王宮の書類作成補助係

春山ひろ

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11. 王族係・マルコ⑦(過去)

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 ②有給休暇の設定


「うちでは従業員が体調不良になってお休みをとっても、それでお給金を減らしたりしません!」
 え、そこ?とまた陛下は思った。

「でも補助係というか、王宮では違うんですってね。体調不良で休んだら、仕事をしてないということで、休んだ分だけお給金が少なくなるって。うちのマルコは真面目なので、これじゃ、風邪気味なのに無理して出勤しますよ!それで風邪がひどくなる…」
 母は涙声になった。

「そんな!どうして商会うちで出来ることが、王宮で出来ないんですか!」
 父が血相変えて母を援護。騎士たちもうんうんと頷く。

「いや、それは、昔からだな、昔からの決まりで」
 陛下はしどろもどろで昔からの習慣を盾にする。

 母はきっとした顔で「今年の一般参賀、第三王子殿下はいらっしゃいませんでしたよね?」と詰問。
「そ、それは風邪気味で欠席したのじゃ。そのあと王宮から国民に告知したはずじゃが」
「それは聞いております。問題は、王族が公務をした場合、予算からお給金が支払われておりますでしょ?第三王子は欠席したのに支払ったのか、ということです」

 陛下はしまったという顔をした。
 そこまで考えずに習慣で払っていたのだ。

「いいですね、王族…」
 母はため息。その破壊力は絶大。

「わ、わかった。年間で10日は仕事を休んでも給金を支払おう!」
 陛下は自分では太っ腹だと思いながら宣言した。

「10日?」
 しかし、敵は納得していない模様。

「あ、20日にしよう!」
「それで手を打ちましょう。もちろんこれも王宮勤務員と騎士団全員同じで」

 母はにっこり笑う。

 こうしてオリアナに日本の有給休暇にあたる休暇が初めて出来た。これはまるで枯草に火を付ける如く、瞬く間に国内に広がり、労働者たちを喜ばせることになる。

 控えていた騎士たちはガッツポーズ!
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