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トニトの語る第四話 7
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痛い、苦い、暗闇の中なのに、風邪を引いた時みたいに地面がたわむ。
気持ち悪い、怠い、呼吸すら、なんだかしづらい。
体が動かない。まるで縛られたみたいに。
僕一人なのも、居心地悪い……。
ミコーを抱っこして寝ないと、落ち着かない。
温かくてふわふわな僕の半身はどこ?
いったいいつ逸れてしまったの?
考えもうまくまとまらない。
そのうち少し揺れが落ち着いて、あぁ、やっと睡魔が働き出したと――。
「それに入っているのか?」
人の声を聞いた。
「薬を仕込んだので眠っておいでです。万が一起きても、口はきけませんから、ご安心を」
「一切声は出ないんだな?」
「えぇ、何をしても」
「何をしても?」
「殴られても、刺されても、焼かれても、悲鳴一つ無理でございます」
「ほう……それはそれは……」
楽しめそうだ。と、言った声は、くぐもっていたけれど、何故か、聞き覚えのある声に、思えた。
怖いと思った。
でも、睡魔に意識を絡め取られ、どんどん、音が、遠退いていく。
いけない、きっと寝てはいけないんだ。
「痛みは感じるのだな?」
「ええ、ちゃんと。針を刺せば、針を刺す痛みを。首を飛ばせば、首が飛ぶ痛みを」
起きなきゃ、起きなきゃだめだ。
なのに、ぼくは――。
◆
「王……、王子!」
揺すられ、頬を叩かれた痛みを感じた!
「ぅわああああぁぁぁ‼︎」
ダメだ、意識を失ったら殺される! きっと殺される。痛めつけ、苦しめて、殺されるんだ‼︎
伸びてくる腕を払い、体を捻って避けたけれど、何かがまとわりついたように動けず、高所から落ちた僕は強かに肩を打ちつけた。
痛い、でも起きろ、起きなきゃ! ……、あ……声?
そういえば、さっき声が出たような――。
「……あれ?」
霞がかかっていたような思考が、やっと少し覚醒した気がした。
暗がりの中自分の体を見下ろすと、動きにくかったのも道理、毛布が下半身に絡みついていただけだ。
落ちた場所は木の床、目の前には寝台の木枠らしき影。
と、いうことは……。
「…………夢」
「夢だな」
呆れたような口調と声。
「むっちゃくちゃうなされてるから起こそうとしただけなんですが……何をどうしました?」
ハエレだった。暗がりでも分かる巨躯が、寝台上に身を乗り出すようにして僕を見下ろしていた。
その後ろでガタガタ鳴る窓硝子。
こっちが現実だと安堵の息を吐くと、僕を引き起こそうとしたのか、伸びてくる腕――っ!
だけど、何故かまた恐怖がぶり返し、僕はついその手を弾いてしまった。
「あっ!」
「っ……」
息を呑む音。
「ご、ごめんっ、違う、間違った!」
「……ちょっと待ってください、先に灯りをつけます」
僕に覆い被さるようだった黒い影が離れ、寝台横の小机に置かれた行灯に手を伸ばした。
何かを擦る音と、小さな光。
ほどなくして行灯に火が灯り、部屋が一段と明るくなると、僕の爆発しそうに飛び跳ねていた心臓は、やっと落ち着きを取り戻してきた。
「……っ、ごめん、なんかすごい、怖い夢を……見て……」
あの夢の続きを知ってる気がする。
だけど起きた途端夢は曖昧になって、感じていた恐怖の理由までぼやけてきた。
「喋れないし、動けないし、焦っちゃって…………ハエレ?」
返事を返してくれない巨躯。
恐るおそる視線をやると、彼は瞠目し、僕を見下ろしていた。
――傷つけた?
