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23、ホワイトハウス(4)
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テロ発生3時間半以上後 ホワイトハウス ワシントンDC 合衆国
ファーガソン大統領は、ソファアから立ち上がり、大仰な身振り手振りでキートン首相と電話会談をしていた。その声だけが響く部屋で、もう一度、ノアール・アイルランド大尉が、首相の孫の弟の方(確か眞といった)、に聞いた。
「レイというのは?」
眞が、「僕たちのガードをしてくれている、英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)所属のレイ・アームストロング少尉です。一緒に外に出たのに、僕が博物館の中にリュックを忘れたから、それを取りに戻ってくれて…。ごめんなさい。」と、今にも泣きそうな声で答えた。
マティス国防長官は黙って聞いていたが、内心は眞が謝ったことに、驚いていた。素晴らしい。目で大統領を追いつつ、心の中でキートン首相を賞賛した。ガードに謝る要人家族など、早々いない。その直後、さらにマティスが驚くことが起きた。
「アームストロング少尉は、自分が取りに行くと判断をして、間違いはなかったと思っているはずですよ。その結果、あなたが人質になることが回避できた」
声の主はノアールであった。
マティスは目を見開いた。おいおい、お前に誰かを励ますことが出来たのか。
軍人として武器が超人的に使えるとか、肉弾戦に異常に強いだけでは部下はついてこない。しかもノアールは、面倒見がいいから、部下から慕われるというタイプの軍人でもない。どちらかといえば、言葉少なく態度で示す。そして部下は、彼のカリスマ性にあてられて黙ってついていく。そうやって「冷血」と、その仲間たちは、生き延びてきたのだ。
励まされた眞は、目に水の膜をはってノアールを見つめ、こくこくと頷いた。さらに、ノアールが続けた。
「少なくとも博物館内には、SASの隊員が一人はいる。これは我々の大きなメリットになる」
このノアールの発言に、うなずいていたマティスだが、さらに驚異的なことが起きた。
笑ったのだ、「冷血」が。
これには、マティスは得意のイタリア語(ナポリの方面のなまりったイタリア語)で、「たまげた!」と、大声を上げそうになった。お前の表情筋は死んでると思っていたよ。
笑顔を向けられた眞は、先ほどの泣きそうな顔が和らいでいった。
ホワイトハウスのシュミレーションルームで、約75億人の中から巡り合ったノアールと眞の間に、不思議な化学変化が起きようとしていた。
ファーガソン大統領は、ソファアから立ち上がり、大仰な身振り手振りでキートン首相と電話会談をしていた。その声だけが響く部屋で、もう一度、ノアール・アイルランド大尉が、首相の孫の弟の方(確か眞といった)、に聞いた。
「レイというのは?」
眞が、「僕たちのガードをしてくれている、英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)所属のレイ・アームストロング少尉です。一緒に外に出たのに、僕が博物館の中にリュックを忘れたから、それを取りに戻ってくれて…。ごめんなさい。」と、今にも泣きそうな声で答えた。
マティス国防長官は黙って聞いていたが、内心は眞が謝ったことに、驚いていた。素晴らしい。目で大統領を追いつつ、心の中でキートン首相を賞賛した。ガードに謝る要人家族など、早々いない。その直後、さらにマティスが驚くことが起きた。
「アームストロング少尉は、自分が取りに行くと判断をして、間違いはなかったと思っているはずですよ。その結果、あなたが人質になることが回避できた」
声の主はノアールであった。
マティスは目を見開いた。おいおい、お前に誰かを励ますことが出来たのか。
軍人として武器が超人的に使えるとか、肉弾戦に異常に強いだけでは部下はついてこない。しかもノアールは、面倒見がいいから、部下から慕われるというタイプの軍人でもない。どちらかといえば、言葉少なく態度で示す。そして部下は、彼のカリスマ性にあてられて黙ってついていく。そうやって「冷血」と、その仲間たちは、生き延びてきたのだ。
励まされた眞は、目に水の膜をはってノアールを見つめ、こくこくと頷いた。さらに、ノアールが続けた。
「少なくとも博物館内には、SASの隊員が一人はいる。これは我々の大きなメリットになる」
このノアールの発言に、うなずいていたマティスだが、さらに驚異的なことが起きた。
笑ったのだ、「冷血」が。
これには、マティスは得意のイタリア語(ナポリの方面のなまりったイタリア語)で、「たまげた!」と、大声を上げそうになった。お前の表情筋は死んでると思っていたよ。
笑顔を向けられた眞は、先ほどの泣きそうな顔が和らいでいった。
ホワイトハウスのシュミレーションルームで、約75億人の中から巡り合ったノアールと眞の間に、不思議な化学変化が起きようとしていた。
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