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流民と孤児 1
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アイルの仕事は迅速かつ的確であったようで……。
「思っていた以上だなこれは……」
「でもそれだけ状況が切迫していたってことですよね」
「長屋一棟で捌き切れるものですかねぇ、これは……」
薄汚れた衣服を纏い、垢染み痩せ細って、瞳だけ爛々とした婦女子ら……。ざっと数えて五十人を超えていた。
アギーの外壁に張り付いていた、流民の中から集められた、母子の一団だ。
少し離れた場所にいても、汗のすえた臭いが結構きつい……。とはいえ、アギーからここまではちゃんと食事を与えられていたので、顔色は悪くない。
ただ、こちらを警戒しているのか、皆強張った表情で視線を彷徨わせている。
まぁね。女子供だけを集めるって、正直かなり怪しかろう。
娼館や隣国に売り払われるのじゃないかと、警戒している様子も見受けられる。
それでも募集に応じた彼女らは、それだけ生活に困窮していたのだろう。
一応こちらも、隣接したセイバーン男爵家とアギー公爵家の共同事業、交易路計画の一環としての雇用確保だと告知していたけれど、困難な生活を強いられていた彼らに、それが理解できるだけの教養が備わっていることは期待していなかった。
それでも布告を行ったのは、アギー領内での活動なので、あちらに不信を抱かれないよう、分かりやすくしたというのが第一の理由だ。今後、第二、第三の募集の時、これが伝わっていれば、多少はやりやすくなるだろうと、期待している。
まあ、そこはもう良いとして、とりあえずは本題。
ここに集まった彼女らの処遇だ。
俺たちは、まずはじめに何から始めるかを今一度、確認し直すことにした。
「古着の確保はできていますけど、衣服を一人三組配給は難しいでしょうね……二組ずつでまずは……」
「ひと家族一部屋とはいきませんね。とりあえずは共同生活ですし、人数少ない家庭は二組で組んで入っていただきましょうか。
家族をバラすまではしませんけれど、これからも増えることを考えると、あまり余裕はありません」
「湯屋、水もだいぶん汚れるだろうし……これは一旦川とかで体を流した方が良いのか?」
「それよりは、まず湯に浸かって身体をふやかしてから、垢を落とす方が効率的だと思います。水の汚れはこの際二の次にして、まずは身綺麗にすることを優先しましょう」
これだけ不衛生な状態では、健康状態の維持も危うい。
と、いうわけで、まずは予定通り、皆を湯屋に連れて行くこととなった。
本来、男湯と女湯に分かれている湯屋であるけれど、現在集めた流民は母子が主。一番大きな男児でもまだ十二歳と若かったため、もう男女を分けずに湯を使ってもらうことにした。
街に潜伏した吠狼の女たちや、館の女中らにも応援を頼み、まずは彼らを身綺麗にする。
本来は掛け湯をしてから湯に浸かるなど、手順をきっちり教えるのだけど、今回はそれも省く。掛け湯程度で落ちる汚れではなさそうだからな。
「申し訳ないが、今着ている衣服は皆処分させてもらう。そのかわりに、新しい衣服を一人につき二着配給するからね」
「まずは全部脱いで、衣服は全てこの箱に放り込んで!」
「お母さんは子供をちゃんと洗ってあげて。手拭いは一人一枚だけよ!」
なんとか全員を一度に湯屋へと入れることができた様子。貴重品がある者は小袋に入れて首から下げてもらい、元の衣服は焼却処分する。正直洗ってどうにかできる汚れではなさそうだし、蚤や虱もかなりの量紛れているだろうからだ。
全員を湯屋に押し込み、手伝いの女性らの指導のもと、体や髪を洗ってもらうことに専念した。
正直湯温は生温いと思うくらいに低かったのだが、ずっと水を供給し続け、焼け石を放り込み続けなければならないほどに、水を大量に必要としたので仕方がない。
だけど、思っていた以上に混乱しなかった。
それは、身綺麗にできることを皆が喜んでいたことと、水ではなく、温くとも湯で身体を洗える気持ち良さだろう。
身を清め終えたら、女中らに一度確認してもらい、充分綺麗になったと判断された者から脱衣所へ。
そこでまずは下着と夜着を渡される。それを各自、身に付けさせた。
何故夜着かって?
「はーい! 次はこちらですよー!」
皆が身を清めている間に、湯屋の外には敷布が広げられ、すぐ裏手の倉庫まで、裸足のまま向かえるように、準備を済ませてあった。
倉庫の中には、バート商会や、他の衣類店からの有志が、ざっくりと寸法分けされた衣服の山を前に、待っている。
「まずはここで身長を測ります! 測った人は身長を記してもらった紙と、こちらの袋を持って、あそこの受付に向かってね」
受付で紙を確認してもらい、そこから身長・性別別に行き先を指示され、そちらに向かうのだ。
向かった先で、衣服を貰い、袋に入れる。
上着は一枚。下着類ひと組。そして短衣・腰帯・袴もしくは細袴は、各二枚。これは事前に用意され、一式が纏められているので、それを順繰りに手渡すだけである。
受け取った者は倉庫の端に呼ばれ、そこでユスト・ナジェスタによる簡単な健康診断。それが終われば、貰った衣服の中から衣類を身に付け、夜着は袋の中へ。そして出口へと向かえば、並べられたつっかけがあるので、足に合うものを一つ選び、履いて外に出れば、ここで一旦準備完了だ。
「驚くほどに上手く機能した……。流石、効率化民族……」
「ほんと、なんなんです? 日常的に経験してたりするんですか、こういうこと……」
倉庫を出た者たちは、身綺麗にしてから衣服を纏うまでの流れに圧倒され、皆が惚けている。
現在中央広場に集まってもらい、並べられた木箱に座って、全員の準備が終了するのを待っている状態なのだけど、静かなものだ。
いや……正直俺たちも圧倒されているのだけどね。
サヤ考案の、効率的に皆を綺麗にして物品を配布し、健康状態も確認する……という作戦が、異様なほど効果を発揮したから。
なんかもう、こういうこと考えさせると、彼女はホント強いな……。
「説明すらほぼ必要ありませんでしたね……」
「何かが欠けているといった心配も無さそうです」
「予定していたより早めに終わるねこれは……」
うん……効率化民族、恐るべし。
そんなわけで、健康状態が危ぶまれると診断された二名は治療院へと搬送され、そちらでもう一度診察を受けることとなったが、それ以外の者は皆広場に集まった。
想定していたより一時間ほど早く終わったので、あとで行う予定だった俺からの説明を、ここで挟むことにする。
「皆、それぞれ手元に必要なものは得ているだろうか? その袋の中のものは、全て君たちに配給された私物だ。
これからの生活で利用してもらうことになる。まぁ少ないと思うのだけど、ここで職を得れば、給金を得られる。それでまた買い足していけるから、あまり心配しないで」
まずはそう声を掛けたけれど、正直ここに集められた者らは私物をほぼ持っていなかった。衣服の予備すらだ。
だから、袋の中にあるものが自分の衣服だというだけで、びっくりしてしまっている。
「これからのことを説明するから、よく聞いてほしい。
私は、フェルドナレン王家より、国内の生活水準の向上を職務として賜っている、地方行政官だ。
……これでは分かりにくいか。つまりね、皆がちゃんと職に就き、定住して生活していけるように、応援する仕事を授かっている。
名は、レイシール・ハツェン・セイバーンと言うが、気軽にレイと呼んでくれれば良いから」
配下の一同がなんとも形容しがたい表情になるけれど、ここは大切だと、俺は思っていた。
俺は応援するだけで、自らの生活は皆が自分で、作り上げていかなければならない。だから、俺が命令して、それを行うというだけでは駄目なんだ。
それで、貴族然と振る舞うことをとりあえずは封印し、極力皆と同じ目線でいることを優先することにした。
「ここでこれから君達は生活していく。自分と子供らを、自らの手で養っていかなければならない。
だけどそれは、闇雲に頑張ってどうにかなるものじゃない……だろう?」
そう問いかけると、流石母親というか……養う側である者らは皆、はっと表情を引き締めた。
身を売ってでも、子を養わなければならないのだ……。実際そうして生活していた者もいたろうと思う。
だけど、ここでそんな手段は、取らせない。
「だから、ここでは皆に、職を得てもらう。
働ける者は、まずは技術を身につけることに専念してほしい。
幼子がいる者も安心してくれ。幼子がいても、仕事ができる環境を用意する。