せっかく起こしてくれたのに、ひどい態度をとってしまった自覚はある。
なんであんなに驚いてしまったのか、そこは自分でもよく分からない。なんだかあの夢は先を見てはいけないもののような気がして、もっとずっと恐ろしいものが訪れるような気がして、いてもたってもいられなかったんだ。
「ごめん、痛かった?」
だけどハエレは答えてくれなくて――外でピカッと閃光が走った。
「わっ!」
雷鳴。
「びっくりした……まだ降ってるんだ?」
窓の外に気を取られているうちに、ハエレの手がまた僕の頬に伸びていた。
驚いてギュッと目を閉じると、頬のさらに奥に、触れる感触。
耳たぶを摘まれる感触……?
「……戻ってますよ?」
「え?」
「人に、戻ってます」
「…………え? なんで?」
言葉の意味が掴めず、自分でも手を伸ばし、頭を触ってみた。
そこにあるはずだった獣の耳。何度も何度も触って確認したけれど……ない。
「えっ⁉︎」
毛布に手を突っ込んでお尻の上も触ってみた。
細袴から出ているもふもふが……ない!
「なんで⁉︎」
どういう理屈⁉︎
獣の耳と尻尾は綺麗さっぱり消え失せて、人の形の耳が定位置にあって、これじゃ結局何がどうして獣化してたのか、戻ったのか、分からないままなんですけど⁉︎
半分混乱、半分困惑。ワタワタする僕に、ハエレもいまいち状況についていけてないような顔をしていたけれど――。
息を吐き、頭を振った。
「まぁ、戻れたんだからよしとしましょう。これで王都に向かえるんですから」
そう言ってくれたけれど――。
回り込んで僕の前まで来た彼は、僕を寝台に座らせた。
そして真剣な面持ちで。
「ただ、注意してください。勝手に戻ったということは、獣化を体得したわけじゃないんですよね? それなら、これからはあまり人目に触れないほうがいいでしょう。貴方が気づいてたかどうかは分かりませんが、獣人の貴方を注目する視線は行く先々にありました」
「えっ⁉︎」
それ初耳なんですけど⁉︎
「ありましたが、貴方が堂々と顔を晒しているし、獣の部位を持っているのが明白だったから、疑いは即座に晴れていたんですよ。俺たちもあえて見せてましたからね」
あえて見せていた……。
「いろいろ相手の出方を確認していたんです。まずトニトルス王子は今も捜索されている。捜索元を追跡したところ、いくつかの根城は発見しました。それから獣騎士部隊が動いているのも確認済みです」
「そんな危険なことを⁉︎」
獣騎士部隊がどういった部隊か理解してるのかと慌てふためいた。
彼らは王家に対し絶対的な忠誠を誓う精鋭たちで、全ての隊員が獣化できる獣人騎士で構成されている。
機動力や頑強さだけじゃない、鼻だってきく特別部隊で、一度でも彼らの目につけば、以後どこで会っても気づかれてしまう! もし王家について探っていると知られてしまえば、地の果てまで逃げたって逃げきれないのに!
ウルヴズ行商団は王家に目をつけられているかもしれない。
もし僕を匿っていることがバレてしまっていたら、皆が断頭台に並ぶことになってしまう!
恐怖のあまり言葉のない僕を前にして、ハエレは――。
「大丈夫。彼らだって万能じゃないんですよ」
全く動じず、笑みさえ浮かべ、そう言ってのけた。
「獣人のなんたるかを俺たちが知らないわけないでしょう」
妙に自信に満ちた言葉。ハエレは人なのに……?
