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拠点村 2-2
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越冬の間はひとところに集まって過ごした村人らであったけれど、今はそれぞれの貸店舗に移っている。
立地により賃借料には差があるため、全ての職人が思う立地で店を構えられたというわけではないのだけど、そもそも店を持つということが、人生の中で一度だって用意できない可能性の方が高いご時世だ。こうして店を持てること自体が、まずは嬉しいと感じてくれている様子。
とはいえ、今はまだ村開きに向けての準備段階で、俺が任命式を終えて戻ってから、一般の客を受け入れる予定だ。
ま。交易路だって今まさに作っている最中だし、本当の意味で村が始動するのは、最低メバックまでの交易路が整ってからだろう。
だから今は、主な収入はメバックでの露店販売。そして店舗に並べる品を作ったり、内装を整えたりしている最中だ。
「おはよう。お邪魔するよ」
マルが先触れを出してくれていたおかげで、貴族が三人訪れても、ガラス職人は卒倒したりしなかった。
ま。頭を下げてブルブル震えてはいるけれども。
「模擬販売だと思って気楽にしてくれ。まだ失敗しても大丈夫なんだから、まずは挑戦」
この村は貴族の立ち入りが増えると予想されている。
だから、こんな俺でも、立派な練習相手だ。
最低限の部分さえ守れば、そうそう酷いことにはならないのだから、そこをまず身につけないといけない。
とはいっても、ルカほど遠慮しない職人って珍しいので、大抵大丈夫なのだけど、そもそも貴族と接した経験が無い者が多いので、余計に気負っているのだ。
本日は男爵家の俺だけでなく、公爵家のご令嬢が一緒だし。……言ってないけどね。多分公爵家って言えば卒倒するだろうから。
「こちらのご令嬢方が、硝子筆をご所望なのだけど、軸の色は好みで誂えたいとお考えだ。
本日夕刻には帰るから、それまでに用意できるものが欲しいのだけど」
職人にそう伝えると、話し相手は俺だけであると理解した様子。慄きつつも、なんとかこくりと頷いた。
「でっ、では、聞き取りを、お、行わせていた、いただきたい、です」
「……うーん……筆の好みについての聞き取りを、行わせていただきたい……の方が良いかな」
「は、はいっ!」
「それはどんなことをするのか、具体的に分かりやすいと、もっと良いのだけどね」
「で、では……まずは、こ、こちらを……」
そう言って職人が受け付け台の下をゴソゴソし、取り出したもの。
横長の盆であったのだけど、上には太さの違う硝子棒が大きさの順に並べられていた。
一番端には、筆先のみが、三種類。
「こ、こちらを握っていただき、こ、好みの太さを決めていただきます。その後、好みの筆先を、選んでいただけますか……」
「うん! これは伝わりやすいな。良い工夫だと思う」
「は、はい!」
「作れる色の見本もあれば、もっと良いと思うが……」
「あ、それも別で、ご用意しており、ます……」
思いの外準備がしっかりできているな!
