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59. だからこれが究極の愛だとか、そんなことは分からないけど…②
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翌日―。
この日の書類作成補助係は、閑散期にもかかわらず、慌ただしかった。朝の朝礼で、王宮より王太子妃殿下がサマーフェスティバルに参加することになったので、その予算申請の確認を本日行うと発表されたのだ。それだけでなく侍従係も急遽、フェスティバルに参加するので、同じく予算申請及び参加申込書の確認を行うとの発表もあった。
入職二年目のマルコは、サマーフェスティバルの書類申請の確認をするのは、今年で二回目だ。昨年は直前になってこんなにバタバタしなかった。今年は何が違うのだろう。マルコがそんな事を考えていると、レオナルドから声がかかった。
「マルコ、妃殿下は午後一でいらっしゃるそうだよ」
「はい、先輩!」
マルコとレオナルドは、午前中は侍従係のヘルプに入って忙しく働くと、あっという間に昼食の時間。
いつもの場所にいつもと同じように手ぶらで向かう二人。そこには、これまた同じようにオリン公爵家の家令ファブが完璧な所作で待っていた。
白いクロスの上に並んでいる昼食は、食べたら間違いなくサンマ定食だ。
「すっげー!ついにサンマ定食が出た!」
レオナルドは小躍りした。
「さ、さんま?」
「そう、サンマ!ちゃんと炭火で焼いてあるし!大根おろしとすだちもある!!」
オリン公爵家の料理人スフィの腕前はうなぎ上り。ついになんちゃって大根おろしとすだちも入手したようだ。
さっそくレオナルドがマルコに「こうやって、まず魚にすだちを絞ってかけて」とアドバイス。
マルコは魚を炭火で焼いた料理は食べたことがないので興味津々だ。
「この大根おろしに醤油をかけて」
レオナルドは説明しながら、お腹がグーっと鳴った。
「先輩!僕に説明するより、まず食べてください!」
「へへ、お腹がなっちゃった!ではお言葉に甘えて、いただきます!」
レオナルドは、きっと大根の味噌汁を一口飲んで、「うまっ!」といい、次にサンマに大根おろしをのせてパクリ。
「うっめー!」
その喜びように、マルコとファブは顔を見合わせた。
「さあ、マルコ様も召し上がれ」
ファブに促されてマルコも最初に味噌汁をいただく。
「美味しい!」
次に、だいぶ使えるようになった箸でサンマを一口。
「脂がのってる。ふんわりしてるけど、肉厚で美味しい!」
マルコは、グルメレポーター並みのコメントでレオナルドを笑わせた。
そこへ…。さくさくさくと足音が…。
ここしばらく聞いていなかった足音だ。
向かい合って食べていたマルコとレオナルド。マルコは顔をあげ、レオナルドは振り向いた。
レオンだった。
「副団長!」
レオナルドは叫んだあと、マルコに笑いかけた。
「マルコ!良かったな!」
レオナルドは昨日からお父さんの表情ばかりだ。
マルコは久しぶりのレオンをガン見した。
レオンもマルコを見ながら、マルコの隣に座った。
家令ファブが目にも止まらぬ速さで定食をセッティング。レオンの前に、あっという間にサンマ定食が並んだ。レオンは器用な箸使いで味噌汁を飲み、サンマをぱくりと食べた。
「うまい!…そんなに見つめられたら、なんか恥ずかしいな」
レオンは苦笑した。
「あ、ごめんなさい!本物の副団長だって…。すっごい久しぶりの副団長で、なんか、なんか」
「嬉しかった、だろ?」
レオナルドだ。
そうマルコは嬉しかった。今まで当たり前のようにレオンと一緒に昼食を食べていたから、気づかなかった。レオンがいなくて寂しかった。
マルコは空を見上げるのが好きだった。同じ空なのに、季節によって色が変わる。雲もそうだ。それなのに、レオンに会えなくなってから、煌めく太陽の光さえ、色がなくなってしまった。いきなりお年寄りになったような気分だった。
副団長がいない、副団長に会いたい。
