだ。
もしかして、ネックレスに魅了効果があることも知らなかったのかな?
「もしかしたら、道で落としたのかしら?」
そう言うと食べかけのご飯を机の上に置いたまま、慌ただしく部屋から出て行った。
「よし。これでおっけー」
透明化した魅惑のネックレスを見ると、チェーンの部分に小さな鍵が付けられていることに気がついた。
机の1番上には、その鍵が入りそうな穴がちょうどある。
鍵を入れて回すと、かちりと音がする。引き出しを開けると、中にはお金や手紙のようなものがたくさん入っていた。
「ニナがいつ帰ってくるか分からないし、とりあえず持っていこう」
叔父の悪事を暴く証拠の一つになるかも、と思い手紙を全てアイテムボックスに入れていく。
そして、元通りに見えるように引き出しを閉めて、鍵をかけた。
ベルるんには見せられない内容もあるかもしれないから、中庭で見よう。そう思い、びゅんっと中庭に移動した。
「なにこれ、ひどい」
大量の手紙は、ほとんどがギルバートから受け取っているものだった。そして、ギルバートはベルるんの叔父だった。
最愛なるニナへ。から始まる手紙は、最も古いものでニナが侯爵家に勤め出した時だ。この頃、ちょうど侯爵夫人が妊娠していた時期だ。
侯爵夫人に取り込むことや、生まれたばかりのベルるんの目の色を変えるため、産後すぐに魔法使いにベルるんを合わせるという指示が書かれていた。
また、たびたび魅惑のネックレスについて、愛の証だから必ず肌身離さず付けるようにと書いてあった。
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「だからあんなに態度がでかかったのか」
この企みがうまくいけば、ニナは侯爵の愛人になることができる。いつか消えると信じているため、侯爵夫人やベルるんにあんなに失礼な態度や行為をしていたようだ。
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