シルクワーム

春山ひろ

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19、「冷酷」(2)

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テロ発生直後 ペナン島 マレーシア

 大勢の人々の輪の中で、仕官はさらに続けて言った。
「シャングリラホテルの屋上に軍用ヘリを用意しました!」
 別の仕官が男の顔面を凝視して、「大尉、顔を殴られたのですか?」といい、男と対峙していた酔っ払い四人組を見た。

 彼らは、一気に酔いが覚めたようだ。聞き間違いか。確か「大統領」と聞こえたが。
 マレーシアは不思議な国で、このペナンでも昼はスーパーの店員をしながら、夜は売春をしている女性は多いが、その取り締まりはゆるやかだ。しかし、麻薬と暴力、傷害事件には厳しい判決が用意されているのだ。

 男が助けた少女が叫んだ。
「こいつらよ!こいつらが、この人を殴ったのよ!」
 周囲でことの成り行きを見ていた人々は、即席の捜査官になったように、次々に大声で酔っ払いたちの犯行を申告し始める。そればかりでなく、彼らが逃げられないように退路まで塞いだ。
 殴られた箇所は、男には全くなんの影響もなかったが、この後、四人組に少女が報復されるのが心配になった男は、1枚の名刺を出して士官の一人に言った。
「俺が被害者だ。連絡は弁護士にしてくれ」
 そう言い残すと、もう一人の仕官に誘導されて、男は消えてしまった。

 残った士官と警察官たちが4人を確保すると、彼らは口々に「弁護士、弁護士!」と叫び始めた。
 そんなことはお構いなしに、仕官は笑顔で宣告した。
「この国には、合衆国のような司法取引などありません。傷害は重罪です。長い休暇になりますね。…マレーシアへ、ようこそ!」
 
 シャングリラホテルのヘリポートから飛び立ち、バターワース空軍基地からF16に乗り換え、機上の人となった男は、海軍特殊部隊シールズ所属のダリー・フィッツランド大尉。テロリストたちからは「冷酷」と呼ばれている男だった。
 
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