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幼少期の推し編

推しとピクニックに行く妖精

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「おまたせー!」

「おかえり!アリサ」

 パタパタと、嬉しそうに出迎えてくれたベルるんのところへ飛んでいく。ベルるんの準備はできてそうだ。

 テレポート自体はゲームの中でも、パーティ全員で移動ができていた。だからおそらく2人でも行けるだろう、と思っている。

 もしもダメだったら、ベルるんに透明化をかけて門から近くの森へ行こう。そう決めて、ベルるんのほうを見る。

 わくわくとした期待が隠しきれないベルるんは、どうやって移動するかは分かっていない様子だった。

「それじゃあ準備はいいかな?」

 こくん。と笑顔のまま頷くベルるんの人差し指をぎゅっと握って、テレポートとつぶやく。









 暗くなったかと思うと、次の瞬間にはもう森の中にいた。イメージが湖だったからか、ちょうど湖の前だ。

 頬に気持ちのいい風を感じながら、ベルるんを見るとびっくりした表情のまま固まっている。

「ベルるん大丈夫?」

「う、うん。すごい!すごいよアリサ!」

 ぴょんぴょん、とその場で跳ねて興奮するベルるんが可愛い。動くたびにさらりと揺れる金色の髪と、キラキラと輝く緑の瞳が尊すぎて1枚の絵画のよう。

「それじゃあピクニックしよっか!ベルるん何したい?」

「ええっと。僕ピクニックで何をするか分からないんだけど、アリサは分かる?」

 こてん、と首を倒しながら聞いてくるベルるん。侍女の噂話からしかピクニックを聞いたことがなかったため、実際に何をして遊ぶのか想像がつかないようだった。

「それじゃあ。せっかくだから花冠作ってみようか?教えてあげるよ」

 そう言ってベルるんを花畑に誘い出し、2人で花冠を作っていく。ピンクや白や青の小花を使って、何個も冠を作る。

「できた。アリサかぶってみて」

 ベルるんが完成した花冠を私にかぶせようとしてくれるが、自分のサイズで作ったため私には大きすぎる。

 そのまま頭を通って、ネックレスのようになった。

「ちょっと大きかったけど、アリサはお花が似合うね」

「ありがとうございます!」

 思わず敬語になりながらも、ベルるんと2人で楽しく遊ぶ。

 その後は湖で水浴びをしたり、持ってきたサンドイッチを食べたりしてのんびり過ごした。









 数時間ほど遊んでいただろうか。太陽がゆっくりと沈んできて、辺りは赤く染まっていった。

「そろそろ帰らないとね」

 そう言ってベルるんを見ると、彼はじっと私は真剣な顔で見つめていた。

「ねぇ、アリサ。何でアリサは昨日会ったばかりの僕にこんなに良くしてくれるの?」

「それはベルるんが好きだからだよ」

 辛かった社会人1年目も、ベルるんがいるからやってこれた。

 課金してスマホに入れたベルるんが起こしてくれる目覚ましアプリがなければ、きっと会社に行けない日もあったに違いない。

「どうして?昨日会ったばかりなのに?」

「それは」

 ベルるんはじっと真剣な顔でこちらを見ており、私も本心を言うしかない。

「前からベルるんのことを知ってて、ずっと見てきたんだ。私はベルるんにいっぱい助けられたんだよ」

 私の答えが想像と違ったのか、ベルるんは目をぱちぱちとしている。それから考え込み、ぱっと顔をあげた。

「僕が1人の時も、ずっと見てくれてたんだね。妖精さんだから見えなかっただけで、そばにいてくれてたんだ!」

 全然違う。

 全然違う考えだけど、ベルるんは少し涙を浮かべながら、感動したように言っているため否定できない。

 でも、幼少期のベルるんと1日半過ごして、スマホの中の推しだからというだけではなく好きになっていた。

 こんなに不遇な環境なのに、まだ誰も恨んでいないところ。お母さんのことを気にしてあげてるところ。もちろん、見た目も。

「私はね。ベルるんが素直でとってもいい子だと思うよ。お母さんのことも大切にしていて、初めて会った私にも優しくて。ベルるんのことが大好きだよ」

 そう答えると、ベルるんはにこっと笑ってくれた。どうやら、今までは私の好意が分からず、少し心配していたみたいだ。

 今までとはまた違う、心から信頼してくれたことが分かる笑顔だった。

「アリサは僕の大切な妖精さんだよ。このお花あげるね」

 いつの間に摘んだのか、ベルるんが1輪の白いお花を持っている。

「僕の気持ちだよ」

 えへへ。と笑うベルるんから、お礼を言って受け取る。推しからもらった大切なお花だから、すぐにアイテムボックスにしまう。

 入れる前に花の名前が気になって鑑定をすると、そこには『プロポーズで使われる定番の花。花言葉:永遠の愛。ずっとそばにいて』と書かれている。

 僕の気持ちって言ってたけど、この花の用途は知るわけないよね?

「ありがとうベルるん。そろそろ帰ろうか。またピクニックしようね」

「うん。一緒に帰ろう!」

 帰る話をしたら落ち込むかな?と思ったけれど、杞憂だったようで笑顔で私に手を出してきた。

 触れなくてもテレポートできるか、帰りに試そうとしたけど、可愛すぎて出してくれた手をぎゅっと握る。

「それじゃあ、ベルるんのお家にテレポート!」

 そう言った途端に、びゅんっと私たちの姿がその場から消えた。
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