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晴天の霹靂 1
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しかし、晩餐の席の前に、陛下からの呼び出しがあった。
「急な呼び出しで申し訳ないな。
だが、ことが切迫して来た以上、先に其方らには伝えておこうと思ったのだ」
慌てて駆けつけた俺たちに告げられた、そんな言葉。
「本当は、夏の会合辺りで打診し、数年内に着手という風に思っておったのだが……これはもう決定事項として、受け入れてほしいと考えている。
セイバーン男爵家領主、レイシールよ。セイバーン拠点村に、名を付けよ。
その上で、其方の研究施設を国の機関としたい」
「………………は?」
寝耳に水。
告げられたことが理解できず、言葉が頭を滑った。
国の機関……? え、何がどうしてそう……??
サヤと二人顔を見合わせ、状況理解に苦しんでいる様子の俺たちを見て。
「拠点村については、公爵四家からも色々、報告を得ておる。
もう村と言い張れる規模ではない……。水路を引き、石畳を敷き、公爵四家の領事館まで設置され……市井向けの学院……幼年院や孤児院まで運営……この国の中で最も近代的な都市となりつつある場所を、拠点村と言い張るのは限界ぞ?
それに、もう言い訳も必要なかろう……。ここまで大々的に国の事業に関わっておるのだから」
「は、いや……えっと…………」
なんと答えて良いのやら……。
けれど俺の反応を見て陛下は、一つ深く、息を吐いた。
そして語調を変えて。
「リカルド、オリヴィエラからも報告を得た。お前が、もう薄々勘付いておるようだと……」
…………いや、それがなんでそうなるのかって話でしょう?
サヤが縋るような視線を俺に向けてくる。
何を勘付いてしまったんです⁉︎ といったところか。いや、大丈夫、気付いちゃいけない系のことじゃなかったはずなんだけどね。
「それは……他国の動きに、少々問題が出てきているという……ことについてでしょうか?」
「それだ」
「……はい。それはまぁ……ですが、それが何故そのような状況を生むのかが理解できません」
正直にそう言うと、さも困ったといった風に、陛下の眉間にしわが寄る。
陛下自身としても、あまり望む状況ではないのだと、いうように……。
そして続いた言葉に、更に首を傾げることになる。
「其方も自覚があろう? 学舎を出て直ぐの登用における弊害。
せっかくの人材を、潰していく現状……。ここが大きく、我らの政務の妨げになっておることは、常々問題となってきていた」
ただそれに対処する良い手段が無かったのだと陛下は言った。
いや、また話が飛んでますよね……。
なんで急に、学舎卒業者の登用問題になった?
疑問符だらけの俺の頭に、更に陛下の言葉が続く。成人前を未熟と見る貴族の風潮は深く根を張り、なかなか改善に至れないままであると。
「そこに其方だ。
お主自身が、十六で登用となる予定であった、逸材中の逸材だ」
「…………いや、それって……陛下のでっち上げでしょう?」
「馬鹿者。ちゃんと予定はあった」
ムッとした表情の陛下。
そこでアギー公爵様が、まぁまぁとなだめ、言葉を引き継ぐ。
「そこは本当にあった。まぁ……間に合わなかったのだがね」
「…………申し訳ございません……」
「いやいや、家の事情では仕方がなかろう。
まぁとにかく、其方は十六での登用にはならなかったうえ、学舎を卒業せずに退いた。……にも関わらず、結局十八で再度王家に召抱えられた。
まぁその、成人前という状況からの登用自体は、ままあることだ。しかし、この短期間でとんでもない規模の実績を上げ続けておるのは、フェルドナレンの歴史を紐解いても其方のみ。
交易路計画に、秘匿権無償開示品の提供。女近衛の発足にも関わっておるし、新たな燃料の開発に至るまで……細々上げていけばきりがないな。
更に今度は……速報案」
……ディート殿からか。
一応、簡単な部分は陛下にちまちまと打診していっていたのだけれど、きちんとした形を示したのは、あそこだけだ。
「実に有意義だ。そしてそれが、現在の我々に必要なものであると心得ておると……そんな動きをされては、其方を蚊帳の外にできぬと理解していただけるかな?」
そう言われ、はぁ……と、頷くしかない俺。
しかし、それでも。
何故それを俺の功績として挙げようとしているのかが、不思議だった。
そもそも、これらは純粋には、俺の手柄ではない。サヤの知識や、多くの協力者があった上でのもので、たまたま俺が、立場ゆえに責任者となっているだけだ。
俺は成人して間もない青二才。その身で、分不相応な手柄を多く得ているという自覚はしていた。
