614 / 1,121
式典 11
しおりを挟む
「そうか。まぁ無理強いはせぬがね」
そう言いつつ、近くの長椅子に足を進める。
「其方はもう一通りの挨拶は済ませているし、義理は欠いていない。
だから残りの時間をどう過ごすかは自由だよ。
でもまぁ……どうせなら隣にどうかね? 私も義理は果たしたので、交流ごとはもう休憩にして、ゆっくりしたい。
歳だからね。ずっと立っておくのも、ずっと喋っておくのも、結構体力を使うんだよ」
そう言いつつ、通りかかった使用人を呼び止め、飲み物ふたつと、つまみを注文する。
ふたつ……つまり、俺が断りにくいよう、仕向けているわけですか。
気の弱い人間なら、そうされて、その場を離れる勇気など、持ち合わせていないだろう。
だから俺も、少し悩むふりをしてから、おずおずとそちらに向かった。するとエルピディオ殿は、隣りの一人掛けの椅子を指で示す。
「其方の土嚢壁、あれには正直度肝を抜かれたよ」
「あっ、オゼロ公爵家からも、支持と支援金を賜っていました! その節は、本当に有難く!」
「いやいや、当然のことをしたまでだよ。
実際、公爵四家のうち、三家までもが支持と支援金を出しているだろう?
それはあの土嚢壁に、それだけの価値があると、皆に判断されたからだ。
あんなものをどうやって見出したのか、聞いても良いかね?」
「いや、見出したとか、そんな大層なものではなく……。
……学舎で、長年主席をいただいていた、平民の知人がいるのです。
彼が、あの方法を私に提案してきたものですから……彼ほどの頭脳の持ち主が、言うならばと……。
ただ、そのために必要な力を、私は持ち合わせていなかったため、やはり知人の助言により、あの手段をとったというだけなんです」
そう言うと、エルピディオ様はふむ。と、俺を見る。
「平民の言うことを、そのまま間に受けたと?」
「平民であっても、在学中常に座学主席であった男です。
一度の主席も取れなかった俺などより、よほど秀でた頭脳を持っているのです」
「けれど平民だろう?」
「私も…………庶子ですから。私だって半分は、平民です…………」
貴族の中に紛れ込んでしまった異物は自分なのだと、そう思っている風を、演じる。
それと同時に、極力エルピディオ様の挙動を観察した。
不安で仕方がないように見えるよう、視線をひとところに落ち着かせぬよう、気を付けて。けれど、見逃さぬよう、広を見る目を意識する。
「いやすまん。別に責めてるわけではないんだよ。
我々貴族にとって庶民の声というのは、耳に届きにくいものと言われている。
なのに其方は、それを苦にせぬのだなと、感心した。ただそれだけのことなんだ」
そう言ったエルピディオ様は、使用人に向かいこちらだと手を挙げた。
先程注文していた品が届いたのだ。
つまみは春の果物と乾酪。飲み物は葡萄酒で……あ、しまった。と、思ったが、もう遅い。そこまで意識してなかった。
「どうかしたかね?」
「あっ、いえ……な、なんでもございません……」
酒は駄目なんですよ。と、口にできる性格を演じていない……。
ここは極力話して誤魔化すしかないなと腹を括る。
俺のそんな内心の苦悩を知らぬエルピディオ様は、酒を硝子の器に注ぎ、一つを俺に差し出してきた。
これも本来は、公爵様が自らするようなことではないから、俺に否やを言わせぬためなのだろう。
小声で礼を述べ、恐る恐る受け取るしかない俺……。いや、ここはもう本心からで、演技ではない。
酒は……飲めないわけじゃないけど……ほんと弱いのだ……。
「君の着眼点は、間違っていないんだよ。
貴族の我々は、フェルドナレンの人口のうち、二分にも満たない人数だ。
そんな我々が、この広大なフェルドナレンを余さず見通せると思うかな?
