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ウォルテール 2

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 もうメバックが間近となったのは、夜の帳が降りてくる直前。
 闇に染められていく空の下、外壁に囲まれた街並みが、町から漏れる灯で薄ぼんやりと影絵のように浮かんでいるのを、視認できるようになった頃だった。

 それまで楽しげに話していたサヤが、不意に言葉を止めて、暫くじっと動かず、どこか虚空を見つめたまま、瞳を見開く。

「……今、声が……遠吠えが、しませんでしたか……」

 遠吠え……と、言い直されたけれど、直ぐに分かった。
 サヤの言葉に父上が馬車の外を気にする素振りを見せ、ガイウスが腰の剣を確認する。

「狼か?    この辺りに出てくるのは珍しいな……これだけの大所帯、群であっても囲まれることは無いと思うが……」
「いえ……いえ!    違います、申し訳ありません、このまま先に、メバックへ向かってください、私はっ」

 馬車から飛び降りようとしていると、すぐに分かった。咄嗟に腕を掴んで止めて、御者台のハインに止まれと叫ぶ。

「レイシール……」
「吠狼の飼っている狼かもしれません」

 具体的なことは伏せた。父上にウォルテールのことはお伝えしていない。だが、父上は吠狼が獣人を含む集団であるのは知っている。俺の言葉でそれは察してくれた様子。

「ここで暫く待とう」
「ありがとうございます。サヤ、分かってると思うけど……」
「わ、分かってます。手出しは、控えます……」

 俺も行く。そこは譲らない。瞳に力を込めて見つめると、こくりと頷く。サヤも了解したため、俺たちは二人で馬車を降りた。
 前後の馬車が慌てて速度を落とす中、護衛らは周りに鋭い視線を向けていて、その中からオブシズが俺の元に馬を走らせてきた。

「獣の争うような咆哮がしました。ジェイドが応戦しているのではと、今お声掛けしようと思っていたところです」

 声の方は、聞いていないのだな。
 サヤに視線をやると、一点を見据えている……あちらに音がある様子。

「オブシズかシザー、共に来てくれ」
「はっ。シザー!」

 オブシズは残って護衛を続けるようだ。シザーが馬を降り、俺たちの背後につく。前はサヤ。俺も一応小刀を一つ掌に隠す。

「行こう」

 小走りになるサヤに、何が聞こえる?    と、声を掛けると、ジェイドの声と狼の唸り声、そして甲高い狼の悲鳴がたまに混じると言う。

「こちらに、近付いてます……。ジェイドさん、止めようとしているのですけど、聞く耳を持ってないみたいで……」
「……サヤを探してるのか?」
「はじめは、声で呼ばれたと、思ったんです。そしたら直ぐに、唸り声に……」

 多分、サヤを見つけ、近寄ろうとしたウォルテールをジェイドが先に見つけ、阻んだのだと推測できた。
 それによりウォルテールは興奮し、怒り、獣化したと考えられる。
 なんとなくその性急さというか、怒りに直結する行動というのが、幼い頃のハインを彷彿とさせられた。
 やっぱり……だったか。

「サヤ、まずはウォルテールを落ち着かせよう。
 多分、サヤじゃないと、止まらない……」

 そんな気がする。サヤを求めてそこら中に牙を突き立てる狂った狼……そんな姿が、想像できてしまった。

「落ち着くように、言い聞かせるんだ。ここに居ると。暴れなくて良いと。
 だけど……我を忘れてサヤにまで牙をむくようなら……」
「大丈夫です」

 例えそうでも、絶対にやられたりしない。取り押さえてみせると、サヤは言外に言った。
 その言葉を信じることにする。
 女中らの馬車が見えた頃、その近くに森から何かの塊がまろび出てきて、馬車からの悲鳴が響いた。

「ジェイド!」

 やっぱりだ。一つの塊のようになって地面を転がるのは、闇夜に浮き立つ白っぽい毛並みの大きな狼と、藍色の装束に身を包んだジェイド。
 ザワリと肌に感じたのは、本物の殺気。ウォルテールだ……あいつ、相手がジェイドだってこと、忘れているのか?
 だけど、護衛らが剣を抜き、ジェイドの加勢に向かおうとするのが視界の端に映ったため、俺はその思考を中断して、待て!と指示。

「馬車を守れ!こちらは任せてくれたら良い」
「ですが……」
「良いんだ!」

 ウォルテールを斬られては困る。いくら今彼が、狼そのもののようであっても、彼は我を忘れているだけだ……。
 更に近付くと、獣特有の、くぐもったような唸り声と息遣い。対するジェイドはこちらに気付き、怒りを露わに声を上げた。

「来ンじゃねぇよ!」
「今は仕方ない!」

 取っ組み合ったまま叫んだジェイドに、俺はそう返した。
 ジェイドが押しとどめられず、馬車の側まで来てしまったのは、ウォルテールが獣化していることと、彼の強さ。そして正気を失うほどの興奮が原因だ。このままでは、お互いが怪我では済まなくなってしまう可能性がある。
 こうなった時の獣人は、自らの意思で闘争本能を制御することが難しい。ハインもそうだったから、知ってる。だけど我に返った後の、後悔の大きさだって俺は知ってるから……これ以上は駄目だ。

「サヤ!」
「はいっ」

 無茶はするな!    内心の叫びはサヤに届いているだろうけれど、サヤはきっと、無茶をする。だから、最悪の時は頼むとシザーに視線をやると、こくりと頷いて前に出た。
 大剣を鞘ごと剣帯から外し、いつでも飛び出せるよう、構えを取る。
 そんな風にしている間に、サヤはジェイドと絡み合って転がるウォルテールの元に辿り着いていた。

 闇が深くなる中、ウォルテールがジェイドの左腕に噛み付いているのが辛うじて見える……。わざとそうしているのだろうけれど、狼のウォルテールはやはり大きい。下手をしたら腕を噛みちぎられてしまいそうだ。ジェイドの右手は、ウォルテールの下顎を掴み、そうはさせまいとしている様子。そこでサヤは、ウォルテールの背後から組み付き、首に腕を回した。
 そうして唇のきわ……犬歯の後ろの隙間に、指を突っ込んで、無理やりこじ開ける!

 流石にびっくりした様子で、ウォルテールが口を緩めた。
 その隙にサヤは逆の腕をウォルテールの身体に回し、ガッチリと抱え込んでから、勢いよく身を起こした。
 力持ちのサヤだからこそできること……ウォルテールの巨体を持ち上げる。前足が地面を離れたウォルテールは、慌ててその前足で空を掻いたが、サヤは振りほどけない。そうして、下敷きになっていたジェイドから、彼を引き剥がした。

「ウォルテールさん、落ち着いて」

 力いっぱい抑え込まれ、しばらく唸りながら足掻き、暴れたウォルテールだったけれど、サヤは手を離さず、根気よく話しかけ続ける。
 振り解かれてしまえば、きっとあの牙はサヤに食らいつく。衰えない殺気に気が気じゃなかったけれど、シザーが手を広げ、俺を前に行かせてはくれなかった。

「この……糞犬が……」

 なんとか立ち上がったジェイドの左腕から滴っているのは血だろう。やはり傷付けられていたようだ。
 だが腕の痛みなど気にしていない様子で、サヤに上半身を持ち上げられて暴れるウォルテールの前に立つジェイド。
 右手で、腰の後ろから取り出したのは細い紐……いや、髪を編み込んだと言っていた縄か?    それを素早く輪にして、狂ったように威嚇を繰り返すウォルテールの口吻に引っ掛け、きつく縛り上げた。そこで力尽きたのか、よろけて膝をつく。

