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婚姻の儀 2
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門前には人垣ができており、門の外にもそれはそのまま続いていた……。
車椅子の父上と、それを押すガイウスが玄関横に控えており、その隣に陛下。少し下がって公爵家の方々や、警護のディート殿やリヴィ様……と、とんでもない顔に見守られて立つ。
やって来た俺をじっくりと見た父上は、ふっと笑って俺に言った。
「ちゃんと連れ帰ってくるのだぞ」
「それはもう……」
そのつもりですよ。
嫌だと言われても、なんとか説得するつもりでいます。
「……でもこれ人多すぎませんか……」
何重にもなった人垣が見える。
凄まじくざわめいているのが、ここまで聞こえて来ている。
通常は花嫁を連れて歩く道を譲ってくれるものなのだが……あえて道を塞いでくる場合もあって、今回はそうなるようだ。
まぁ、距離的に近いからな……仕方ないか。
サヤのところまで、あの人垣をかき分けて行くことになるのだろう……体力持つのか俺? と、そんな不安が胸を過ぎった。
「何を怖気付いておる?」
早速陛下に悟られて茶化される。
「早くせねば、花嫁を他に掻っ攫われるやもしれぬぞ?」
ディート殿にそう言われ、怯んでる場合じゃないなと、深く息を吐いた。
「行ってきます」
そう宣言し、足を踏み出す。門前の人垣からの歓声が、一気に膨れ上がった。
儀式の間は、誰も俺を手助けしてくれない。配下も従えていかない。俺一人が歩き、サヤの元に向かう。
とりあえず顔を伏せて分からない程度に深呼吸して、人垣に向けて顔を上げたら、門前にわさわさいた人たちは綺麗さっぱり片付いていた。
「……え?」
いや、人垣はあるのだけど……道の両脇に退き、俺とサヤが並んで通れる程度の道が開いていたのだ。
どうやら、その道を隠すための人垣であったよう。驚かさないでくれよ……。
『前時代文明文化研究所』と書かれた板が吊るされている門まで来ると、サヤのもとまで続く綺麗な道ができているのがよく見えた。
両脇に控えた人たちの間に騎士や衛兵が点在しており、その後ろに集まった住人ら。
先頭の人たちは、手に白く長い飾り紐を持っており、サヤの下まで続く道をその紐で表現してくれていた。
足を踏み出すと、またわぁっと、歓声が上がる。
そしておめでとう、お幸せにという声が四方八方から降り注いだ。
たまにひらひらと白い花弁が舞っている。
その中、足を進めた。
ドキドキと心臓が早鐘を打っている。
それと同時に、やっとサヤの花嫁衣装姿を見れるのだという期待が、胸いっぱいに膨らんでいた。
俺が通り抜けると、騎士らが背に回していた手を、胸の前に構えていく。
通り沿いの家々の窓からも、住人が沢山顔を出している。
進む中にジークや、ここの配属を希望した騎士らがおり、胸がムズムズとする。
道の途中になんだかいかつい集団がいるな……と思ったらシェルトを筆頭とした大工や石工らの姿で、ルカまで来ていたのかと驚いた。むすっとした顔ながら、視線が合うと口がおめでとう……と、動く。
主筋通りまで来て、長屋店舗の間を進む。その間も人垣は途切れない。
元々は、装飾師としてルーシーが借りていた長屋店舗の一角を、サヤの家として使わせてもらう予定だったのだけど、それでは駄目だとギルが言い、まだ借り手がついていなかった屋敷を急遽、バート商会が借り、バート商会別館としてしまった。
サヤはそこで待っている。
俺の通り過ぎた後ろがガヤガヤと賑わっている。帰りも通るのだけど……道は無事だろうかと少し不安になる。
だけど、早くサヤに会いたくて、先ずはサヤを見なくてはと、足を急がせた。
バート商会別館は、中央広場にある。
そこの手前だけは屋台を置かず、人垣も大きく開いていた。
門前に立つ一際背が高い、金髪の偉丈夫。その隣に並ぶ美女。明らか造形がおかしい。ギルとルーシーは、今日もキラキラだ。
サヤの家役ということで、家族として俺を迎えるのだ。
「よく来たな!」
「その度胸は褒めてさしあげるわ!」
「……なんで宣戦布告みたいになってるの?」
ここは通しませんよ! とばかりに、俺の前に立ち憚る二人。
雰囲気に、嫌な予感がした……。
「サヤを娶りたいなら、お前には試練を受けてもらう!」
……いや、聞いてませんって。
ぽかんと口を開いた俺に、くすくすという笑い声が横手から上がった。
見れば孤児院の子供たちだ。皆が白い短衣に制服としている乱れ格子柄の衣装。
その中心に立っていたのはトゥーレで、もう孤児院を出た身であったけれど、今日は皆とお揃いの制服姿。
「こちらへお越しください」
そう言われてギルを見ると、行け。とばかりに顎をしゃくられた……。
行けばいいんでしょ……。
サヤの花嫁姿を見るためだと自分に言い聞かせ、言葉に従う。
ここまで来ればあと少し……あの向こうで、サヤは待ってるんだ……。
さっさと済ませて、サヤに会おう。
子供らに囲まれ、トゥーレに導かれて足を進めた。
周りでキャッキャくすくすとはしゃぐ子供たちが可愛い。ルドルフの姿が見えないのは、少し残念……。
すると、長椅子が等間隔に並べられた広場の中心に連れ出された。
長椅子は全てが同じ方向……広場の中心に向いており、途中から何故か長い緋毛氈が敷かれている。
……なんだこれ?
