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社交界 3
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「マル!」
「もうこれ以上こじれたくないでしょう? 我慢してください」
制止の声はあっさりと払われて、マルが言葉を続ける。
「レイ様は別に、領主様を恨んでいたのでも、セイバーンを憎んでいたのでもないんです。
他の皆さん……領民や僕らや、貴方たち古参の方々も含めてですよ? 他の誰にも咎が向かわないようにって、全部ひっかぶったうえで、この地とジェスルとの決別を、一人で背負うつもりだったってことなんですよ。
だからそこは安心してください。この前のあれは演技です。
誰かを恨めるくらい器用な人だったら、こんなに苦労しなくて良いんですけどねぇ」
ぺらぺらとよく動く口……。そんなマルを、胡乱げに見る古参たち。
今更、そんなこと言われてもって話だよな。
彼らがマルの言葉を信じれないのは仕方がないことだと思う。
苦笑するしかない俺にも、どこか諦めのような気持ちがあったのだろう……。
だけどマルは……それで済ますつもりはなかったのだ。
半眼で俺を見る古参らを、にこりと笑って眺めてから……おもむろに口を開いた。
「この方は、正直考えなれないくらいのお人好しなんですよ。人のせいにできなくて、自分ばかり責めるんです。
あんな風にこの地を離れて、学舎に行っても、誰かを上手に恨むこともできなくて。
しかも色々見えてしまうものだから、貴方がたの事情まで汲み取って……。
六歳の幼子を一人で学舎にやったのは事実で、それは正直責められて然るべきことだと僕は思いますよ。
信頼できる者がいなかったって……そんなのただの言い訳ですし。
でも、そんなのもこの人全部納得しちゃってるんですよね……仕方がなかったって。
だけどそんな幼い頃の苦しさが、棘になってないと思います?
思いませんよね。思わないから、この方がただ優しいだけだってことが、信じれなかったんですもんね。
何か裏があるに違いないって、そう考える方がしっくりしたんですよね?
だから女中頭が笑い飛ばした演技すら、鵜呑みにした。
それを真実にしたかったから」
あ、これ……マル怒ってる……。
気付いた時には遅く、マルは軽い足取りで歩き、古参らの前に立った。そして、顔を覗き込むようにしてにんまりと笑う。
俺の場所からはマルの表情全ては見えなかった。ただ口角が持ち上がったのは見てとれて、その笑顔で滑るようにつらつらと、言葉を連ねた。
「楽しかったですか? この方の裏を勘ぐるの。
楽しかったですよね。揚げ足取って、酷く罵ることができる相手がいるのは、とても心地が良いことですよね。
笑っちゃうくらいに悪く受け取ってましたもんね。
レイ様がここに戻ってからの三年間……異母様らの目もあって、レイ様に接触するわけにもいかなかった? その言い訳、都合良かっただけですよね?
自分たちがこの方にしてきたこと考えたら、助けてほしいだなんて、口にできなかったってだけですもんね?」
どんどん声に重さが加わっていくようだ。古参らの顔色が悪くなる……それに対しマルは、水を得た魚のように嬉々として口を回した。
「時を待っていた……、都合が良い言葉ですよねぇ。
貴方がたは失敗したくなかった。だから動かなかった。それだけです。
確かに、隙を作らないためであったのでしょうね。はじめのうちは。
でも、一年、二年……時が過ぎていくうちに、そうじゃなくなっていった。
今が続くのが大切だ。そのうちいつか……。そんな言い訳を三年も続けたんですよね? その裏で、きっと無理だと思っていた。
もう領主様を取り戻すのは無理だ。だからとにかく今を維持する。頑張ったんだと言えるように。自分に言い訳できるように。
だから、レイ様に何一つ言ってこなかったんでしょう?
引退したカークさんに全て預けて、貴方たちは現実から目を逸らした。それで充分義理は果たしたと思いたかった。
なのに……貴方がたが諦めたことを、この方が成し遂げた。
そうしたら、そんな風に考えていた自分を、無かったことにしたくなったんですよね?