というか、フェルドナレンの中だけ見ていて良いはずがない。大地は外にも繋がっている。スヴェトランにも、ジェンティーローニにも、シエルストレームスにも樹海にも。
このフェルドナレンを取り巻くものにも目を向けておかなければならない」
なにやら熱く語り出したぞと思いながら、おっしゃる通りですね。と、合いの手を入れておくことは忘れない。
なにも俺が喋らずとも喋ってくれるなら、それでも時間は潰れる。情報も得られる。むしろ喋っておいてほしい。
「正直、それを我々貴族のみで完璧に行おうなんて、無理な話なんだよ。
だってそうだろう? 私はオゼロの領主だが、その領内のことにだって、全て目を通すなんて無理なんだ。見落としなんていくらでも出てくる」
「そうですね。……本当にそうです」
言っていることは至極まともだよなと思った。
というか、むしろ肯定できる。全くその通りだ。
「だからこそ、民の声を聞く必要があるのだよ。
我々の目の届かない場所を見てくれた声だ。我々の手が届いていないところを教えてくれた声だ。
なのに我々貴族には、その声が届いていないことが往々にしてある。耳を素通りさせてしまっている。
私は常々、それを嘆かわしく思っている。私のこの考えが、理解されないことが歯痒くてならない」
……ほんと、至極まともだな……。
あれ? 姫様の言うオゼロはこの方ではなく、やはり血筋を指すのだろうか?
そんな風に考えてしまいそうになるくらい、オゼロ公爵様の言葉は、俺の耳に馴染んだ。
「で、あるから、民の声に耳を貸せるレイシール殿は、得難き逸材だという、陛下のお言葉には私も賛成なんだ。
けれど……それを理解できない貴族は、本当に多いのだよ。
だから私は、君が早々に折れてしまわないか、潰されてしまわないか、それが心配でならない……。
久しぶりに価値観の合いそうな若者に巡り会えたのに、そうなってもらっては困るんだよ」
耳に心地よい言葉だったけれど……。
全てを仕掛けているのがオゼロ公爵様でなければ、その言葉の重みはずっと違ったと思うんですけどね……。
「私は……ご覧の通りの者ですよ……。
たまたま学舎でクリスタ様との縁を賜っており、それがどういうわけか、土嚢壁を陛下の御耳に入れるような、とんでもない幸運に結び付いたというだけです。
逸材でもなんでもなく……本当に、ただの幸運で……」
苦笑しつつそう返す。
手の中の酒を揺らしつつそう言うと、エルピディオ様の瞳が瞬間鋭くなったのが、視界の端に映った。
「たまたまなものか。
たまたまであったのだとしたら、其方は金の卵を招く稀有な才能の持ち主なのだろう。
でなければ、ほんの一年足らずで、何故あんなに沢山の秘匿権を得られる?」
秘匿権?
あんなに沢山?
その言葉に瞳を見開いて、エルピディオ様を見た。
秘匿権は、確かに沢山得た。けれど……どこの誰が、どんな秘匿権をどれだけ申請したか。それを何故貴方は調べている?
「其方を心配してしまう理由は、そこにもあるのだよ。
あれだけの秘匿権を有しておきながら、其方はそれの価値ある使い方を理解しておらぬ様子だ。
……無理もなかろう。貴族としての振る舞いを、其方に教える者が、今までいなかったようだからね……」
エルピディオ様の声に、粘り気が増したと感じた。
瞳の奥底に、影がチラつく。
成る程。陛下がおっしゃっていた無駄口を叩くなは、これか。
「成人前の身である上に、父君はご病気が、まだ思わしくない様子だ。
今まで環境に恵まれてこなかったことも、其方にはどうにもできぬことであったと、私は考えている。
しかし、これからは役職を賜り、貴族の手本とならねばならん。知らなかったでは、済まさせないことが沢山出てくる。
レイシール殿、私は其方が心配だ。どうか気を悪くせずに聞いて欲しいのだがね。
其方……私の元で、貴族社会の渡り方を、学ぶ気はないかな?」
そう言いつつ、近くの長椅子に足を進める。
「其方はもう一通りの挨拶は済ませているし、義理は欠いていない。
だから残りの時間をどう過ごすかは自由だよ。
でもまぁ……どうせなら隣にどうかね? 私も義理は果たしたので、交流ごとはもう休憩にして、ゆっくりしたい。
歳だからね。ずっと立っておくのも、ずっと喋っておくのも、結構体力を使うんだよ」
そう言いつつ、通りかかった使用人を呼び止め、飲み物ふたつと、つまみを注文する。
ふたつ……つまり、俺が断りにくいよう、仕向けているわけですか。
気の弱い人間なら、そうされて、その場を離れる勇気など、持ち合わせていないだろう。
だから俺も、少し悩むふりをしてから、おずおずとそちらに向かった。するとエルピディオ殿は、隣りの一人掛けの椅子を指で示す。
「其方の土嚢壁、あれには正直度肝を抜かれたよ」
「あっ、オゼロ公爵家からも、支持と支援金を賜っていました! その節は、本当に有難く!」
「いやいや、当然のことをしたまでだよ。
実際、公爵四家のうち、三家までもが支持と支援金を出しているだろう?
