(仮)暗殺者とリチャード

春山ひろ

文字の大きさ
上 下
11 / 12

11.ガーデンパーティー 開始前の兄弟マウンティング編

しおりを挟む

 天使の部屋から二人で出た。
 先王と王太后様がまもなくご到着との連絡があったからだ。

「二人でもっとイチャイチャしちゃかったのに、ブー」
 なぜか天使の機嫌は急降下。
先王おじいさま王太后おばあさまも、空気、読まなしゅぎ!」

 迎賓館で先王たちを待つ俺は緊張していた。さっき王様たち会ったとはいえ、こういうのはすぐには慣れない。それなのに俺の右横で手をつないだ天使は、ずっとブツブツ。
 見かねたウェスティン様が声をかけた。

「リチャード、どうしたの?念願かなってマヌーシュと婚約したというのに不機嫌だね」
「だからでしゅ。このパーティー、フェードアウトしたいでしゅ」
「うふふふ、その気持ちはわかるよ」

 ウェスティン様はお隣のヤヌシュ殿下に流し目をして、「僕だって、ほんとは殿下と二人だけで話をしたいもの」とおっしゃった。とたんに真っ赤になる殿下。

「あ~に~う~え、清らかしゅぎでしゅ!」
 お二人が面食らってる!そしてなぜか赤くなる俺。

「兄上、ちょっと」
 天使がウェスティン様に右手でおいでおいでをした。耳打ちする気だ。ちょっと何をいうつもり??
 天使のごにょごにょ声を聞いたウェスティン様は真っ赤になって、「はあ~、してやられた。まさかリチャードに先を越されるとは…」と色っぽいため息。殿下が俺を見る。
「マヌーシュ、二人でいったい」
 殿下の声は途中で遮られた。天使が爆弾を落としたからだ!

「二人でベッドで寝てただけでしゅ!抱き合ってました!」
 途端に殿下は耳まで真っ赤になった。

「ちょっと、その言い方。殿下、誤解です!」
 慌てて俺はその場を取り繕う。

「マヌ!誤解ってなんでしゅか?ベッドで抱き合ってたのはほんとでしゅ!」
「だから、その言い方が」
 俺の声は最後まで続かなかった。レイモンドさんが先王と王太后の到着を知らせたからだ。

「また今年も、グランフォルド家のガーデンパーティーに参加でき、余も幸せだ」
 先王だ。ちびりそうなほどの威厳だった。
「今年も世話になるわ。ここはまるで我が家のようね」
 王太后だ。とても大きな孫がいるとは思えない美貌で、なによりアナベル様にそっくり。いや、アナベル様が王太后にそっくりなのか。似てるとは聞いていたけど、ここまでとは。

 そしてなぜかお二人の視線が俺に集中。
「おお、そなたがマヌーシュか!」
「まあ、新しい孫ね」

 なんで?さっきまでの威厳はどうしたんですか?そんな簡単になくなるものなの?これじゃまるで、俺がほんとの孫みたいだ。「孫大好き」おじじとおばばと化した先王と王太后が俺を抱きしめようとした、その時。

「マヌは僕のでしゅ!」
 天使が両腕を腰にあて二人をストップ。

「まあまあ、未来のクレイトン公爵はずいぶんと狭量ね」
 その言い方、まさにアナベル様!
「ふふふ。リチャードらしいのう」
 先王の目はジョシュア様、そっくりだ。

「お父様、お母様。いまリチャードはハリネズミ君なので、これ以上は刺激せず、まずはお庭へ」
 ジョシュア様のとりなしで、みんなで庭へ。途中、ウェスティン様がなにやらガブリエル様に耳打ち。するとガブリエル様は赤くなって天使を見た。嫌な予感が…。
 ガブリエル様は色っぽい顔で「リチャードに先を越されるとは」と呟いた。
 その声を拾ったアナベル様がガブリエル様に声をかえる。ガブリエル様がアナベル様に耳打ち。するとアナベル様の口が「まあ」という形になって視線は天使へ。紅潮したアナベル様までもが「まさかリチャードに先を越されるとは…」と言った。
 誤解の嵐が吹き荒れる。その間、天使は「どうだ!」という満足顔。なんで?
 ついにアナベル様がエリオット様を呼ぶ。やめて!何をいうんですか?呼ばれたエリオット様にアナベル様が耳打ち。
 もう終わった。
 エリオット様は、そうエリオット様は耳だけでなく首まで真っ赤だ。
 お願い、もうやめて!


「兄弟だからこそのマウンティングでございましょう」
 思わず、その場で頭を抱えた俺にレイモンドさんの声が響いた。


 こうしてパーティーが始まった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

処理中です...