404 / 1,121
死の予感 2
しおりを挟む
「ちょ……駄目、絶対に駄目だ‼︎ 駄目に決まってるだろ⁉︎」
反射でそう、言葉が勝手に口から溢れたのだけど、サヤは聞いていない。
ハインに何かを言い、シザーを呼んで、身振りで説明を加えつつ、話を始め。
こっちの声は聞こえているだろうに、一切無視。
桶を持った村人を呼び止め、また何かを伝える。
「サヤ⁉︎」
呼び掛けるけれど、吹き上がった熱風を吸ってしまい、仰け反って咳き込んだ。
くそっ、私が行きますって、何考えてそんなことを口にしたんだ。
舌打ちして、もう一度露台の下を覗き込んだのだけど、サヤの姿が無い……。慌てて視線を巡らせると、まだ火の回りが遅い、右側に移動していた。ジークらに、地面を指差し何かを伝え、シザーに腰から外したものを手渡して、次にしたことはというと、先程の村人から受け取った桶の水を、頭から被ること。
「駄目だって、言ってるだろーーーー⁉︎」
いかにも火の中に飛び込みますといった準備に、本気で怒って吠えた。
けれど、やはり無視される。
何杯かの水を被り、ずぶ濡れになったサヤは、顔の水を手で払う。
その仕草すら艶やかで、どこか色っぽく見えてしまうものだから、俺の頭はどうなってるんだと一人で苦悩した。
いかん。このままだとサヤが火に飛び込む。駄目だ。死のう。俺が飛び降りれば、そんな危険なことはさせないで済む。
混乱した頭で露台に手を掛けると「レイ‼︎」という、殺気すら感じる鋭い声。
反射で手が引っ込んだ。そして視線は、本気の顔のサヤに吸い付いたまま……。
「待っとき」
有無を言わせぬ一言。
シザーに渡していたものを、もう一度受け取って。サヤはシザーを残し、少し後方に下がった。
シザーはその場に腰を落とし、両手をがっちりと組む。
何をしているのか分からず、首を傾げた次の瞬間、サヤはシザーに向かい、遠慮のない助走を開始した。
そのまま激突するかと思われたが、シザーの組まれた手に、サヤの足が乗ると、シザーは仰け反るようにして上に振り上げる!
……嘘だろ?
と、思った……。
サヤが、ふわりと宙に舞ったのだ。
呆気にとられてしまった。俺がいるのは三階で、跳躍して届くような、そんな高さじゃない。
何より、そんな方法で宙に跳ね上がって、着地を、どうするつもりだ⁉︎
そのまま落ちれば、怪我ではすまない。
ゾ……と、背筋が凍った。
けれどサヤは、まるで天使のように軽やかに空中を駆けて、離れた三階の露台に、手を掛けた。
少し高さが足りず、露台の手摺りがサヤがそこに降り立つことを阻んだけれど、彼女は更に、信じられないことをする。
反動を利用するように、手摺りに掛けた手に力を入れると、足りない距離分をひょいと軽く、上がってしまったのだ。
猫のようにしなやかに、露台の手摺り上に両足を降ろす。
そうしてそのまま、手摺りの上を駆けたかと思うと、すぐ隣の部屋の露台に跳躍。
「ばっ……っ⁉︎」
静止なんてする隙も与えてもらえなかった。
なんの躊躇いもない動作だったのだ。そして当然のように手摺り上に着地して、また跳躍。
次の瞬間には、俺の目の前にいた……。
「…………」
信じられず、見つめるしかできない。
サヤは、濃紺の衣装と白い肌の対比が、とても美しかった…………。
濡れた髪は煌めいて、鳶色の瞳も炎を映し、まるで燃立つ、最高級の紅玉のよう。
ただひたすら圧倒されて、見つめていると……。
「……ただいま、レイ」
そう言ってから彼女は、約束の間際にもした、啄ばむような口づけを、俺の唇に落とした。
柔らかい感触に、現実味が無い…………。
「時間、ないから。レイ、私の背中に乗って」
そのまま背を向けて、俺の前にしゃがむ。
呆然としていると「早う!」と急かされ、慌てて言われた通りにした。
サヤの濡れた背中に密着して、腕を体の前に回し……っ。
「⁉︎」
引っ込めた。
手がちょうど、柔らかな場所に来てしまうのだ。弾力に焦った。そうだ。補整着を身につけてないんだった。
「首か、肩に回してしっかり掴まって。極力密着して、その方が、跳躍が安定する」
テキパキと告げられ、こんな状況で意識している自分を心の中で罵倒した。
言われた通り、両肩を掴むように、腕を回す。首を締めてしまわないよう気を付けて。すると彼女は、俺なんて軽いものだというように、太腿を抱えて簡単に立ち上がる。
幅僅か二十糎程しかない手摺りの上に登り、俺を背負ったまま、そこを歩く。
恐ろしくて目を瞑った。
階下からの炎を足に感じる。サヤはそこに、立っているのだ。
そう思った次の瞬間に、身体が後方に引っ張られるような錯覚。
助走と、跳躍。階下からの悲鳴。けれど、安堵の吐息に変わった。
今度は、手摺りの上ではなく、露台の中に着地した。膝をつくように崩れる。彼女にとっても、これは大変なことなのだと、それで分かった。
傷に響いて、つい上がりそうになった呻き声を咬み殺すと、サヤが「かんにん」と、小さく呟く。
「次はもうちょっと、丁寧に降りる」
もう一つ露台を飛び移ると、そういう意味。
それに俺は、首を振った。
「痛みなんて、一瞬のことだ。
そんなことは気にしないで良い」
どうだっていい。
失敗でもしてしまえば、サヤが危険なのだ。自身のやりやすいようにしてくれと、念を押すと、後方で火が、爆発した。
先程までいた露台だ。とうとう部屋の扉が破られたらしい。
一瞬の差だった。ゾッとする熱風に、サヤがまた、立ち上がる。
「次、行こう」
返事の代わりに、肩に捕まり直した。
もう一つ露台を移り、そこでサヤは俺を下ろす。
「少し待って」
先程シザーに渡していたのは髪を編み込んだというあの縄であったらしい。
それを取り出して、何か複雑な括り方をした。出来上がったのは二重の輪ができた結び目で、それを俺の両脇と、足にかける。
上着を脱いで、それを手摺りに掛けてから、サヤは俺をそこに座らせた。
「まずレイを下ろす。その結び目。そこに掴まって、じっとしてたらええ。
下は、濡らした飼葉を集めてもろうてる。万が一落ちても、大丈夫やし、落ち着いて掴まっておいて」
パチン。
パリン……。
と、雑音の中、冷静なサヤの声。
どうせ俺が逃げなければ、彼女も逃げないのだろう。ならさっさと降りようと腹をくくって頷くと、彼女はにこりと笑った。
そうして「ほな、下でな」と言ってから、トンと、俺の肩を押す。
抵抗せず後方に傾いで、落下。けれど直ぐにがくんと止まった。
そのままゆっくりと、縄を緩めて、俺を下ろす。二階に差し掛かると、部屋の中が炎に染まっていた。
窓硝子がビリビリしていて、今にも吹き飛びそうだ……。
顔を背け、下を見た。
ハインやジークらが飼葉を運び、積み上げていて、そこに村人が水を掛けている。
飼葉が燃えてしまわないように、そうしているのだろう。一階の窓はすでに割れ、火を吹いている様子だ。
と、また、頭上で爆発!
とうとう二階の窓硝子が割れて、炎が噴き出したのだ。熱風を感じた瞬間、フッと、身体が浮いた気がした。
違う、落ちてる⁉︎
縄が切れたのだと気付いた時には、飼葉に埋まっていた。
「サヤ‼︎」
必死で這い出し、空に向かって叫ぶと、炎を吹き出す窓の上、三階の露台のサヤが見え。絶望のあまり、膝が崩れる。
これじゃぁ、俺の身代わりになったようなものだ…………。
けれどそんな俺に容赦なく腕が伸び、抱え上げられてしまう。
「サヤ、サヤァ⁉︎」
周りなんて見えなかった。脚の痛みすら、忘れていた。
俺を見下ろしていたサヤが、手摺りの上に立つ。
そのまま、トン……と、軽く蹴って、またふわりと、宙を舞い、当然…………落ちる。
「いやだあああああアアアァァァァ‼︎」
兄上と重なるその光景に、意識せず叫んでいた。
反射でそう、言葉が勝手に口から溢れたのだけど、サヤは聞いていない。
ハインに何かを言い、シザーを呼んで、身振りで説明を加えつつ、話を始め。
こっちの声は聞こえているだろうに、一切無視。
桶を持った村人を呼び止め、また何かを伝える。
「サヤ⁉︎」
呼び掛けるけれど、吹き上がった熱風を吸ってしまい、仰け反って咳き込んだ。
くそっ、私が行きますって、何考えてそんなことを口にしたんだ。
舌打ちして、もう一度露台の下を覗き込んだのだけど、サヤの姿が無い……。慌てて視線を巡らせると、まだ火の回りが遅い、右側に移動していた。ジークらに、地面を指差し何かを伝え、シザーに腰から外したものを手渡して、次にしたことはというと、先程の村人から受け取った桶の水を、頭から被ること。
「駄目だって、言ってるだろーーーー⁉︎」
いかにも火の中に飛び込みますといった準備に、本気で怒って吠えた。
けれど、やはり無視される。
何杯かの水を被り、ずぶ濡れになったサヤは、顔の水を手で払う。
その仕草すら艶やかで、どこか色っぽく見えてしまうものだから、俺の頭はどうなってるんだと一人で苦悩した。
いかん。このままだとサヤが火に飛び込む。駄目だ。死のう。俺が飛び降りれば、そんな危険なことはさせないで済む。
混乱した頭で露台に手を掛けると「レイ‼︎」という、殺気すら感じる鋭い声。
反射で手が引っ込んだ。そして視線は、本気の顔のサヤに吸い付いたまま……。
「待っとき」
有無を言わせぬ一言。
シザーに渡していたものを、もう一度受け取って。サヤはシザーを残し、少し後方に下がった。
シザーはその場に腰を落とし、両手をがっちりと組む。
何をしているのか分からず、首を傾げた次の瞬間、サヤはシザーに向かい、遠慮のない助走を開始した。
そのまま激突するかと思われたが、シザーの組まれた手に、サヤの足が乗ると、シザーは仰け反るようにして上に振り上げる!
……嘘だろ?
と、思った……。
サヤが、ふわりと宙に舞ったのだ。
呆気にとられてしまった。俺がいるのは三階で、跳躍して届くような、そんな高さじゃない。
何より、そんな方法で宙に跳ね上がって、着地を、どうするつもりだ⁉︎
そのまま落ちれば、怪我ではすまない。
ゾ……と、背筋が凍った。
けれどサヤは、まるで天使のように軽やかに空中を駆けて、離れた三階の露台に、手を掛けた。
少し高さが足りず、露台の手摺りがサヤがそこに降り立つことを阻んだけれど、彼女は更に、信じられないことをする。
反動を利用するように、手摺りに掛けた手に力を入れると、足りない距離分をひょいと軽く、上がってしまったのだ。
猫のようにしなやかに、露台の手摺り上に両足を降ろす。
そうしてそのまま、手摺りの上を駆けたかと思うと、すぐ隣の部屋の露台に跳躍。
「ばっ……っ⁉︎」
静止なんてする隙も与えてもらえなかった。
なんの躊躇いもない動作だったのだ。そして当然のように手摺り上に着地して、また跳躍。
次の瞬間には、俺の目の前にいた……。
「…………」
信じられず、見つめるしかできない。
サヤは、濃紺の衣装と白い肌の対比が、とても美しかった…………。
濡れた髪は煌めいて、鳶色の瞳も炎を映し、まるで燃立つ、最高級の紅玉のよう。
ただひたすら圧倒されて、見つめていると……。
「……ただいま、レイ」
そう言ってから彼女は、約束の間際にもした、啄ばむような口づけを、俺の唇に落とした。
柔らかい感触に、現実味が無い…………。
「時間、ないから。レイ、私の背中に乗って」
そのまま背を向けて、俺の前にしゃがむ。
呆然としていると「早う!」と急かされ、慌てて言われた通りにした。
サヤの濡れた背中に密着して、腕を体の前に回し……っ。
「⁉︎」
引っ込めた。
手がちょうど、柔らかな場所に来てしまうのだ。弾力に焦った。そうだ。補整着を身につけてないんだった。
「首か、肩に回してしっかり掴まって。極力密着して、その方が、跳躍が安定する」
テキパキと告げられ、こんな状況で意識している自分を心の中で罵倒した。
言われた通り、両肩を掴むように、腕を回す。首を締めてしまわないよう気を付けて。すると彼女は、俺なんて軽いものだというように、太腿を抱えて簡単に立ち上がる。
幅僅か二十糎程しかない手摺りの上に登り、俺を背負ったまま、そこを歩く。
恐ろしくて目を瞑った。
階下からの炎を足に感じる。サヤはそこに、立っているのだ。
そう思った次の瞬間に、身体が後方に引っ張られるような錯覚。
助走と、跳躍。階下からの悲鳴。けれど、安堵の吐息に変わった。
今度は、手摺りの上ではなく、露台の中に着地した。膝をつくように崩れる。彼女にとっても、これは大変なことなのだと、それで分かった。
傷に響いて、つい上がりそうになった呻き声を咬み殺すと、サヤが「かんにん」と、小さく呟く。
「次はもうちょっと、丁寧に降りる」
もう一つ露台を飛び移ると、そういう意味。
それに俺は、首を振った。
「痛みなんて、一瞬のことだ。
そんなことは気にしないで良い」
どうだっていい。
失敗でもしてしまえば、サヤが危険なのだ。自身のやりやすいようにしてくれと、念を押すと、後方で火が、爆発した。
先程までいた露台だ。とうとう部屋の扉が破られたらしい。
一瞬の差だった。ゾッとする熱風に、サヤがまた、立ち上がる。
「次、行こう」
返事の代わりに、肩に捕まり直した。
もう一つ露台を移り、そこでサヤは俺を下ろす。
「少し待って」
先程シザーに渡していたのは髪を編み込んだというあの縄であったらしい。
それを取り出して、何か複雑な括り方をした。出来上がったのは二重の輪ができた結び目で、それを俺の両脇と、足にかける。
上着を脱いで、それを手摺りに掛けてから、サヤは俺をそこに座らせた。
「まずレイを下ろす。その結び目。そこに掴まって、じっとしてたらええ。
下は、濡らした飼葉を集めてもろうてる。万が一落ちても、大丈夫やし、落ち着いて掴まっておいて」
パチン。
パリン……。
と、雑音の中、冷静なサヤの声。
どうせ俺が逃げなければ、彼女も逃げないのだろう。ならさっさと降りようと腹をくくって頷くと、彼女はにこりと笑った。
そうして「ほな、下でな」と言ってから、トンと、俺の肩を押す。
抵抗せず後方に傾いで、落下。けれど直ぐにがくんと止まった。
そのままゆっくりと、縄を緩めて、俺を下ろす。二階に差し掛かると、部屋の中が炎に染まっていた。
窓硝子がビリビリしていて、今にも吹き飛びそうだ……。
顔を背け、下を見た。
ハインやジークらが飼葉を運び、積み上げていて、そこに村人が水を掛けている。
飼葉が燃えてしまわないように、そうしているのだろう。一階の窓はすでに割れ、火を吹いている様子だ。
と、また、頭上で爆発!
とうとう二階の窓硝子が割れて、炎が噴き出したのだ。熱風を感じた瞬間、フッと、身体が浮いた気がした。
違う、落ちてる⁉︎
縄が切れたのだと気付いた時には、飼葉に埋まっていた。
「サヤ‼︎」
必死で這い出し、空に向かって叫ぶと、炎を吹き出す窓の上、三階の露台のサヤが見え。絶望のあまり、膝が崩れる。
これじゃぁ、俺の身代わりになったようなものだ…………。
けれどそんな俺に容赦なく腕が伸び、抱え上げられてしまう。
「サヤ、サヤァ⁉︎」
周りなんて見えなかった。脚の痛みすら、忘れていた。
俺を見下ろしていたサヤが、手摺りの上に立つ。
そのまま、トン……と、軽く蹴って、またふわりと、宙を舞い、当然…………落ちる。
「いやだあああああアアアァァァァ‼︎」
兄上と重なるその光景に、意識せず叫んでいた。
0
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~
マチバリ
恋愛
美しい見た目ゆえ、領主の養女となったレナ。
有用な道具に仕立てとする厳しい教育や義兄の異常な執着にうんざりしながらも何もかもを諦めて生きていた。
だが、その運命は悪政を働く領主一家を捕えに来た<狼将軍>と呼ばれる男の登場により激変する。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる