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救国のマトリョーシカ ー傾国の美青年2ー
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みなさん、ごきげんよう。
僕はウェスティン・ジュリオ・グランフォルド、グランフォルド大公爵家の次男で7歳、大公爵家の嫡男です。
僕には兄がいて、本来は兄が嫡男です。
しかし兄は、王太子殿下の長子であるオメガのユーリオ王子と婚約し、将来、ユーリオ王子が即位したら、兄は王配として大公になることが決まりました。兄が王族になることに伴い、僕が嫡男へスライドし、我が家の爵位も公爵から大公爵に陞爵しました。
ふうー。
兄は当初、ユーリオ王子の妹のマリー王女と婚約へという打診がありましたが、兄の「7歳の勇者伝説」を目の当たりにした王妃様のゴリ押しにより、王子との婚約が決まったと聞いています。
7歳の勇者伝説…。
それは、「傾国の美青年」と呼ばれる、中々、口にするのも恥ずかしい二つ名のある父を、当時7歳の兄がオメガの令嬢から守り切った時の勇者ぶりを表現しています。
兄は「建国以来の天才」と言われ、美貌の父に瓜二つ、親思い、兄弟思いの非の打ち所がないアルファで、僕たち兄弟の自慢です。
その兄が公爵家を抜け、王族になる…。それを知ったのは、忘れもしない僕が3歳の時でした。
その日、子供部屋に兄と姉が揃って入ってきました。僕は1歳になる弟のエミリオと遊んでいました。エミリオはアルファが三人続いたあとに生まれたオメガで、いわゆる末っ子オメガです。
末っ子オメガというのは、我が国で末子がオメガだった場合、周囲が猫可愛がりする現象をいいます。特にエミリオは母そっくりだったので、父は顔面崩壊、僕たちといえば「ちっこい」、「かわいい」、「末っ子オメガ、サイコー」と、大はしゃぎでした。
…そんな時もありました。父の精力と母への愛情を甘く見ていたのです。
その後、母が第五子を妊娠。「末っ子オメガ」から「末っ子」がとれ、右往左往する僕たち。「末子であろうとなかろうと、可愛いは正義!」という姉の力業の主張で事なきを得ました。
ふー。
話がそれました。
その子供部屋で、兄から王配になると聞かされたのです。僕は直立不動です。特に兄から「僕は、すぐに王族になるわけじゃない。でもこれから周囲は、ウェスティンを嫡男として扱う。だから、ウェスティンが父上と母上を守るんだよ」と、言われた時の緊張と不安。そんな僕の様子が手に取るように分かったのでしょう、姉が僕を呼びました。
「ウェスティン」
姉に呼ばれると、僕は自然と右手が胸の前にきて、さらに背が伸びます。その様子を満足気に見た姉は「洗脳、いえ教育の賜ね」と目を細め、兄は少し目が泳いでました。
「ウェスティン、両親を守るという分野において、兄上は先駆者よ。道を開拓する最初の一人は常に人知れない苦労があるわ。それを兄上はやり遂げた。それに続けと言われて、不安にならない方がどうかしている。あなたの不安は分かります。でもいきなり一人で両親を守れというんじゃないの。兄上、そして私がこれまで培ってきたあらゆる技を、あなたに伝授します」
「あい!」
「私はいずれ他国に嫁ぐ身です」
姉は隣国の第一王子との婚約が決まっていました。いずれは王妃です。
「私は王妃になっても隣国から見守るだけでなく、あらゆる手を使い、これからも両親を助けるつもり。だからあなたは、私たちが伝授する技を極め、自分のものにしていけばいいの。そして振り返った時、きっとあなたは私たちより遥か高身にいるはずです」
この時、姉はわずか6歳。見た目は父譲りの美貌、中身は王妃そっくりで、この時点で既に「プチ王妃」と呼ばれてました。
「あい、あねうえ。ちゅねに、おうけにちゅうせいを、下にはじあいを!ちちうえとははうえをまもりましゅ!」
僕は、グランフォルド家の家訓「常に王家に忠誠を、下には慈愛を」を、自然と口にしていました。ここでも胸に右手を置き、精一杯の直立不動です。
姉は感極まった顔をし、兄はちょっと遠い目をしていました。
「いいことウェスティン。とても大切な技だけど、小さいうちしか使えないものだから、最初に伝えるわ。これは確実に現実から逃避できるけど、使いすぎはだめ。使いすぎると単なる『きかんぼう』、『わがまま坊や』になってしまうから、取り扱いには十分注意してね」
僕は姉の言葉を一言も聞き逃すまいと、胸にあてた右手の握りこぶしに力が入りました。
「あい!」
「これはね、追い詰められた時、それは父上を守りきれないかもしれないとか、自身が窮地に立った時に使える技で、『子供のウソ泣きは本気泣きになり、伝染する』という大技なの」
「こどもにょ、うしょ泣きは、ほんきなきになり、でんしぇんしゅる?でしゅか?」
「そうよ!最初はウソ泣きだけど、子供の精神は不安定だから、ウソ泣きしているうち、いつしか本気で泣いてしまうの。事実、兄上はモンゴメリー侯爵の嫡男、ジョージ様を相手にこの技をを炸裂させ、いつしか我を忘れて声が枯れるほど大声で泣き、まんまと逃げおせたそうよ!」
僕はきらきらした目で兄を見ました。兄は微妙に目を逸らしましたが、それは謙虚な兄が姉の賞賛に堪え切れなかったからでしょう。
「ちゅごい!兄上がはじをわしゅれて、おおなきできゅるなんて!ぼくもじぇーったい、身にちゅけます!」
「そうよ!ウェスティン!それでこそグランフォルド家の男です!」
なんにも分からないエミリオも、「だーっ」と声を上げ、喜びを表現していました。
この時、部屋の入り口では、母が「何をやってるんだ」と頭を抱え、父は「仲の良い子供たちで私たちは幸せ者だね」と言いながら母の肩を抱き寄せていたと、後で執事が教えてくれました。
ふう。
それから4年―。
姉に「両親守るべし」と、徹底的に英才教育をされた僕は、いま、兄の学ぶ王立学園の卒業パーティーのリハーサル会場にいます。
王立学園は、14歳から18歳の貴族令息令嬢の学び舎で、平民であっても試験に合格すれば入学できる我が国唯一の王立学校です。兄はまだ13歳ですが、王配としての教育を受けるべく、特例で入学し、史上最年少で生徒会長に選ばれて、今年の卒業パーティーの主催者代表なのです。
我が大公爵家としても学園に莫大な寄付をし、新たな学科の設立にも尽力しました。それは母の願いだった「領地経営学部」で、「領地経営学科」と「農地改良科」に分かれています。
当初は、大切ながらも地味な学部ゆえ、専攻する者がいるかどうか皆が心配しましたが、それを解消する手も母は考えていたのです。それがなんと、学部最初の授業を1回だけ、父が受け持つという驚愕の荒業でした。
これには兄以下、子供たち全員が大反対のシュプレヒコール。兄などは「母上は、今までの僕たちの努力を灰燼に帰するのですか!父上を学院に行かせるなんて、魔魚のいる大海に、食べてくれと言わんばかりに幼魚を放出するようなものです!」と、目を真っ赤にして懇願する始末。
母はしれっと、「大公爵閣下は準王族。国王には『痴れ者とあれば、躊躇なく切れる本物の騎士を護衛につけてください』と、お願いしてあります。我が国一番の手練れが四人、オリバーを守護し、誰も近づけません!」と、言い切りました。
しかし、肝心の父の顔色がすぐれません。当然です。1時間も令息令嬢の前で話すなど、世紀末がきても父に出来ようはずがないのです。
そんな父に、母が「オリバー、難しいことなんて言わなくていいよ。僕との出会いから、多くの子を持つ身になった今までのことを話せばいい」と、父の頬に手を寄せて抱きつくと、父の顔色は瞬く間に上気し、しまいにはとろける笑顔で「それでいいのか?」と、言い出すではありませんか。母上、恐るべし!
