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カナくん 3
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アギー公爵様との挨拶を終えると昼近くになっていた。
朝方、ユミルが準備してくれていたサンドイッチがあるし、馬車で食べれば良いと、とりあえず出発することにする。
「カタリーナたちをどの馬車に乗せるか?」
「人員がギリギリでしたし……本人らは荷車で良いと言うのですが、荷車では流石に寒いでしょう?」
「そうだな……どうしよう」
持参した食材は減っているから、荷物は格段に少なくなっている。
とはいえ、それは荷車の荷物であって、人の数は減っていない。
まさか今日人員が増えるなんて想定していなかったし、どうしようか……と、なったのだけど。
「馬を確保して参ります。馬に乗れるものがそちらを利用すれば済みます。無理であれば、相乗りで凌ぎ、道中で買い求めれば良いかと」
そう口を挟んできたガイウスに、少々驚いた。
そもそも勝手に人員を増やしたことを怒られそうだなぁと思っていたのだ。
ガイウスの言葉に、最近存在感の薄くなってしまっていた古参の方々が動き出す。それで承知した……と言うことなのだろう。え、良いの?
「では、女中の馬車に彼女らを迎えましょう。女中から二人、他の馬車に移しますわ。
幼子がいますもの、怖い顔のおじさんの中は可哀想よね」
そう言った女中頭が、カタリーナに抱かれた少女……六歳そこらの少女に笑いかけると、怯えたのか、母親の首にかじりついてしまった。
その様子に慌てたのはカタリーナだ。粗相をしてしまったと思ったのだろう。慌てて膝をつこうとする。
「お気になさらないで。私は平民、貴族ではございませんもの。
それに、うちは男の子ばかりで全然可愛げがなかったから、女の子、可愛くって、つい構いたくなってしまったの。ごめんなさいね、驚かせてしまって」
まるで気にしていない風に、女中頭はそう言った。
お名前は、聞いておいてよかったかしら? と、カタリーナに問うと、ジーナだと返答が返る。
「ジーナちゃん、良いお名前ね。少し長旅になるのだけど、仲良くしてね」
へこたれず語りかける女中頭だったけれど、ジーナは顔を伏せたまま。
時間が掛かるだろうな……それは仕方がないことだろう。
準備を終えて、馬車に乗り込み出発するという段階になって、何故かクオンティーヌ様がお越しになった。
慌てて馬車を降りて向かうと……。
「父上の許可、取ったから。数日で追いつくわ」
「…………本気で来るんですか……」
「当たり前でしょ! だからバート商会に話、通しておきなさいよね!」
「はい。それはもう……」
やっておいたから。
苦笑する俺に、クオンティーヌ様は何を思ったが、ちょいちょいと手招き。身を屈めると……。
「バート商会の店主、面識があるの?」
「……リヴィ様の件ですか?」
「っ、し、知ってるの⁉︎」
それはもう……色々察するところがありましたし、姫様からも言われましたし……。
リヴィ様が皆さんに愛されているってことは、重々伝わりました。
「店主……ギルバートは、俺の親友ですよ。良い男です。
人物は保証します。本当、あれ以上の男前は、そうそうお目にかかれません」
「……見た目の良さは、知ってるわよ」
「見た目じゃないですよ、俺が言ってるのは。
ギルは……リヴィ様の身分に囚われませんし、そこに価値を置きません。リヴィ様自身を、ちゃんと見てくれる男です」
アギーは貴族を辞す人が多いみたいだし、そこをとやかく言ったりはしないだろう。
とはいえ、今から女近衛になると決心されていたリヴィ様だ……どうなるかなんて、分からないけど……。
