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ランチは考えていたより良いものだった。
日替わりは値段のわりに品数は多い。サラダ、ハム、卵、ヨーグルトときて小鉢のシチューが付いている。
週替わりの方はパスタにサラダが添えられ、小鉢でフルーツとヨーグルトが付いており、しっかりした内容だ。
これに店のパン食べ放題。飲み物もおかわり自由なら、かなり手頃だよなと思う。
「上手い商売だなぁ……。パンの売れ残りは出さないし、ランチついでにケーキやらパンやら買って帰るわけか」
仕入れの具材はかなり絞り込めてるよなぁ。ほとんどがケーキと惣菜パンの具材で使うものだもんな」
「ランチに追加でケーキを注文する場合は百円引き……そして客の半数は頼むのな……」
御多分に洩れず、話に花を咲かせるご婦人らは当たり前のようにケーキを追加注文している様子。階下を見下ろしながら苦笑する俺たちをよそに、ここの女性陣も余さずケーキを追加しに行きやがった。いやもう、良いって言ったのは俺だけどな……。
「やっぱ見当たんない?」
「だな」
「見てみたかったんだけどなー、その香りの人」
まぁ、今日に限っては居なくて良かった。
環はチラチラと俺を盗み見て、俺の目当てが誰であるかを吟味しているみたいだったし。
下手に反応して、あいつに付け入る隙を与えたくないしな。
現在、厨房にいるのば男性調理師二名と、配膳担当っぽい女性一人。この人も俺らよりは年上であろう感じ。
「祐くん、ここのパン買って帰らない? 明日の朝はパンにしよう」
「分かった。任せる」
「うん、選んでくるね」
ひらひらと手を振る祐介の隣で、野島が机に突っ伏した。
「幸せ全開……辛い」
「お泊まりですかぁ、良いねぇ青春だね」
「あぁ、もう同棲するかって話になってて。
家賃も貯蓄に回せることだし、それで今、お試しで週末一緒に過ごしてるから」
さらっとそんな風に言われて、野島は呻き、俺も天を仰いだ。
ほんと順調そうでようございましたぁ。
「お試しなんだ」
「生活習慣の差とか、当然あるだろうし。
お互い耐えられない習慣が無いか、はっきりさせてからじゃないと」
ものすっごい現実的な発言。
だけどそれだけ、将来に真剣だということなのだろう。
「美咲さん、社会人だもんなぁ」
ニヤニヤと笑って鈴木。
美咲さんは俺たちよりひとつ年上で、高校を出て直ぐに就職したと聞いている。
祐介の卒業は早くても三年半後だというのに、なんと順風満帆か。
そう思ったのだけど、祐介は糸目の真顔。
「女性一人暮らしは色々不安も多いし、俺が耐えられなくて」
「彼女に会えない日々が?」
「いや、安全面の心配」
「過保護か!」
社会人女性ですよ彼女! 大好きかっ⁉︎
「夜、部屋の前に人が立ってることがあるらしくて」
だけどその言葉で皆の冷やかしもピタリと止まった。
「最近も下着が盗まれるとかあったみたいだし」
「……マジで?」
「こわいこわい、なにそれ知らない人が立ってるってこと? そいつが盗んでるってこと⁉︎」
全然そんなそぶりは見せず、いつも通りおっとり朗らかだった美咲さんを、つい視線で追ってしまった。
「女の一人暮らしって、そんなに危険なもの?」
「マンションとか、一階と最上階は住むなってよく言われるらしい。庭からと、屋上から侵入しやすいって」
「うわわわ、屋上からも⁉︎」
「あぁ……でもよく考えたら、ベランダとか地続きだし、侵入しようと思えばできるよな」
「ええっ⁉︎」
いちいちオーバーリアクションの野島。
正直、男の一人暮らしにそんな危機感を感じたことは一切無い。
「うわぁ……茶化してごめんなさい……」
「そりゃ心配だわ……うん。同棲賛成」
「まぁ、まだマンション探しからだし、実際の同居は秋以降かなってところ。