だからそのために、レイ様を生贄にした。
異母様の傍にいながら、三年間動かなかったことをなじって、領主様やセイバーンを切り捨てるつもりだったことを責めて、ありもしない裏を勘ぐった。
全部貴方がた自身がしてきたことなのに!
十年という時間、セイバーンを離れていたレイ様と違って、貴方がたはずっとこの地にいて、全てを見ていたのに!
なんの事情も知らされず、夢も希望も奪われて、無理やり鎖に繋がれ引き戻されたこの方に、苦しみも悲しみも全部押し付けて!
それはさぞ心の荷が降りたことでしょうね!」
マルの中に、こんな風に熱く滾るものがあったなんて、知らなかった……。
だけどもう充分だと思ったから、マルの手を引いた。
そんな風に怒ってくれる……そんな仲間がいるだけで、俺はもう充分、報われた……。
「離してください。
僕が調べただけで、数度、領主様奪還の機会がありました。なのにこの人たちは……」
「うん。でもなマル、父上は両足が不自由でいらっしゃった。それを皆知らなかったろう?
もしその機会に強行していたら、失敗していたかもしれないし、犠牲者だって沢山出していたかもしれない……。
だから、もっと良い機会をと、精神をすり減らして時を待った。その選択の意味は、確かにあったんじゃないかな」
そう言うと、呆れた! とでも言うかのように、大きく息を吐く。
「知らなかったのはこっちだって同じでしょ⁉︎」
「俺の三年にも、意味はあった。
皆を得た。沢山縁を繋いだ、お前のおかげで。
だから父上の救出が成せたんだ。
つまりさ、苦しかったのは皆同じで、その全てに意味はあった。な? それで今がここにあるんだから、それで充分だろう?
それに父上は……俺たち領主一族は、領民の生活が優先なんだよ。だから、皆の判断は正しかったと、思ってるよ」
犠牲を強いてでも救い出してほしい……なんて、絶対に思っていなかったろう。
それに父上は、皆が助けに来てくれるのを、ただ待っていたのではなかった。
己に行動する機会が巡ってくるのを淡々と狙い、耐えていたのだ。
「皆が耐えて、頑張った。今があるのは、そのためだ。
誰が折れても、今は無かった。
な。
皆、頑張ったんだよ」
ありがとうと言う気持ちを込めて、背中を叩いた。
マルのことだから、言い負かそうと思えばいつだってそれはできたのだと思う。
だけど、きっと今日のこの時を選んだのだ。
セイバーンを背負うと決めた俺を、ちゃんとこの地に根付かせるために。俺への疑念を全て払拭できる機会を選んで、あえて自分が泥を被ってくれた……。
鬼を自分が。俺を姫にして、この地に俺が、受け入られるように……。
「……言っておきますけど。
領主代行をこなしてしまっていたのは、この方が優秀だったってだけです。
地方に送られた書類、全部筆跡同じでしょ。全て、レイシール様の手ですよ。
その程度のことくらい、自分たちで気付いていただきたかったですねぇ。僕がここに来たのは、去年の春の終わりからです」
最後にそう言い捨てて、マルは身を引いた。
そして時を狙ったかのように、コンコンと扉が叩かれ、俺たちは現実に引き戻される。
「レイ殿、少し良いか。貴殿に来客だ」
ディート殿の声だ……。
慌ててサヤが扉に向かった。
到着したばかりなのに来客など……誰だ? しかもディート殿が取り次ぎするって……姫様なら問答無用で呼び出しだろうし……。
いったん確認のため扉の外に向かったサヤが、そのまま慌てて戻って来た……。
「あ、あのっ、お待たせするわけにはいかない方でした……」
「……? 誰? 父上にじゃなく、俺なの?」
「はっはいっ! あの、リカルド様ですっ」
…………っ、えっ⁉︎
「ここアギーだぞ⁉︎」