こうして父は、学部最初の授業を1回だけ担当することになりました。それが発表された時の有様は、学園始まって以来の阿鼻叫喚!我も我もと受講希望者が殺到し、裏取引まで行われたと聞きました。
そして、父は1時間だけ講義しました。
父が何を話したのか分かりません。サマセット侯爵家の令嬢が受講できたそうで、同家の執事と懇意なうちの執事が、令嬢から得た情報を侯爵家の執事から聞き出しました。
「大公爵閣下のお講義は、それはもう、高尚で哲学的で、それでいて詩的で論理的で愛にあふれて!後光がし、さながら天空の宮殿で天才音楽家の奏でる音のハーモニーを聞いているようだったわ!」
何を言っているのか、わかりません。
はあ。
また話がそれました。
とにかくこうした学園に対する貢献で、大公爵家一同全員が卒業パーティーに招待されたわけです。卒業パーティーといえども、留学している隣国の王族も参加する一大イベント。姉の婚約者の隣国の第一王子、その第一王子の弟でクレイトン公爵家令息と婚約している第三王子、さらにその二人の王子の親である王太子殿下も参加します。それゆえ前日には本番さながらのリハーサルがあるのです。
両親と姉と僕、下の弟二人、オメガのエミリオとアルファのリチャードは、来賓として壇上の右側に、兄は主催者として壇上の左側に座る予定ですが、大公爵家を紹介する時は、兄も僕たちと一緒に並んで挨拶するという手筈です。
三段下の会場には、卒業生在校生の貴族(ほごしゃ)が座り、壇上から見ると壮観です!
司会が学園に対する我が家の功績を紹介したあと、「大公爵家の皆様です!」との声を合図に僕たちは一列に並び、グランフォルド家の色であるロイヤルブルーの揃いの衣装で会場へ一礼しました。
そして顔をあげると、ため息と共に荒い鼻息が波のように押し寄せ、僕は立っているのがやっとという有り様。
そこへ場違いな叫び声があがりました。
僕たちの後ろにいる宰相以下、来賓として壇上にあがっている高位貴族たちも、ざわざわする方を見ると、騎士たちが男女4人を連行してくるではありませんか!
僕は姉のスパルタ教育のおかげで、貴族名鑑は全て暗記しています。連行されてきたうちの三人の男性は、クレイトン公爵家嫡男ギルバート様、フォード侯爵家嫡男マシュー様、バーナード侯爵家嫡男トーマス様でした。
ギルバート様の父であるクレイトン公爵は宰相で、マシュー様の父のフォード侯爵は法務大臣、トーマス様の父のバーナード侯爵は騎士団長と、いずれも我が国の要職につき、今、壇上に控えています。さりげなく僕が後ろを振り返ってみれば、三人の父親は顔色を変え、目を見張っていました。
連行されてきたうち、女性だけは誰だか分かりません。恐らく貴族ではないのでしょう。ふわふわした金髪に白い肌、大きな目と小さい顔、一目で「これぞオメガ」と分かる容姿です。
騎士団長のバーナード侯爵が、騎士に何が起きたのか問うと、あり得ない答えが返ってきました!
なんと4人は、明日の卒業パーティーで、衆人環視のもとギルバート様の婚約者である隣国の第三王子、オメガのヤヌシュ殿下に対し婚約破棄を突きつけるべく、そのリハーサルをしていたというのです!
僕は開いた口が塞がりません。
婚約破棄のリハーサル?なにそれ?バカなの?ねえ、バカなの?
ヤヌシュ王子を見れば真っ青です。ヤヌシュ王子は僕より3歳上の10歳。クレイトン公爵家に降嫁するため、お付きの侍女はいるとはいえ一人で、学園に留学しているそうです。ちなみに姉の婚約者のヤヌシュ王子の兄の第一王子は留学しておらず、今回は姉に会うために王太子と一緒に外交訪問しているのです。
さらに、その婚約破棄の理由が、ギルバート様の「運命の番」にヤヌシュ王子が嫉妬し、「暴言を吐いて」、「ノートを破り」、「水をかけ」、果ては「階段から突き飛ばした」などの虐待をしたからというのです。
バカだ!やっぱりバカだ!
当事者である4人は別の世界の人でした。現実世界にいる僕たち全員が呆れて二の句がつけずにいることに気づかず、彼らは陶酔して己の主張を述べる中、クレイトン公爵が耐えられず激怒して、4人を会場から連れ出そうとしました。
それを止めたのは、なんと父です!
父は「クレイトン公爵、事実関係を詳らかする必要がある」というと、兄に「ガブリエル・グランフォルド生徒会長、この場を仕切ることを許可する」と告げました。ここで我が国最高位は、準王族である大公爵の父です。
兄は、はっとして父に礼をすると「生徒会長として事実確認します」と宣言し、4人を椅子に座らせると、檀上から見下ろす形で尋問に入りました。その間に父は侍従を呼び、何やら耳打ちしています。
僕は、兄の雄姿から目が離せません!