だから速報案は、交易路の共同開発者として責任者欄に名を連ねていらっしゃる、陛下の仮姿、クリスタ様からということで、アギー公爵様辺りに提案し、王家へと打診していただこうと考えていた。
幸い、ヴァイデンフェラーもアギー傘下の領地。国境から王都まで、一本の交易路が繋がっている。
公爵家からの提案であれば、すんなりと通るに違いないと、そう……。
「……速報案は、私からとする予定は無いのですが……」
「アギーからとしたところで、どうせ其方の案だと直ぐに知られる。
あのような……修繕や管理方法、その費用の捻出方法に至るまでもを組み込んだもの、交易路について細部までを把握しておらねば提案できぬわ」
このようなものを思い付けるのは其方ぐらいぞ。と、言われてしまった……。
腑に落ちないまま、先の話を待つことにした。もう聞かないと、分からないだろうし。
「まぁとにかく。成人前の身であり、しかも地方からという異例の形で、其方は功績を重ねた。
図らずとも、王都における学舎からの登用の問題を、己自身で解決してしまっておるのよ。
その上でエヴェラルドを筆頭に、優秀でありながらも王都では頭打ちになっておった学舎卒業者を召抱え、再生まで果たしている。
そのため、其方のブンカケンをな、学舎からの登用となった成人前の、研修施設としよう……となった。
実際、其方自身が地方研修の実用性を証明しているということもあり、公爵家の面々には了承を得た」
了承を、得た。ここで? 速報案について伝えたのは、昨日の夜のことだというのに?
「三家からの了承でごり押しではないぞ。四家ともが了承したのだ」
「…………ベイエルからもということですか? 特に縁は得ておりませんが……」
「ヴァーリンのリカルドとクロードを得ておいて、何を言う。
それに、ベイエル傘下からの仕官も、多く受け入れておろうが」
確かにあのお二人は、ヴァーリンとベイエルの血を持つ方だ。けれど……あくまでもヴァーリンの方。
ベイエル傘下からの仕官を受け入れているのも確かだが、他の公爵家からだって同じく受け入れている。
ビーメノヴァ様のお顔を想像してみたが、夜会でこれといって、何かあったという記憶も無い。
一家だけが反対しても無駄であるからという判断か?
しかし、何か………………。
外堀を埋めていかれているような違和感を感じたのは、この段階でだった。
何か…………そうでなくては、ならないという……? そんな前提の上で、話をされているような……。
今までの話が、あくまで前段階。これから伝えることの、下準備なのだとしたら。
…………いや、でもそうだったとして、この話を下準備にしてしまうような大事が、思い付くか?
思考を巡らせてみたものの、これという確信には至れない。
陛下の思惑は何処にある?
「公爵四家からの派遣官を置く環境も、問題無く機能している。
また、水路に囲われたあの環境の安全性もな、かなり高いと聞いている。
何より、今まで特に注目してこられなかった田舎の片隅であるというのも良いし、他国と隣接していないという立地も適している」
…………嫌な予感しか、しない。
「それらを踏まえ、ブンカケンを王家の研究機関とし、私の王政の軸に加える。
そして、成人前の登用となった官らの研修地と定める。
また、国の内政強化は、私も大いに興味のあることだ。
王家の研究機関である以上、視察も必要だろう。よって、離宮をあの地に設けることとなった。
とはいえ、研究は既に始まっておる。これからは、しばしばそちらへ伺うようになるだろう」
告げられたことに、頭が混乱を通り越した。
………………離宮⁉︎
セイバーンの……あんな田舎に⁉︎ それ、急に今、決めなければならないようなことでは、ないよな⁉︎
そう思考が至った時、ようやっと、陛下の裏の思惑に、思い至ったのだ……。
冷水を頭から浴びたように、一気に心臓が、縮み上がる。
「……懐妊と、定まったのですか?」
数年掛けてゆっくり進めていくつもりだったと言ったのに、それをここまで、急ぐ理由。
「…………そうだ」
「急な呼び出しで申し訳ないな。
だが、ことが切迫して来た以上、先に其方らには伝えておこうと思ったのだ」
慌てて駆けつけた俺たちに告げられた、そんな言葉。
「本当は、夏の会合辺りで打診し、数年内に着手という風に思っておったのだが……これはもう決定事項として、受け入れてほしいと考えている。
セイバーン男爵家領主、レイシールよ。セイバーン拠点村に、名を付けよ。
その上で、其方の研究施設を国の機関としたい」
「………………は?」
寝耳に水。
告げられたことが理解できず、言葉が頭を滑った。
国の機関……? え、何がどうしてそう……??