「社交界だぞ。公爵家同士でも交流するに決まっておろうが」
言ってるそばからズカズカと入室してきたリカルド様が、自ら返答を返してきた。
……見間違いでも聞き間違いでもなかった……本人だ。
「いっ、いやでも……、リカルド様はヴァーリンにいなきゃ駄目じゃないですか⁉︎」
「もう姫様の夫候補を外れたというのに、その必要はあるまい。
そもそも其方には人をやるつもりでいたのだが、クリスめが邪魔ばかりしおってなかなか機会を得られずでな。
夏の話の続きだ。商談はいつにする」
「ちょ、ちょっと待ってください! 商談って早急すぎませんか⁉︎」
「口で説明しても伝わらんのだ。見せるのが早い。なので取り急ぎ、ヴァーリンの屋敷と訓練場に設置したいのだがな」
入って来るなりそんな風に言い、慌てて立ち上がろうとする父上を良いと手で制す。
「セイバーン殿、随分と久しいではないか。もう病は良いのか?」
「は。見ての通りという体たらくではありますが……。
リカルド殿……レイシールとは……面識が?」
「あるぞ。此奴が学徒の頃からな。
レイシール、其方、地方行政官長、受けるそうではないか。
断っても良いのだぞ。なんなら私がクリスに言ってやろう」
「い、いぇ……、とても興味深い役職なので……」
「なんだそうか。
好まぬと言えば、うちで使ってやったものを……」
「剣握れないんですよ俺は⁉︎ 前にもお伝えしましたよね⁉︎」
「剣など他にいくらでも握る者がいる。其方は私の補佐役として来れば良い」
まるで俺を口説くかのように熱心なリカルド様に、古参らは固まってしまった。
マルの虚言が、虚言じゃなかったことに呆然としている……。
虚言であってくれれば良かったのに! と、内心思いながら俺は、とりあえず場所を変えましょうと必死でリカルド様を宥めにかかった。
「もうこれ以上こじれたくないでしょう? 我慢してください」
制止の声はあっさりと払われて、マルが言葉を続ける。
「レイ様は別に、領主様を恨んでいたのでも、セイバーンを憎んでいたのでもないんです。
他の皆さん……領民や僕らや、貴方たち古参の方々も含めてですよ? 他の誰にも咎が向かわないようにって、全部ひっかぶったうえで、この地とジェスルとの決別を、一人で背負うつもりだったってことなんですよ。
だからそこは安心してください。この前のあれは演技です。
誰かを恨めるくらい器用な人だったら、こんなに苦労しなくて良いんですけどねぇ」
ぺらぺらとよく動く口……。そんなマルを、胡乱げに見る古参たち。
今更、そんなこと言われてもって話だよな。
彼らがマルの言葉を信じれないのは仕方がないことだと思う。
苦笑するしかない俺にも、どこか諦めのような気持ちがあったのだろう……。
だけどマルは……それで済ますつもりはなかったのだ。
半眼で俺を見る古参らを、にこりと笑って眺めてから……おもむろに口を開いた。
「この方は、正直考えなれないくらいのお人好しなんですよ。人のせいにできなくて、自分ばかり責めるんです。
あんな風にこの地を離れて、学舎に行っても、誰かを上手に恨むこともできなくて。
しかも色々見えてしまうものだから、貴方がたの事情まで汲み取って……。
六歳の幼子を一人で学舎にやったのは事実で、それは正直責められて然るべきことだと僕は思いますよ。
信頼できる者がいなかったって……そんなのただの言い訳ですし。
でも、そんなのもこの人全部納得しちゃってるんですよね……仕方がなかったって。
だけどそんな幼い頃の苦しさが、棘になってないと思います?
思いませんよね。思わないから、この方がただ優しいだけだってことが、信じれなかったんですもんね。
何か裏があるに違いないって、そう考える方がしっくりしたんですよね?