「この道をお進みください」
トゥーレにそう言われ……赤い道の先に視線をやった。
「は?」
緋毛氈の先端に置かれた小机。そして小机の後方に立つアレク。なんでアレク……???
「早く進んで!」
「つくえのまえまでね」
「そこで待っててっ」
「はやくはやく!」
「サヤかあさまがまってる!」
子供たちに急かされて足を進めると、更に人垣の間から見知った顔が集まってきた。
マルとジェイドは見当たらないけれど、それ以外の俺の配下。
クロード夫妻やエヴェラルド、ヘイスベルト、アーシュ、ユスト、アイル、ルフス……ハインまでいつの間にやら来ている。
オブシズ夫妻にウーヴェとリタ。シザー、クララ、ヨルグ、セルマ、メイフェイア……ええ?
長椅子に足を進めた彼らはそこに腰掛ける。
「レイさん、お早く」
状況が分からず途中で足を止めた俺を、アレクが急かした。
慌てて足を進め、そこで止まって! 机の前! と、念押ししてくる子供らの声で足を止めた。
「あ、アレク……? これいったい何……? 何を?」
「すぐに分かりますよ。もう暫くお待ちください」
司教の白い礼装を纏ったアレク。白髪は晒したままだ。何故か手には革製の台紙を持っており、それがまた謎。
首を傾げるしかなかったのだが……また後方が騒めきだして、俺はそちらに視線をやった。
………………!
純白の女神が、ギルの腕に手を添えて、緋毛氈の……俺が歩いて来た道の先に、立っていた……。
顔はふんだんに刺繍を施された紗で覆われ、見えない……。
だけど見慣れた佇まいは、見間違いようがない。
全身を白一色で覆い、肩に真珠の飾りを纏い、まるで光り輝いているかのよう。
頭から腰までを覆った紗は、後方に長く続いており、引きずる先をルーシーが持ち上げついて来ている。
ゆっくりとした足取りで歩いてくる姿に釘付けだった。
いやだって……迎えにいかなきゃと思ってたのに、サヤから来るだなんて……!