サヤと二人顔を見合わせ、状況理解に苦しんでいる様子の俺たちを見て。
「拠点村については、公爵四家からも色々、報告を得ておる。
もう村と言い張れる規模ではない……。水路を引き、石畳を敷き、公爵四家の領事館まで設置され……市井向けの学院……幼年院や孤児院まで運営……この国の中で最も近代的な都市となりつつある場所を、拠点村と言い張るのは限界ぞ?
それに、もう言い訳も必要なかろう……。ここまで大々的に国の事業に関わっておるのだから」
「は、いや……えっと…………」
なんと答えて良いのやら……。
けれど俺の反応を見て陛下は、一つ深く、息を吐いた。
そして語調を変えて。
「リカルド、オリヴィエラからも報告を得た。お前が、もう薄々勘付いておるようだと……」
…………いや、それがなんでそうなるのかって話でしょう?
サヤが縋るような視線を俺に向けてくる。
何を勘付いてしまったんです⁉︎ といったところか。いや、大丈夫、気付いちゃいけない系のことじゃなかったはずなんだけどね。
「それは……他国の動きに、少々問題が出てきているという……ことについてでしょうか?」
「それだ」
「……はい。それはまぁ……ですが、それが何故そのような状況を生むのかが理解できません」
正直にそう言うと、さも困ったといった風に、陛下の眉間にしわが寄る。
陛下自身としても、あまり望む状況ではないのだと、いうように……。
そして続いた言葉に、更に首を傾げることになる。
「其方も自覚があろう? 学舎を出て直ぐの登用における弊害。
せっかくの人材を、潰していく現状……。ここが大きく、我らの政務の妨げになっておることは、常々問題となってきていた」
ただそれに対処する良い手段が無かったのだと陛下は言った。
いや、また話が飛んでますよね……。
なんで急に、学舎卒業者の登用問題になった?
疑問符だらけの俺の頭に、更に陛下の言葉が続く。成人前を未熟と見る貴族の風潮は深く根を張り、なかなか改善に至れないままであると。
「そこに其方だ。
お主自身が、十六で登用となる予定であった、逸材中の逸材だ」
「…………いや、それって……陛下のでっち上げでしょう?」
「馬鹿者。ちゃんと予定はあった」
ムッとした表情の陛下。
そこでアギー公爵様が、まぁまぁとなだめ、言葉を引き継ぐ。
「そこは本当にあった。まぁ……間に合わなかったのだがね」
「…………申し訳ございません……」
「いやいや、家の事情では仕方がなかろう。
まぁとにかく、其方は十六での登用にはならなかったうえ、学舎を卒業せずに退いた。……にも関わらず、結局十八で再度王家に召抱えられた。
まぁその、成人前という状況からの登用自体は、ままあることだ。しかし、この短期間でとんでもない規模の実績を上げ続けておるのは、フェルドナレンの歴史を紐解いても其方のみ。
交易路計画に、秘匿権無償開示品の提供。女近衛の発足にも関わっておるし、新たな燃料の開発に至るまで……細々上げていけばきりがないな。
更に今度は……速報案」
……ディート殿からか。
一応、簡単な部分は陛下にちまちまと打診していっていたのだけれど、きちんとした形を示したのは、あそこだけだ。
「実に有意義だ。そしてそれが、現在の我々に必要なものであると心得ておると……そんな動きをされては、其方を蚊帳の外にできぬと理解していただけるかな?」
そう言われ、はぁ……と、頷くしかない俺。
しかし、それでも。
何故それを俺の功績として挙げようとしているのかが、不思議だった。
そもそも、これらは純粋には、俺の手柄ではない。サヤの知識や、多くの協力者があった上でのもので、たまたま俺が、立場ゆえに責任者となっているだけだ。
俺は成人して間もない青二才。その身で、分不相応な手柄を多く得ているという自覚はしていた。
だから速報案は、交易路の共同開発者として責任者欄に名を連ねていらっしゃる、陛下の仮姿、クリスタ様からということで、アギー公爵様辺りに提案し、王家へと打診していただこうと考えていた。