だから女中頭が笑い飛ばした演技すら、鵜呑みにした。
それを真実にしたかったから」
あ、これ……マル怒ってる……。
気付いた時には遅く、マルは軽い足取りで歩き、古参らの前に立った。そして、顔を覗き込むようにしてにんまりと笑う。
俺の場所からはマルの表情全ては見えなかった。ただ口角が持ち上がったのは見てとれて、その笑顔で滑るようにつらつらと、言葉を連ねた。
「楽しかったですか? この方の裏を勘ぐるの。
楽しかったですよね。揚げ足取って、酷く罵ることができる相手がいるのは、とても心地が良いことですよね。
笑っちゃうくらいに悪く受け取ってましたもんね。
レイ様がここに戻ってからの三年間……異母様らの目もあって、レイ様に接触するわけにもいかなかった? その言い訳、都合良かっただけですよね?
自分たちがこの方にしてきたこと考えたら、助けてほしいだなんて、口にできなかったってだけですもんね?」
どんどん声に重さが加わっていくようだ。古参らの顔色が悪くなる……それに対しマルは、水を得た魚のように嬉々として口を回した。
「時を待っていた……、都合が良い言葉ですよねぇ。
貴方がたは失敗したくなかった。だから動かなかった。それだけです。
確かに、隙を作らないためであったのでしょうね。はじめのうちは。
でも、一年、二年……時が過ぎていくうちに、そうじゃなくなっていった。
今が続くのが大切だ。そのうちいつか……。そんな言い訳を三年も続けたんですよね? その裏で、きっと無理だと思っていた。
もう領主様を取り戻すのは無理だ。だからとにかく今を維持する。頑張ったんだと言えるように。自分に言い訳できるように。
だから、レイ様に何一つ言ってこなかったんでしょう?
引退したカークさんに全て預けて、貴方たちは現実から目を逸らした。それで充分義理は果たしたと思いたかった。
なのに……貴方がたが諦めたことを、この方が成し遂げた。
そうしたら、そんな風に考えていた自分を、無かったことにしたくなったんですよね?
だからそのために、レイ様を生贄にした。
異母様の傍にいながら、三年間動かなかったことをなじって、領主様やセイバーンを切り捨てるつもりだったことを責めて、ありもしない裏を勘ぐった。
全部貴方がた自身がしてきたことなのに!
十年という時間、セイバーンを離れていたレイ様と違って、貴方がたはずっとこの地にいて、全てを見ていたのに!
なんの事情も知らされず、夢も希望も奪われて、無理やり鎖に繋がれ引き戻されたこの方に、苦しみも悲しみも全部押し付けて!
それはさぞ心の荷が降りたことでしょうね!」
マルの中に、こんな風に熱く滾るものがあったなんて、知らなかった……。
だけどもう充分だと思ったから、マルの手を引いた。
そんな風に怒ってくれる……そんな仲間がいるだけで、俺はもう充分、報われた……。
「離してください。
僕が調べただけで、数度、領主様奪還の機会がありました。なのにこの人たちは……」
「うん。でもなマル、父上は両足が不自由でいらっしゃった。それを皆知らなかったろう?
もしその機会に強行していたら、失敗していたかもしれないし、犠牲者だって沢山出していたかもしれない……。
だから、もっと良い機会をと、精神をすり減らして時を待った。その選択の意味は、確かにあったんじゃないかな」
そう言うと、呆れた! とでも言うかのように、大きく息を吐く。
「知らなかったのはこっちだって同じでしょ⁉︎」
「俺の三年にも、意味はあった。
皆を得た。沢山縁を繋いだ、お前のおかげで。
だから父上の救出が成せたんだ。
つまりさ、苦しかったのは皆同じで、その全てに意味はあった。な? それで今がここにあるんだから、それで充分だろう?