ただし、君たちがここで生活するのは、期間限定だ。
申し訳ないが、外でも生活していけるだけの技能を身に付けたとなれば、ここを出てもらうことになる。
だけどその時には、ちゃんと新たな土地で、新たな生活を作れるだけの、資金と技術が、身に付いているよ」
不安を感じさせないよう、極力優しく、言葉を選んだ。
だけどここを出てもらうと先に伝えたのは、ちゃんと先の目標を持ってもらいたいから。
どうなりたいかをきちんと考え、自立することを目標にしてもらうためだ。
「男手の無い君たちは、大変だろうと思う。だけど、ここの皆が同じ境遇だ。助け合って、頑張ってもらえたらと思う。皆で、明日を明るくしていこう」
そう締めくくると、吠狼から雇った女性陣らが、俺の後を引き継いだ。
「では、これから女長屋へ移動します。ここで皆さんは共同生活を行います!」
「生活する上で必要最低限のものは支給されますが、それ以上は働いた給金で購入してもらうことになります!」
「はじめの二週間は、食事も支給されますが、その期間にどの職に就くか、色々を見てもらい、決めてもらうことになります!」
「生活が整うまで、それらは我々が補佐しますから、質問等があれば、この制服を着た者に、気兼ねなく確認してください!」
女性を中心に雇っているのは、保護した者らが夫を持たない女性と子供ばかりだからだ。便宜上、女性自立支援職員と呼ぶことにしている。
職員は、皆揃いの制服を着用している。真っ青な上着と袴だ。服装を見ただけで、携わる職務が分かるようにとあつらえられた。
女性の比率が高い空間になるから、男性では威圧感を与えるだろうという意見の元採用された彼女らは、女長屋を置く区画の管理人として、住み込みで働く。
当然、男性の姿もあるのだが、彼らは、家から通ってもらう。
そんな感じで一通りの説明が済んでから、女長屋への移動が始まった。
これから全て手探りで進んでいくことになるのだけど……上手く、皆が幸せになれる道を、見つけてくれることを願っている。
◆
さて。母親がいる者らは概ね問題無くことが進んだのだが……。
「こっちだよなぁ……」
問題は。
「思っていた以上だなこれは……」
「でもそれだけ状況が切迫していたってことですよね」
「長屋一棟で捌き切れるものですかねぇ、これは……」
薄汚れた衣服を纏い、垢染み痩せ細って、瞳だけ爛々とした婦女子ら……。ざっと数えて五十人を超えていた。
アギーの外壁に張り付いていた、流民の中から集められた、母子の一団だ。
少し離れた場所にいても、汗のすえた臭いが結構きつい……。とはいえ、アギーからここまではちゃんと食事を与えられていたので、顔色は悪くない。
ただ、こちらを警戒しているのか、皆強張った表情で視線を彷徨わせている。
まぁね。女子供だけを集めるって、正直かなり怪しかろう。
娼館や隣国に売り払われるのじゃないかと、警戒している様子も見受けられる。
それでも募集に応じた彼女らは、それだけ生活に困窮していたのだろう。
一応こちらも、隣接したセイバーン男爵家とアギー公爵家の共同事業、交易路計画の一環としての雇用確保だと告知していたけれど、困難な生活を強いられていた彼らに、それが理解できるだけの教養が備わっていることは期待していなかった。
それでも布告を行ったのは、アギー領内での活動なので、あちらに不信を抱かれないよう、分かりやすくしたというのが第一の理由だ。今後、第二、第三の募集の時、これが伝わっていれば、多少はやりやすくなるだろうと、期待している。
まあ、そこはもう良いとして、とりあえずは本題。
ここに集まった彼女らの処遇だ。
俺たちは、まずはじめに何から始めるかを今一度、確認し直すことにした。
「古着の確保はできていますけど、衣服を一人三組配給は難しいでしょうね……二組ずつでまずは……」
「ひと家族一部屋とはいきませんね。とりあえずは共同生活ですし、人数少ない家庭は二組で組んで入っていただきましょうか。
家族をバラすまではしませんけれど、これからも増えることを考えると、あまり余裕はありません」
「湯屋、水もだいぶん汚れるだろうし……これは一旦川とかで体を流した方が良いのか?」
「それよりは、まず湯に浸かって身体をふやかしてから、垢を落とす方が効率的だと思います。水の汚れはこの際二の次にして、まずは身綺麗にすることを優先しましょう」