「だから、問題はこれからなんですよ。いいですか? 今まで通り、獣化の練習は続けましょう」
「どう、して……?」
「少なくとも貴方は二度獣化したんです。三度目がある可能性は高いでしょうし、どこかでコツが掴めたなら、それは貴方だけの特別な武器になる」
それは、そうだろう。
人の僕が獣人になれるなんて誰も思わないし、まして狼になるなんて想像すらできないはずだ。
「ただ、姿を晒す時は細工をします。そして全身を晒すのは今後控えましょう。時と場所は我々が判断しますので、当面はそれに従ってください」
「わ、分かった……」
「雨が止んだら、急いで王都に向かいます。ここからは時間が経てば経つほど不利になる。貴方の正体を知られやすくなってしまうでしょうから」
「うん……」
返事はしつつ、どうしよう……と、悩んでいた。
獣化が体得できたら、皆を巻き込まないためにも、僕は一人で王宮に向かうつもりでいたんだ。
人に戻れるようになれば、彼らは一緒にいない方がいい。
王位継承権第一位を持つ僕は、王になるべく教育を受けていて、抜け道も既に幾つか教えられていたから、それを使って中に侵入するつもりでいた。
僕の姿をしたミコーを捕らえておける場所は限られる。
いくら叔父でも、僕を監禁できるほどの人脈は築いていないはずだし、たとえ正当な理由があって僕を捕らえたとしても、政治が権力争いである以上、反対派は必ず出てくるだろう。
王宮が静かであるということは、偽物の僕を皆が本物と認識しているからに他ならない。ということは、僕の生活はさほど変化していない。カペルやタミアといった信のおける使用人が配置されているままのはず。だから僕とミコーが入れ替わってしまっても、気づかれないと思った。
――声変わりしちゃって高音は出しづらいけど……しばらくなら誤魔化せるはず……。
その間にウェルテクスと接触を図り、叔父を探ってもらう……あわよくば、謀反の証拠を掴んでもらう。
彼は前々から王立文明文化研究所に所属したがっているから、僕が即位したらブンカケン所属を許可すると言えば、協力してくれる目算は高い。
でも、獣化が体得できなかった以上、目立たず王宮に近づくのは難しいだろう。
――どうしよう……。
だけど悩む暇は与えられなかった。
「……ん?」
雷鳴に混じり、笛の音が聞こえた気がしたんだ。
ハエレも顔を上げ、窓の外に視線を向ける。
「今……」
笛が鳴ってた? って、聞こうと思ったのに。
外でパタパタ足音がしたと思ったら、ドンドンと荒々しく扉が叩かれた。
「ハエレ! 聞こえたか⁉︎」
「起きてる! けど俺にはきちんと聞き取れなかった」
「山で異音、崩落の可能性、一次退避、西の山肌!」
崩落……崩落⁉︎
理解したとほぼ同時に、聞いたこともないような轟音が轟いた。
気持ち悪い、怠い、呼吸すら、なんだかしづらい。
体が動かない。まるで縛られたみたいに。
僕一人なのも、居心地悪い……。
ミコーを抱っこして寝ないと、落ち着かない。
温かくてふわふわな僕の半身はどこ?
いったいいつ逸れてしまったの?
考えもうまくまとまらない。
そのうち少し揺れが落ち着いて、あぁ、やっと睡魔が働き出したと――。
「それに入っているのか?」
人の声を聞いた。
「薬を仕込んだので眠っておいでです。万が一起きても、口はきけませんから、ご安心を」
「一切声は出ないんだな?」
「えぇ、何をしても」
「何をしても?」
「殴られても、刺されても、焼かれても、悲鳴一つ無理でございます」
「ほう……それはそれは……」
楽しめそうだ。と、言った声は、くぐもっていたけれど、何故か、聞き覚えのある声に、思えた。
怖いと思った。
でも、睡魔に意識を絡め取られ、どんどん、音が、遠退いていく。
いけない、きっと寝てはいけないんだ。
「痛みは感じるのだな?」
「ええ、ちゃんと。針を刺せば、針を刺す痛みを。首を飛ばせば、首が飛ぶ痛みを」
起きなきゃ、起きなきゃだめだ。
なのに、ぼくは――。
◆
「王……、王子!」
揺すられ、頬を叩かれた痛みを感じた!
「ぅわああああぁぁぁ‼︎」
ダメだ、意識を失ったら殺される! きっと殺される。痛めつけ、苦しめて、殺されるんだ‼︎
伸びてくる腕を払い、体を捻って避けたけれど、何かがまとわりついたように動けず、高所から落ちた僕は強かに肩を打ちつけた。
痛い、でも起きろ、起きなきゃ! ……、あ……声?