だけどマルコは、いま騎士団がどんだけ忙しいか知っている。
だから会いたいなんていってはダメだと思っていた。
そんなマルコの前にレオンがやってきた。
しばらく会えなかったことなど嘘のように、自然に隣に座った。
マルコはレオンを見て、次にレオナルドを見て、そしてまたレオンに視線を移す。
「あの、副団長に会えて、すごく嬉しい。僕、すごく嬉しいんだ。すごく嬉しい」
それはレオンにというより、独り言のようだった。
心の中に散らばっていた気持ちをレオナルドに指摘され、それと向き合った時に、ふいに口から出た言葉。
ブホッという音と共に、レオンの口や鼻から盛大にサンマ?が噴き出した。
「レオン様」
「副団長、水、水!」
レオナルドと家令ファブが大慌てでレオンを介抱。マルコは目が点になった。
レオンはナプキンを口にあて、鼻から色々と出てきてすごい有り様だったけど、マルコから目を離さなかった。手渡しされたコップから水を飲んだ時も、横目でマルコを捉えていた。鼻はツンと痛いし、口もなんとなく魚臭くて、これっぽっちもロマンチックではなかった。それでもこれだけは伝えなければ。その思いをレオンは一気に吐き出した。
「お、俺は前からずっと、それこそ初めて会った時からずっと、いつもマルコに会いたかった。マルコが父上の生まれ変わりと知っても好きだった。いっそ、父上だと知らないままの方が良かったとか、そんなこと思った時もあったけど、でもきっと同じだと思う。父上だと知ろうが知るまいが、マルコを愛しただろう。
マルコへの愛を自覚してから、なにしろ父上だし、…その壁をどうやったら乗り越えられるのかと、毎日、寝る前に考えた。でも無理だった。乗り越えられる方法なんかない。だって父上だし。父上は超えられない。どうやっても無理だろう。俺の愛は報われない。親子禁断の愛だ。こんな苦しいことはない。
でも、でも、そんな俺をマルコが助けてくれた!過去のつながりより、今世での関係が優先されると言ってくれた。あれで俺は目の前がぱーっと明るくなった!一気に開かれた!」
レオンはナプキンを投げた。
「ずっとずっと好きだった!」
レオンがマルコを抱きしめる。
マルコは途中まで、レオンの語る内容についていけなかった。
誰が誰の生まれ変わりだって。えっと、副団長のお父上の生まれ変わり?誰が?え?僕?僕?僕?なんで、意味が分からない。どういう発想?なんの勘違い?誰がそんなことをいったんだろう。そもそもどういう根拠があって、その発想になったわけ?
ああ、でも、よく分からないけど、とにかく、これだけは伝えなければ。
「あの…僕も…」
家令ファブの「レオン様!」の声はかき消された。いきなり花吹雪が舞ったのだ。
「マルコ!」
レオンの声もかき消された。天上から音楽が降ってきたからだ。正確には城壁の上に待機していた宮廷音楽隊の生演奏が降ってきたのだが。
とにかく誰も彼もが入り乱れ、マルコはいつのまにかリンリンさんとハグし、それがエメになったり、ファブになったりしながら、最後はちゃんとレオンと抱き合っていた。
ほぼ同時刻。
昨年、オリアナビューティボーイズ(OBB)総選挙で優勝し、センターを取ったサオ・アベルは、商店街が中心になって改装したOBB劇場に向かって走っていた。今日は午後からリハーサルがあるのだ。
OBB総選挙は、例年、サマーフェスティバルの初日に開催していたが、今年は突然、最終日に開催することになった。
そして、初日のOBB総選挙の枠にはオリジナル長編劇を上映することになったのだ。長いフェスティバルの歴史を紐解いても、これまで一度もないまさかの演劇。さらにその劇に出演するのはOBB全メンバーで、特に紙7は主要キャスト。しかもセンターを取ったサオは、なんと主役の一人に抜擢された。
昨年の今頃のサオは、パックやマッサージで念入りに肌を整えていたが、今年は劇の練習のため連日の寝不足で、目の下には巨大なクマが横たわっていた。
それはサオだけではない。OBBのメンバー全員が同じ状態。