あぁ、でも……。
サヤらしい……のかも。サヤは、自ら決めて、動くのだ。
近付いてくるにつれ、紗の奥のサヤがうっすらと見えてきた。
黒髪は殆ど背に垂らされている。横髪を少量だけ三つ編みにし、後方にまわしていたけれど。
ギルの腕に添えられていない手には、真っ白な花束を持っており、いつぞやのようなそれは、芍薬の花束だった。
季節外れのその花はきっと、誰かがセイバーン村の裏山から集めて来てくれたのだろう。
俺の手前まで歩いてきたサヤは、伏せていた顔をチラリと上げた。
布越しに視線が合った。そうしてすぐに逸らされる。
恥ずかしくて見てられないといった素振りがあまりに可愛く、ぐわっと気持ちが昂まった。
「大切な娘だからな。泣かせたら承知しねぇ……」
どすの利いた声でギル。顔がマジだ。
それにこくりと頷いたら、サヤがギルの腕から手を離し……。
「…………」
無言のまま、俺の横に並んだ。
ギルとルーシーはそのまま、横手の長椅子に移動。
「それでは、これより婚姻の儀を執り行います」
急なアレクの声に、慌てて視線を向けると、席に座っていた皆がザッと立ち上がった。
車椅子の父上と、それを押すガイウスが玄関横に控えており、その隣に陛下。少し下がって公爵家の方々や、警護のディート殿やリヴィ様……と、とんでもない顔に見守られて立つ。
やって来た俺をじっくりと見た父上は、ふっと笑って俺に言った。
「ちゃんと連れ帰ってくるのだぞ」
「それはもう……」
そのつもりですよ。
嫌だと言われても、なんとか説得するつもりでいます。
「……でもこれ人多すぎませんか……」
何重にもなった人垣が見える。
凄まじくざわめいているのが、ここまで聞こえて来ている。
通常は花嫁を連れて歩く道を譲ってくれるものなのだが……あえて道を塞いでくる場合もあって、今回はそうなるようだ。
まぁ、距離的に近いからな……仕方ないか。
サヤのところまで、あの人垣をかき分けて行くことになるのだろう……体力持つのか俺? と、そんな不安が胸を過ぎった。
「何を怖気付いておる?」
早速陛下に悟られて茶化される。
「早くせねば、花嫁を他に掻っ攫われるやもしれぬぞ?」
ディート殿にそう言われ、怯んでる場合じゃないなと、深く息を吐いた。
「行ってきます」
そう宣言し、足を踏み出す。門前の人垣からの歓声が、一気に膨れ上がった。
儀式の間は、誰も俺を手助けしてくれない。配下も従えていかない。俺一人が歩き、サヤの元に向かう。
とりあえず顔を伏せて分からない程度に深呼吸して、人垣に向けて顔を上げたら、門前にわさわさいた人たちは綺麗さっぱり片付いていた。
「……え?」
いや、人垣はあるのだけど……道の両脇に退き、俺とサヤが並んで通れる程度の道が開いていたのだ。
どうやら、その道を隠すための人垣であったよう。驚かさないでくれよ……。
『前時代文明文化研究所』と書かれた板が吊るされている門まで来ると、サヤのもとまで続く綺麗な道ができているのがよく見えた。
両脇に控えた人たちの間に騎士や衛兵が点在しており、その後ろに集まった住人ら。
先頭の人たちは、手に白く長い飾り紐を持っており、サヤの下まで続く道をその紐で表現してくれていた。
足を踏み出すと、またわぁっと、歓声が上がる。
そしておめでとう、お幸せにという声が四方八方から降り注いだ。
たまにひらひらと白い花弁が舞っている。
その中、足を進めた。
ドキドキと心臓が早鐘を打っている。
それと同時に、やっとサヤの花嫁衣装姿を見れるのだという期待が、胸いっぱいに膨らんでいた。
俺が通り抜けると、騎士らが背に回していた手を、胸の前に構えていく。
通り沿いの家々の窓からも、住人が沢山顔を出している。
進む中にジークや、ここの配属を希望した騎士らがおり、胸がムズムズとする。
道の途中になんだかいかつい集団がいるな……と思ったらシェルトを筆頭とした大工や石工らの姿で、ルカまで来ていたのかと驚いた。むすっとした顔ながら、視線が合うと口がおめでとう……と、動く。
主筋通りまで来て、長屋店舗の間を進む。その間も人垣は途切れない。
元々は、装飾師としてルーシーが借りていた長屋店舗の一角を、サヤの家として使わせてもらう予定だったのだけど、それでは駄目だとギルが言い、まだ借り手がついていなかった屋敷を急遽、バート商会が借り、バート商会別館としてしまった。
サヤはそこで待っている。
俺の通り過ぎた後ろがガヤガヤと賑わっている。帰りも通るのだけど……道は無事だろうかと少し不安になる。
だけど、早くサヤに会いたくて、先ずはサヤを見なくてはと、足を急がせた。
バート商会別館は、中央広場にある。
そこの手前だけは屋台を置かず、人垣も大きく開いていた。
門前に立つ一際背が高い、金髪の偉丈夫。その隣に並ぶ美女。明らか造形がおかしい。ギルとルーシーは、今日もキラキラだ。
サヤの家役ということで、家族として俺を迎えるのだ。
「よく来たな!」
「その度胸は褒めてさしあげるわ!」
「……なんで宣戦布告みたいになってるの?」
ここは通しませんよ! とばかりに、俺の前に立ち憚る二人。
雰囲気に、嫌な予感がした……。
「サヤを娶りたいなら、お前には試練を受けてもらう!」
……いや、聞いてませんって。
ぽかんと口を開いた俺に、くすくすという笑い声が横手から上がった。
見れば孤児院の子供たちだ。皆が白い短衣に制服としている乱れ格子柄の衣装。
その中心に立っていたのはトゥーレで、もう孤児院を出た身であったけれど、今日は皆とお揃いの制服姿。
「こちらへお越しください」
そう言われてギルを見ると、行け。とばかりに顎をしゃくられた……。
行けばいいんでしょ……。
サヤの花嫁姿を見るためだと自分に言い聞かせ、言葉に従う。
ここまで来ればあと少し……あの向こうで、サヤは待ってるんだ……。
さっさと済ませて、サヤに会おう。
子供らに囲まれ、トゥーレに導かれて足を進めた。
周りでキャッキャくすくすとはしゃぐ子供たちが可愛い。ルドルフの姿が見えないのは、少し残念……。
すると、長椅子が等間隔に並べられた広場の中心に連れ出された。
長椅子は全てが同じ方向……広場の中心に向いており、途中から何故か長い緋毛氈が敷かれている。
……なんだこれ?
