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恐怖 3
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言ってる間に、ハインが馬に鞭を入れる音がし、騒音と、揺れが酷くなった。
道は舗装されてないから石が転がっていたり窪みがあったり…それに車輪は翻弄されて、相当揺れる。一応、揺れ緩和のために座褥が引かれているがそんなんじゃ太刀打ちできない。
だから上部に取っ手をつけてあった。これに捕まって、ある程度の揺れを制御するのだ。
俺は結構慣れているので、急にガタンとなっても腕に力を入れて、飛び上がりすぎたり、座面にぶつかったりするのを緩和できるのだが、サヤは難しそうだ。「わっ」とか「ひっ」とか、悲鳴を上げている。しかも何故か、取っ手を持とうとしない。
「サヤ、しゃべると、舌を噛む。取っ手を使わないと、辛いよ?」
「で、でも。私、壊してしまうかも、しれないか……わっ」
最後のわっは、大きく飛び跳ねてしまって、座席にお尻をぶつけた悲鳴だ。
涙目になっている……。ああもう……半日それじゃ痣だらけだぞ。
「ちょっとごめん」
声を掛けてから、空いている右手をサヤの肩に回した。
なんにも掴まっていないよりは、まだマシかと思ったのだ。
こっちの手はあまり力が入らないから、ほんと慰め程度かもしれないけど。
俺に肩を抱かれることとなったサヤは、緊張しているのかガチガチだ。
「一時間ほどしたら、休憩場所があるから。しばらく頑張って」
俯いてしまって顔は見えなかったけれど、俺がそう言うと、コクコクと首を縦に振ったので、理解はしたのだろう。今度は俺を破壊しないかと緊張しているのかな? そんなに神経質にならなくても大丈夫だと思うけど。
予定通り、一時間ほどしたら休憩となった。半日走り続けるのは正直辛い。
まだ朝早い時間であるためか、休憩場所に旅人の姿は無かった。田舎だしね。こんなところに旅の目的がある人間は少ないだろう。
サヤはよろよろと馬車を降り、ペタンと地面に座り込む。
心なしか呼吸も荒く、顔も青い。馬車酔いだろうか?それにしては何か、様子が変な気もするが……。
「サヤは馬車に慣れていないのですね」
ずっと御者台で運転をしていたハインも疲れていると思うのだが、サヤの方が消耗が激しい。
まあ、あれだけガチガチになってたら疲れもするよな。
少し心配になって、背中でもさすろうかと思ったのだが、サヤはさりげなく身を引き、避けた。
「わ、私の所には、こんなに、揺れる乗り物、遊具ぐらいしか、無いと思います……」
そう言い、笑みを貼り付けたような顔をするサヤ。
言葉が、まだ揺れているかのように、途切れ途切れだった。
そこでやっと、サヤの様子のおかしさを明確に意識した。
夜のサヤと同じだ。歯の根が合っていない……血の気が引いているのも、きっと馬車酔いじゃない!
「サヤごめんっ、俺、なんかしたんだな?
ハイン、敷物を出してくれ。サヤが辛そうなんだ」
「畏まりました」
「えっ、だ、大丈夫です……」
ハインはすぐ、馬車の後部の物入れから、休憩の時に使う敷物を出してきた。それを平らな場所に広げる。
大丈夫と繰り返すサヤをもう一度入念に見るが、到底大丈夫には見えない。
「大丈夫じゃない。我慢はするなと、昨日も言ったよ。
原因は俺だろう?本当にごめん、全然、気付けなかった……。
落ち着くまで、近付かないから……暫くここで休憩しなさい。分かったね?」
目を見てそう伝えると、血の気が引いた顔のサヤは、しばらく視線を彷徨わせた。
そして、誤魔化せないと悟ったのか、小さな声で「はぃ……」と、返事を返す。
よし。
「ハイン、お茶を入れよう」
「何をなさったんですか」
「うん……サヤが馬車を壊すって気にして、取っ手を持たないから、肩に手を回してたんだ」
「それだけですか?」
「うん」
「…………そうですか」
そう。馬車に乗ったサヤは興味深そうで、俺の隣に座ること自体を怖がってる様子は無かった。問題があったとすれば、それくらいだ。
触れられたことが駄目だったんじゃないかと思う。
また、踏み込んでしまったのだ、きっと。
「サヤ、飲み物は飲める?」
馬車の移動の時は、休憩用の道具を色々詰め込んでいる。
俺は農地の視察をすることもあるから、お茶の道具は欠かさない。飲み水が近くに無いこともあるので、小ぶりな樽に入れた水と、薬缶を常に用意しているのだ。
休憩場所にある焚き火の跡に三徳を設置して湯を沸かし、綿の袋に茶葉を入れておいたものを放り込んでおけばお茶が入れられる。茶葉の処理も楽で良い。
木の椀にお茶を注いで持っていくと、サヤは敷物の上で丸くなって座っていた。
膝を抱いて、頭をその上に乗せた体制だ。
呼吸は落ち着いたように思う。顔色はまだ少し青いな……震えは……治まってきてるか?だが、近付きすぎないようにする。
手に触れてしまわないないように気を付けながら椀を渡して、少し離れた木の根に腰を下ろす。
しばらく黙ってお茶を啜っていると、サヤから話し掛けてきた。
「申し訳、ありません……」
「なんで謝るの?何も申し訳ないことはないと思うけど」
「でも……レイシール様は、何も、なさってません」
「サヤには、そうじゃなかったんだろう?なら、悪かったのは俺だよ。ごめん……」
「いいえ!レイシール様は、悪くありません。私の過剰反応ですから!」
語調を強くして、俺の謝罪を遮るサヤ。
そして、ぎゅっと目を瞑って深呼吸を始めた。
多分これは、サヤが自分の気持ちを落ち着けるための癖なんだろうな……。なんとなく、そう思う。だから待った。サヤが落ち着くのを。
そして、しばらく呼吸を繰り返したサヤは、フゥと、大きく息を吐いてから、俺の方に向き直った。
「レイシール様は、悪くありません。私の過剰反応なんです。
その……実は私、男の人が、怖いんです。
子供の頃、誘拐されかけたことがあって……、触られたり、女扱いされるとその、身体が拒否するとことが、あるんです」
誘拐?
不穏な言葉に、俺は眉を寄せる。
サヤほどの勇者を誘拐できる猛者がいるのかと一瞬思ったが、子供の頃と言うなら、武術を習う前なのかもしれない。
サヤはそこまでは一気に喋った。そして、急激に勢いを落とす。言いにくそうに視線を彷徨わせ、今度は小さな声で、あとを続けた。
「……その……ちょっと……い、いやらしいことを、されました……。あっ、大丈夫です。ちゃんと、助けられたから……すぐにカナくんが、来てくれたから……たいしたことは、されてません。
だけどその…………どうにも……体が勝手に、拒否してしまって……こんな風に、なることがあります。
誘拐未遂が、そもそもの原因、なんですけど……。痴漢とか、あったことも度々あって……そのせいで、男の人に、距離を、詰められることが、怖くなりました。
レイシール様には、そういう気持ち悪さは、全然感じて、ないんですよ?
でも、何かの拍子とかで、無意識に、身体が勝手に、こうなって、しまって……」
苦笑しながら、自分の震える手を見つめるサヤ。話すうちに、言葉の震えがまたひどくなってきている。そんな自分に苛立つように、サヤの瞳の奥に自身を責めるような色が垣間見えた。
俺は血の気が引く思いだった。
昨日俺は、相当サヤを追い詰める事をしていたのだと気付いたからだ。窓越しで着替えをさせたなんて最悪じゃないのか⁉︎ そもそも、男の俺たちと一緒の場所に居続けるというのは、相当苦痛だったのではないのか?
そして、よくよく考えれば、サヤの震える理由、その状態を、俺は知っていた……自分でも、経験していることだったのだ。記憶が蘇る時に起きるのだ。体が勝手に反応してしまう。
そうか、そういうことか。サヤのこれは、拒絶反応だったんだ。俺は、なんて鈍感なんだ!
「子供の、頃って……」
「九歳か、十歳か……それくらい、です。結構、記憶もあやふやで……たいして、憶えても、いないのに……本当……不甲斐ない……」
「っ⁉︎違うだろ!たったそれだけしか経ってないんだよ!割り切れるわけないだろ⁉︎
そうか……ごめんな、嫌な話をさせた……本当にごめんっ。
それから、事情を知らなかったとはいえ、今までずっと、サヤに無体な事をして、申し訳なかった!」
「いえ!無体なことなんて、ありませんでした!本当です。
それに、普段は結構、平気なんですよ?
レイシール様やハインさんには、嫌悪感も無いんです。
これは、条件反射みたいなものなんですよ」
「だが、辛くなかったはずがない。現にこうして、震えている」
「これは私が悪いんです。レイシール様は、私を支えておこうとしてくれただけです。悪意なんてないのに、怖がる私がおかしいんです」
「おかしくない!サヤのそれは、防衛本能だろ!大丈夫じゃないから、体がそれを訴えてるんだよ!それを自分がおかしいみたいに言うな!」
つい声を荒らげてしまった。
だけど言わずにはおれなかった。
「サヤ……サヤの身体が、正しいんだ。
サヤは辛い思いをした。身体は、その傷が癒えていないと、そう言ってるんだよ。
自分を責めるのはダメだ。それは、サヤに無体を働いた相手を、肯定するのと一緒だ。サヤは悪くない、おかしくない!」
俺が急に怒り出したから、サヤは慌ててしまったようだ。オロオロ視線を彷徨わせてから、様子を見守っていたハインに助けを求める。泣きそうな顔をして、ハインを見るのだ。
それを見ていたハインは、何か複雑そうな顔をしてから、こちらにやってきた。
涙目のサヤと、怒る俺をしばらく見つめてから、静かに淡々と話し出した。
「サヤ、レイシール様にお仕えするにあたって、理解しなければならない事があります。
他の貴族の方というのはこういう考え方は致しません。
自分にとって嫌な事であったとしても、態度に出さず、それを受け入れ、行動する必要があります。ですから、今のサヤが正しい。本来は、叱責される様なことではないのです。
ですが、レイシール様に仕えるなら逆です。この方はむしろ、そのような事が、お嫌いです。
貴女にとって、周りに合わせてもらうことより、自分が我慢する方が楽だと思うことでも、この方は許しません。
今回のことは、サヤが自分を虐めるから、レイシール様が怒りました。このように、貴族にあるまじき方向に、理不尽な方なんですよ」
なんか、俺が我儘みたいな言い方だな……。
「始めは、多少不自由ですし、我慢することを我慢させられるので、辛いでしょうが、これは義務です。仕事なのだと割り切ってください」
をい……。
「ですからサヤは、自分を虐めない。自分が間違っていると思わない。それをしなければなりません。
サヤの身体が正しいのです。怖いこと、嫌なことを我慢してはいけません。
今回お話し頂けたことで、我々も気を付けることが明確に分かりました。
なので、だいたいの部分は気を付けられると思います。
ですがこれは、貴女に気を使ってやるのではありません。レイシール様の為に、するのです。
お仕事ですから、頑張らなくてはなりませんよ」
なんかよく分からないことを言ってるぞ、ハイン。
なんで俺のためにサヤが頑張って自分を虐めないなんてことになるんだ?
そう思ったけれど、とりあえず自分の神経が逆立っているからハインの言葉を素直に聞けないだけかもしれないと思った。イラついてる時の俺は頭が普段以上に働かないのだ。それは自覚している。だから落ち着こう……。
サヤに習って、深呼吸をして心を落ち着けることにする。
その間に、サヤもハインの言葉をきちんと理解した様だ。顔を上げて、真剣な顔で「はい」と、返事をしていた。やっぱり俺がおかしいのか……サヤは納得してるしな……。冷静になろう。
自分の頭を冷やしていたら、馬車のことを思い出した。まだメバックまで、ずいぶん距離があるのだ。
「ハイン、急ぐのはやめよう。夕方までに着ければいい」
「そうですね。揺れがましなら、中に乗っていられるでしょう。
サヤ、気持ち悪さは治まりましたか?……震えは、治まったみたいですが」
「えっ、あ……そう、ですね。もう、大丈夫だと思います……」
俺の理不尽な怒りでサヤの震えは吹き飛んだらしい。
気づけば、サヤは震えていなかった。不思議そうな顔をして、自分の手を見ている。
「レイシール様の横に、座っていられそうですか?
無理なら外を歩いても良いし、ちょっと窮屈ですが、御者台にも座れます」
「大丈夫です。その……レイシール様が、お嫌でなければ……」
「俺が嫌なわけないだろ。……ごめん、俺が怒ることじゃなかった……」
「いえ……ありがとう、ございます」
若干居心地悪く謝罪してから、休憩は終了となった。
出していた荷物を片付けて、もう一度馬車に乗り込む。
ほぼ馬の並足程度の速度となったので、揺れは随分と緩和された。
とりあえず俺は、サヤに触れないよう、壁側に詰めて座る。
そして、沈黙したまま時間を過ごし、いたたまれなくなって口を開いた。
「サヤ……俺たちと一緒にいるのは、嫌じゃない?」
「え?嫌なんてそんな……!」
「正直に言って良いんだ。男二人とずっと過ごしていくことになる。それは、サヤの経験を思えば、結構な苦痛なんじゃないかと、心配なんだ……」
思えば、初めからそうだった。
サヤは常に、俺たちに近付き過ぎないようにしていたのだ。それは俺たちが怖いからなんじゃないか?今はまだ、一日やそこらの付き合いだから、我慢していられるかもしれない。でもこれからずっとそれが続くかもしれないなんて……俺なら耐えられない。
「もしそうなら……メバックで、女性の多い職を、探すこともできる。
俺の友人……ギルの所なら……サヤもそんなに、不安にならず過ごせるかなって。
口の硬いやつだから、事情を話しても……」
「いえ! 私は……私を、ここに居させて下さい。辛いなんてこと、ありません。無理もしていませんから!
今回は、昨日の事もあったから……まだちょっと、過剰になってただけです。
私……ご迷惑を、おかけしてると、思うんですけど……でも……」
「迷惑なんてかけられてない。俺は、サヤがいてくれれば助かるし、嬉しいよ。
けどね、サヤの苦痛は、気持ちだけでどうにかできるものじゃないだろう?」
俺も身に覚えがあるから……。十五年も前のことなのに、未だに引きずるのだから。
たった数年前の出来事を、簡単に割り切れるはずないと、解ってる。
だから……。
「サヤを苦しませるのが一番嫌なんだよ。
それは俺も苦しい……」
自分のことのように、苦しい……。あんな思いを、ずっとさせることになるなんて、考えただけでも怖い。そんなことになったら、サヤを死なせてしまうんじゃないかと……母のようにしてしまうんじゃないかと、怖くて仕方がない……。
「レイシール様、私……ここに居たいです。
大丈夫です。無理する大丈夫じゃないですよ?
ちゃんと、自分の気持ちを、大切にすると約束しますから。
私……きっと大丈夫だって、思うんです。だって………レイシール様は、怒ってくれたから……。あっちで、私が我慢するんに気付いて、怒ってくれはったんは……おばあちゃんだけやった……」
そう言ったサヤが、俺の右手に触れた。座面に置いていた手に、自身の左手を少しだけ触れ合わせたのだ。指先が当たる程度の、ささやかな接触。
「同じ様なこと、言われたん思い出しました。
自分を虐めたらあかんて、小夜はなんも悪うないって。
おばあちゃんと同じこと、言うてくれはる人……悪い人なわけあらへん……。一緒にいて、辛くなるわけあらへんやないですか……。せやから、誰かに預けるなんて、言わんといて……」
真剣な顔で、俺を見てそう言った。手を添えたままで。
その真剣な顔が、思いの外近くて……いや、馬車の中なんだから、物理的に距離は無理なんだけど……だけどその…………っごめん!
「わ、解った……。サヤが、嫌じゃないなら、良いんだ……」
結局根負けした……。うん……いや、嬉しいんだよ?
サヤに無理させてるんじゃないなら、俺は全く問題無いんだ。
だけど、もしまた辛くなったりしたら、必ず言う様にと念を押しておく。
すると、サヤは笑って「はい」と答えた。そして、最後にこう言ったのだ。
「ハインさんが、レイシール様を本当に大切にしている理由、解った様な気がします」
そう? ハインは特殊すぎるよ。だいぶん過剰だと思うし。
それはそうと……この手は……どうすれば良いんだ……う、動くに動けない!
道は舗装されてないから石が転がっていたり窪みがあったり…それに車輪は翻弄されて、相当揺れる。一応、揺れ緩和のために座褥が引かれているがそんなんじゃ太刀打ちできない。
だから上部に取っ手をつけてあった。これに捕まって、ある程度の揺れを制御するのだ。
俺は結構慣れているので、急にガタンとなっても腕に力を入れて、飛び上がりすぎたり、座面にぶつかったりするのを緩和できるのだが、サヤは難しそうだ。「わっ」とか「ひっ」とか、悲鳴を上げている。しかも何故か、取っ手を持とうとしない。
「サヤ、しゃべると、舌を噛む。取っ手を使わないと、辛いよ?」
「で、でも。私、壊してしまうかも、しれないか……わっ」
最後のわっは、大きく飛び跳ねてしまって、座席にお尻をぶつけた悲鳴だ。
涙目になっている……。ああもう……半日それじゃ痣だらけだぞ。
「ちょっとごめん」
声を掛けてから、空いている右手をサヤの肩に回した。
なんにも掴まっていないよりは、まだマシかと思ったのだ。
こっちの手はあまり力が入らないから、ほんと慰め程度かもしれないけど。
俺に肩を抱かれることとなったサヤは、緊張しているのかガチガチだ。
「一時間ほどしたら、休憩場所があるから。しばらく頑張って」
俯いてしまって顔は見えなかったけれど、俺がそう言うと、コクコクと首を縦に振ったので、理解はしたのだろう。今度は俺を破壊しないかと緊張しているのかな? そんなに神経質にならなくても大丈夫だと思うけど。
予定通り、一時間ほどしたら休憩となった。半日走り続けるのは正直辛い。
まだ朝早い時間であるためか、休憩場所に旅人の姿は無かった。田舎だしね。こんなところに旅の目的がある人間は少ないだろう。
サヤはよろよろと馬車を降り、ペタンと地面に座り込む。
心なしか呼吸も荒く、顔も青い。馬車酔いだろうか?それにしては何か、様子が変な気もするが……。
「サヤは馬車に慣れていないのですね」
ずっと御者台で運転をしていたハインも疲れていると思うのだが、サヤの方が消耗が激しい。
まあ、あれだけガチガチになってたら疲れもするよな。
少し心配になって、背中でもさすろうかと思ったのだが、サヤはさりげなく身を引き、避けた。
「わ、私の所には、こんなに、揺れる乗り物、遊具ぐらいしか、無いと思います……」
そう言い、笑みを貼り付けたような顔をするサヤ。
言葉が、まだ揺れているかのように、途切れ途切れだった。
そこでやっと、サヤの様子のおかしさを明確に意識した。
夜のサヤと同じだ。歯の根が合っていない……血の気が引いているのも、きっと馬車酔いじゃない!
「サヤごめんっ、俺、なんかしたんだな?
ハイン、敷物を出してくれ。サヤが辛そうなんだ」
「畏まりました」
「えっ、だ、大丈夫です……」
ハインはすぐ、馬車の後部の物入れから、休憩の時に使う敷物を出してきた。それを平らな場所に広げる。
大丈夫と繰り返すサヤをもう一度入念に見るが、到底大丈夫には見えない。
「大丈夫じゃない。我慢はするなと、昨日も言ったよ。
原因は俺だろう?本当にごめん、全然、気付けなかった……。
落ち着くまで、近付かないから……暫くここで休憩しなさい。分かったね?」
目を見てそう伝えると、血の気が引いた顔のサヤは、しばらく視線を彷徨わせた。
そして、誤魔化せないと悟ったのか、小さな声で「はぃ……」と、返事を返す。
よし。
「ハイン、お茶を入れよう」
「何をなさったんですか」
「うん……サヤが馬車を壊すって気にして、取っ手を持たないから、肩に手を回してたんだ」
「それだけですか?」
「うん」
「…………そうですか」
そう。馬車に乗ったサヤは興味深そうで、俺の隣に座ること自体を怖がってる様子は無かった。問題があったとすれば、それくらいだ。
触れられたことが駄目だったんじゃないかと思う。
また、踏み込んでしまったのだ、きっと。
「サヤ、飲み物は飲める?」
馬車の移動の時は、休憩用の道具を色々詰め込んでいる。
俺は農地の視察をすることもあるから、お茶の道具は欠かさない。飲み水が近くに無いこともあるので、小ぶりな樽に入れた水と、薬缶を常に用意しているのだ。
休憩場所にある焚き火の跡に三徳を設置して湯を沸かし、綿の袋に茶葉を入れておいたものを放り込んでおけばお茶が入れられる。茶葉の処理も楽で良い。
木の椀にお茶を注いで持っていくと、サヤは敷物の上で丸くなって座っていた。
膝を抱いて、頭をその上に乗せた体制だ。
呼吸は落ち着いたように思う。顔色はまだ少し青いな……震えは……治まってきてるか?だが、近付きすぎないようにする。
手に触れてしまわないないように気を付けながら椀を渡して、少し離れた木の根に腰を下ろす。
しばらく黙ってお茶を啜っていると、サヤから話し掛けてきた。
「申し訳、ありません……」
「なんで謝るの?何も申し訳ないことはないと思うけど」
「でも……レイシール様は、何も、なさってません」
「サヤには、そうじゃなかったんだろう?なら、悪かったのは俺だよ。ごめん……」
「いいえ!レイシール様は、悪くありません。私の過剰反応ですから!」
語調を強くして、俺の謝罪を遮るサヤ。
そして、ぎゅっと目を瞑って深呼吸を始めた。
多分これは、サヤが自分の気持ちを落ち着けるための癖なんだろうな……。なんとなく、そう思う。だから待った。サヤが落ち着くのを。
そして、しばらく呼吸を繰り返したサヤは、フゥと、大きく息を吐いてから、俺の方に向き直った。
「レイシール様は、悪くありません。私の過剰反応なんです。
その……実は私、男の人が、怖いんです。
子供の頃、誘拐されかけたことがあって……、触られたり、女扱いされるとその、身体が拒否するとことが、あるんです」
誘拐?
不穏な言葉に、俺は眉を寄せる。
サヤほどの勇者を誘拐できる猛者がいるのかと一瞬思ったが、子供の頃と言うなら、武術を習う前なのかもしれない。
サヤはそこまでは一気に喋った。そして、急激に勢いを落とす。言いにくそうに視線を彷徨わせ、今度は小さな声で、あとを続けた。
「……その……ちょっと……い、いやらしいことを、されました……。あっ、大丈夫です。ちゃんと、助けられたから……すぐにカナくんが、来てくれたから……たいしたことは、されてません。
だけどその…………どうにも……体が勝手に、拒否してしまって……こんな風に、なることがあります。
誘拐未遂が、そもそもの原因、なんですけど……。痴漢とか、あったことも度々あって……そのせいで、男の人に、距離を、詰められることが、怖くなりました。
レイシール様には、そういう気持ち悪さは、全然感じて、ないんですよ?
でも、何かの拍子とかで、無意識に、身体が勝手に、こうなって、しまって……」
苦笑しながら、自分の震える手を見つめるサヤ。話すうちに、言葉の震えがまたひどくなってきている。そんな自分に苛立つように、サヤの瞳の奥に自身を責めるような色が垣間見えた。
俺は血の気が引く思いだった。
昨日俺は、相当サヤを追い詰める事をしていたのだと気付いたからだ。窓越しで着替えをさせたなんて最悪じゃないのか⁉︎ そもそも、男の俺たちと一緒の場所に居続けるというのは、相当苦痛だったのではないのか?
そして、よくよく考えれば、サヤの震える理由、その状態を、俺は知っていた……自分でも、経験していることだったのだ。記憶が蘇る時に起きるのだ。体が勝手に反応してしまう。
そうか、そういうことか。サヤのこれは、拒絶反応だったんだ。俺は、なんて鈍感なんだ!
「子供の、頃って……」
「九歳か、十歳か……それくらい、です。結構、記憶もあやふやで……たいして、憶えても、いないのに……本当……不甲斐ない……」
「っ⁉︎違うだろ!たったそれだけしか経ってないんだよ!割り切れるわけないだろ⁉︎
そうか……ごめんな、嫌な話をさせた……本当にごめんっ。
それから、事情を知らなかったとはいえ、今までずっと、サヤに無体な事をして、申し訳なかった!」
「いえ!無体なことなんて、ありませんでした!本当です。
それに、普段は結構、平気なんですよ?
レイシール様やハインさんには、嫌悪感も無いんです。
これは、条件反射みたいなものなんですよ」
「だが、辛くなかったはずがない。現にこうして、震えている」
「これは私が悪いんです。レイシール様は、私を支えておこうとしてくれただけです。悪意なんてないのに、怖がる私がおかしいんです」
「おかしくない!サヤのそれは、防衛本能だろ!大丈夫じゃないから、体がそれを訴えてるんだよ!それを自分がおかしいみたいに言うな!」
つい声を荒らげてしまった。
だけど言わずにはおれなかった。
「サヤ……サヤの身体が、正しいんだ。
サヤは辛い思いをした。身体は、その傷が癒えていないと、そう言ってるんだよ。
自分を責めるのはダメだ。それは、サヤに無体を働いた相手を、肯定するのと一緒だ。サヤは悪くない、おかしくない!」
俺が急に怒り出したから、サヤは慌ててしまったようだ。オロオロ視線を彷徨わせてから、様子を見守っていたハインに助けを求める。泣きそうな顔をして、ハインを見るのだ。
それを見ていたハインは、何か複雑そうな顔をしてから、こちらにやってきた。
涙目のサヤと、怒る俺をしばらく見つめてから、静かに淡々と話し出した。
「サヤ、レイシール様にお仕えするにあたって、理解しなければならない事があります。
他の貴族の方というのはこういう考え方は致しません。
自分にとって嫌な事であったとしても、態度に出さず、それを受け入れ、行動する必要があります。ですから、今のサヤが正しい。本来は、叱責される様なことではないのです。
ですが、レイシール様に仕えるなら逆です。この方はむしろ、そのような事が、お嫌いです。
貴女にとって、周りに合わせてもらうことより、自分が我慢する方が楽だと思うことでも、この方は許しません。
今回のことは、サヤが自分を虐めるから、レイシール様が怒りました。このように、貴族にあるまじき方向に、理不尽な方なんですよ」
なんか、俺が我儘みたいな言い方だな……。
「始めは、多少不自由ですし、我慢することを我慢させられるので、辛いでしょうが、これは義務です。仕事なのだと割り切ってください」
をい……。
「ですからサヤは、自分を虐めない。自分が間違っていると思わない。それをしなければなりません。
サヤの身体が正しいのです。怖いこと、嫌なことを我慢してはいけません。
今回お話し頂けたことで、我々も気を付けることが明確に分かりました。
なので、だいたいの部分は気を付けられると思います。
ですがこれは、貴女に気を使ってやるのではありません。レイシール様の為に、するのです。
お仕事ですから、頑張らなくてはなりませんよ」
なんかよく分からないことを言ってるぞ、ハイン。
なんで俺のためにサヤが頑張って自分を虐めないなんてことになるんだ?
そう思ったけれど、とりあえず自分の神経が逆立っているからハインの言葉を素直に聞けないだけかもしれないと思った。イラついてる時の俺は頭が普段以上に働かないのだ。それは自覚している。だから落ち着こう……。
サヤに習って、深呼吸をして心を落ち着けることにする。
その間に、サヤもハインの言葉をきちんと理解した様だ。顔を上げて、真剣な顔で「はい」と、返事をしていた。やっぱり俺がおかしいのか……サヤは納得してるしな……。冷静になろう。
自分の頭を冷やしていたら、馬車のことを思い出した。まだメバックまで、ずいぶん距離があるのだ。
「ハイン、急ぐのはやめよう。夕方までに着ければいい」
「そうですね。揺れがましなら、中に乗っていられるでしょう。
サヤ、気持ち悪さは治まりましたか?……震えは、治まったみたいですが」
「えっ、あ……そう、ですね。もう、大丈夫だと思います……」
俺の理不尽な怒りでサヤの震えは吹き飛んだらしい。
気づけば、サヤは震えていなかった。不思議そうな顔をして、自分の手を見ている。
「レイシール様の横に、座っていられそうですか?
無理なら外を歩いても良いし、ちょっと窮屈ですが、御者台にも座れます」
「大丈夫です。その……レイシール様が、お嫌でなければ……」
「俺が嫌なわけないだろ。……ごめん、俺が怒ることじゃなかった……」
「いえ……ありがとう、ございます」
若干居心地悪く謝罪してから、休憩は終了となった。
出していた荷物を片付けて、もう一度馬車に乗り込む。
ほぼ馬の並足程度の速度となったので、揺れは随分と緩和された。
とりあえず俺は、サヤに触れないよう、壁側に詰めて座る。
そして、沈黙したまま時間を過ごし、いたたまれなくなって口を開いた。
「サヤ……俺たちと一緒にいるのは、嫌じゃない?」
「え?嫌なんてそんな……!」
「正直に言って良いんだ。男二人とずっと過ごしていくことになる。それは、サヤの経験を思えば、結構な苦痛なんじゃないかと、心配なんだ……」
思えば、初めからそうだった。
サヤは常に、俺たちに近付き過ぎないようにしていたのだ。それは俺たちが怖いからなんじゃないか?今はまだ、一日やそこらの付き合いだから、我慢していられるかもしれない。でもこれからずっとそれが続くかもしれないなんて……俺なら耐えられない。
「もしそうなら……メバックで、女性の多い職を、探すこともできる。
俺の友人……ギルの所なら……サヤもそんなに、不安にならず過ごせるかなって。
口の硬いやつだから、事情を話しても……」
「いえ! 私は……私を、ここに居させて下さい。辛いなんてこと、ありません。無理もしていませんから!
今回は、昨日の事もあったから……まだちょっと、過剰になってただけです。
私……ご迷惑を、おかけしてると、思うんですけど……でも……」
「迷惑なんてかけられてない。俺は、サヤがいてくれれば助かるし、嬉しいよ。
けどね、サヤの苦痛は、気持ちだけでどうにかできるものじゃないだろう?」
俺も身に覚えがあるから……。十五年も前のことなのに、未だに引きずるのだから。
たった数年前の出来事を、簡単に割り切れるはずないと、解ってる。
だから……。
「サヤを苦しませるのが一番嫌なんだよ。
それは俺も苦しい……」
自分のことのように、苦しい……。あんな思いを、ずっとさせることになるなんて、考えただけでも怖い。そんなことになったら、サヤを死なせてしまうんじゃないかと……母のようにしてしまうんじゃないかと、怖くて仕方がない……。
「レイシール様、私……ここに居たいです。
大丈夫です。無理する大丈夫じゃないですよ?
ちゃんと、自分の気持ちを、大切にすると約束しますから。
私……きっと大丈夫だって、思うんです。だって………レイシール様は、怒ってくれたから……。あっちで、私が我慢するんに気付いて、怒ってくれはったんは……おばあちゃんだけやった……」
そう言ったサヤが、俺の右手に触れた。座面に置いていた手に、自身の左手を少しだけ触れ合わせたのだ。指先が当たる程度の、ささやかな接触。
「同じ様なこと、言われたん思い出しました。
自分を虐めたらあかんて、小夜はなんも悪うないって。
おばあちゃんと同じこと、言うてくれはる人……悪い人なわけあらへん……。一緒にいて、辛くなるわけあらへんやないですか……。せやから、誰かに預けるなんて、言わんといて……」
真剣な顔で、俺を見てそう言った。手を添えたままで。
その真剣な顔が、思いの外近くて……いや、馬車の中なんだから、物理的に距離は無理なんだけど……だけどその…………っごめん!
「わ、解った……。サヤが、嫌じゃないなら、良いんだ……」
結局根負けした……。うん……いや、嬉しいんだよ?
サヤに無理させてるんじゃないなら、俺は全く問題無いんだ。
だけど、もしまた辛くなったりしたら、必ず言う様にと念を押しておく。
すると、サヤは笑って「はい」と答えた。そして、最後にこう言ったのだ。
「ハインさんが、レイシール様を本当に大切にしている理由、解った様な気がします」
そう? ハインは特殊すぎるよ。だいぶん過剰だと思うし。
それはそうと……この手は……どうすれば良いんだ……う、動くに動けない!
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