兄は「まず、そちらの女性のノートを破いた器物損壊罪について」と前置きし、起きた日時と場所を4名に問いました。その結果、1か月前に女性が寮の自室に戻ると置いてあったノートが破られていた、さらに二週間前、同じく女性が教室に置き忘れたノートを取りに戻ると、そのノートも破られていたというものでした。
母が兄に発言の許可を求めました。
「グランフォルド大公爵夫人、発言を許可します」
「ありがとう、生徒会長。金銭について話すのは品位を失する行為とは分かっていますが、あえて学園長に聞きたい」
主催者側に座っていた学園長が、「ひっ」と声をあげ、背筋を伸ばしてその場に立ち上がりました。
「当家は学園に相当な金額を寄付しています」
「はい、それは、もう感謝に堪えません」
「当家だけでなく、本日会場に集まった貴族家からも、かなりの寄付があるはずです」
会場の貴族(ほごしゃ)や、来賓の貴族たちが頷きます。
「しかし、今の彼らの主張を聞くと、寮や教室のセキュリティに予算が割り当てられておらず、私物がいとも簡単に損壊される状況のように思われます。そうであるならば、今後、ここにいる貴族家の大半は、学園に子弟を通わせるのを躊躇せざるを得ません。皆様、いかがです?」
同じく全員が頷きました。
「大公爵夫人!当学院のセキュリティは万全です!10分間隔で全ての学び舎を警備兵が3人一組で回り、寮に至っては24時間体制で管理人が表と裏に常駐しており、寮の関係者でなければ、けっして入れません。何しろ他国の王族も留学しているのです。王宮並みの警備体制を敷いております!」
母は満足気に頷きながら「ありがとう、学園長。生徒会長、私が聞きたかったのは以上です」と、兄に進行を委ねました。
「ありがとうございます、大公爵夫人。さてギルバート様、今の学園長の話を聞いて、ヤヌシュ王子が、どうやってあなたの番とかいう女性のノートを損壊できるのですか?」
「いや、私はダフィーが、あの私の運命の番の、このダフィー嬢が、ヤヌシュ王子にノートを破られたといったから」
「いったから?つまり証人は、その本人の証言だけということですね?裏付けを取ってもいないのに、それを理由に婚約破棄?」
兄に指摘され、ギルバート様は狼狽えましたが、それ以上に彼の父であるクレイトン公爵が真っ青になっています。
そこにさきほど父が耳打ちした侍従が戻り、分厚い資料を父に渡しました。
「グランフォルド生徒会長、発言の許可を」
「グランフォルド大公爵閣下、発言を許可します」
父は侍従から渡された手元の分厚い資料に目を落としました。会場は静まり返り、父が何をいうのか緊張が漲ります。父はトントンと資料を指で叩きながら言いました。
「そもそも、そこのダフィー嬢はオメガではない。ベータだろう?」
会場はどよめき、ギルバート様は口をはくはくしていますが、閣下に許可なく発言することはできないことは承知しているようです。しかし、相手の運命の番とやらの女性は、ルールを無視して叫びました。
「わ、私はオメガです!」
この時、僕は初めて父が怖いと思いました。
僕たちの前では、母の手の上でコロコログリングリンに転がされ、蕩けたバターになって、パンケーキの中にしみ込んでしまう父が!人前では感情劣化によって表情筋が死滅している父が!
その父が口角をわずかにあげ、「いや、違うね。君が入学時に提出した書類には、確かにオメガと記載されていた。しかし、これは」と、手に持つ書類をかかげ、「君が出生時に、君のご両親が提出した戸籍だよ。ここには、はっきりとベータと記載されている」と、不敵に笑ったのです!
その様は、まさに傾国の美青年!
その後は凄惨な光景が…。半狂乱になったベータ女性と騎士たちの大乱闘、三人のバカ嫡男たちは茫然自失。三人の父親は各々の嫡男に往復ビンタを食らわし、結局、全員が連行されました。
僕もしばらく放心状態。
そこに、隣国の王太子殿下が来賓席から立ちあがりました。
「国内問題は決着が見えたようだが、我が国ついてはどうするつもりか!」
場内は水を打ったように静まります。
今度こそ戦争かもしれません!
「我が国の第三王子、ヤヌシュに対する数々の不敬!ヤヌシュは降嫁にあたり、貴国の言葉や文化を学ぼうと、10歳で貴国の学園に入学した!そのヤヌシュに、貴国高位貴族の嫡男らによる無礼千万な行為!この責任はどうするつもりか!」
僕はヤヌシュ王子を見ました。
王子は俯いています。華奢で小さな王子様。そんな王子になんてひどいことを…。可哀そうで、申し訳なくて…。
「うわーん!」
僕は堪えきれず、大声で泣き叫びました。
「ごめんなさい、ごめんなさい!ヤヌシュ王子、ごめんなさい!ひ、ひどいことして、ごめんなさい!わあーん」
僕に釣られて、弟たちまで泣き出しました。
「うわーん!ごめんちゃい、ごめんちゃい、おうじしゃま、ごめんちゃい!」
「うわーん!ごんちゃ、ごんちゃ」
僕と弟たちの泣き声だけがこだまする会場内。
うぇぐとか、おぇとか、嘔吐きながら、泣き続ける僕ら。
ヤヌシュ王子は涙を流して駆け寄ってきて、嘔吐き泣く僕らを抱きしめてくれました。
そこに、同じ壇上にいた父が「ヤヌシュ王子、申し訳なかった」と、頭を下げたのです!
準王族が頭を下げる!これを目の当たりにして、パニックにならなかったら貴族ではありません!
大泣き三重奏の爆音は、フルオーケストラが最終楽章に向けて盛り上がるがごとく、音量マックスに到達しました。
「うわーん!ごめんにゃさい、おぇ、おぇ、ごめん、おうじしゃま。うわーん、おうぇ」
大公爵夫人の母が「申し訳ございませんでした」と頭をさげ、次には未来の王配である兄上が下げ、未来の隣国王妃の姉上が、僕らの背後にいた王国首脳陣全員が、そして式典に参列していた会場内の全ての貴族や侍従・侍女たちが、「申し訳ございませんでした」と、順次、ヤヌシュ王子に頭を下げて謝罪したのです!
それはさながら、王子と僕らを中心に、花弁が咲き広がるような圧巻の光景でした。
隣国の王太子殿下が、感極まって胸に手をあてられたのを見たのを最後に、僕の記憶は途切れました。泣きすぎて脱水症状を起こした僕と弟たちは、両親に抱えられて学園内の医療室に担ぎ込まれ、そのまま寝落ち、気が付いたのは翌朝でした。
リハーサルの翌日です。
「擬態オメガ?」
僕と母が同時に声を上げました。
エミリオは満足気に父のお腹の上で、リチャードは母の腕の中で、それぞれ液状化し、僕は両親に挟まれ居間のソファに座っています。ローテーブルを挟んで反対側のソファには、兄と姉が座っています。
「そう。オメガと勘違いしそうな容姿のベータが発症する心の病だよ。おそらく、オメガになりたいという願望が強くなって、妄想に陥るんだろう」
「父上は、よくわかりましたね」
兄の感想はもっともです。あのリハーサル会場にいた全員が、ギルバート様の相手はオメガだと思い込んでいたのですから。
「子供のころの家庭教師の一人がそうだったんだよ」
父の言葉に僕らは目を合わせました。父の感情劣化を引き起こした元凶のベータの家庭教師!
「あのベータの女性は、その家庭教師と同じ目をしていた。だからすぐに分かったよ」
父はエミリオの背中をトントンしながら、事もなげにいいます。
すごい!みんな父をキラキラした目で見つめました。
「それに、よく戸籍が用意できたね」
そう、それ!母だけでなく、僕ら全員が思ったことです。
「あ、あれは戸籍じゃないよ」
えー!?
「あれは、この間の講義で使った教材だよ。あの時点では、ギルバートの相手の名前すら分からなかったから、戸籍は無理さ。だから侍従に『領地経営学部の教務室から教材を持ってきてくれ』と、頼んだんだ。
擬態オメガを発症した者は、根本のところではベータという自覚はあるんだ。だから書類なら、なんでも良かった。それらしい客観証拠に見えそうな物を突きつければ、心が齟齬を起こし、ボロが出ると思ったんだ。うまくいったね」
父上!かっけー!