そう伝えると、クオンティーヌ様は俺を睨みつけ、暫く沈黙した。
「……ふん。一応参考にしておくわ」
そうして、それだけ言い捨ててその場を去る。
けれど、俺が馬車に戻ろうとすると……。
「近いうち、女近衛の正装依頼の件、使者も向かうんだから、粗相の無いようにね」
と言う声だけが返ってきた。
馬車に戻ると、父上とガイウス、そしてサヤが迎えてくれた。
そわそわとしているサヤに、さっきの会話は筒抜けだったのだろうなと思う。
「あの……レイシール様……」
「うん。正直どうなるかなんて分からないけど……橋渡しくらいは、したいと思う。
ギルだって多分せっつかれてるんだよ。支店を任されてもう三年だ……そろそろ落ち着けって、アルバートさん辺りが」
「アルバートさん……ギルさんの、お兄様……ルーシーさんのお父様ですよね」
「うん。……ギルは多分……俺のせいで婚期逃してるし……」
俺が、異母様や兄上との関係で、ごちゃごちゃしてたから……。
俺に関わることが、危険と隣り合わせだったあの時期に、事情を知らない女性を内に入れることは、憚られたのだと思う……。
何が弱点になってしまうか分からないと……その女性にだって、累が及ぶかもしれないと……。
特別な女性を作らなかったというのは、きっとそういうことなのだ。
だから……ギルにもどうか、自分の幸せを考えてほしいと思う。
できることなら、ハインにも……。
だけどギル以上にハインは……そもそも女性に全く興味無いような雰囲気なんだよな……。
自身が獣人だったことも、絡んでそうな気はしてる。
「……でもそれを言い出したらオブシズが一番ヤバいんじゃないのか?」
一番年上のオブシズまで未婚なんだよな……傭兵業は命懸けだし、そのせい? シザーだってもう二十歳だよ?みんなもう少し自分の生活考えた方が良いんじゃないの?
「ウーヴェさんも、マルさんもです……」
「…………ちょっと春から色々考えよう……」
セイバーンに来ると結婚できないなんて噂が立ってしまったら、ただでさえ少ない士官がもっと減りそう……。
そんな風に考えて頭を抱えたら、隣でくすくすと笑い声。
「婚活パーティーでも開きますか?」
「こんかつぱーてぃー……って?」
「えっと、夜会のようなものなのですけど……もう少し砕けているといいますか、未婚の男女で集まって、お食事をしたり、お話ししたりするんです。
趣味の合う異性と巡り会えるよう、たくさんの接点を作るというのが目的の……まぁ、お祭りですね」
「…………サヤ、出たことあるの……」
「な、無いですよ⁉︎」
そ、そうだよね! お祭りって言うからまさかって思って、もしかしてカナくんと二人で参加していたのかもしれないと、そう思ったのだ。
そう働いた自身の思考に余計衝撃を受けてしまい、なんだか気持ちが沈んでしまった……。
……今まで、逃げていたツケだよな……。
サヤを妻にと望んだ以上、俺はカナくんのことを、もっと知るべきなんだと思う……。
サヤを作り上げた礎であるのは間違いなくカナくんで……あのことも、やはりサヤに、伝えるべきなんだろう……。
本当は、もう……ずっと前から、察していた……。
カナくんは、サヤを嫌ってなど、いなかったってことを……。
それを、サヤに知られることを、俺は恐れ、避けていた。
告げないつもりでいた。
もう済んだことだ、終わったことだと、俺が勝手に決めつけて。
サヤが彼を思い出し、愛しさを思い出し、帰りたいと、泣くのじゃないかって……。
俺なんかより、彼をサヤは、欲するのじゃないかって……。
それが、怖くて……。
だけど……。
胸にしこりを抱えたままサヤは、この世界で生きるのか?
彼女の大切な記憶、故郷の思い出を、そんな苦しく、辛いものにしておいて良いのか?