幸い、ヴァイデンフェラーもアギー傘下の領地。国境から王都まで、一本の交易路が繋がっている。
公爵家からの提案であれば、すんなりと通るに違いないと、そう……。
「……速報案は、私からとする予定は無いのですが……」
「アギーからとしたところで、どうせ其方の案だと直ぐに知られる。
あのような……修繕や管理方法、その費用の捻出方法に至るまでもを組み込んだもの、交易路について細部までを把握しておらねば提案できぬわ」
このようなものを思い付けるのは其方ぐらいぞ。と、言われてしまった……。
腑に落ちないまま、先の話を待つことにした。もう聞かないと、分からないだろうし。
「まぁとにかく。成人前の身であり、しかも地方からという異例の形で、其方は功績を重ねた。
図らずとも、王都における学舎からの登用の問題を、己自身で解決してしまっておるのよ。
その上でエヴェラルドを筆頭に、優秀でありながらも王都では頭打ちになっておった学舎卒業者を召抱え、再生まで果たしている。
そのため、其方のブンカケンをな、学舎からの登用となった成人前の、研修施設としよう……となった。
実際、其方自身が地方研修の実用性を証明しているということもあり、公爵家の面々には了承を得た」
了承を、得た。ここで? 速報案について伝えたのは、昨日の夜のことだというのに?
「三家からの了承でごり押しではないぞ。四家ともが了承したのだ」
「…………ベイエルからもということですか? 特に縁は得ておりませんが……」
「ヴァーリンのリカルドとクロードを得ておいて、何を言う。
それに、ベイエル傘下からの仕官も、多く受け入れておろうが」
確かにあのお二人は、ヴァーリンとベイエルの血を持つ方だ。けれど……あくまでもヴァーリンの方。
ベイエル傘下からの仕官を受け入れているのも確かだが、他の公爵家からだって同じく受け入れている。
ビーメノヴァ様のお顔を想像してみたが、夜会でこれといって、何かあったという記憶も無い。
一家だけが反対しても無駄であるからという判断か?
しかし、何か………………。
外堀を埋めていかれているような違和感を感じたのは、この段階でだった。
何か…………そうでなくては、ならないという……? そんな前提の上で、話をされているような……。
今までの話が、あくまで前段階。これから伝えることの、下準備なのだとしたら。
…………いや、でもそうだったとして、この話を下準備にしてしまうような大事が、思い付くか?
思考を巡らせてみたものの、これという確信には至れない。
陛下の思惑は何処にある?
「公爵四家からの派遣官を置く環境も、問題無く機能している。
また、水路に囲われたあの環境の安全性もな、かなり高いと聞いている。
何より、今まで特に注目してこられなかった田舎の片隅であるというのも良いし、他国と隣接していないという立地も適している」
…………嫌な予感しか、しない。
「それらを踏まえ、ブンカケンを王家の研究機関とし、私の王政の軸に加える。
そして、成人前の登用となった官らの研修地と定める。
また、国の内政強化は、私も大いに興味のあることだ。
王家の研究機関である以上、視察も必要だろう。よって、離宮をあの地に設けることとなった。
とはいえ、研究は既に始まっておる。これからは、しばしばそちらへ伺うようになるだろう」
告げられたことに、頭が混乱を通り越した。
………………離宮⁉︎
セイバーンの……あんな田舎に⁉︎ それ、急に今、決めなければならないようなことでは、ないよな⁉︎
そう思考が至った時、ようやっと、陛下の裏の思惑に、思い至ったのだ……。
冷水を頭から浴びたように、一気に心臓が、縮み上がる。
「……懐妊と、定まったのですか?」
数年掛けてゆっくり進めていくつもりだったと言ったのに、それをここまで、急ぐ理由。
「…………そうだ」
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