正面に座る兄が少し寂しそうに見えます。そんな兄に姉が声をかけました。
「兄上。父上が実は『やればできる子』だったとしても、これまでの兄上の努力が無になったりしません。これから私たちは守る人達が増えます。身に着けた技(わざ)は、いかようにも応用できますわ。それに父上の『やればできる子』ぶりは、そんなに多くありませんでしょ?」
10歳の姉の達観ぶりに、母は顔が引きつってました。
今回の婚約破棄騒動で隣国が出した条件は二つ。一つは姉と第一王子との婚約は維持、そしてヤヌシュ王子とギルバート様との婚約は白紙撤回、新たにグランフォルド大公爵家の嫡男との婚約を望むというものでした。
えー!?
僕?僕とヤヌシュ王子が婚約?
うおー!!びっくりしました!
ヤヌシュ王子は王宮の離宮から学園に通っていましたが、今はうちの近くに新しく離宮を建設し、僕と結婚するまではそこに住まわれるそうです。うちはアルファが多いので、万が一、間違いが起きないようにと、母が配慮した結果です。
うちでヤヌシュ王子と接しているのは、もっぱらオメガの母とエミリオです。
「うちの息子たちは、みんなオリバーにそっくりだから、ウェスティンも大きくなると思う。でも大きいからって、お姫様抱っこができないってわけじゃないからね。姫抱っこはコツがあるんだよ」
「はい!お義母様(おかあさま)!」
母は何を教えているんだろう…。それにヤヌシュ王子…。なんでそんなに嬉しそうなの…。
ふうー。
そうそう、クレイトン公爵は宰相を辞して公爵も返上、たくさん持っていた爵位のうち、一番下のボードワール男爵を名乗り、王家に多額の賠償金を支払いました。クレイトン公爵という爵位は当面、王家預かりとなり、末子のリチャードが大きくなったら継承するそうです。もともと大公爵家(うち)と公爵家は遠戚なので、問題なく処理されたと聞きました。
こうして、我が国始まって以来の婚約破棄騒動は決着しました。本番の卒業パーティーは一週間延期して無事に開催。そして本来は参加予定ではなかった国王陛下と王妃が、急遽、参加しました。
檀上でグランフォルド大公爵家一同が、一列に並んで挨拶する様子を見た王妃が、一言、漏らしたそうです。
「まるでマトリョーシカね。救国のマトリョーシカ…」
遠くて寒い東の国のお人形。人形から小さな人形が出てきて、その小さな人形から、さらに小さな人形が出てくるマトリョーシカ。
僕は父上と母上の子供で良かった。兄上と姉上の弟で良かった。
だから、二人の小さな弟たちにも同じように思われたい。そして何より、ヤヌシュ王子に「ウェスティンと一緒で良かった」と思われたい。
僕は、まだまだ技の免許皆伝は無理でした。ほんとはちゃんと計算して大泣きできたら良かったんですけどね。
今日は僕たちの話を聞いてくれて、ありがとうございました。
【おまけ】
・ある侍従の証言
「閣下が、私が渡した教材を『戸籍』とおっしゃった時は驚きましたが、もちろん顔には出しません。教材は閣下から回収して教務室に戻しました」プロ!
・ヤヌシュ王子の独白
「僕の叔母が25年以上前、この国で性犯罪をやらかし、それから両国は緊張状態だった。僕の結婚は叔母の尻ぬぐい。大公爵家のアナベル様は兄の第一王子と婚約、それに対して僕は公爵家令息と婚約。これが我が国とこの国の力関係を如実に表わしている。でも僕は王族。王家の指示に従う。政略結婚に愛はいらない。だとしても、僕に全く敬意を払わない元婚約者の所業には、ほんとに辛かった。だからあのリハーサル会場で、純粋に僕に対して謝ってくださったウェスティン様たちの行為に感動したんだ。その後、まさか、ウェスティン様との婚約という褒美が待っていたなんて!ウェスティン様は美しいだけでなく、可愛くて凛々しい!今回の騒動終結の褒賞として、国王陛下はウェスティン様に立派な黄金の短剣を下賜された。その黄金の短剣を、ウェスティン様は私の住まう離宮に持ってきてくださり、跪いて『ヤヌシュ王子、この短剣を僕と思ってお持ちください。今はまだ僕は小さい。でも大きくなったらこの短剣を自在に使いこなし、必ず王子を守ります!』と、言ってくれた!僕は泣いてしまった!」
ウェスティンは姉の洗脳(きょういく)の成果で、「これぞ貴公子!」へ成長中。ちなみにギルバートの恋したダフィー嬢が、安い砂糖を使ったゴテゴテのパフェだとすると、ヤヌシュ王子は最高級和三盆を惜しげもなく使った高級スウィーツ。上品で清々しい美しさ。お子様には王子の美しさが分からなかった。ちなみにダフィー嬢は、北のさびれた修道院へ送られた。
・クレイトン公爵のその後
クレイトン公爵は、私財のほとんどを売り払い賠償金として王家に差し出し、ド貧乏に。そのうえ役職も辞したので、当初は公爵位の返上を申し出なかった。爵位に執着したのだ。自邸蟄居を命じられて三日目。王妃の要請で登城。しかし肝心の王妃は、目の前の公爵を放置し、孫娘(アナベル)とおしゃべりに夢中。
「アナベル、最近、市井で面白いものが流行っているとか?」
「ええ、おばあ様、子供が悪いことをすると『ギルバート化する』と言っています。略して『ギル化』。用法としては、『そんなにギル化するなら、家に入れないからね!』といった具合です」
「まあ!…公爵、これをどう思って?」
「…」
「答えられないのね。ではアナベル、こういうケースを何というのかしら?」
「はい、おばあ様。末代までの恥、ですわ」
この後、公爵は速やかに爵位の返上を申し出た。
王妃は怒っていた。クレイトン公爵位は名門。しかし王家が罪科として取り潰せば、爵位そのものがなくなってしまう。だから本人からの返上を待っていたのだ。王妃なりに公爵家の家門を守ろうとしていたのである。
そもそも25年前、隣国の王女性犯罪事件は、当時外務大臣だった公爵の不手際によった。王女といえども妙齢のオメガが他国に外交し、問題が発生したらどうするのか。王妃は反対したが、公爵は「完璧な警備」を豪語した。その結果がアレだ。だが、若く将来有望な名家嫡男をこれで潰すのは忍びなく、彼の成長を見守ることで不問にした。その後、公爵は宰相となり成長したかに見えたが、危機管理能力は甘いままだったようだ。大事な嫡男に貴族の覚悟さえ教えていなかった。
一度目は許した。だが二度目はない。
王妃は、躊躇なく傷に塩を塗ることにした。
「元公爵。そなたの元嫡男に追従した2家の侯爵は、自ら早々に爵位返上を申し出てきました」
元公爵は、ビクっとして小さくうずくまる。
かまわず王妃は続けた。
「アナベル、こういった元公爵の有りようは何というのかしら?」
「恥の上塗り、でしょうか?もしくは恥知らず、それとも面汚し?」
元公爵は生涯領地から出ることはなかった。廃嫡したギルバートも領内で一生を雑役夫として終えた。
公爵家の子供たち
ダニエル(アルファ) 自力と努力の貴公子
アナベル(アルファ) 裏ボス街道爆進中のプチ王妃
ウェスティン(アルファ) 英才教育の賜・貴公子
エミリオ(オメガ) 母そっくりのしっかり者のお嬢様
リチャード(アルファ) 家族総出で構い倒した貴公子
僕はウェスティン・ジュリオ・グランフォルド、グランフォルド大公爵家の次男で7歳、大公爵家の嫡男です。
僕には兄がいて、本来は兄が嫡男です。