しかし誰も文句を言わない。
なぜか。
古代の石板に書かれてある物語を劇にするという、注目の演劇だからか。それともそのシナリオを書いたのが王太子妃マジョリカ妃殿下だからだろうか。
いや違う。OBBメンバーの中に、劇の練習を重ねる中で不思議な一体感が生まれ、「成功させたい!」と全員が本気で思ったからだ。
劇場控室で練習着に着替えたサオは、かなり読み込んだシナリオを胸に、メインホールの横にある大きなリハーサル室に走った。
このリハーサル室は、前面はガラス張りで、自分の姿をチェックしながら練習できた。既に他のメンバーも揃い、準備万端だ。
サオのファンクラブ会長であるパコがパンパンと手を叩く。
「はい!注目!主要キャストが揃ったね!今日は通しで三幕までいくよ!」
パコはいつの間にか監督になっていた。仕切るのがうまい上に、プロデュース力もあるので、実はうってつけの人材だ。
パコが「カリンとサオ!ステージの中央に立って!」と、主役二人を呼んだ。
もう一人の主役は、サオの同期、超優秀侍従カリン・ドル―だ。
カリンはサオに負けるとも劣らない美貌だが、それを武器にしようとは思っていないので、OBB総選挙に応募したことはない。しかし、シナリオを書いたマジョリカ妃殿下の鶴の一声で、カリンの出演が決まった。そうなると侍従係としてもフェスティバルに参加申請をしなければならない。その申請を今日の午前中に筆頭侍従長ガイ・ホールが行ったのだ。
当初は妃殿下の命だから仕方なく練習に参加していたカリンだが、サオに真顔で「僕たちOBBメンバーは、絶対にこの劇を成功させたいの!だから、まじめにやってよ!」と諭された。
カリンは、まさかサオに説教されるとは思わなかった。指摘されてなんとも恥ずかしい思いをしたが、一生懸命に練習に取り組む皆の姿を見て、心を入れ替えて練習に励むカリンだった。
この日の書類作成補助係は、閑散期にもかかわらず、慌ただしかった。朝の朝礼で、王宮より王太子妃殿下がサマーフェスティバルに参加することになったので、その予算申請の確認を本日行うと発表されたのだ。それだけでなく侍従係も急遽、フェスティバルに参加するので、同じく予算申請及び参加申込書の確認を行うとの発表もあった。
入職二年目のマルコは、サマーフェスティバルの書類申請の確認をするのは、今年で二回目だ。昨年は直前になってこんなにバタバタしなかった。今年は何が違うのだろう。マルコがそんな事を考えていると、レオナルドから声がかかった。
「マルコ、妃殿下は午後一でいらっしゃるそうだよ」
「はい、先輩!」
マルコとレオナルドは、午前中は侍従係のヘルプに入って忙しく働くと、あっという間に昼食の時間。
いつもの場所にいつもと同じように手ぶらで向かう二人。そこには、これまた同じようにオリン公爵家の家令ファブが完璧な所作で待っていた。
白いクロスの上に並んでいる昼食は、食べたら間違いなくサンマ定食だ。
「すっげー!ついにサンマ定食が出た!」
レオナルドは小躍りした。
「さ、さんま?」
「そう、サンマ!ちゃんと炭火で焼いてあるし!大根おろしとすだちもある!!」
オリン公爵家の料理人スフィの腕前はうなぎ上り。ついになんちゃって大根おろしとすだちも入手したようだ。
さっそくレオナルドがマルコに「こうやって、まず魚にすだちを絞ってかけて」とアドバイス。
マルコは魚を炭火で焼いた料理は食べたことがないので興味津々だ。
「この大根おろしに醤油をかけて」
レオナルドは説明しながら、お腹がグーっと鳴った。
「先輩!僕に説明するより、まず食べてください!」
「へへ、お腹がなっちゃった!ではお言葉に甘えて、いただきます!」
レオナルドは、きっと大根の味噌汁を一口飲んで、「うまっ!」といい、次にサンマに大根おろしをのせてパクリ。
「うっめー!」
その喜びように、マルコとファブは顔を見合わせた。
「さあ、マルコ様も召し上がれ」
ファブに促されてマルコも最初に味噌汁をいただく。
「美味しい!」
次に、だいぶ使えるようになった箸でサンマを一口。