それはあの土嚢壁に、それだけの価値があると、皆に判断されたからだ。
あんなものをどうやって見出したのか、聞いても良いかね?」
「いや、見出したとか、そんな大層なものではなく……。
……学舎で、長年主席をいただいていた、平民の知人がいるのです。
彼が、あの方法を私に提案してきたものですから……彼ほどの頭脳の持ち主が、言うならばと……。
ただ、そのために必要な力を、私は持ち合わせていなかったため、やはり知人の助言により、あの手段をとったというだけなんです」
そう言うと、エルピディオ様はふむ。と、俺を見る。
「平民の言うことを、そのまま間に受けたと?」
「平民であっても、在学中常に座学主席であった男です。
一度の主席も取れなかった俺などより、よほど秀でた頭脳を持っているのです」
「けれど平民だろう?」
「私も…………庶子ですから。私だって半分は、平民です…………」
貴族の中に紛れ込んでしまった異物は自分なのだと、そう思っている風を、演じる。
それと同時に、極力エルピディオ様の挙動を観察した。
不安で仕方がないように見えるよう、視線をひとところに落ち着かせぬよう、気を付けて。けれど、見逃さぬよう、広を見る目を意識する。
「いやすまん。別に責めてるわけではないんだよ。
我々貴族にとって庶民の声というのは、耳に届きにくいものと言われている。
なのに其方は、それを苦にせぬのだなと、感心した。ただそれだけのことなんだ」
そう言ったエルピディオ様は、使用人に向かいこちらだと手を挙げた。
先程注文していた品が届いたのだ。
つまみは春の果物と乾酪。飲み物は葡萄酒で……あ、しまった。と、思ったが、もう遅い。そこまで意識してなかった。
「どうかしたかね?」
「あっ、いえ……な、なんでもございません……」
酒は駄目なんですよ。と、口にできる性格を演じていない……。
ここは極力話して誤魔化すしかないなと腹を括る。
俺のそんな内心の苦悩を知らぬエルピディオ様は、酒を硝子の器に注ぎ、一つを俺に差し出してきた。
これも本来は、公爵様が自らするようなことではないから、俺に否やを言わせぬためなのだろう。
小声で礼を述べ、恐る恐る受け取るしかない俺……。いや、ここはもう本心からで、演技ではない。
酒は……飲めないわけじゃないけど……ほんと弱いのだ……。
「君の着眼点は、間違っていないんだよ。
貴族の我々は、フェルドナレンの人口のうち、二分にも満たない人数だ。
そんな我々が、この広大なフェルドナレンを余さず見通せると思うかな?