この辺も良いかもしれないな。学校近いし、電車も地下鉄と嵐電通ってるし」
ここのパンも買える。と、祐介。
なんだ。結構気に入ってるんじゃん。
「もうちょっと北にJRの駅もある」
「マジか。バスは?」
「バスは……この通りには少ないかな。でもそれこそ駅に行けば色々来るだろ」
そんな話をしているうちに、美咲さんがパンを購入して戻り、鈴木妹がデザートを食べ終え、遊びに行ってくると席を立つ。
女子が解散の様子なので、俺たちも帰るかと、席を立った。
唯一、環だけが不服そう。
「えー、もうお終い? 陽向はこれから……」
「寝る。完徹明けだっつったろ」
「もー!」
なんて有意義な方便。
今度からちょくちょく利用することにしよう。
皿の類はカウンターに戻さなければならないので、適当に重ねて階下に運ぶ。
じゃあなーと、鈴木が先に行き、野島もご馳走様。と、後に続いた。
まだ未練がましく俺の周りをうろうろしようとする環に、さり気なく美咲さんが声を掛けてくれて、祐介が俺の肩に手を置いた。
「陽向あれ、お前のお気に入りじゃなかった?」
「あっ、フーガス! 先行っといてくれ、買って帰る」
「了解」
ひらひらと手を振る祐介に感謝の視線を送り、時間稼ぎを兼ねてトレイを手に取る。
フーガスだけだと朝食には足りないしな……なんか適当なサンドイッチ系……。
それを購入し、支払いを済ませた直後。カラン……と、背後で音。新たな入店客か。
品物を受け取って踵を返したが、そこで俺の足は縫い止められたように止まった。
「あらそのちゃん、久しぶりやねぇ、お母さん大丈夫やったの?」
「うん……もう落ち着いた」
そのちゃん……園部の、その?
あの男だった。
つい足を止めてしまった俺を訝しげに見たそいつは、自分が扉を塞いでいると思ったのか、そのまま扉前から足を進め、ショーウィンドウ前に立った。
だけど俺は……そいつの顔。その顔に驚きすぎて、固まってしまってい、言葉が出ない……。
「今日オーナーは?」
「お休み。伝言残しとく?」
「ううん、なら電話してみる」
「そ? ほな、明日以降また復帰?」
「うん。そのつもり。……いつもすみません」
「そのちゃんはそんなん、気にせんかてええのやで」
そこで男は、微動だにしていない俺に気付いたよう。
また視線をこちらにやって、不快げに眉間にしわを寄せた。
「……あの、何か?」
「あっ、わりぃ……」
つい、見入っていた。だけど折角のこのチャンス、無駄にはできない。
「あ、あの……前に会った時の礼を言いたくて。子供に扉、ぶち当てるところ防いでもらったから」
いや違う、それも確かに、言わなきゃと思ってはいたが。
「あぁ、あの時の人」
記憶に残っていたようで、別に良いですと返された。
だけど記憶に残っていたくらいには、不快感を感じていたのかもしれない。ちょっと感じ悪い声出したし。
「あとその…………あんたって、園部さん?」
何故か一気に、男は警戒の色を強くした。
「園部ですが、それが何か?」
「マジか……。あ、えっと……なんで言えば良いか……喘息持ちの身内がいたりした?」
「…………」
あ。
不味いことを言ったようだ。
園部さんどころか、店員の女性までなにやら表情が変わった。
「あっ、違うっ、前に俺、喘息の発作起こした時に、園部さんって子に親切にしてもらって……。
あんた感じ似てたから、もしかして身内じゃないかと……半年くらい前」
「知りません。心当たりありません」
「えっ、でも顔っ、顔もすっげ似てんだけど⁉︎」
顔だけじゃない。声もだ……。
言葉を交わすうちに、思い出してきた。声、もっと高かったと思うけど、質感は似てると思う。
それに顔は、びっくりするくらいに同じだろ。違うのは性別と髪型だけ。園部だっていうならあんた、絶対に身内のはず!
「宮さん、僕帰るね」
「う、うん。ほなまた……気ぃつけて……」
「あっちょっ! 待てって!」
俺を完璧に無視して。
外に向かった園部を追った。
その後ろ姿が、あの時の園部さんをチラつかせる……。
なんだ? 髪型、服装、性別、なにをとっても違うのに、似てる。
園部はそのままスクーターに手を掛け、鍵を差し込んで、座面下からヘルメットを取り出した。
「なぁおい!」
「…………」
「聞けよ! あんたボブカット女の子、身内いねぇ? 高校生くらい、黒髪で……」
「いません。心当たりもありません」
「嘘だろそれ、だってお前っ、ならなんで逃げてんだよ⁉︎」
肩を掴もうとしたら、手を払われた。そしてその時香った、同じ香り……。
「知りません」
「知らねぇんなら、逃げる必要ねぇだろうが⁉︎」
「あ、いたいた陽向ー、もー、遅いじゃん」
「っ!」
塀の影からひょこりと顔を出した環に驚いてしまって、一瞬気が逸れた。
その隙を逃さず、スクーターを前道まで押して移動していた園部は、俺を振り切るみたいに走り去っていく。
「なぁにあの子、感じ悪ぅ。すっごい愛想ない感じだったぁ」
そんな風に言いながら近付いてきた環が、俺の腕に勝手に、自らの腕を絡めてくる……。
「ねー陽向、駅ま送って? 私、この辺の土地勘、あんまり無くってぇ」
「っ…………フザケンナ。ちょっと南に行ったらすぐ学校じゃねぇか」
うるせぇな⁉︎ 邪魔すんじゃねぇよ! と、怒鳴りそうになって……だけどここにはまた来るのだし。こんなところで喧嘩して、出禁になっても嫌だと、思い直して言葉を選んだ。
でも苛立ちは抑えられない……。くそっ、やっと手掛かり掴んだってのに……。
「勝手に帰れ」
「ええぇぇ、陽向ぁ」
環を無視して、俺もチャリに跨って、こうなったら毎日通ってやると、強く誓っていた。
日替わりは値段のわりに品数は多い。サラダ、ハム、卵、ヨーグルトときて小鉢のシチューが付いている。
週替わりの方はパスタにサラダが添えられ、小鉢でフルーツとヨーグルトが付いており、しっかりした内容だ。
これに店のパン食べ放題。飲み物もおかわり自由なら、かなり手頃だよなと思う。
「上手い商売だなぁ……。パンの売れ残りは出さないし、ランチついでにケーキやらパンやら買って帰るわけか」
仕入れの具材はかなり絞り込めてるよなぁ。ほとんどがケーキと惣菜パンの具材で使うものだもんな」
「ランチに追加でケーキを注文する場合は百円引き……そして客の半数は頼むのな……」
御多分に洩れず、話に花を咲かせるご婦人らは当たり前のようにケーキを追加注文している様子。階下を見下ろしながら苦笑する俺たちをよそに、ここの女性陣も余さずケーキを追加しに行きやがった。いやもう、良いって言ったのは俺だけどな……。
「やっぱ見当たんない?」
「だな」
「見てみたかったんだけどなー、その香りの人」
まぁ、今日に限っては居なくて良かった。
環はチラチラと俺を盗み見て、俺の目当てが誰であるかを吟味しているみたいだったし。
下手に反応して、あいつに付け入る隙を与えたくないしな。
現在、厨房にいるのば男性調理師二名と、配膳担当っぽい女性一人。この人も俺らよりは年上であろう感じ。
「祐くん、ここのパン買って帰らない? 明日の朝はパンにしよう」
「分かった。任せる」
「うん、選んでくるね」
ひらひらと手を振る祐介の隣で、野島が机に突っ伏した。
「幸せ全開……辛い」
「お泊まりですかぁ、良いねぇ青春だね」
「あぁ、もう同棲するかって話になってて。
家賃も貯蓄に回せることだし、それで今、お試しで週末一緒に過ごしてるから」
さらっとそんな風に言われて、野島は呻き、俺も天を仰いだ。
ほんと順調そうでようございましたぁ。
「お試しなんだ」
「生活習慣の差とか、当然あるだろうし。
お互い耐えられない習慣が無いか、はっきりさせてからじゃないと」
ものすっごい現実的な発言。
だけどそれだけ、将来に真剣だということなのだろう。
「美咲さん、社会人だもんなぁ」
ニヤニヤと笑って鈴木。
美咲さんは俺たちよりひとつ年上で、高校を出て直ぐに就職したと聞いている。
祐介の卒業は早くても三年半後だというのに、なんと順風満帆か。
そう思ったのだけど、祐介は糸目の真顔。
「女性一人暮らしは色々不安も多いし、俺が耐えられなくて」
「彼女に会えない日々が?」
「いや、安全面の心配」
「過保護か!」
社会人女性ですよ彼女! 大好きかっ⁉︎
「夜、部屋の前に人が立ってることがあるらしくて」
だけどその言葉で皆の冷やかしもピタリと止まった。
「最近も下着が盗まれるとかあったみたいだし」
「……マジで?」
「こわいこわい、なにそれ知らない人が立ってるってこと? そいつが盗んでるってこと⁉︎」
全然そんなそぶりは見せず、いつも通りおっとり朗らかだった美咲さんを、つい視線で追ってしまった。
「女の一人暮らしって、そんなに危険なもの?」
「マンションとか、一階と最上階は住むなってよく言われるらしい。庭からと、屋上から侵入しやすいって」
「うわわわ、屋上からも⁉︎」
「あぁ……でもよく考えたら、ベランダとか地続きだし、侵入しようと思えばできるよな」
「ええっ⁉︎」
いちいちオーバーリアクションの野島。
正直、男の一人暮らしにそんな危機感を感じたことは一切無い。
「うわぁ……茶化してごめんなさい……」
「そりゃ心配だわ……うん。同棲賛成」
「まぁ、まだマンション探しからだし、実際の同居は秋以降かなってところ。
この辺も良いかもしれないな。学校近いし、電車も地下鉄と嵐電通ってるし」
ここのパンも買える。と、祐介。
なんだ。結構気に入ってるんじゃん。
「もうちょっと北にJRの駅もある」
「マジか。バスは?」
「バスは……この通りには少ないかな。でもそれこそ駅に行けば色々来るだろ」
そんな話をしているうちに、美咲さんがパンを購入して戻り、鈴木妹がデザートを食べ終え、遊びに行ってくると席を立つ。
女子が解散の様子なので、俺たちも帰るかと、席を立った。
唯一、環だけが不服そう。
「えー、もうお終い? 陽向はこれから……」
「寝る。完徹明けだっつったろ」
「もー!」
なんて有意義な方便。
今度からちょくちょく利用することにしよう。
皿の類はカウンターに戻さなければならないので、適当に重ねて階下に運ぶ。
じゃあなーと、鈴木が先に行き、野島もご馳走様。と、後に続いた。
まだ未練がましく俺の周りをうろうろしようとする環に、さり気なく美咲さんが声を掛けてくれて、祐介が俺の肩に手を置いた。
「陽向あれ、お前のお気に入りじゃなかった?」
「あっ、フーガス! 先行っといてくれ、買って帰る」
「了解」
ひらひらと手を振る祐介に感謝の視線を送り、時間稼ぎを兼ねてトレイを手に取る。
フーガスだけだと朝食には足りないしな……なんか適当なサンドイッチ系……。
それを購入し、支払いを済ませた直後。カラン……と、背後で音。新たな入店客か。
品物を受け取って踵を返したが、そこで俺の足は縫い止められたように止まった。
「あらそのちゃん、久しぶりやねぇ、お母さん大丈夫やったの?」
「うん……もう落ち着いた」
そのちゃん……園部の、その?