 口を塞がれ、半狂乱になったウォルテールは更に暴れた。だけどサヤが必死で抱え込み、耳元で声をかけ続ける。状況が状況だけに、馬車の周りの護衛らに、とにかく馬車を守るようにと、俺は声を張り上げた。

 そうして、完全に陽は沈み、馬車に吊られた行灯に火を入れる頃合いとなった頃……。
 暴れ疲れて体力を消耗したらしいウォルテールの動きが、やっと緩慢になってきた。

「ウォルテールさん、落ち着いて。
 長いことセイバーンを離れて、ごめんなさい。もう、帰ってきましたから……」

 唸り声が小さくなり、そう言い聞かせるサヤの声が、俺の耳にも届くようになった。
 ウォルテールも気持ちが落ち着いてきて、サヤに気付ける余裕が出たのだろう。不意にピタリと暴れるのを止めて、フンフンと鼻を鳴らす。
 それに合わせて、殺気も薄れ、そのうち興奮だけが残った。
 口吻を縛られたまま、それをも忘れた様子で必死に匂いを嗅ぐ。
 足の間に丸め込まれていた尻尾が、ゆっさりと動いてサヤの足を撫でた。

 ……今気付いたんだけど、ここで獣化止めたりしないよな……?
 視線が集中しているし、間違っても正体を明かしてはいけない状況なんだけど……。

「ウォルテールさん、手を離しますけど、暴れたりしたら、駄目ですからね。
 ジェイドさんにも怪我をさせてしまいました。だからちゃんと謝って。分かりました?」

 そう囁きかけると、また尻尾がサヤの足を撫でた。返事の代わりなのかな。
 サヤがこちらを見、手を離しますと視線で伝えてきて、俺はこくりと頷いて返事を返す。シザーが警戒を強くし、グッと鞘付きの大剣を握りしめ、構え直す。それを確認してからサヤは、ウォルテールに向き直った。

 まずサヤは、ウォルテールの前脚を地面に降ろした。暫く暴れないのを確認するためか、そのまま静止していたのだけど……。

「離します」

 周りに分かるようにそう宣言して、首に回していた手を離す……。
 ウォルテールはじっと大人しくしており、サヤの手が離れるのを待ってから、また尻尾をゆさりと動かした。そうして、口を縛られたまま、サヤの方を仰ぎ見て……。

「!」
「あっ、ウォルテールさん⁉︎」

 千切れんばかりに尻尾を振って、今一度サヤに飛びついた。受け止めたサヤも、そのままペタリを尻餅をついてしまう。暴れるウォルテールを抑え込むのに、体力を使い果たしていたのだろう。
 ウォルテールは、それまでの、獣然とした動きではなかった。まるで主人に甘える犬のよう。
 己の首をサヤの首に擦り付け、鼻先を喉に押しつけるようにして匂いを確認し、口が開かないことにやっと気付いたように、鼻を振る。
 けれどそれは瑣末ごとだと思い直したようだ。優先順位が高いのはこっちとばかりに、更にサヤへと身を寄せるから、大きな身体でぐいぐいと押されたサヤが今度は、ウォルテールにの伸しかかられ、地面にこてんと転がった。俺が慌てて、止めに入ろうとした時。

「ギャン⁉︎」

 横手から腹を掬い上げるようにして蹴り上げられて、ウォルテールは高い悲鳴を上げてふき飛ぶ。
 容赦なく蹴られたがなんとか着地し、身構え……。だがその腹を、またもや蹴り上げられて再度悲鳴を上げた。

「ジェイド⁉︎」

 怒りが振り切れて、凍てついたような表情。
 腕から血を滴らせながら、ふらつく身体に鞭打って、無言で右手の縄を振る。口吻を縛っていた縄が、器用にウォルテールの首にも絡められ、それは容赦なく引かれた。