これだけ不衛生な状態では、健康状態の維持も危うい。
と、いうわけで、まずは予定通り、皆を湯屋に連れて行くこととなった。
本来、男湯と女湯に分かれている湯屋であるけれど、現在集めた流民は母子が主。一番大きな男児でもまだ十二歳と若かったため、もう男女を分けずに湯を使ってもらうことにした。
街に潜伏した吠狼の女たちや、館の女中らにも応援を頼み、まずは彼らを身綺麗にする。
本来は掛け湯をしてから湯に浸かるなど、手順をきっちり教えるのだけど、今回はそれも省く。掛け湯程度で落ちる汚れではなさそうだからな。
「申し訳ないが、今着ている衣服は皆処分させてもらう。そのかわりに、新しい衣服を一人につき二着配給するからね」
「まずは全部脱いで、衣服は全てこの箱に放り込んで!」
「お母さんは子供をちゃんと洗ってあげて。手拭いは一人一枚だけよ!」
なんとか全員を一度に湯屋へと入れることができた様子。貴重品がある者は小袋に入れて首から下げてもらい、元の衣服は焼却処分する。正直洗ってどうにかできる汚れではなさそうだし、蚤や虱もかなりの量紛れているだろうからだ。
全員を湯屋に押し込み、手伝いの女性らの指導のもと、体や髪を洗ってもらうことに専念した。
正直湯温は生温いと思うくらいに低かったのだが、ずっと水を供給し続け、焼け石を放り込み続けなければならないほどに、水を大量に必要としたので仕方がない。
だけど、思っていた以上に混乱しなかった。
それは、身綺麗にできることを皆が喜んでいたことと、水ではなく、温くとも湯で身体を洗える気持ち良さだろう。
身を清め終えたら、女中らに一度確認してもらい、充分綺麗になったと判断された者から脱衣所へ。
そこでまずは下着と夜着を渡される。それを各自、身に付けさせた。
何故夜着かって?
「はーい! 次はこちらですよー!」
皆が身を清めている間に、湯屋の外には敷布が広げられ、すぐ裏手の倉庫まで、裸足のまま向かえるように、準備を済ませてあった。
倉庫の中には、バート商会や、他の衣類店からの有志が、ざっくりと寸法分けされた衣服の山を前に、待っている。
「まずはここで身長を測ります! 測った人は身長を記してもらった紙と、こちらの袋を持って、あそこの受付に向かってね」
受付で紙を確認してもらい、そこから身長・性別別に行き先を指示され、そちらに向かうのだ。
向かった先で、衣服を貰い、袋に入れる。
上着は一枚。下着類ひと組。そして短衣・腰帯・袴もしくは細袴は、各二枚。これは事前に用意され、一式が纏められているので、それを順繰りに手渡すだけである。
受け取った者は倉庫の端に呼ばれ、そこでユスト・ナジェスタによる簡単な健康診断。それが終われば、貰った衣服の中から衣類を身に付け、夜着は袋の中へ。そして出口へと向かえば、並べられたつっかけがあるので、足に合うものを一つ選び、履いて外に出れば、ここで一旦準備完了だ。
「驚くほどに上手く機能した……。流石、効率化民族……」
「ほんと、なんなんです? 日常的に経験してたりするんですか、こういうこと……」
倉庫を出た者たちは、身綺麗にしてから衣服を纏うまでの流れに圧倒され、皆が惚けている。
現在中央広場に集まってもらい、並べられた木箱に座って、全員の準備が終了するのを待っている状態なのだけど、静かなものだ。
いや……正直俺たちも圧倒されているのだけどね。
サヤ考案の、効率的に皆を綺麗にして物品を配布し、健康状態も確認する……という作戦が、異様なほど効果を発揮したから。
なんかもう、こういうこと考えさせると、彼女はホント強いな……。
「説明すらほぼ必要ありませんでしたね……」
「何かが欠けているといった心配も無さそうです」
「予定していたより早めに終わるねこれは……」
うん……効率化民族、恐るべし。
そんなわけで、健康状態が危ぶまれると診断された二名は治療院へと搬送され、そちらでもう一度診察を受けることとなったが、それ以外の者は皆広場に集まった。
想定していたより一時間ほど早く終わったので、あとで行う予定だった俺からの説明を、ここで挟むことにする。
「皆、それぞれ手元に必要なものは得ているだろうか? その袋の中のものは、全て君たちに配給された私物だ。
