(仮)暗殺者とリチャード

春山ひろ

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11.ガーデンパーティー 開始前の兄弟マウンティング編

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 天使の部屋から二人で出た。
 先王と王太后様がまもなくご到着との連絡があったからだ。

「二人でもっとイチャイチャしちゃかったのに、ブー」
 なぜか天使の機嫌は急降下。
先王おじいさま王太后おばあさまも、空気、読まなしゅぎ!」

 迎賓館で先王たちを待つ俺は緊張していた。さっき王様たち会ったとはいえ、こういうのはすぐには慣れない。それなのに俺の右横で手をつないだ天使は、ずっとブツブツ。
 見かねたウェスティン様が声をかけた。

「リチャード、どうしたの?念願かなってマヌーシュと婚約したというのに不機嫌だね」
「だからでしゅ。このパーティー、フェードアウトしたいでしゅ」
「うふふふ、その気持ちはわかるよ」

 ウェスティン様はお隣のヤヌシュ殿下に流し目をして、「僕だって、ほんとは殿下と二人だけで話をしたいもの」とおっしゃった。とたんに真っ赤になる殿下。

「あ~に~う~え、清らかしゅぎでしゅ!」
 お二人が面食らってる!そしてなぜか赤くなる俺。

「兄上、ちょっと」
 天使がウェスティン様に右手でおいでおいでをした。耳打ちする気だ。ちょっと何をいうつもり??
 天使のごにょごにょ声を聞いたウェスティン様は真っ赤になって、「はあ~、してやられた。まさかリチャードに先を越されるとは…」と色っぽいため息。殿下が俺を見る。
「マヌーシュ、二人でいったい」
 殿下の声は途中で遮られた。天使が爆弾を落としたからだ!

「二人でベッドで寝てただけでしゅ!抱き合ってました!」
 途端に殿下は耳まで真っ赤になった。

「ちょっと、その言い方。殿下、誤解です!」
 慌てて俺はその場を取り繕う。

「マヌ!誤解ってなんでしゅか?ベッドで抱き合ってたのはほんとでしゅ!」
「だから、その言い方が」
 俺の声は最後まで続かなかった。レイモンドさんが先王と王太后の到着を知らせたからだ。

「また今年も、グランフォルド家のガーデンパーティーに参加でき、余も幸せだ」
 先王だ。ちびりそうなほどの威厳だった。
「今年も世話になるわ。ここはまるで我が家のようね」
 王太后だ。とても大きな孫がいるとは思えない美貌で、なによりアナベル様にそっくり。いや、アナベル様が王太后にそっくりなのか。似てるとは聞いていたけど、ここまでとは。

 そしてなぜかお二人の視線が俺に集中。
「おお、そなたがマヌーシュか!」
「まあ、新しい孫ね」

 なんで?さっきまでの威厳はどうしたんですか?そんな簡単になくなるものなの?これじゃまるで、俺がほんとの孫みたいだ。「孫大好き」おじじとおばばと化した先王と王太后が俺を抱きしめようとした、その時。

「マヌは僕のでしゅ!」
 天使が両腕を腰にあて二人をストップ。

「まあまあ、未来のクレイトン公爵はずいぶんと狭量ね」
 その言い方、まさにアナベル様!
「ふふふ。リチャードらしいのう」
 先王の目はジョシュア様、そっくりだ。

「お父様、お母様。いまリチャードはハリネズミ君なので、これ以上は刺激せず、まずはお庭へ」
 ジョシュア様のとりなしで、みんなで庭へ。途中、ウェスティン様がなにやらガブリエル様に耳打ち。するとガブリエル様は赤くなって天使を見た。嫌な予感が…。
 ガブリエル様は色っぽい顔で「リチャードに先を越されるとは」と呟いた。
 その声を拾ったアナベル様がガブリエル様に声をかえる。ガブリエル様がアナベル様に耳打ち。するとアナベル様の口が「まあ」という形になって視線は天使へ。紅潮したアナベル様までもが「まさかリチャードに先を越されるとは…」と言った。
 誤解の嵐が吹き荒れる。その間、天使は「どうだ!」という満足顔。なんで?
 ついにアナベル様がエリオット様を呼ぶ。やめて!何をいうんですか?呼ばれたエリオット様にアナベル様が耳打ち。
 もう終わった。
 エリオット様は、そうエリオット様は耳だけでなく首まで真っ赤だ。
 お願い、もうやめて!


「兄弟だからこそのマウンティングでございましょう」
 思わず、その場で頭を抱えた俺にレイモンドさんの声が響いた。


 こうしてパーティーが始まった。
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