というか、フェルドナレンの中だけ見ていて良いはずがない。大地は外にも繋がっている。スヴェトランにも、ジェンティーローニにも、シエルストレームスにも樹海にも。
このフェルドナレンを取り巻くものにも目を向けておかなければならない」
なにやら熱く語り出したぞと思いながら、おっしゃる通りですね。と、合いの手を入れておくことは忘れない。
なにも俺が喋らずとも喋ってくれるなら、それでも時間は潰れる。情報も得られる。むしろ喋っておいてほしい。
「正直、それを我々貴族のみで完璧に行おうなんて、無理な話なんだよ。
だってそうだろう? 私はオゼロの領主だが、その領内のことにだって、全て目を通すなんて無理なんだ。見落としなんていくらでも出てくる」
「そうですね。……本当にそうです」
言っていることは至極まともだよなと思った。
というか、むしろ肯定できる。全くその通りだ。
「だからこそ、民の声を聞く必要があるのだよ。
我々の目の届かない場所を見てくれた声だ。我々の手が届いていないところを教えてくれた声だ。
なのに我々貴族には、その声が届いていないことが往々にしてある。耳を素通りさせてしまっている。
私は常々、それを嘆かわしく思っている。私のこの考えが、理解されないことが歯痒くてならない」
……ほんと、至極まともだな……。
あれ? 姫様の言うオゼロはこの方ではなく、やはり血筋を指すのだろうか?
そんな風に考えてしまいそうになるくらい、オゼロ公爵様の言葉は、俺の耳に馴染んだ。
「で、あるから、民の声に耳を貸せるレイシール殿は、得難き逸材だという、陛下のお言葉には私も賛成なんだ。
けれど……それを理解できない貴族は、本当に多いのだよ。
だから私は、君が早々に折れてしまわないか、潰されてしまわないか、それが心配でならない……。
久しぶりに価値観の合いそうな若者に巡り会えたのに、そうなってもらっては困るんだよ」
耳に心地よい言葉だったけれど……。
全てを仕掛けているのがオゼロ公爵様でなければ、その言葉の重みはずっと違ったと思うんですけどね……。
「私は……ご覧の通りの者ですよ……。
たまたま学舎でクリスタ様との縁を賜っており、それがどういうわけか、土嚢壁を陛下の御耳に入れるような、とんでもない幸運に結び付いたというだけです。
逸材でもなんでもなく……本当に、ただの幸運で……」
苦笑しつつそう返す。
手の中の酒を揺らしつつそう言うと、エルピディオ様の瞳が瞬間鋭くなったのが、視界の端に映った。
「たまたまなものか。
たまたまであったのだとしたら、其方は金の卵を招く稀有な才能の持ち主なのだろう。
でなければ、ほんの一年足らずで、何故あんなに沢山の秘匿権を得られる?」
秘匿権?
あんなに沢山?
その言葉に瞳を見開いて、エルピディオ様を見た。
秘匿権は、確かに沢山得た。けれど……どこの誰が、どんな秘匿権をどれだけ申請したか。それを何故貴方は調べている?
「其方を心配してしまう理由は、そこにもあるのだよ。
あれだけの秘匿権を有しておきながら、其方はそれの価値ある使い方を理解しておらぬ様子だ。
……無理もなかろう。貴族としての振る舞いを、其方に教える者が、今までいなかったようだからね……」
エルピディオ様の声に、粘り気が増したと感じた。
瞳の奥底に、影がチラつく。
成る程。陛下がおっしゃっていた無駄口を叩くなは、これか。
「成人前の身である上に、父君はご病気が、まだ思わしくない様子だ。
今まで環境に恵まれてこなかったことも、其方にはどうにもできぬことであったと、私は考えている。
しかし、これからは役職を賜り、貴族の手本とならねばならん。知らなかったでは、済まさせないことが沢山出てくる。
レイシール殿、私は其方が心配だ。どうか気を悪くせずに聞いて欲しいのだがね。
其方……私の元で、貴族社会の渡り方を、学ぶ気はないかな?」
0
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
恋文を書いたらあんなことがおきるなんて思わなかった
ねむたん
恋愛
あなたがどこで何をしているのか、ふとした瞬間に考えてしまいます。誰と笑い合い、どんな時間を過ごしているんだろうって。それを考え始めると、胸が苦しくなってしまいます。だって、あなたが誰かと幸せそうにしている姿を想像すると、私じゃないその人が羨ましくて、怖くなるから。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる