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知識 6
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家具の運び込みは済み、洗濯も終わった。
夕食の準備を始めるまで数時間ほど猶予がある。
そこで俺たちは、もう一度俺の部屋に集まって、サヤのこれからの方針と、明日以降のことを話し合うことにした。
さて、だがその前に、サヤの特殊な部分を隠す話かな……。
「まず、サヤの事なんだけどね。
サヤが異世界から来たことは伏せたほうが良いって話をしたでしょう?
それと一緒に、サヤに特別な知識が沢山あること、とても力持ちなこと、耳が良いことも、隠しておいた方が良いのじゃないかって、さっきハインと話したんだ」
先ほどと同じ、執務机の椅子に座って、俺はサヤにそう切り出す。
この世界では、病気は悪魔の呪いとか、病魔によってもたらされると言われている。
行いが悪いものは悪魔の呪いに打ち勝てない。生前の行いにも左右されるという。
これは、神殿が神の教えとして伝えていることなので、サヤの知識はそれを否定するものになってしまうのだ。
「サヤの国は、神を信奉している?」
「えっと…私の国には神と、仏がいます。人を導く存在としては同じだと思うんですけど…区別されてますね。とはいえ…信仰は自由とされていますので、私は特に、神様や仏様を特別視していません。精神的な支えになる方なのだと認識はしていますけれど……」
「おおう……信仰してないのか……それも聞いといて良かったな……。
ざっくり説明すると、この国は性別の無い神……アミを信仰している。アミは形のないものを定める神だ。人の運命とかが、主に言われる。
まあ俺も特別信心深いってわけじゃないから、ざっくりと話すけど……神は常に魔の誘惑から我々を守ってくれているのだけれど、我々の心が脆いので、全てを救いきれない。よって人は堕落することがある。……とまあ、そんな感じ。サヤは異国人とする予定だから、アミを信仰してなくても良いと思うけど、神全般を信じてないとかは言わない方が良い」
「じゃあどうしましょう……アミを信仰している……って言えばいいですか?」
「アミじゃなくてもいい。この国はアミを信仰しているけれど、異国は違う。政治と宗教は切り離されているし、異教の人も国内には沢山いるよ。
ただ、全く何も信じていないというのが問題視されるって感じ。神を信奉していないというのは、逆に言えば神の庇護下にいないということだ。悪魔が簡単に手を出してくるってことで、基本、忌避される」
「関われば自分にも災厄が降りかかるということです。
例えば、孤児はお布施を納めたりしませんし、神の教えに背く行為が多い。なので、無神の民となります。神の教えに背く行為をし、神を崇めない故に、病気や不幸から身を守れないと言われます」
それを聞いたサヤはしばし逡巡する。そして、信仰を証明するものを持っていたりするのですか?と、聞いて来た。
「証明するもの?……うーん……貴族は成人したら髪を奉納するから、それで充分とされてる。
体の一部を捧げて、神の民であると証明するんだ。
この国の貴族に生まれた時点で、アミの民と決まってるからね。
国民は、黒曜石の護符を持ってる人が多い。アミの象徴とされる石だから。
だけど、別に信仰を証明する為に持ってるんじゃなくて、悪魔から身を守るためだな……」
「では、例えば私がアミの民であると言ったとして、それを疑われたりはしない……ということでしょうか?正直、どんな宗派があるのか、どんな教えなのかもよくわからないですし……問題無いなら、レイシール様と一緒で構わないと思うんですが」
「なら、今のところアミってことにしておこう。無神の民でなければ問題無いから」
「はい」
じゃあ神様の問題は解決、と。
「とりあえずさ、神様は我々を守ってくれている。けれど、人は脆いので弱い部分を悪魔に付け入られる。それで病気になったり、怪我を悪化させたり、不幸に見舞われたりすると言われている。サヤがさっき話してくれた、菌の話なんかは、神を信奉していなくても、行いが悪くても、関係ないって言ってるようなものだ。それは、神殿に仕えてる人たちにとって問題発言なんだよ。
そんな感じで、サヤにとって当たり前のことが、ここではそうでない可能性が高い。
何気なく言ったことで捕まったり、異端者だと言われたくないだろう?だから、できる限り、サヤの知識は口外しない方が良いとなったんだ」
俺の説明に、サヤはこくりと頷き理解を示す。
飲み込みが早くて助かる。ハインみたいに頑なに神は信じないと言い切ったりしなくて良かった……。ハインは無神の民を九年貫いてるからな。これからもきっと、そうだろう。
「だから、何か気になることがあったりしたら、俺かハインに相談すること。
サヤにはどうしても納得できない理不尽なことなんかもあると思うけど、まずは確認。良いね?」
「はい」
「同じように、力が極端に強いとか、耳が極端に良いとかも、悪魔と取引してると言われかねないから伏せる。
適当な言い訳が思いつくまではそれで通すよ。
とはいえ……この中ではサヤが一番強いんだ。明らかに。
だから、万が一の場合はサヤを頼りにせざるを得ない。その時はごめんね」
「あの……本当に、私が一番強いんでしょうか……」
「うん。そう思うよ。ハインをあんな簡単にしのいじゃったから」
ハインはそこそこ強い。一対一なら本職の騎士とやり合える。
俺だって学舎で剣術の基礎は身につけているし、剣を振れないにしても、身のさばき方は心得ている。サヤの強さをある程度読むくらいはできるのだ。
俺の周りで一番強いのは、メバックにいるギルだけど……うん。メバックに行ったら、一度サヤと手合わせしてもらった方が良いかもな。サヤも、自分の実力を知った方が良い。
「そうそう。それでね、サヤが女性であることも、伏せた方が良いんじゃないかって話をしたんだよ。
兄上のこともあるし、男装で通す方が良いんじゃないかって。
女性だと、出先で別室になったり、一人離れた場所に寝泊まりすることになったり、別行動を余儀なくされることが多い。色々厄介なんだ。
その……サヤとしては、嫌かもしれないんだけど……できるだけ、手の届く範囲にいてほしいと思うんだ。
あ、無論ちゃんと配慮はする。出来る限りサヤの意向に沿うようにするから……どうだろう?」
一応穏便な内容で説得を試みる。男と一緒に生活してるから妾と勘違いされるかもしれない……なんて、口が裂けても言えない……。
サヤは、暫く考えてから「分かりました」と、簡単に返事をした。
「……良いってこと?」
「はい。……お二人が私のことをすごく考えて下さってるのは分かってるので、お二人がそう言うなら、その方が良いのだと思います。
それにその……女性を見る目で見られるよりは、同性と思ってもらえる方が、気が楽だと思いますし」
なんか複雑なことを言うな……女性を見る目?俺もサヤを女の子だと思ってるけど、それとは違うんだろうか……?
良く分からなかったけれど、サヤが良いと言うんだから、まあ良いかと思い直す。
「ありがとう。あと何かあったかな……あ、あとね、サヤとはメバックで出会ったことにしようと思ってるんだよ。
泉から出てきましたって言えないし、口裏を合わせておかなきゃ、いざという時困る。
サヤは説明できないくらい遠くから旅をしてきた異国人で、メバックで知り合ったってことでどうかな。だから、俺たちが出会ったのは、明日ということになる」
これは聞かれる可能性が高いからきっちり決めとく方が良い。
俺は明日、メバックに視察に行く。今年の川の水位が気になるから、情報収集に行くという名目だ。これは、領主代行になって二年とも行なっていたことだから怪しくない。若干早いのだけれど、水位が高いと感じているから、おかしくないと思う。
そして、視察に出たメバックの商業広場でサヤと会ったことにしようと思う。
あそこは異国の人間が多くて、旅の人もよく立ち寄る場所だ。そして、俺が情報収集をする相手……マルも商業会館に勤めているから、俺があの広場に立ち寄るのも自然だ。
「そんな感じでどうかな、ハイン」
「……まあ良いです。違和感は無いと思います……サヤが我々に道を聞いてきたことにするか……いや、レイシール様が、旅装の子供が一人で歩いているのを迷子と思って声を掛けたとしますか。その方が自然でしょうから」
丁度冷めたお茶を入れ替えていたハインが、しばし考えサヤを睨み付ける……もとい、注視する。「十四歳……十三歳……くらいに見えてもおかしくないですね……。男子とするなら、年齢も多少下げた方が無難でしょう……サヤは十四歳ということにしますか」と、付け足す。
ツルギノサヤという名前はそのままで良いだろうとなった。正直、ツルギノサヤという異国風の名前は、男性なのか女性なのか判断しにくい。名前でとやかく言われることはないだろう。
「ツルギノサヤ。十四歳。明日、五の月のニ十三日に、俺たちと出会う。
子供が旅装で一人歩きしてたから、俺が迷子と勘違いして声を掛けた。
サヤは……路銀を稼ぐ為に雇い先を探していたことにする?
これから天候が悪くなる時期だから、暫く雇われて路銀を確保することにした……ってのでどうかな」
「そうですね。それで良いと思いますよ」
「あの、天候が悪くなる時期……というのは?」
「ああ、ここら辺は、大抵七の月が近付くと、雨続きになるんだよ。長雨で旅がし難くなる。
だから、この時期の旅人は、結構旅を休憩して、滞在する地で路銀稼ぎしてたりするんだ」
「へぇ……そうなんですね」
一応これで、サヤと出会う段取りは整ったと思う。
あとは、恙無く明日を迎え、メバックに到着すれば良い。
「そんなわけだから、明日はメバックに行く。
数日滞在することになるよ。その間に、サヤの住み込みに必要なもの一式を確保する。
それから、風呂の仕切りと家具を注文する」
「あとは、川の水位の情報収集と、食料の買い出しも行います。サヤが増えますから、買い足しが必要です」
「はい、畏まりました」
よし。それじゃ、これで話し合いは終了だ。あとのことは、思いついた時に説明していこう。
そう決まって、後は明日のための準備となった。
夕食の準備を始めるまで数時間ほど猶予がある。
そこで俺たちは、もう一度俺の部屋に集まって、サヤのこれからの方針と、明日以降のことを話し合うことにした。
さて、だがその前に、サヤの特殊な部分を隠す話かな……。
「まず、サヤの事なんだけどね。
サヤが異世界から来たことは伏せたほうが良いって話をしたでしょう?
それと一緒に、サヤに特別な知識が沢山あること、とても力持ちなこと、耳が良いことも、隠しておいた方が良いのじゃないかって、さっきハインと話したんだ」
先ほどと同じ、執務机の椅子に座って、俺はサヤにそう切り出す。
この世界では、病気は悪魔の呪いとか、病魔によってもたらされると言われている。
行いが悪いものは悪魔の呪いに打ち勝てない。生前の行いにも左右されるという。
これは、神殿が神の教えとして伝えていることなので、サヤの知識はそれを否定するものになってしまうのだ。
「サヤの国は、神を信奉している?」
「えっと…私の国には神と、仏がいます。人を導く存在としては同じだと思うんですけど…区別されてますね。とはいえ…信仰は自由とされていますので、私は特に、神様や仏様を特別視していません。精神的な支えになる方なのだと認識はしていますけれど……」
「おおう……信仰してないのか……それも聞いといて良かったな……。
ざっくり説明すると、この国は性別の無い神……アミを信仰している。アミは形のないものを定める神だ。人の運命とかが、主に言われる。
まあ俺も特別信心深いってわけじゃないから、ざっくりと話すけど……神は常に魔の誘惑から我々を守ってくれているのだけれど、我々の心が脆いので、全てを救いきれない。よって人は堕落することがある。……とまあ、そんな感じ。サヤは異国人とする予定だから、アミを信仰してなくても良いと思うけど、神全般を信じてないとかは言わない方が良い」
「じゃあどうしましょう……アミを信仰している……って言えばいいですか?」
「アミじゃなくてもいい。この国はアミを信仰しているけれど、異国は違う。政治と宗教は切り離されているし、異教の人も国内には沢山いるよ。
ただ、全く何も信じていないというのが問題視されるって感じ。神を信奉していないというのは、逆に言えば神の庇護下にいないということだ。悪魔が簡単に手を出してくるってことで、基本、忌避される」
「関われば自分にも災厄が降りかかるということです。
例えば、孤児はお布施を納めたりしませんし、神の教えに背く行為が多い。なので、無神の民となります。神の教えに背く行為をし、神を崇めない故に、病気や不幸から身を守れないと言われます」
それを聞いたサヤはしばし逡巡する。そして、信仰を証明するものを持っていたりするのですか?と、聞いて来た。
「証明するもの?……うーん……貴族は成人したら髪を奉納するから、それで充分とされてる。