ワクワク待っていたクオン様方を手招いて、軸の太さを選んでもらった。
硝子軸を取り外してみると、そこには数字が振ってあって、軸の太さが何粍か書き込まれている。良い工夫だな。筆先の方は、筆らしくまっすぐした溝のもの、捻られた溝のもの、うねった溝のものと三種類ある様子。
「筆先、種類が増えたのか」
「はい。墨が入ると溝が浮き上がるので、柄がある方が良いかと……」
墨の引き上げ具合も確認しているとのこと。
キャッキャとはしゃいで軸を選んでいたお嬢様方だったけど、好みのものを見つけた様子。その太さを職人は紙に記し、筆先も振ってある番号を記した。
次にその盆は一旦しまわれ、色硝子が乗った盆が取り出される。
「軸の色を、この中から選んでください。値段は上がりますが、二色を選び、捻ることも可能です」
そう言い、見本として青と透明な硝子が捻られた軸を見せてくれた。これはこれで美しいな。へぇ、こんな風にもできるんだ……。
内容を知っていた俺にも新しい発見があり、もう一本硝子筆が欲しくなってしまった。これは概ね成功だろうな。
職人は最後に最初の盆も受付台の上に戻し、書き記した覚書を指差し確認しながら声で読み上げ、選んだものに間違いはないかをお嬢様方に再度問う。貴族相手だから、念には念を入れているのだろう。
それには間違い無いと頷いたお嬢様方だったけれど。
「ねぇ、墨皿や墨入れが付いたものもあるって聞いたのだけど、それは選べないの?」
急に話しかけてきたクオン様に、職人は一瞬慄いた。でも慣れてきたのか、すこし逡巡した後、改めて口を開く。
「は、はい……い、今は、一種類しか形が無く……こ、こちらにものに、なるのですが……」
そう言いつつ、見本として用意していたであろう、墨皿と小瓶を差し出した。
「私、一揃い欲しいの。軸と同じ色の皿にしてほしいわ。小瓶は透明、小瓶の蓋だけ軸と同じ色。できるかしら?」
予定にない注文まで入れてきた……。
止めるべきか、判断に迷いマルに視線をやると、まぁ任せてみましょうよと笑って流されてしまい、仕方なしに状況を見守ることにする。
ま、貴族ってこういうことよくするしな……。いちいち慌てていては、貴族対応など夢のまた夢だ。
「べ、別途、追加料金が、かかりますが……」
「良いわよ。じゃ、できるのね。それでお願いするわ。今日中に仕上がる?」
「……この一本だけであれば、小皿と小瓶の蓋、含めて可能です」
それを聞き、にっこりと笑うクオン様。
リヴィ様は苦笑しつつ、ごめんなさいね、妹が無理を言ってと職人を労う。
「姉様は揃えないの?」
「悪いじゃない。私まで我儘は言えないわ」
「じゃ、後日の注文分に含めて送って貰えば良いと思うの」
クオン様の発言に、なんの話ですか⁉︎ と、泣きそうな顔で俺を見る職人。
大丈夫、二ヶ月内に小皿との組み合わせで十の注文があるんだと告げると、喜んで良いやら困って良いやらといった顔になる。
期日は長いようだけれど、貴族はよくそれを違える。急に早くくれとか言い出したりするのだ。
そこに、マルがまた、助け舟を出してくれた。
「クオンティーヌ様、実は我々も、アギーのリディオ商会とは定期的な大口取引を行っているんです。通り道ですから、彼らの帰路に委託する形での発送で良いですか?」
そう口を挟むと、リディオ商会はクオン様もご存じであった様子。
「あそこと取引あるんだ。じゃ、リディオ商会にお願いするわ」
聖白石の取引は、かなりの信頼度がないと受けられない仕事であるらしい。
リディオ商会は、さほど大きくはない商会であるのに、それを得ている。やはり店主の手腕が優れているのだと思う。
エルランドみたいな人を使用人にしてるんだもんなぁ……一回会ってみたい気もするけど、どんな人なんだろう。
そんな風に思いを馳せていたら、いつの間にかリディオ商会が立ち寄るたびに硝子筆を仕入れることで話がついていた。結局更に買うんだ……。
「これ、硝子筆を扱える職人、増やさないとまずいな……」
「まぁ、思いの外需要が見込める様子ですからねぇ。またウーヴェに伝えておきますよ」
で、結局。リヴィ様も墨皿と小瓶の注文を後日発送で行うこととなり、ふた月に一度くらいの割合でセイバーンに立ち寄ることとなるリディオ紹介に、贈答品用の小皿、木箱付きのものをまずは十ずつお願いするという話で纏まった。
金貨十枚をあっさりと突き抜けた大口取引決定だ。庶民の職人らにとっては、数ヶ月分の収入を一気に得られるくらいの勢いとなるため、話のまとまった後で蒼白になっていた。うん。こういうのにも慣れてもらおう……。
「職人が増えないうちは負担が大きいと思うが、頑張ってくれ。
できるだけ、早めに増やすから」
「そ、そういていただけると……。収入が増えるのは嬉しいのですが、これは、ちょっと……荷が重いです……」
涙目でそう言われてしまった。うん、極力頑張るから。
さて、勝手に取引を一つ加えてしまったけれど、セイバーンからアギーまでを空荷で帰らずとも良くなったし、たとえ他の荷があっても十箱の筆なら嵩張ることもない。エルランドらにとっても良い話だろう。
立地により賃借料には差があるため、全ての職人が思う立地で店を構えられたというわけではないのだけど、そもそも店を持つということが、人生の中で一度だって用意できない可能性の方が高いご時世だ。こうして店を持てること自体が、まずは嬉しいと感じてくれている様子。
とはいえ、今はまだ村開きに向けての準備段階で、俺が任命式を終えて戻ってから、一般の客を受け入れる予定だ。
ま。交易路だって今まさに作っている最中だし、本当の意味で村が始動するのは、最低メバックまでの交易路が整ってからだろう。
だから今は、主な収入はメバックでの露店販売。そして店舗に並べる品を作ったり、内装を整えたりしている最中だ。
「おはよう。お邪魔するよ」
マルが先触れを出してくれていたおかげで、貴族が三人訪れても、ガラス職人は卒倒したりしなかった。
ま。頭を下げてブルブル震えてはいるけれども。
「模擬販売だと思って気楽にしてくれ。まだ失敗しても大丈夫なんだから、まずは挑戦」
この村は貴族の立ち入りが増えると予想されている。
だから、こんな俺でも、立派な練習相手だ。
最低限の部分さえ守れば、そうそう酷いことにはならないのだから、そこをまず身につけないといけない。
とはいっても、ルカほど遠慮しない職人って珍しいので、大抵大丈夫なのだけど、そもそも貴族と接した経験が無い者が多いので、余計に気負っているのだ。
本日は男爵家の俺だけでなく、公爵家のご令嬢が一緒だし。……言ってないけどね。多分公爵家って言えば卒倒するだろうから。
「こちらのご令嬢方が、硝子筆をご所望なのだけど、軸の色は好みで誂えたいとお考えだ。
本日夕刻には帰るから、それまでに用意できるものが欲しいのだけど」
職人にそう伝えると、話し相手は俺だけであると理解した様子。慄きつつも、なんとかこくりと頷いた。
「でっ、では、聞き取りを、お、行わせていた、いただきたい、です」
「……うーん……筆の好みについての聞き取りを、行わせていただきたい……の方が良いかな」
「は、はいっ!」
「それはどんなことをするのか、具体的に分かりやすいと、もっと良いのだけどね」
「で、では……まずは、こ、こちらを……」
そう言って職人が受け付け台の下をゴソゴソし、取り出したもの。
横長の盆であったのだけど、上には太さの違う硝子棒が大きさの順に並べられていた。
一番端には、筆先のみが、三種類。
「こ、こちらを握っていただき、こ、好みの太さを決めていただきます。その後、好みの筆先を、選んでいただけますか……」
「うん! これは伝わりやすいな。良い工夫だと思う」
「は、はい!」
「作れる色の見本もあれば、もっと良いと思うが……」
「あ、それも別で、ご用意しており、ます……」
思いの外準備がしっかりできているな!
ワクワク待っていたクオン様方を手招いて、軸の太さを選んでもらった。
硝子軸を取り外してみると、そこには数字が振ってあって、軸の太さが何粍か書き込まれている。良い工夫だな。筆先の方は、筆らしくまっすぐした溝のもの、捻られた溝のもの、うねった溝のものと三種類ある様子。
「筆先、種類が増えたのか」
「はい。墨が入ると溝が浮き上がるので、柄がある方が良いかと……」
墨の引き上げ具合も確認しているとのこと。
キャッキャとはしゃいで軸を選んでいたお嬢様方だったけど、好みのものを見つけた様子。その太さを職人は紙に記し、筆先も振ってある番号を記した。
次にその盆は一旦しまわれ、色硝子が乗った盆が取り出される。
「軸の色を、この中から選んでください。値段は上がりますが、二色を選び、捻ることも可能です」
そう言い、見本として青と透明な硝子が捻られた軸を見せてくれた。これはこれで美しいな。へぇ、こんな風にもできるんだ……。
内容を知っていた俺にも新しい発見があり、もう一本硝子筆が欲しくなってしまった。これは概ね成功だろうな。
職人は最後に最初の盆も受付台の上に戻し、書き記した覚書を指差し確認しながら声で読み上げ、選んだものに間違いはないかをお嬢様方に再度問う。貴族相手だから、念には念を入れているのだろう。
それには間違い無いと頷いたお嬢様方だったけれど。
「ねぇ、墨皿や墨入れが付いたものもあるって聞いたのだけど、それは選べないの?」
急に話しかけてきたクオン様に、職人は一瞬慄いた。でも慣れてきたのか、すこし逡巡した後、改めて口を開く。
「は、はい……い、今は、一種類しか形が無く……こ、こちらにものに、なるのですが……」
そう言いつつ、見本として用意していたであろう、墨皿と小瓶を差し出した。
「私、一揃い欲しいの。軸と同じ色の皿にしてほしいわ。小瓶は透明、小瓶の蓋だけ軸と同じ色。できるかしら?」
予定にない注文まで入れてきた……。
止めるべきか、判断に迷いマルに視線をやると、まぁ任せてみましょうよと笑って流されてしまい、仕方なしに状況を見守ることにする。
ま、貴族ってこういうことよくするしな……。いちいち慌てていては、貴族対応など夢のまた夢だ。
「べ、別途、追加料金が、かかりますが……」
「良いわよ。じゃ、できるのね。それでお願いするわ。今日中に仕上がる?」
「……この一本だけであれば、小皿と小瓶の蓋、含めて可能です」
それを聞き、にっこりと笑うクオン様。
リヴィ様は苦笑しつつ、ごめんなさいね、妹が無理を言ってと職人を労う。
「姉様は揃えないの?」
「悪いじゃない。私まで我儘は言えないわ」
「じゃ、後日の注文分に含めて送って貰えば良いと思うの」
クオン様の発言に、なんの話ですか⁉︎ と、泣きそうな顔で俺を見る職人。
大丈夫、二ヶ月内に小皿との組み合わせで十の注文があるんだと告げると、喜んで良いやら困って良いやらといった顔になる。
期日は長いようだけれど、貴族はよくそれを違える。急に早くくれとか言い出したりするのだ。
そこに、マルがまた、助け舟を出してくれた。
「クオンティーヌ様、実は我々も、アギーのリディオ商会とは定期的な大口取引を行っているんです。通り道ですから、彼らの帰路に委託する形での発送で良いですか?」
そう口を挟むと、リディオ商会はクオン様もご存じであった様子。
「あそこと取引あるんだ。じゃ、リディオ商会にお願いするわ」
聖白石の取引は、かなりの信頼度がないと受けられない仕事であるらしい。
リディオ商会は、さほど大きくはない商会であるのに、それを得ている。やはり店主の手腕が優れているのだと思う。
エルランドみたいな人を使用人にしてるんだもんなぁ……一回会ってみたい気もするけど、どんな人なんだろう。
そんな風に思いを馳せていたら、いつの間にかリディオ商会が立ち寄るたびに硝子筆を仕入れることで話がついていた。結局更に買うんだ……。
「これ、硝子筆を扱える職人、増やさないとまずいな……」
「まぁ、思いの外需要が見込める様子ですからねぇ。またウーヴェに伝えておきますよ」
で、結局。リヴィ様も墨皿と小瓶の注文を後日発送で行うこととなり、ふた月に一度くらいの割合でセイバーンに立ち寄ることとなるリディオ紹介に、贈答品用の小皿、木箱付きのものをまずは十ずつお願いするという話で纏まった。
金貨十枚をあっさりと突き抜けた大口取引決定だ。庶民の職人らにとっては、数ヶ月分の収入を一気に得られるくらいの勢いとなるため、話のまとまった後で蒼白になっていた。うん。こういうのにも慣れてもらおう……。
「職人が増えないうちは負担が大きいと思うが、頑張ってくれ。
できるだけ、早めに増やすから」
「そ、そういていただけると……。収入が増えるのは嬉しいのですが、これは、ちょっと……荷が重いです……」
涙目でそう言われてしまった。うん、極力頑張るから。
さて、勝手に取引を一つ加えてしまったけれど、セイバーンからアギーまでを空荷で帰らずとも良くなったし、たとえ他の荷があっても十箱の筆なら嵩張ることもない。エルランドらにとっても良い話だろう。
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