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14. 王族係・マルコ⑩(過去)
しおりを挟む⑥補助係に制服を!
陛下は自分の不甲斐なさにショックを受けていた。
「陛下、落ち込んでいる場合じゃありませんよ。そもそも落ち込むというのは、自分はたいしたものだと思っている人が、その虚像が崩れた時に起きるんです。そんなにたいした者じゃないって、分かって良かったじゃないですか!」
励ましつつ傷に塩を塗る母。
項垂れた陛下がチラッと母を見る。
そこには慈愛があった。希望の光だ。この女性はけっして自分を傷つけようとして言っているのではない。
一度、深呼吸した陛下は、自分を知ることは大事なんだと持ち直した。
「私は自己満足していただけなんだと、よく分かりました」
「現実を知ることは大事です」
既に上司と部下の会話になりつつある母と陛下。
「ところで、なんで補助係には制服がないんです?」
え、そこ?と、また陛下は思った。
「だって侍従や騎士団の方々には決まった制服がございますでしょう?」
そういって母は随行の騎士たちに目を向けた。
「なんでと言われまして、昔からの慣習といいますか…」
「陛下は慣習だったら、700年以上前の王冠をそのままお付けになりますの?」
700年以上前といえば建国間もない頃。
この頃の王冠は初代国王の肖像画で見る限り、貴金属が手に入らず木製の手作り、ショボショボ質素ななんちゃって王冠だった。
あの王冠を慣習だからと頭にのせて、諸外国の使節団との謁見の場に行く勇気は陛下にはない。
「た、たしかに、おっしゃる通りです」
「でしょ?慣習とは時代に即して都度に変化し、今度は陛下が新しい慣習を作るんです!」
そうか、わしが作るのか!まるで目前が開けたよう!
この女性はほんとに希望の光だった!
「さっそく、補助係の制服を作ります!」
「その際は、他国の知識満載のうちの先生方にアドバイスをもらいます。もちろんアドバイス料は頂きます!」
銀行とは手数料を取るところなのだ。
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