あの男だった。
つい足を止めてしまった俺を訝しげに見たそいつは、自分が扉を塞いでいると思ったのか、そのまま扉前から足を進め、ショーウィンドウ前に立った。
だけど俺は……そいつの顔。その顔に驚きすぎて、固まってしまってい、言葉が出ない……。
「今日オーナーは?」
「お休み。伝言残しとく?」
「ううん、なら電話してみる」
「そ? ほな、明日以降また復帰?」
「うん。そのつもり。……いつもすみません」
「そのちゃんはそんなん、気にせんかてええのやで」
そこで男は、微動だにしていない俺に気付いたよう。
また視線をこちらにやって、不快げに眉間にしわを寄せた。
「……あの、何か?」
「あっ、わりぃ……」
つい、見入っていた。だけど折角のこのチャンス、無駄にはできない。
「あ、あの……前に会った時の礼を言いたくて。子供に扉、ぶち当てるところ防いでもらったから」
いや違う、それも確かに、言わなきゃと思ってはいたが。
「あぁ、あの時の人」
記憶に残っていたようで、別に良いですと返された。
だけど記憶に残っていたくらいには、不快感を感じていたのかもしれない。ちょっと感じ悪い声出したし。
「あとその…………あんたって、園部さん?」
何故か一気に、男は警戒の色を強くした。
「園部ですが、それが何か?」
「マジか……。あ、えっと……なんで言えば良いか……喘息持ちの身内がいたりした?」
「…………」
あ。
不味いことを言ったようだ。
園部さんどころか、店員の女性までなにやら表情が変わった。
「あっ、違うっ、前に俺、喘息の発作起こした時に、園部さんって子に親切にしてもらって……。
あんた感じ似てたから、もしかして身内じゃないかと……半年くらい前」
「知りません。心当たりありません」
「えっ、でも顔っ、顔もすっげ似てんだけど⁉︎」
顔だけじゃない。声もだ……。
言葉を交わすうちに、思い出してきた。声、もっと高かったと思うけど、質感は似てると思う。
それに顔は、びっくりするくらいに同じだろ。違うのは性別と髪型だけ。園部だっていうならあんた、絶対に身内のはず!
「宮さん、僕帰るね」
「う、うん。ほなまた……気ぃつけて……」
「あっちょっ! 待てって!」
俺を完璧に無視して。
外に向かった園部を追った。
その後ろ姿が、あの時の園部さんをチラつかせる……。
なんだ? 髪型、服装、性別、なにをとっても違うのに、似てる。
園部はそのままスクーターに手を掛け、鍵を差し込んで、座面下からヘルメットを取り出した。
「なぁおい!」
「…………」
「聞けよ! あんたボブカット女の子、身内いねぇ? 高校生くらい、黒髪で……」
「いません。心当たりもありません」
「嘘だろそれ、だってお前っ、ならなんで逃げてんだよ⁉︎」
肩を掴もうとしたら、手を払われた。そしてその時香った、同じ香り……。
「知りません」
「知らねぇんなら、逃げる必要ねぇだろうが⁉︎」
「あ、いたいた陽向ー、もー、遅いじゃん」
「っ!」
塀の影からひょこりと顔を出した環に驚いてしまって、一瞬気が逸れた。
その隙を逃さず、スクーターを前道まで押して移動していた園部は、俺を振り切るみたいに走り去っていく。
「なぁにあの子、感じ悪ぅ。すっごい愛想ない感じだったぁ」
そんな風に言いながら近付いてきた環が、俺の腕に勝手に、自らの腕を絡めてくる……。
「ねー陽向、駅ま送って? 私、この辺の土地勘、あんまり無くってぇ」
「っ…………フザケンナ。ちょっと南に行ったらすぐ学校じゃねぇか」
うるせぇな⁉︎ 邪魔すんじゃねぇよ! と、怒鳴りそうになって……だけどここにはまた来るのだし。こんなところで喧嘩して、出禁になっても嫌だと、思い直して言葉を選んだ。
でも苛立ちは抑えられない……。くそっ、やっと手掛かり掴んだってのに……。
「勝手に帰れ」
「ええぇぇ、陽向ぁ」
環を無視して、俺もチャリに跨って、こうなったら毎日通ってやると、強く誓っていた。
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