そういえば、さっき声が出たような――。
「……あれ?」
霞がかかっていたような思考が、やっと少し覚醒した気がした。
暗がりの中自分の体を見下ろすと、動きにくかったのも道理、毛布が下半身に絡みついていただけだ。
落ちた場所は木の床、目の前には寝台の木枠らしき影。
と、いうことは……。
「…………夢」
「夢だな」
呆れたような口調と声。
「むっちゃくちゃうなされてるから起こそうとしただけなんですが……何をどうしました?」
ハエレだった。暗がりでも分かる巨躯が、寝台上に身を乗り出すようにして僕を見下ろしていた。
その後ろでガタガタ鳴る窓硝子。
こっちが現実だと安堵の息を吐くと、僕を引き起こそうとしたのか、伸びてくる腕――っ!
だけど、何故かまた恐怖がぶり返し、僕はついその手を弾いてしまった。
「あっ!」
「っ……」
息を呑む音。
「ご、ごめんっ、違う、間違った!」
「……ちょっと待ってください、先に灯りをつけます」
僕に覆い被さるようだった黒い影が離れ、寝台横の小机に置かれた行灯に手を伸ばした。
何かを擦る音と、小さな光。
ほどなくして行灯に火が灯り、部屋が一段と明るくなると、僕の爆発しそうに飛び跳ねていた心臓は、やっと落ち着きを取り戻してきた。
「……っ、ごめん、なんかすごい、怖い夢を……見て……」
あの夢の続きを知ってる気がする。
だけど起きた途端夢は曖昧になって、感じていた恐怖の理由までぼやけてきた。
「喋れないし、動けないし、焦っちゃって…………ハエレ?」
返事を返してくれない巨躯。
恐るおそる視線をやると、彼は瞠目し、僕を見下ろしていた。
――傷つけた?
せっかく起こしてくれたのに、ひどい態度をとってしまった自覚はある。
なんであんなに驚いてしまったのか、そこは自分でもよく分からない。なんだかあの夢は先を見てはいけないもののような気がして、もっとずっと恐ろしいものが訪れるような気がして、いてもたってもいられなかったんだ。
「ごめん、痛かった?」
だけどハエレは答えてくれなくて――外でピカッと閃光が走った。
「わっ!」
雷鳴。
「びっくりした……まだ降ってるんだ?」
窓の外に気を取られているうちに、ハエレの手がまた僕の頬に伸びていた。
驚いてギュッと目を閉じると、頬のさらに奥に、触れる感触。
耳たぶを摘まれる感触……?
「……戻ってますよ?」
「え?」
「人に、戻ってます」
「…………え? なんで?」
言葉の意味が掴めず、自分でも手を伸ばし、頭を触ってみた。
そこにあるはずだった獣の耳。何度も何度も触って確認したけれど……ない。
「えっ⁉︎」
毛布に手を突っ込んでお尻の上も触ってみた。
細袴から出ているもふもふが……ない!
「なんで⁉︎」
どういう理屈⁉︎
獣の耳と尻尾は綺麗さっぱり消え失せて、人の形の耳が定位置にあって、これじゃ結局何がどうして獣化してたのか、戻ったのか、分からないままなんですけど⁉︎
半分混乱、半分困惑。ワタワタする僕に、ハエレもいまいち状況についていけてないような顔をしていたけれど――。
息を吐き、頭を振った。
「まぁ、戻れたんだからよしとしましょう。これで王都に向かえるんですから」
そう言ってくれたけれど――。
回り込んで僕の前まで来た彼は、僕を寝台に座らせた。
そして真剣な面持ちで。
「ただ、注意してください。勝手に戻ったということは、獣化を体得したわけじゃないんですよね? それなら、これからはあまり人目に触れないほうがいいでしょう。貴方が気づいてたかどうかは分かりませんが、獣人の貴方を注目する視線は行く先々にありました」
「えっ⁉︎」
それ初耳なんですけど⁉︎
「ありましたが、貴方が堂々と顔を晒しているし、獣の部位を持っているのが明白だったから、疑いは即座に晴れていたんですよ。俺たちもあえて見せてましたからね」
あえて見せていた……。
「いろいろ相手の出方を確認していたんです。まずトニトルス王子は今も捜索されている。捜索元を追跡したところ、いくつかの根城は発見しました。それから獣騎士部隊が動いているのも確認済みです」
「そんな危険なことを⁉︎」
獣騎士部隊がどういった部隊か理解してるのかと慌てふためいた。
彼らは王家に対し絶対的な忠誠を誓う精鋭たちで、全ての隊員が獣化できる獣人騎士で構成されている。
機動力や頑強さだけじゃない、鼻だってきく特別部隊で、一度でも彼らの目につけば、以後どこで会っても気づかれてしまう! もし王家について探っていると知られてしまえば、地の果てまで逃げたって逃げきれないのに!