しかし兄は、王太子殿下の長子であるオメガのユーリオ王子と婚約し、将来、ユーリオ王子が即位したら、兄は王配として大公になることが決まりました。兄が王族になることに伴い、僕が嫡男へスライドし、我が家の爵位も公爵から大公爵に陞爵しました。
ふうー。
兄は当初、ユーリオ王子の妹のマリー王女と婚約へという打診がありましたが、兄の「7歳の勇者伝説」を目の当たりにした王妃様のゴリ押しにより、王子との婚約が決まったと聞いています。
7歳の勇者伝説…。
それは、「傾国の美青年」と呼ばれる、中々、口にするのも恥ずかしい二つ名のある父を、当時7歳の兄がオメガの令嬢から守り切った時の勇者ぶりを表現しています。
兄は「建国以来の天才」と言われ、美貌の父に瓜二つ、親思い、兄弟思いの非の打ち所がないアルファで、僕たち兄弟の自慢です。
その兄が公爵家を抜け、王族になる…。それを知ったのは、忘れもしない僕が3歳の時でした。
その日、子供部屋に兄と姉が揃って入ってきました。僕は1歳になる弟のエミリオと遊んでいました。エミリオはアルファが三人続いたあとに生まれたオメガで、いわゆる末っ子オメガです。
末っ子オメガというのは、我が国で末子がオメガだった場合、周囲が猫可愛がりする現象をいいます。特にエミリオは母そっくりだったので、父は顔面崩壊、僕たちといえば「ちっこい」、「かわいい」、「末っ子オメガ、サイコー」と、大はしゃぎでした。
…そんな時もありました。父の精力と母への愛情を甘く見ていたのです。
その後、母が第五子を妊娠。「末っ子オメガ」から「末っ子」がとれ、右往左往する僕たち。「末子であろうとなかろうと、可愛いは正義!」という姉の力業の主張で事なきを得ました。
ふー。
話がそれました。
その子供部屋で、兄から王配になると聞かされたのです。僕は直立不動です。特に兄から「僕は、すぐに王族になるわけじゃない。でもこれから周囲は、ウェスティンを嫡男として扱う。だから、ウェスティンが父上と母上を守るんだよ」と、言われた時の緊張と不安。そんな僕の様子が手に取るように分かったのでしょう、姉が僕を呼びました。
「ウェスティン」
姉に呼ばれると、僕は自然と右手が胸の前にきて、さらに背が伸びます。その様子を満足気に見た姉は「洗脳、いえ教育の賜ね」と目を細め、兄は少し目が泳いでました。
「ウェスティン、両親を守るという分野において、兄上は先駆者よ。道を開拓する最初の一人は常に人知れない苦労があるわ。それを兄上はやり遂げた。それに続けと言われて、不安にならない方がどうかしている。あなたの不安は分かります。でもいきなり一人で両親を守れというんじゃないの。兄上、そして私がこれまで培ってきたあらゆる技を、あなたに伝授します」
「あい!」
「私はいずれ他国に嫁ぐ身です」
姉は隣国の第一王子との婚約が決まっていました。いずれは王妃です。
「私は王妃になっても隣国から見守るだけでなく、あらゆる手を使い、これからも両親を助けるつもり。だからあなたは、私たちが伝授する技を極め、自分のものにしていけばいいの。そして振り返った時、きっとあなたは私たちより遥か高身にいるはずです」
この時、姉はわずか6歳。見た目は父譲りの美貌、中身は王妃そっくりで、この時点で既に「プチ王妃」と呼ばれてました。
「あい、あねうえ。ちゅねに、おうけにちゅうせいを、下にはじあいを!ちちうえとははうえをまもりましゅ!」
僕は、グランフォルド家の家訓「常に王家に忠誠を、下には慈愛を」を、自然と口にしていました。ここでも胸に右手を置き、精一杯の直立不動です。
姉は感極まった顔をし、兄はちょっと遠い目をしていました。
「いいことウェスティン。とても大切な技だけど、小さいうちしか使えないものだから、最初に伝えるわ。これは確実に現実から逃避できるけど、使いすぎはだめ。使いすぎると単なる『きかんぼう』、『わがまま坊や』になってしまうから、取り扱いには十分注意してね」
僕は姉の言葉を一言も聞き逃すまいと、胸にあてた右手の握りこぶしに力が入りました。
「あい!」
「これはね、追い詰められた時、それは父上を守りきれないかもしれないとか、自身が窮地に立った時に使える技で、『子供のウソ泣きは本気泣きになり、伝染する』という大技なの」
「こどもにょ、うしょ泣きは、ほんきなきになり、でんしぇんしゅる?でしゅか?」
「そうよ!最初はウソ泣きだけど、子供の精神は不安定だから、ウソ泣きしているうち、いつしか本気で泣いてしまうの。事実、兄上はモンゴメリー侯爵の嫡男、ジョージ様を相手にこの技をを炸裂させ、いつしか我を忘れて声が枯れるほど大声で泣き、まんまと逃げおせたそうよ!」
僕はきらきらした目で兄を見ました。兄は微妙に目を逸らしましたが、それは謙虚な兄が姉の賞賛に堪え切れなかったからでしょう。
「ちゅごい!兄上がはじをわしゅれて、おおなきできゅるなんて!ぼくもじぇーったい、身にちゅけます!」
「そうよ!ウェスティン!それでこそグランフォルド家の男です!」
なんにも分からないエミリオも、「だーっ」と声を上げ、喜びを表現していました。
この時、部屋の入り口では、母が「何をやってるんだ」と頭を抱え、父は「仲の良い子供たちで私たちは幸せ者だね」と言いながら母の肩を抱き寄せていたと、後で執事が教えてくれました。
ふう。
それから4年―。
姉に「両親守るべし」と、徹底的に英才教育をされた僕は、いま、兄の学ぶ王立学園の卒業パーティーのリハーサル会場にいます。
王立学園は、14歳から18歳の貴族令息令嬢の学び舎で、平民であっても試験に合格すれば入学できる我が国唯一の王立学校です。兄はまだ13歳ですが、王配としての教育を受けるべく、特例で入学し、史上最年少で生徒会長に選ばれて、今年の卒業パーティーの主催者代表なのです。
我が大公爵家としても学園に莫大な寄付をし、新たな学科の設立にも尽力しました。それは母の願いだった「領地経営学部」で、「領地経営学科」と「農地改良科」に分かれています。
当初は、大切ながらも地味な学部ゆえ、専攻する者がいるかどうか皆が心配しましたが、それを解消する手も母は考えていたのです。それがなんと、学部最初の授業を1回だけ、父が受け持つという驚愕の荒業でした。
これには兄以下、子供たち全員が大反対のシュプレヒコール。兄などは「母上は、今までの僕たちの努力を灰燼に帰するのですか!父上を学院に行かせるなんて、魔魚のいる大海に、食べてくれと言わんばかりに幼魚を放出するようなものです!」と、目を真っ赤にして懇願する始末。
母はしれっと、「大公爵閣下は準王族。国王には『痴れ者とあれば、躊躇なく切れる本物の騎士を護衛につけてください』と、お願いしてあります。我が国一番の手練れが四人、オリバーを守護し、誰も近づけません!」と、言い切りました。
しかし、肝心の父の顔色がすぐれません。当然です。1時間も令息令嬢の前で話すなど、世紀末がきても父に出来ようはずがないのです。
そんな父に、母が「オリバー、難しいことなんて言わなくていいよ。僕との出会いから、多くの子を持つ身になった今までのことを話せばいい」と、父の頬に手を寄せて抱きつくと、父の顔色は瞬く間に上気し、しまいにはとろける笑顔で「それでいいのか?」と、言い出すではありませんか。母上、恐るべし!