「脂がのってる。ふんわりしてるけど、肉厚で美味しい!」
マルコは、グルメレポーター並みのコメントでレオナルドを笑わせた。
そこへ…。さくさくさくと足音が…。
ここしばらく聞いていなかった足音だ。
向かい合って食べていたマルコとレオナルド。マルコは顔をあげ、レオナルドは振り向いた。
レオンだった。
「副団長!」
レオナルドは叫んだあと、マルコに笑いかけた。
「マルコ!良かったな!」
レオナルドは昨日からお父さんの表情ばかりだ。
マルコは久しぶりのレオンをガン見した。
レオンもマルコを見ながら、マルコの隣に座った。
家令ファブが目にも止まらぬ速さで定食をセッティング。レオンの前に、あっという間にサンマ定食が並んだ。レオンは器用な箸使いで味噌汁を飲み、サンマをぱくりと食べた。
「うまい!…そんなに見つめられたら、なんか恥ずかしいな」
レオンは苦笑した。
「あ、ごめんなさい!本物の副団長だって…。すっごい久しぶりの副団長で、なんか、なんか」
「嬉しかった、だろ?」
レオナルドだ。
そうマルコは嬉しかった。今まで当たり前のようにレオンと一緒に昼食を食べていたから、気づかなかった。レオンがいなくて寂しかった。
マルコは空を見上げるのが好きだった。同じ空なのに、季節によって色が変わる。雲もそうだ。それなのに、レオンに会えなくなってから、煌めく太陽の光さえ、色がなくなってしまった。いきなりお年寄りになったような気分だった。
副団長がいない、副団長に会いたい。
だけどマルコは、いま騎士団がどんだけ忙しいか知っている。
だから会いたいなんていってはダメだと思っていた。
そんなマルコの前にレオンがやってきた。
しばらく会えなかったことなど嘘のように、自然に隣に座った。
マルコはレオンを見て、次にレオナルドを見て、そしてまたレオンに視線を移す。
「あの、副団長に会えて、すごく嬉しい。僕、すごく嬉しいんだ。すごく嬉しい」
それはレオンにというより、独り言のようだった。
心の中に散らばっていた気持ちをレオナルドに指摘され、それと向き合った時に、ふいに口から出た言葉。
ブホッという音と共に、レオンの口や鼻から盛大にサンマ?が噴き出した。
「レオン様」
「副団長、水、水!」
レオナルドと家令ファブが大慌てでレオンを介抱。マルコは目が点になった。
レオンはナプキンを口にあて、鼻から色々と出てきてすごい有り様だったけど、マルコから目を離さなかった。手渡しされたコップから水を飲んだ時も、横目でマルコを捉えていた。鼻はツンと痛いし、口もなんとなく魚臭くて、これっぽっちもロマンチックではなかった。それでもこれだけは伝えなければ。その思いをレオンは一気に吐き出した。
「お、俺は前からずっと、それこそ初めて会った時からずっと、いつもマルコに会いたかった。マルコが父上の生まれ変わりと知っても好きだった。いっそ、父上だと知らないままの方が良かったとか、そんなこと思った時もあったけど、でもきっと同じだと思う。父上だと知ろうが知るまいが、マルコを愛しただろう。
マルコへの愛を自覚してから、なにしろ父上だし、…その壁をどうやったら乗り越えられるのかと、毎日、寝る前に考えた。でも無理だった。乗り越えられる方法なんかない。だって父上だし。父上は超えられない。どうやっても無理だろう。俺の愛は報われない。親子禁断の愛だ。こんな苦しいことはない。
でも、でも、そんな俺をマルコが助けてくれた!過去のつながりより、今世での関係が優先されると言ってくれた。あれで俺は目の前がぱーっと明るくなった!一気に開かれた!」
レオンはナプキンを投げた。
「ずっとずっと好きだった!」
レオンがマルコを抱きしめる。
マルコは途中まで、レオンの語る内容についていけなかった。
誰が誰の生まれ変わりだって。えっと、副団長のお父上の生まれ変わり?誰が?え?僕?僕?僕?なんで、意味が分からない。どういう発想?なんの勘違い?誰がそんなことをいったんだろう。そもそもどういう根拠があって、その発想になったわけ?
