シルクワーム

12、国防省・ワシントン支部（４）

発生後　国防省・ワシントン支部　ワシントンDC

　ダーレン大統領補佐官が、これ以上、顔を赤くできないであろうというほど、顔を真っ赤にして烈火のごとく怒鳴ろうとしたとき、ライス大統領首席補佐官が入ってきた。
　ライスは、チラッとダーレンを見た。見たがそれだけだ。こうやってダーレンの存在そのものを無視して、ダーレンの無能さを知らしめるのが、ライスのやり方だ。
　ライスは冷静に５人に対応した。
「私は、大統領の首席補佐官をしているライスです。まず、皆さんの身分証を拝見させていただきます」
 椅子に座りなおした二人の子供は、後ろを振り向いて立っている３人をみた。
 すると、立っていた中の一人が「お見せするのは、英国大使と日本大使の到着後でよろしいでしょうか」と、これまた丁寧に対応した。

　座っている二人の東洋人の子供は、互いに目配せしたあと、メガネをかけている方が口を開いた。
「家族に、家族に連絡させてもらえませんか？心配しているはずです。スマートフォンが通じないんです。どうしてか、まったくつながりません」。
　ライスは、「ファーガソン大統領が、先ほど全米に非常事態宣言を出しました。特に、このワシントンDCは、いわば戦争の最中のような緊急事態であるため、民間の回線を制限しています」と、答えた後、部屋の電話を示し「こちらの回線でしたら、つながります。番号を教えてください。こちらでかけます」と、伝えた。
　メガネの子供が番号を述べると、ライスは心中、「これは英国への国際電話だな」と思いながら、プッシュした。しかし、途中で、慌てて切った。

  冷静さが売りのライスにしては、取り乱して言った。
「これは、これは、イギリスのキートン首相へのホットラインです」

 その時、ノックがあり、ドアが開いた。
 その顔を見るなり、座っていた子供らは「ジェームズ！」と叫び、走りよる。

 サー・ジェームズ・ラムズフェルド英国大使は、安堵の笑顔で二人を抱きかかえた後、それはそれは美しい、貴族ならではのおじぎをして「理久様と眞様がご無事でなによりでございました」と、述べた。