「ジェイドさん⁉︎」

 サヤも慌てて起き上がり、ジェイドに駆け寄ろうとしたけれど、彼の未だ嘗てない眼光に貫かれ、動きを止めた。

「出てくンなって、言ったろうが……」
「で、でも……」
「邪魔すンな」
「…………」

 聞く耳を持たない、拒絶の声音。

「頭の顔に泥塗って、何日も姿をくらませて、主に手間掛けさせて……。
 これだけ重ねたお前なのに、甘ったるい主が、命取ることは気にしやがるから、半殺しで許してやろうと思ってた……。
 なのにテメェは……その番にまで……。お前……そりゃ当然、死ぬ覚悟固めてやりやがったンだよな⁉︎
 もう、許す許さねぇの段階は超えた。余計な手間を、これ以上掛けさせるなよ……邪魔すンなって言ってるだろうガァ‼︎」

 足を一歩踏み出したサヤに、ジェイドの怒りが爆発した。

「こいつはテメェまで狩ろうとしたンだぞ、分かってンのか⁉︎」
「じ、じゃれただけじゃないですか……」
「誤魔化すな!    それにこいつは犬じゃねぇ、狼なンだ!」

 その鋭い声に首を竦める。

「群を離れた狼ってのはなぁ、野垂れ死ぬもンなンだよ!」

 手の縄を、もう一度荒く引いた。
 首を締め上げられたウォルテールは、縛られた口吻の端から泡を吹いている。
 もう意識は手放し掛けているのだろう、それでも必死で、足を地につける姿に、どうすれば良いだろうと、俺も必死で考えた。
 俺たち、出て来なければ良かったのか……?
 だけど、それではジェイドが腕を失っていたかもしれない。そうなってしまえば、どの道ウォルテールの命は無かったろう。
 でも今、彼をこの場で始末するなんて、そんなことにはしたくなかったし、それをサヤに見せたくもなかった。ジェイドの手だって、汚させたくなかった。

 ジェイドの右手にあった縄が、血の滴る左手に握り直され、そうして、腰の後ろから短剣が引き抜かれる。

「ジェイド……」
「……」

 名を呼ぶも、返事は無い。
 けれど、足を踏み出したジェイドは結局、それを阻まれることになった。

 馬車から響いた悲鳴。
 泣き叫び、暴れているのか馬車が揺れる。尋常じゃないその状況に、皆が呆気に取られた……。
 女中たちの乗る馬車だ……何が、起こっている⁉︎

「ジェイドさん、駄目です、ジーナちゃんが……ジーナちゃんが苦しんでます!」

 サヤがそう叫んで、ウォルテールに走り寄った。首を縄を外して、口吻の自由をも取り戻す。
 ウォルテールは狼姿のまま咳き込み、地面にへたり込んでしまったのだが、サヤはその頭を胸に抱き込んで、ウォルテールを全身で庇った。
 そうこうしていると、馬車の揺れが収まり、女中頭が馬車から降りて、こちらにやって来る。

「お取り込み中に、申し訳ございません。
 先程判明したのですが、ジーナは母親に振るわれる暴力を見続けてきており、そういった光景に恐怖を呼び起こされるのだそうですわ。
 ここは、ジーナに免じて一旦刃を収めていただけませんか?
 それに、早くせねば、メバックの門が閉ざされてしまいます」

 落ち着いた女中頭の進言に、ジェイドがチッと鋭く舌打ちした。
 そうして、サヤに抱き込まれたウォルテールを、怒り心頭といった表情で睨み据える。

「ジェイド……申し訳なかった。お前たちのやり方に、結局口を挟む形になって……。
 だけどな……だけど……」
「うるっせぇ!    さっさと行け、今俺に話し掛けンな!」
「ジェイド!    どこ行くんだよ、傷の手当てをしなきゃ……」
「知るかっ!」

 怒ったままジェイドは、そのまま踵を返し、闇に沈んだ木々の間に姿を消してしまった。
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