サヤを幸せにすると誓ったなら、サヤの過去だって、大切にしなきゃならないんじゃないのか。
サヤが誰を想っていようと関係ない。サヤの幸せが大切だ。
本当にそう思うならば俺は……カナくんのことを、口にすることすら許さない俺は……間違っているのだと、思う……。
「どうか、しましたか?」
「ん? いや、なんでもないよ。……ちょっとね、考え事をしていただけ」
サヤの幸せを願うならば……。
全てを手放し、ここに生きるサヤが、ずっと抱えて過ごす記憶。唯一、手放さずに残るもの。
それを、俺は…………。
共に抱える覚悟を、しなきゃならないのだ。
朝方、ユミルが準備してくれていたサンドイッチがあるし、馬車で食べれば良いと、とりあえず出発することにする。
「カタリーナたちをどの馬車に乗せるか?」
「人員がギリギリでしたし……本人らは荷車で良いと言うのですが、荷車では流石に寒いでしょう?」
「そうだな……どうしよう」
持参した食材は減っているから、荷物は格段に少なくなっている。
とはいえ、それは荷車の荷物であって、人の数は減っていない。
まさか今日人員が増えるなんて想定していなかったし、どうしようか……と、なったのだけど。
「馬を確保して参ります。馬に乗れるものがそちらを利用すれば済みます。無理であれば、相乗りで凌ぎ、道中で買い求めれば良いかと」
そう口を挟んできたガイウスに、少々驚いた。
そもそも勝手に人員を増やしたことを怒られそうだなぁと思っていたのだ。
ガイウスの言葉に、最近存在感の薄くなってしまっていた古参の方々が動き出す。それで承知した……と言うことなのだろう。え、良いの?
「では、女中の馬車に彼女らを迎えましょう。女中から二人、他の馬車に移しますわ。
幼子がいますもの、怖い顔のおじさんの中は可哀想よね」
そう言った女中頭が、カタリーナに抱かれた少女……六歳そこらの少女に笑いかけると、怯えたのか、母親の首にかじりついてしまった。
その様子に慌てたのはカタリーナだ。粗相をしてしまったと思ったのだろう。慌てて膝をつこうとする。
「お気になさらないで。私は平民、貴族ではございませんもの。
それに、うちは男の子ばかりで全然可愛げがなかったから、女の子、可愛くって、つい構いたくなってしまったの。ごめんなさいね、驚かせてしまって」
まるで気にしていない風に、女中頭はそう言った。
お名前は、聞いておいてよかったかしら? と、カタリーナに問うと、ジーナだと返答が返る。
「ジーナちゃん、良いお名前ね。少し長旅になるのだけど、仲良くしてね」
へこたれず語りかける女中頭だったけれど、ジーナは顔を伏せたまま。
時間が掛かるだろうな……それは仕方がないことだろう。
準備を終えて、馬車に乗り込み出発するという段階になって、何故かクオンティーヌ様がお越しになった。
慌てて馬車を降りて向かうと……。
「父上の許可、取ったから。数日で追いつくわ」
「…………本気で来るんですか……」
「当たり前でしょ! だからバート商会に話、通しておきなさいよね!」
「はい。それはもう……」
やっておいたから。
苦笑する俺に、クオンティーヌ様は何を思ったが、ちょいちょいと手招き。身を屈めると……。
「バート商会の店主、面識があるの?」
「……リヴィ様の件ですか?」
「っ、し、知ってるの⁉︎」
それはもう……色々察するところがありましたし、姫様からも言われましたし……。
リヴィ様が皆さんに愛されているってことは、重々伝わりました。
「店主……ギルバートは、俺の親友ですよ。良い男です。
人物は保証します。本当、あれ以上の男前は、そうそうお目にかかれません」
「……見た目の良さは、知ってるわよ」
「見た目じゃないですよ、俺が言ってるのは。
ギルは……リヴィ様の身分に囚われませんし、そこに価値を置きません。リヴィ様自身を、ちゃんと見てくれる男です」
アギーは貴族を辞す人が多いみたいだし、そこをとやかく言ったりはしないだろう。
とはいえ、今から女近衛になると決心されていたリヴィ様だ……どうなるかなんて、分からないけど……。
そう伝えると、クオンティーヌ様は俺を睨みつけ、暫く沈黙した。
「……ふん。一応参考にしておくわ」
そうして、それだけ言い捨ててその場を去る。
けれど、俺が馬車に戻ろうとすると……。