ウルヴズ行商団は王家に目をつけられているかもしれない。
もし僕を匿っていることがバレてしまっていたら、皆が断頭台に並ぶことになってしまう!
恐怖のあまり言葉のない僕を前にして、ハエレは――。
「大丈夫。彼らだって万能じゃないんですよ」
全く動じず、笑みさえ浮かべ、そう言ってのけた。
「獣人のなんたるかを俺たちが知らないわけないでしょう」
妙に自信に満ちた言葉。ハエレは人なのに……?
「だから、問題はこれからなんですよ。いいですか? 今まで通り、獣化の練習は続けましょう」
「どう、して……?」
「少なくとも貴方は二度獣化したんです。三度目がある可能性は高いでしょうし、どこかでコツが掴めたなら、それは貴方だけの特別な武器になる」
それは、そうだろう。
人の僕が獣人になれるなんて誰も思わないし、まして狼になるなんて想像すらできないはずだ。
「ただ、姿を晒す時は細工をします。そして全身を晒すのは今後控えましょう。時と場所は我々が判断しますので、当面はそれに従ってください」
「わ、分かった……」
「雨が止んだら、急いで王都に向かいます。ここからは時間が経てば経つほど不利になる。貴方の正体を知られやすくなってしまうでしょうから」
「うん……」
返事はしつつ、どうしよう……と、悩んでいた。
獣化が体得できたら、皆を巻き込まないためにも、僕は一人で王宮に向かうつもりでいたんだ。
人に戻れるようになれば、彼らは一緒にいない方がいい。
王位継承権第一位を持つ僕は、王になるべく教育を受けていて、抜け道も既に幾つか教えられていたから、それを使って中に侵入するつもりでいた。
僕の姿をしたミコーを捕らえておける場所は限られる。
いくら叔父でも、僕を監禁できるほどの人脈は築いていないはずだし、たとえ正当な理由があって僕を捕らえたとしても、政治が権力争いである以上、反対派は必ず出てくるだろう。
王宮が静かであるということは、偽物の僕を皆が本物と認識しているからに他ならない。ということは、僕の生活はさほど変化していない。カペルやタミアといった信のおける使用人が配置されているままのはず。だから僕とミコーが入れ替わってしまっても、気づかれないと思った。
――声変わりしちゃって高音は出しづらいけど……しばらくなら誤魔化せるはず……。
その間にウェルテクスと接触を図り、叔父を探ってもらう……あわよくば、謀反の証拠を掴んでもらう。
彼は前々から王立文明文化研究所に所属したがっているから、僕が即位したらブンカケン所属を許可すると言えば、協力してくれる目算は高い。
でも、獣化が体得できなかった以上、目立たず王宮に近づくのは難しいだろう。
――どうしよう……。
だけど悩む暇は与えられなかった。
「……ん?」
雷鳴に混じり、笛の音が聞こえた気がしたんだ。
ハエレも顔を上げ、窓の外に視線を向ける。
「今……」
笛が鳴ってた? って、聞こうと思ったのに。
外でパタパタ足音がしたと思ったら、ドンドンと荒々しく扉が叩かれた。
「ハエレ! 聞こえたか⁉︎」
「起きてる! けど俺にはきちんと聞き取れなかった」
「山で異音、崩落の可能性、一次退避、西の山肌!」
崩落……崩落⁉︎
理解したとほぼ同時に、聞いたこともないような轟音が轟いた。
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