こうして父は、学部最初の授業を1回だけ担当することになりました。それが発表された時の有様は、学園始まって以来の阿鼻叫喚!我も我もと受講希望者が殺到し、裏取引まで行われたと聞きました。
そして、父は1時間だけ講義しました。
父が何を話したのか分かりません。サマセット侯爵家の令嬢が受講できたそうで、同家の執事と懇意なうちの執事が、令嬢から得た情報を侯爵家の執事から聞き出しました。
「大公爵閣下のお講義は、それはもう、高尚で哲学的で、それでいて詩的で論理的で愛にあふれて!後光がし、さながら天空の宮殿で天才音楽家の奏でる音のハーモニーを聞いているようだったわ!」
何を言っているのか、わかりません。
はあ。
また話がそれました。
とにかくこうした学園に対する貢献で、大公爵家一同全員が卒業パーティーに招待されたわけです。卒業パーティーといえども、留学している隣国の王族も参加する一大イベント。姉の婚約者の隣国の第一王子、その第一王子の弟でクレイトン公爵家令息と婚約している第三王子、さらにその二人の王子の親である王太子殿下も参加します。それゆえ前日には本番さながらのリハーサルがあるのです。
両親と姉と僕、下の弟二人、オメガのエミリオとアルファのリチャードは、来賓として壇上の右側に、兄は主催者として壇上の左側に座る予定ですが、大公爵家を紹介する時は、兄も僕たちと一緒に並んで挨拶するという手筈です。
三段下の会場には、卒業生在校生の貴族(ほごしゃ)が座り、壇上から見ると壮観です!
司会が学園に対する我が家の功績を紹介したあと、「大公爵家の皆様です!」との声を合図に僕たちは一列に並び、グランフォルド家の色であるロイヤルブルーの揃いの衣装で会場へ一礼しました。
そして顔をあげると、ため息と共に荒い鼻息が波のように押し寄せ、僕は立っているのがやっとという有り様。
そこへ場違いな叫び声があがりました。
僕たちの後ろにいる宰相以下、来賓として壇上にあがっている高位貴族たちも、ざわざわする方を見ると、騎士たちが男女4人を連行してくるではありませんか!
僕は姉のスパルタ教育のおかげで、貴族名鑑は全て暗記しています。連行されてきたうちの三人の男性は、クレイトン公爵家嫡男ギルバート様、フォード侯爵家嫡男マシュー様、バーナード侯爵家嫡男トーマス様でした。
ギルバート様の父であるクレイトン公爵は宰相で、マシュー様の父のフォード侯爵は法務大臣、トーマス様の父のバーナード侯爵は騎士団長と、いずれも我が国の要職につき、今、壇上に控えています。さりげなく僕が後ろを振り返ってみれば、三人の父親は顔色を変え、目を見張っていました。
連行されてきたうち、女性だけは誰だか分かりません。恐らく貴族ではないのでしょう。ふわふわした金髪に白い肌、大きな目と小さい顔、一目で「これぞオメガ」と分かる容姿です。
騎士団長のバーナード侯爵が、騎士に何が起きたのか問うと、あり得ない答えが返ってきました!
なんと4人は、明日の卒業パーティーで、衆人環視のもとギルバート様の婚約者である隣国の第三王子、オメガのヤヌシュ殿下に対し婚約破棄を突きつけるべく、そのリハーサルをしていたというのです!
僕は開いた口が塞がりません。
婚約破棄のリハーサル?なにそれ?バカなの?ねえ、バカなの?
ヤヌシュ王子を見れば真っ青です。ヤヌシュ王子は僕より3歳上の10歳。クレイトン公爵家に降嫁するため、お付きの侍女はいるとはいえ一人で、学園に留学しているそうです。ちなみに姉の婚約者のヤヌシュ王子の兄の第一王子は留学しておらず、今回は姉に会うために王太子と一緒に外交訪問しているのです。
さらに、その婚約破棄の理由が、ギルバート様の「運命の番」にヤヌシュ王子が嫉妬し、「暴言を吐いて」、「ノートを破り」、「水をかけ」、果ては「階段から突き飛ばした」などの虐待をしたからというのです。
バカだ!やっぱりバカだ!
当事者である4人は別の世界の人でした。現実世界にいる僕たち全員が呆れて二の句がつけずにいることに気づかず、彼らは陶酔して己の主張を述べる中、クレイトン公爵が耐えられず激怒して、4人を会場から連れ出そうとしました。
それを止めたのは、なんと父です!
父は「クレイトン公爵、事実関係を詳らかする必要がある」というと、兄に「ガブリエル・グランフォルド生徒会長、この場を仕切ることを許可する」と告げました。ここで我が国最高位は、準王族である大公爵の父です。
兄は、はっとして父に礼をすると「生徒会長として事実確認します」と宣言し、4人を椅子に座らせると、檀上から見下ろす形で尋問に入りました。その間に父は侍従を呼び、何やら耳打ちしています。
僕は、兄の雄姿から目が離せません!