それに父上は……俺たち領主一族は、領民の生活が優先なんだよ。だから、皆の判断は正しかったと、思ってるよ」
犠牲を強いてでも救い出してほしい……なんて、絶対に思っていなかったろう。
それに父上は、皆が助けに来てくれるのを、ただ待っていたのではなかった。
己に行動する機会が巡ってくるのを淡々と狙い、耐えていたのだ。
「皆が耐えて、頑張った。今があるのは、そのためだ。
誰が折れても、今は無かった。
な。
皆、頑張ったんだよ」
ありがとうと言う気持ちを込めて、背中を叩いた。
マルのことだから、言い負かそうと思えばいつだってそれはできたのだと思う。
だけど、きっと今日のこの時を選んだのだ。
セイバーンを背負うと決めた俺を、ちゃんとこの地に根付かせるために。俺への疑念を全て払拭できる機会を選んで、あえて自分が泥を被ってくれた……。
鬼を自分が。俺を姫にして、この地に俺が、受け入られるように……。
「……言っておきますけど。
領主代行をこなしてしまっていたのは、この方が優秀だったってだけです。
地方に送られた書類、全部筆跡同じでしょ。全て、レイシール様の手ですよ。
その程度のことくらい、自分たちで気付いていただきたかったですねぇ。僕がここに来たのは、去年の春の終わりからです」
最後にそう言い捨てて、マルは身を引いた。
そして時を狙ったかのように、コンコンと扉が叩かれ、俺たちは現実に引き戻される。
「レイ殿、少し良いか。貴殿に来客だ」
ディート殿の声だ……。
慌ててサヤが扉に向かった。
到着したばかりなのに来客など……誰だ? しかもディート殿が取り次ぎするって……姫様なら問答無用で呼び出しだろうし……。
いったん確認のため扉の外に向かったサヤが、そのまま慌てて戻って来た……。
「あ、あのっ、お待たせするわけにはいかない方でした……」
「……? 誰? 父上にじゃなく、俺なの?」
「はっはいっ! あの、リカルド様ですっ」
…………っ、えっ⁉︎
「ここアギーだぞ⁉︎」
「社交界だぞ。公爵家同士でも交流するに決まっておろうが」
言ってるそばからズカズカと入室してきたリカルド様が、自ら返答を返してきた。
……見間違いでも聞き間違いでもなかった……本人だ。
「いっ、いやでも……、リカルド様はヴァーリンにいなきゃ駄目じゃないですか⁉︎」
「もう姫様の夫候補を外れたというのに、その必要はあるまい。
そもそも其方には人をやるつもりでいたのだが、クリスめが邪魔ばかりしおってなかなか機会を得られずでな。
夏の話の続きだ。商談はいつにする」
「ちょ、ちょっと待ってください! 商談って早急すぎませんか⁉︎」
「口で説明しても伝わらんのだ。見せるのが早い。なので取り急ぎ、ヴァーリンの屋敷と訓練場に設置したいのだがな」
入って来るなりそんな風に言い、慌てて立ち上がろうとする父上を良いと手で制す。
「セイバーン殿、随分と久しいではないか。もう病は良いのか?」
「は。見ての通りという体たらくではありますが……。
リカルド殿……レイシールとは……面識が?」
「あるぞ。此奴が学徒の頃からな。
レイシール、其方、地方行政官長、受けるそうではないか。
断っても良いのだぞ。なんなら私がクリスに言ってやろう」
「い、いぇ……、とても興味深い役職なので……」
「なんだそうか。
好まぬと言えば、うちで使ってやったものを……」
「剣握れないんですよ俺は⁉︎ 前にもお伝えしましたよね⁉︎」
「剣など他にいくらでも握る者がいる。其方は私の補佐役として来れば良い」
まるで俺を口説くかのように熱心なリカルド様に、古参らは固まってしまった。
マルの虚言が、虚言じゃなかったことに呆然としている……。
虚言であってくれれば良かったのに! と、内心思いながら俺は、とりあえず場所を変えましょうと必死でリカルド様を宥めにかかった。
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