「近いうち、女近衛の正装依頼の件、使者も向かうんだから、粗相の無いようにね」
と言う声だけが返ってきた。
馬車に戻ると、父上とガイウス、そしてサヤが迎えてくれた。
そわそわとしているサヤに、さっきの会話は筒抜けだったのだろうなと思う。
「あの……レイシール様……」
「うん。正直どうなるかなんて分からないけど……橋渡しくらいは、したいと思う。
ギルだって多分せっつかれてるんだよ。支店を任されてもう三年だ……そろそろ落ち着けって、アルバートさん辺りが」
「アルバートさん……ギルさんの、お兄様……ルーシーさんのお父様ですよね」
「うん。……ギルは多分……俺のせいで婚期逃してるし……」
俺が、異母様や兄上との関係で、ごちゃごちゃしてたから……。
俺に関わることが、危険と隣り合わせだったあの時期に、事情を知らない女性を内に入れることは、憚られたのだと思う……。
何が弱点になってしまうか分からないと……その女性にだって、累が及ぶかもしれないと……。
特別な女性を作らなかったというのは、きっとそういうことなのだ。
だから……ギルにもどうか、自分の幸せを考えてほしいと思う。
できることなら、ハインにも……。
だけどギル以上にハインは……そもそも女性に全く興味無いような雰囲気なんだよな……。
自身が獣人だったことも、絡んでそうな気はしてる。
「……でもそれを言い出したらオブシズが一番ヤバいんじゃないのか?」
一番年上のオブシズまで未婚なんだよな……傭兵業は命懸けだし、そのせい? シザーだってもう二十歳だよ?みんなもう少し自分の生活考えた方が良いんじゃないの?
「ウーヴェさんも、マルさんもです……」
「…………ちょっと春から色々考えよう……」
セイバーンに来ると結婚できないなんて噂が立ってしまったら、ただでさえ少ない士官がもっと減りそう……。
そんな風に考えて頭を抱えたら、隣でくすくすと笑い声。
「婚活パーティーでも開きますか?」
「こんかつぱーてぃー……って?」
「えっと、夜会のようなものなのですけど……もう少し砕けているといいますか、未婚の男女で集まって、お食事をしたり、お話ししたりするんです。
趣味の合う異性と巡り会えるよう、たくさんの接点を作るというのが目的の……まぁ、お祭りですね」
「…………サヤ、出たことあるの……」
「な、無いですよ⁉︎」
そ、そうだよね! お祭りって言うからまさかって思って、もしかしてカナくんと二人で参加していたのかもしれないと、そう思ったのだ。
そう働いた自身の思考に余計衝撃を受けてしまい、なんだか気持ちが沈んでしまった……。
……今まで、逃げていたツケだよな……。
サヤを妻にと望んだ以上、俺はカナくんのことを、もっと知るべきなんだと思う……。
サヤを作り上げた礎であるのは間違いなくカナくんで……あのことも、やはりサヤに、伝えるべきなんだろう……。
本当は、もう……ずっと前から、察していた……。
カナくんは、サヤを嫌ってなど、いなかったってことを……。
それを、サヤに知られることを、俺は恐れ、避けていた。
告げないつもりでいた。
もう済んだことだ、終わったことだと、俺が勝手に決めつけて。
サヤが彼を思い出し、愛しさを思い出し、帰りたいと、泣くのじゃないかって……。
俺なんかより、彼をサヤは、欲するのじゃないかって……。
それが、怖くて……。
だけど……。
胸にしこりを抱えたままサヤは、この世界で生きるのか?
彼女の大切な記憶、故郷の思い出を、そんな苦しく、辛いものにしておいて良いのか?
サヤを幸せにすると誓ったなら、サヤの過去だって、大切にしなきゃならないんじゃないのか。
サヤが誰を想っていようと関係ない。サヤの幸せが大切だ。
本当にそう思うならば俺は……カナくんのことを、口にすることすら許さない俺は……間違っているのだと、思う……。
「どうか、しましたか?」
「ん? いや、なんでもないよ。……ちょっとね、考え事をしていただけ」
サヤの幸せを願うならば……。
全てを手放し、ここに生きるサヤが、ずっと抱えて過ごす記憶。唯一、手放さずに残るもの。
それを、俺は…………。
共に抱える覚悟を、しなきゃならないのだ。
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