体の一部を捧げて、神の民であると証明するんだ。
この国の貴族に生まれた時点で、アミの民と決まってるからね。
国民は、黒曜石の護符を持ってる人が多い。アミの象徴とされる石だから。
だけど、別に信仰を証明する為に持ってるんじゃなくて、悪魔から身を守るためだな……」
「では、例えば私がアミの民であると言ったとして、それを疑われたりはしない……ということでしょうか?正直、どんな宗派があるのか、どんな教えなのかもよくわからないですし……問題無いなら、レイシール様と一緒で構わないと思うんですが」
「なら、今のところアミってことにしておこう。無神の民でなければ問題無いから」
「はい」
じゃあ神様の問題は解決、と。
「とりあえずさ、神様は我々を守ってくれている。けれど、人は脆いので弱い部分を悪魔に付け入られる。それで病気になったり、怪我を悪化させたり、不幸に見舞われたりすると言われている。サヤがさっき話してくれた、菌の話なんかは、神を信奉していなくても、行いが悪くても、関係ないって言ってるようなものだ。それは、神殿に仕えてる人たちにとって問題発言なんだよ。
そんな感じで、サヤにとって当たり前のことが、ここではそうでない可能性が高い。
何気なく言ったことで捕まったり、異端者だと言われたくないだろう?だから、できる限り、サヤの知識は口外しない方が良いとなったんだ」
俺の説明に、サヤはこくりと頷き理解を示す。
飲み込みが早くて助かる。ハインみたいに頑なに神は信じないと言い切ったりしなくて良かった……。ハインは無神の民を九年貫いてるからな。これからもきっと、そうだろう。
「だから、何か気になることがあったりしたら、俺かハインに相談すること。
サヤにはどうしても納得できない理不尽なことなんかもあると思うけど、まずは確認。良いね?」
「はい」
「同じように、力が極端に強いとか、耳が極端に良いとかも、悪魔と取引してると言われかねないから伏せる。
適当な言い訳が思いつくまではそれで通すよ。
とはいえ……この中ではサヤが一番強いんだ。明らかに。
だから、万が一の場合はサヤを頼りにせざるを得ない。その時はごめんね」
「あの……本当に、私が一番強いんでしょうか……」
「うん。そう思うよ。ハインをあんな簡単にしのいじゃったから」
ハインはそこそこ強い。一対一なら本職の騎士とやり合える。
俺だって学舎で剣術の基礎は身につけているし、剣を振れないにしても、身のさばき方は心得ている。サヤの強さをある程度読むくらいはできるのだ。
俺の周りで一番強いのは、メバックにいるギルだけど……うん。メバックに行ったら、一度サヤと手合わせしてもらった方が良いかもな。サヤも、自分の実力を知った方が良い。
「そうそう。それでね、サヤが女性であることも、伏せた方が良いんじゃないかって話をしたんだよ。
兄上のこともあるし、男装で通す方が良いんじゃないかって。
女性だと、出先で別室になったり、一人離れた場所に寝泊まりすることになったり、別行動を余儀なくされることが多い。色々厄介なんだ。
その……サヤとしては、嫌かもしれないんだけど……できるだけ、手の届く範囲にいてほしいと思うんだ。
あ、無論ちゃんと配慮はする。出来る限りサヤの意向に沿うようにするから……どうだろう?」
一応穏便な内容で説得を試みる。男と一緒に生活してるから妾と勘違いされるかもしれない……なんて、口が裂けても言えない……。
サヤは、暫く考えてから「分かりました」と、簡単に返事をした。
「……良いってこと?」
「はい。……お二人が私のことをすごく考えて下さってるのは分かってるので、お二人がそう言うなら、その方が良いのだと思います。
それにその……女性を見る目で見られるよりは、同性と思ってもらえる方が、気が楽だと思いますし」
なんか複雑なことを言うな……女性を見る目?俺もサヤを女の子だと思ってるけど、それとは違うんだろうか……?
良く分からなかったけれど、サヤが良いと言うんだから、まあ良いかと思い直す。
「ありがとう。あと何かあったかな……あ、あとね、サヤとはメバックで出会ったことにしようと思ってるんだよ。
泉から出てきましたって言えないし、口裏を合わせておかなきゃ、いざという時困る。
サヤは説明できないくらい遠くから旅をしてきた異国人で、メバックで知り合ったってことでどうかな。だから、俺たちが出会ったのは、明日ということになる」
これは聞かれる可能性が高いからきっちり決めとく方が良い。
俺は明日、メバックに視察に行く。今年の川の水位が気になるから、情報収集に行くという名目だ。これは、領主代行になって二年とも行なっていたことだから怪しくない。若干早いのだけれど、水位が高いと感じているから、おかしくないと思う。
そして、視察に出たメバックの商業広場でサヤと会ったことにしようと思う。
あそこは異国の人間が多くて、旅の人もよく立ち寄る場所だ。そして、俺が情報収集をする相手……マルも商業会館に勤めているから、俺があの広場に立ち寄るのも自然だ。
「そんな感じでどうかな、ハイン」
「……まあ良いです。違和感は無いと思います……サヤが我々に道を聞いてきたことにするか……いや、レイシール様が、旅装の子供が一人で歩いているのを迷子と思って声を掛けたとしますか。その方が自然でしょうから」
丁度冷めたお茶を入れ替えていたハインが、しばし考えサヤを睨み付ける……もとい、注視する。「十四歳……十三歳……くらいに見えてもおかしくないですね……。男子とするなら、年齢も多少下げた方が無難でしょう……サヤは十四歳ということにしますか」と、付け足す。
ツルギノサヤという名前はそのままで良いだろうとなった。正直、ツルギノサヤという異国風の名前は、男性なのか女性なのか判断しにくい。名前でとやかく言われることはないだろう。
「ツルギノサヤ。十四歳。明日、五の月のニ十三日に、俺たちと出会う。
子供が旅装で一人歩きしてたから、俺が迷子と勘違いして声を掛けた。
サヤは……路銀を稼ぐ為に雇い先を探していたことにする?
これから天候が悪くなる時期だから、暫く雇われて路銀を確保することにした……ってのでどうかな」
「そうですね。それで良いと思いますよ」
「あの、天候が悪くなる時期……というのは?」
「ああ、ここら辺は、大抵七の月が近付くと、雨続きになるんだよ。長雨で旅がし難くなる。
だから、この時期の旅人は、結構旅を休憩して、滞在する地で路銀稼ぎしてたりするんだ」
「へぇ……そうなんですね」
一応これで、サヤと出会う段取りは整ったと思う。
あとは、恙無く明日を迎え、メバックに到着すれば良い。
「そんなわけだから、明日はメバックに行く。
数日滞在することになるよ。その間に、サヤの住み込みに必要なもの一式を確保する。
それから、風呂の仕切りと家具を注文する」
「あとは、川の水位の情報収集と、食料の買い出しも行います。サヤが増えますから、買い足しが必要です」
「はい、畏まりました」
よし。それじゃ、これで話し合いは終了だ。あとのことは、思いついた時に説明していこう。
そう決まって、後は明日のための準備となった。
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