兄は「まず、そちらの女性のノートを破いた器物損壊罪について」と前置きし、起きた日時と場所を4名に問いました。その結果、1か月前に女性が寮の自室に戻ると置いてあったノートが破られていた、さらに二週間前、同じく女性が教室に置き忘れたノートを取りに戻ると、そのノートも破られていたというものでした。
母が兄に発言の許可を求めました。
「グランフォルド大公爵夫人、発言を許可します」
「ありがとう、生徒会長。金銭について話すのは品位を失する行為とは分かっていますが、あえて学園長に聞きたい」
主催者側に座っていた学園長が、「ひっ」と声をあげ、背筋を伸ばしてその場に立ち上がりました。
「当家は学園に相当な金額を寄付しています」
「はい、それは、もう感謝に堪えません」
「当家だけでなく、本日会場に集まった貴族家からも、かなりの寄付があるはずです」
会場の貴族(ほごしゃ)や、来賓の貴族たちが頷きます。
「しかし、今の彼らの主張を聞くと、寮や教室のセキュリティに予算が割り当てられておらず、私物がいとも簡単に損壊される状況のように思われます。そうであるならば、今後、ここにいる貴族家の大半は、学園に子弟を通わせるのを躊躇せざるを得ません。皆様、いかがです?」
同じく全員が頷きました。
「大公爵夫人!当学院のセキュリティは万全です!10分間隔で全ての学び舎を警備兵が3人一組で回り、寮に至っては24時間体制で管理人が表と裏に常駐しており、寮の関係者でなければ、けっして入れません。何しろ他国の王族も留学しているのです。王宮並みの警備体制を敷いております!」
母は満足気に頷きながら「ありがとう、学園長。生徒会長、私が聞きたかったのは以上です」と、兄に進行を委ねました。
「ありがとうございます、大公爵夫人。さてギルバート様、今の学園長の話を聞いて、ヤヌシュ王子が、どうやってあなたの番とかいう女性のノートを損壊できるのですか?」
「いや、私はダフィーが、あの私の運命の番の、このダフィー嬢が、ヤヌシュ王子にノートを破られたといったから」
「いったから?つまり証人は、その本人の証言だけということですね?裏付けを取ってもいないのに、それを理由に婚約破棄?」
兄に指摘され、ギルバート様は狼狽えましたが、それ以上に彼の父であるクレイトン公爵が真っ青になっています。
そこにさきほど父が耳打ちした侍従が戻り、分厚い資料を父に渡しました。
「グランフォルド生徒会長、発言の許可を」
「グランフォルド大公爵閣下、発言を許可します」
父は侍従から渡された手元の分厚い資料に目を落としました。会場は静まり返り、父が何をいうのか緊張が漲ります。父はトントンと資料を指で叩きながら言いました。
「そもそも、そこのダフィー嬢はオメガではない。ベータだろう?」
会場はどよめき、ギルバート様は口をはくはくしていますが、閣下に許可なく発言することはできないことは承知しているようです。しかし、相手の運命の番とやらの女性は、ルールを無視して叫びました。
「わ、私はオメガです!」
この時、僕は初めて父が怖いと思いました。
僕たちの前では、母の手の上でコロコログリングリンに転がされ、蕩けたバターになって、パンケーキの中にしみ込んでしまう父が!人前では感情劣化によって表情筋が死滅している父が!
その父が口角をわずかにあげ、「いや、違うね。君が入学時に提出した書類には、確かにオメガと記載されていた。しかし、これは」と、手に持つ書類をかかげ、「君が出生時に、君のご両親が提出した戸籍だよ。ここには、はっきりとベータと記載されている」と、不敵に笑ったのです!
その様は、まさに傾国の美青年!
その後は凄惨な光景が…。半狂乱になったベータ女性と騎士たちの大乱闘、三人のバカ嫡男たちは茫然自失。三人の父親は各々の嫡男に往復ビンタを食らわし、結局、全員が連行されました。
僕もしばらく放心状態。
そこに、隣国の王太子殿下が来賓席から立ちあがりました。
「国内問題は決着が見えたようだが、我が国ついてはどうするつもりか!」
場内は水を打ったように静まります。
今度こそ戦争かもしれません!
「我が国の第三王子、ヤヌシュに対する数々の不敬!ヤヌシュは降嫁にあたり、貴国の言葉や文化を学ぼうと、10歳で貴国の学園に入学した!そのヤヌシュに、貴国高位貴族の嫡男らによる無礼千万な行為!この責任はどうするつもりか!」
僕はヤヌシュ王子を見ました。
王子は俯いています。華奢で小さな王子様。そんな王子になんてひどいことを…。可哀そうで、申し訳なくて…。
「うわーん!」
僕は堪えきれず、大声で泣き叫びました。
「ごめんなさい、ごめんなさい!ヤヌシュ王子、ごめんなさい!ひ、ひどいことして、ごめんなさい!わあーん」
僕に釣られて、弟たちまで泣き出しました。
「うわーん!ごめんちゃい、ごめんちゃい、おうじしゃま、ごめんちゃい!」
「うわーん!ごんちゃ、ごんちゃ」
僕と弟たちの泣き声だけがこだまする会場内。
うぇぐとか、おぇとか、嘔吐きながら、泣き続ける僕ら。
ヤヌシュ王子は涙を流して駆け寄ってきて、嘔吐き泣く僕らを抱きしめてくれました。
そこに、同じ壇上にいた父が「ヤヌシュ王子、申し訳なかった」と、頭を下げたのです!
準王族が頭を下げる!これを目の当たりにして、パニックにならなかったら貴族ではありません!
大泣き三重奏の爆音は、フルオーケストラが最終楽章に向けて盛り上がるがごとく、音量マックスに到達しました。
「うわーん!ごめんにゃさい、おぇ、おぇ、ごめん、おうじしゃま。うわーん、おうぇ」
大公爵夫人の母が「申し訳ございませんでした」と頭をさげ、次には未来の王配である兄上が下げ、未来の隣国王妃の姉上が、僕らの背後にいた王国首脳陣全員が、そして式典に参列していた会場内の全ての貴族や侍従・侍女たちが、「申し訳ございませんでした」と、順次、ヤヌシュ王子に頭を下げて謝罪したのです!
それはさながら、王子と僕らを中心に、花弁が咲き広がるような圧巻の光景でした。
隣国の王太子殿下が、感極まって胸に手をあてられたのを見たのを最後に、僕の記憶は途切れました。泣きすぎて脱水症状を起こした僕と弟たちは、両親に抱えられて学園内の医療室に担ぎ込まれ、そのまま寝落ち、気が付いたのは翌朝でした。
リハーサルの翌日です。
「擬態オメガ?」
僕と母が同時に声を上げました。
エミリオは満足気に父のお腹の上で、リチャードは母の腕の中で、それぞれ液状化し、僕は両親に挟まれ居間のソファに座っています。ローテーブルを挟んで反対側のソファには、兄と姉が座っています。
「そう。オメガと勘違いしそうな容姿のベータが発症する心の病だよ。おそらく、オメガになりたいという願望が強くなって、妄想に陥るんだろう」
「父上は、よくわかりましたね」
兄の感想はもっともです。あのリハーサル会場にいた全員が、ギルバート様の相手はオメガだと思い込んでいたのですから。
「子供のころの家庭教師の一人がそうだったんだよ」
父の言葉に僕らは目を合わせました。父の感情劣化を引き起こした元凶のベータの家庭教師!
