【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

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幼少期の推し編

夜の推しと妖精

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 せっせっとベルるんは部屋にあった木箱に、白いハンカチを詰めている。

「よし、これでいいかな。アリサのベッドだよ」

「わあ!ありがとう」

 どうやら私の寝る場所を作ってくれていたみたいだ。

 ベルるんは満足げに頷くと、ベッド脇にあるテーブルの上に木箱を置いた。

「僕と一緒に寝てくれてもいいんだけど、さすがに嫌かなって」

 もじもじというベルるんのナイスショタに、思わずむせる。

 変態の顔になったら嫌われる、落ち着け私!

「それじゃあベルるんが寝付くまで、隣で一緒に寝ようかな」

「いいの?アリサありがとう」

 むしろこっちがありがとうだよ!役得だよ!

 SNSで繋がっていたベルるん推しの同志たち。私はこれから推しと寝ます!!

 ベッド横にあるランプを消すと、部屋の中は暗くなり灯りは窓から入る月の光だけだ。

 この世界ではランプなどの便利な道具には、魔法石と呼ばれる魔法が込められたアイテムが使われている。

 月明かりに照らされるベルるんは麗しく、私は平常心を保ちながらベルるんの隣にもぐりこむ。

「アリサ。僕ね、明日にはアリサがいなくなっちゃうんじゃないかって不安なんだ」

 話しながら不安を感じたのか、ベルるんの目がうるうると潤んできた。

「今まで友達もいたことがなくて、お母様もお父様も話してくれなくて。だから、アリサが来てくれて本当に嬉しかったんだよ」

「それじゃあ、私が初めての友達だね」

 にこっと笑顔で言うと、ベルるんも目を潤ませたまま笑ってくれた。

「明日から何して遊ぼうかな。僕がこのお屋敷案内してあげるね」

 そう言うと、ベルるんはごろりと私の方へ身体ごと向けた。

「アリサ。ずっと僕のそばにいてね」

 今日会ったばかりの私にここまで言ってくれるくらい、今のベルるんは愛情に飢えているみたいだった。

 こんなベルるんが、大人になったら人間嫌いになっちゃうんだもんな。

 ぎゅっと胸が切なくなり、ベルるんの両手を握る。

「大丈夫だよ」

 急にこの世界に入ってきて、今も夢が現実か分かってない私には、ずっとそばにいるとは約束できなかった。

 その代わり、この世界に入れる間はそばにいて、絶対に救おう。と心に強く決める。

「もうそろそろ寝ようね」

「うん。朝起きても側にいてね」

 ベルるんは疲れていたのか、そう言うとすぐにすぅっと眠りに落ちた。

「ベルるん?寝たかなー?」

 起こさないようにそっと布団から抜け出し、ベルるんの顔の前まで飛んで移動する。

「期待させてできなかったら悪いから言わなかったけど、これで治ったら1番いいよね」

 そっとベルるんの目の上に両手をかざし、治れ治れと念じる。

 すると両手から光が現れ、ベルるんの目を優しく光がつつみこむ。

「あ、ダメかも。多分」

 光は確かに目の方に流れて行ったけれど、何となく手応えを感じなかった。

 魔法の発動条件や、何の魔法が使えるのかがいまいち分からない。

 朝起きた時に目の色が戻ってたら、ラッキーくらいに思っておこう。

「寝る前に、明日の朝ごはんのフルーツ取りに行こうかな」

 私はベルるんを起こさないように静かに飛ぶと、調理場へ向かった。
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