これからの生活で利用してもらうことになる。まぁ少ないと思うのだけど、ここで職を得れば、給金を得られる。それでまた買い足していけるから、あまり心配しないで」
まずはそう声を掛けたけれど、正直ここに集められた者らは私物をほぼ持っていなかった。衣服の予備すらだ。
だから、袋の中にあるものが自分の衣服だというだけで、びっくりしてしまっている。
「これからのことを説明するから、よく聞いてほしい。
私は、フェルドナレン王家より、国内の生活水準の向上を職務として賜っている、地方行政官だ。
……これでは分かりにくいか。つまりね、皆がちゃんと職に就き、定住して生活していけるように、応援する仕事を授かっている。
名は、レイシール・ハツェン・セイバーンと言うが、気軽にレイと呼んでくれれば良いから」
配下の一同がなんとも形容しがたい表情になるけれど、ここは大切だと、俺は思っていた。
俺は応援するだけで、自らの生活は皆が自分で、作り上げていかなければならない。だから、俺が命令して、それを行うというだけでは駄目なんだ。
それで、貴族然と振る舞うことをとりあえずは封印し、極力皆と同じ目線でいることを優先することにした。
「ここでこれから君達は生活していく。自分と子供らを、自らの手で養っていかなければならない。
だけどそれは、闇雲に頑張ってどうにかなるものじゃない……だろう?」
そう問いかけると、流石母親というか……養う側である者らは皆、はっと表情を引き締めた。
身を売ってでも、子を養わなければならないのだ……。実際そうして生活していた者もいたろうと思う。
だけど、ここでそんな手段は、取らせない。
「だから、ここでは皆に、職を得てもらう。
働ける者は、まずは技術を身につけることに専念してほしい。
幼子がいる者も安心してくれ。幼子がいても、仕事ができる環境を用意する。
ただし、君たちがここで生活するのは、期間限定だ。
申し訳ないが、外でも生活していけるだけの技能を身に付けたとなれば、ここを出てもらうことになる。
だけどその時には、ちゃんと新たな土地で、新たな生活を作れるだけの、資金と技術が、身に付いているよ」
不安を感じさせないよう、極力優しく、言葉を選んだ。
だけどここを出てもらうと先に伝えたのは、ちゃんと先の目標を持ってもらいたいから。
どうなりたいかをきちんと考え、自立することを目標にしてもらうためだ。
「男手の無い君たちは、大変だろうと思う。だけど、ここの皆が同じ境遇だ。助け合って、頑張ってもらえたらと思う。皆で、明日を明るくしていこう」
そう締めくくると、吠狼から雇った女性陣らが、俺の後を引き継いだ。
「では、これから女長屋へ移動します。ここで皆さんは共同生活を行います!」
「生活する上で必要最低限のものは支給されますが、それ以上は働いた給金で購入してもらうことになります!」
「はじめの二週間は、食事も支給されますが、その期間にどの職に就くか、色々を見てもらい、決めてもらうことになります!」
「生活が整うまで、それらは我々が補佐しますから、質問等があれば、この制服を着た者に、気兼ねなく確認してください!」
女性を中心に雇っているのは、保護した者らが夫を持たない女性と子供ばかりだからだ。便宜上、女性自立支援職員と呼ぶことにしている。
職員は、皆揃いの制服を着用している。真っ青な上着と袴だ。服装を見ただけで、携わる職務が分かるようにとあつらえられた。
女性の比率が高い空間になるから、男性では威圧感を与えるだろうという意見の元採用された彼女らは、女長屋を置く区画の管理人として、住み込みで働く。
当然、男性の姿もあるのだが、彼らは、家から通ってもらう。
そんな感じで一通りの説明が済んでから、女長屋への移動が始まった。
これから全て手探りで進んでいくことになるのだけど……上手く、皆が幸せになれる道を、見つけてくれることを願っている。
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さて。母親がいる者らは概ね問題無くことが進んだのだが……。
「こっちだよなぁ……」
問題は。
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