ああ、でも、よく分からないけど、とにかく、これだけは伝えなければ。
「あの…僕も…」
家令ファブの「レオン様!」の声はかき消された。いきなり花吹雪が舞ったのだ。
「マルコ!」
レオンの声もかき消された。天上から音楽が降ってきたからだ。正確には城壁の上に待機していた宮廷音楽隊の生演奏が降ってきたのだが。
とにかく誰も彼もが入り乱れ、マルコはいつのまにかリンリンさんとハグし、それがエメになったり、ファブになったりしながら、最後はちゃんとレオンと抱き合っていた。
ほぼ同時刻。
昨年、オリアナビューティボーイズ(OBB)総選挙で優勝し、センターを取ったサオ・アベルは、商店街が中心になって改装したOBB劇場に向かって走っていた。今日は午後からリハーサルがあるのだ。
OBB総選挙は、例年、サマーフェスティバルの初日に開催していたが、今年は突然、最終日に開催することになった。
そして、初日のOBB総選挙の枠にはオリジナル長編劇を上映することになったのだ。長いフェスティバルの歴史を紐解いても、これまで一度もないまさかの演劇。さらにその劇に出演するのはOBB全メンバーで、特に紙7は主要キャスト。しかもセンターを取ったサオは、なんと主役の一人に抜擢された。
昨年の今頃のサオは、パックやマッサージで念入りに肌を整えていたが、今年は劇の練習のため連日の寝不足で、目の下には巨大なクマが横たわっていた。
それはサオだけではない。OBBのメンバー全員が同じ状態。
しかし誰も文句を言わない。
なぜか。
古代の石板に書かれてある物語を劇にするという、注目の演劇だからか。それともそのシナリオを書いたのが王太子妃マジョリカ妃殿下だからだろうか。
いや違う。OBBメンバーの中に、劇の練習を重ねる中で不思議な一体感が生まれ、「成功させたい!」と全員が本気で思ったからだ。
劇場控室で練習着に着替えたサオは、かなり読み込んだシナリオを胸に、メインホールの横にある大きなリハーサル室に走った。
このリハーサル室は、前面はガラス張りで、自分の姿をチェックしながら練習できた。既に他のメンバーも揃い、準備万端だ。
サオのファンクラブ会長であるパコがパンパンと手を叩く。
「はい!注目!主要キャストが揃ったね!今日は通しで三幕までいくよ!」
パコはいつの間にか監督になっていた。仕切るのがうまい上に、プロデュース力もあるので、実はうってつけの人材だ。
パコが「カリンとサオ!ステージの中央に立って!」と、主役二人を呼んだ。
もう一人の主役は、サオの同期、超優秀侍従カリン・ドル―だ。
カリンはサオに負けるとも劣らない美貌だが、それを武器にしようとは思っていないので、OBB総選挙に応募したことはない。しかし、シナリオを書いたマジョリカ妃殿下の鶴の一声で、カリンの出演が決まった。そうなると侍従係としてもフェスティバルに参加申請をしなければならない。その申請を今日の午前中に筆頭侍従長ガイ・ホールが行ったのだ。
当初は妃殿下の命だから仕方なく練習に参加していたカリンだが、サオに真顔で「僕たちOBBメンバーは、絶対にこの劇を成功させたいの!だから、まじめにやってよ!」と諭された。
カリンは、まさかサオに説教されるとは思わなかった。指摘されてなんとも恥ずかしい思いをしたが、一生懸命に練習に取り組む皆の姿を見て、心を入れ替えて練習に励むカリンだった。
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