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34、ダリ―と理久(4)
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テロ発生7時間後 ホワイトハウス ワシントンDC
ダリーのきれいな涙を口で吸い取るように、キスを何度も繰り返した理久は、言った。
「いまさらだけど、僕は女の人ではないです」
彼の愛しい男は、泣きながら噴き出した。
「ああ、わかっている。かわいいのが立っているからな」
その答えに、顔を真っ赤にした理久は「女の人みたいに逞しくないけど、ずっと一緒にいてくれますか?」と、プロポーズの答えを聞きたがった。
その様子が可愛くて、ダリ―は意地悪するつもりはないものの、理久が一番聞きたい答えではなく、「女が逞しいか」と、質問に質問で返した。
「はい。僕は日本に帰った時、一番してみたかったのは電車に乗ることだったんです。それで、おばあ様を説得して…」
「乗れたのか?」
「はい!ちょうど朝の通勤ラッシュの時間で…。満員電車って、乗ったことありますか?」
「…いや、ないな」
「ふふ。もうびっくり。女性がね、みんな下を向いてモバイルを見ているんです。結構、揺れるのに、どこにも掴まらずにモバイルを見てる!ものすごく、足腰が強いんだと思いました!」
こらえきれずに、ダリーは爆笑した。人生で初めて、腹を抱えて笑った。彼の人生の中で、最も縁遠いものは何かと問われたら、それは「笑顔」と答えるであろう、ダリ―が、である。
大笑いというのが、こんなに腹筋にくるのかと、彼が人生で初めて知った時、理久と言えば、この笑顔を引き出したのが自分なんだと、たとえようもない幸福感に包まれていた。
ノーベル賞作家である祖父は、言葉を紡ぎ出す天才であるものの、日常会話においては寡黙で、よく祖母から「実生活の語彙は省エネね」と、揶揄されている。
理久は、どちらかと言えば、祖父似で普段は言葉の多い方ではない。
彼が笑っていてくれるなら、僕はどんな道化にもなれるよ。
こんな風に思う自分に気が付く。
「…母は『父は宇宙人だ』っていうんです。とても同じ星の人間だと思えないって。男と女の間には、到底、理解できない深い溝があるって。だから、逆に男同士の方が理解しあえて、男女のカップルよりも、もっと深い繋がりが持てるのかもって…。」
ダリーは言葉を発することなく、ただ聞いていた。
「僕、今、外堀から攻めているの、分かってます?」
ぷっと、今度は控えめにだが、またもやダリ―は笑った。
やった!と、理久が得意になった時、理久が一番欲しかった答えをダリ―がつぶやいたので、今度は理久が涙を流した。
70億分の2…。19年しか生きていないけど、これは間違いなく、理久にとって奇跡だった。
ダリーのきれいな涙を口で吸い取るように、キスを何度も繰り返した理久は、言った。
「いまさらだけど、僕は女の人ではないです」
彼の愛しい男は、泣きながら噴き出した。
「ああ、わかっている。かわいいのが立っているからな」
その答えに、顔を真っ赤にした理久は「女の人みたいに逞しくないけど、ずっと一緒にいてくれますか?」と、プロポーズの答えを聞きたがった。
その様子が可愛くて、ダリ―は意地悪するつもりはないものの、理久が一番聞きたい答えではなく、「女が逞しいか」と、質問に質問で返した。
「はい。僕は日本に帰った時、一番してみたかったのは電車に乗ることだったんです。それで、おばあ様を説得して…」
「乗れたのか?」
「はい!ちょうど朝の通勤ラッシュの時間で…。満員電車って、乗ったことありますか?」
「…いや、ないな」
「ふふ。もうびっくり。女性がね、みんな下を向いてモバイルを見ているんです。結構、揺れるのに、どこにも掴まらずにモバイルを見てる!ものすごく、足腰が強いんだと思いました!」
こらえきれずに、ダリーは爆笑した。人生で初めて、腹を抱えて笑った。彼の人生の中で、最も縁遠いものは何かと問われたら、それは「笑顔」と答えるであろう、ダリ―が、である。
大笑いというのが、こんなに腹筋にくるのかと、彼が人生で初めて知った時、理久と言えば、この笑顔を引き出したのが自分なんだと、たとえようもない幸福感に包まれていた。
ノーベル賞作家である祖父は、言葉を紡ぎ出す天才であるものの、日常会話においては寡黙で、よく祖母から「実生活の語彙は省エネね」と、揶揄されている。
理久は、どちらかと言えば、祖父似で普段は言葉の多い方ではない。
彼が笑っていてくれるなら、僕はどんな道化にもなれるよ。
こんな風に思う自分に気が付く。
「…母は『父は宇宙人だ』っていうんです。とても同じ星の人間だと思えないって。男と女の間には、到底、理解できない深い溝があるって。だから、逆に男同士の方が理解しあえて、男女のカップルよりも、もっと深い繋がりが持てるのかもって…。」
ダリーは言葉を発することなく、ただ聞いていた。
「僕、今、外堀から攻めているの、分かってます?」
ぷっと、今度は控えめにだが、またもやダリ―は笑った。
やった!と、理久が得意になった時、理久が一番欲しかった答えをダリ―がつぶやいたので、今度は理久が涙を流した。
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