「この道をお進みください」
トゥーレにそう言われ……赤い道の先に視線をやった。
「は?」
緋毛氈の先端に置かれた小机。そして小机の後方に立つアレク。なんでアレク……???
「早く進んで!」
「つくえのまえまでね」
「そこで待っててっ」
「はやくはやく!」
「サヤかあさまがまってる!」
子供たちに急かされて足を進めると、更に人垣の間から見知った顔が集まってきた。
マルとジェイドは見当たらないけれど、それ以外の俺の配下。
クロード夫妻やエヴェラルド、ヘイスベルト、アーシュ、ユスト、アイル、ルフス……ハインまでいつの間にやら来ている。
オブシズ夫妻にウーヴェとリタ。シザー、クララ、ヨルグ、セルマ、メイフェイア……ええ?
長椅子に足を進めた彼らはそこに腰掛ける。
「レイさん、お早く」
状況が分からず途中で足を止めた俺を、アレクが急かした。
慌てて足を進め、そこで止まって! 机の前! と、念押ししてくる子供らの声で足を止めた。
「あ、アレク……? これいったい何……? 何を?」
「すぐに分かりますよ。もう暫くお待ちください」
司教の白い礼装を纏ったアレク。白髪は晒したままだ。何故か手には革製の台紙を持っており、それがまた謎。
首を傾げるしかなかったのだが……また後方が騒めきだして、俺はそちらに視線をやった。
………………!
純白の女神が、ギルの腕に手を添えて、緋毛氈の……俺が歩いて来た道の先に、立っていた……。
顔はふんだんに刺繍を施された紗で覆われ、見えない……。
だけど見慣れた佇まいは、見間違いようがない。
全身を白一色で覆い、肩に真珠の飾りを纏い、まるで光り輝いているかのよう。
頭から腰までを覆った紗は、後方に長く続いており、引きずる先をルーシーが持ち上げついて来ている。
ゆっくりとした足取りで歩いてくる姿に釘付けだった。
いやだって……迎えにいかなきゃと思ってたのに、サヤから来るだなんて……!
あぁ、でも……。
サヤらしい……のかも。サヤは、自ら決めて、動くのだ。
近付いてくるにつれ、紗の奥のサヤがうっすらと見えてきた。
黒髪は殆ど背に垂らされている。横髪を少量だけ三つ編みにし、後方にまわしていたけれど。
ギルの腕に添えられていない手には、真っ白な花束を持っており、いつぞやのようなそれは、芍薬の花束だった。
季節外れのその花はきっと、誰かがセイバーン村の裏山から集めて来てくれたのだろう。
俺の手前まで歩いてきたサヤは、伏せていた顔をチラリと上げた。
布越しに視線が合った。そうしてすぐに逸らされる。
恥ずかしくて見てられないといった素振りがあまりに可愛く、ぐわっと気持ちが昂まった。
「大切な娘だからな。泣かせたら承知しねぇ……」
どすの利いた声でギル。顔がマジだ。
それにこくりと頷いたら、サヤがギルの腕から手を離し……。
「…………」
無言のまま、俺の横に並んだ。
ギルとルーシーはそのまま、横手の長椅子に移動。
「それでは、これより婚姻の儀を執り行います」
急なアレクの声に、慌てて視線を向けると、席に座っていた皆がザッと立ち上がった。
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