「あのベータの女性は、その家庭教師と同じ目をしていた。だからすぐに分かったよ」
父はエミリオの背中をトントンしながら、事もなげにいいます。
すごい!みんな父をキラキラした目で見つめました。
「それに、よく戸籍が用意できたね」
そう、それ!母だけでなく、僕ら全員が思ったことです。
「あ、あれは戸籍じゃないよ」
えー!?
「あれは、この間の講義で使った教材だよ。あの時点では、ギルバートの相手の名前すら分からなかったから、戸籍は無理さ。だから侍従に『領地経営学部の教務室から教材を持ってきてくれ』と、頼んだんだ。
擬態オメガを発症した者は、根本のところではベータという自覚はあるんだ。だから書類なら、なんでも良かった。それらしい客観証拠に見えそうな物を突きつければ、心が齟齬を起こし、ボロが出ると思ったんだ。うまくいったね」
父上!かっけー!
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「兄上。父上が実は『やればできる子』だったとしても、これまでの兄上の努力が無になったりしません。これから私たちは守る人達が増えます。身に着けた技(わざ)は、いかようにも応用できますわ。それに父上の『やればできる子』ぶりは、そんなに多くありませんでしょ?」
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今回の婚約破棄騒動で隣国が出した条件は二つ。一つは姉と第一王子との婚約は維持、そしてヤヌシュ王子とギルバート様との婚約は白紙撤回、新たにグランフォルド大公爵家の嫡男との婚約を望むというものでした。
えー!?
僕?僕とヤヌシュ王子が婚約?
うおー!!びっくりしました!
ヤヌシュ王子は王宮の離宮から学園に通っていましたが、今はうちの近くに新しく離宮を建設し、僕と結婚するまではそこに住まわれるそうです。うちはアルファが多いので、万が一、間違いが起きないようにと、母が配慮した結果です。
うちでヤヌシュ王子と接しているのは、もっぱらオメガの母とエミリオです。
「うちの息子たちは、みんなオリバーにそっくりだから、ウェスティンも大きくなると思う。でも大きいからって、お姫様抱っこができないってわけじゃないからね。姫抱っこはコツがあるんだよ」
「はい!お義母様(おかあさま)!」
母は何を教えているんだろう…。それにヤヌシュ王子…。なんでそんなに嬉しそうなの…。
ふうー。
そうそう、クレイトン公爵は宰相を辞して公爵も返上、たくさん持っていた爵位のうち、一番下のボードワール男爵を名乗り、王家に多額の賠償金を支払いました。クレイトン公爵という爵位は当面、王家預かりとなり、末子のリチャードが大きくなったら継承するそうです。もともと大公爵家(うち)と公爵家は遠戚なので、問題なく処理されたと聞きました。
こうして、我が国始まって以来の婚約破棄騒動は決着しました。本番の卒業パーティーは一週間延期して無事に開催。そして本来は参加予定ではなかった国王陛下と王妃が、急遽、参加しました。
檀上でグランフォルド大公爵家一同が、一列に並んで挨拶する様子を見た王妃が、一言、漏らしたそうです。
「まるでマトリョーシカね。救国のマトリョーシカ…」
遠くて寒い東の国のお人形。人形から小さな人形が出てきて、その小さな人形から、さらに小さな人形が出てくるマトリョーシカ。
僕は父上と母上の子供で良かった。兄上と姉上の弟で良かった。
だから、二人の小さな弟たちにも同じように思われたい。そして何より、ヤヌシュ王子に「ウェスティンと一緒で良かった」と思われたい。
僕は、まだまだ技の免許皆伝は無理でした。ほんとはちゃんと計算して大泣きできたら良かったんですけどね。
今日は僕たちの話を聞いてくれて、ありがとうございました。
【おまけ】
・ある侍従の証言
「閣下が、私が渡した教材を『戸籍』とおっしゃった時は驚きましたが、もちろん顔には出しません。教材は閣下から回収して教務室に戻しました」プロ!
・ヤヌシュ王子の独白
「僕の叔母が25年以上前、この国で性犯罪をやらかし、それから両国は緊張状態だった。僕の結婚は叔母の尻ぬぐい。大公爵家のアナベル様は兄の第一王子と婚約、それに対して僕は公爵家令息と婚約。これが我が国とこの国の力関係を如実に表わしている。でも僕は王族。王家の指示に従う。政略結婚に愛はいらない。だとしても、僕に全く敬意を払わない元婚約者の所業には、ほんとに辛かった。だからあのリハーサル会場で、純粋に僕に対して謝ってくださったウェスティン様たちの行為に感動したんだ。その後、まさか、ウェスティン様との婚約という褒美が待っていたなんて!ウェスティン様は美しいだけでなく、可愛くて凛々しい!今回の騒動終結の褒賞として、国王陛下はウェスティン様に立派な黄金の短剣を下賜された。その黄金の短剣を、ウェスティン様は私の住まう離宮に持ってきてくださり、跪いて『ヤヌシュ王子、この短剣を僕と思ってお持ちください。今はまだ僕は小さい。でも大きくなったらこの短剣を自在に使いこなし、必ず王子を守ります!』と、言ってくれた!僕は泣いてしまった!」
ウェスティンは姉の洗脳(きょういく)の成果で、「これぞ貴公子!」へ成長中。ちなみにギルバートの恋したダフィー嬢が、安い砂糖を使ったゴテゴテのパフェだとすると、ヤヌシュ王子は最高級和三盆を惜しげもなく使った高級スウィーツ。上品で清々しい美しさ。お子様には王子の美しさが分からなかった。ちなみにダフィー嬢は、北のさびれた修道院へ送られた。
・クレイトン公爵のその後
クレイトン公爵は、私財のほとんどを売り払い賠償金として王家に差し出し、ド貧乏に。そのうえ役職も辞したので、当初は公爵位の返上を申し出なかった。爵位に執着したのだ。自邸蟄居を命じられて三日目。王妃の要請で登城。しかし肝心の王妃は、目の前の公爵を放置し、孫娘(アナベル)とおしゃべりに夢中。
「アナベル、最近、市井で面白いものが流行っているとか?」
「ええ、おばあ様、子供が悪いことをすると『ギルバート化する』と言っています。略して『ギル化』。用法としては、『そんなにギル化するなら、家に入れないからね!』といった具合です」
「まあ!…公爵、これをどう思って?」
「…」
「答えられないのね。ではアナベル、こういうケースを何というのかしら?」
「はい、おばあ様。末代までの恥、ですわ」
この後、公爵は速やかに爵位の返上を申し出た。
王妃は怒っていた。クレイトン公爵位は名門。しかし王家が罪科として取り潰せば、爵位そのものがなくなってしまう。だから本人からの返上を待っていたのだ。王妃なりに公爵家の家門を守ろうとしていたのである。
そもそも25年前、隣国の王女性犯罪事件は、当時外務大臣だった公爵の不手際によった。王女といえども妙齢のオメガが他国に外交し、問題が発生したらどうするのか。王妃は反対したが、公爵は「完璧な警備」を豪語した。その結果がアレだ。だが、若く将来有望な名家嫡男をこれで潰すのは忍びなく、彼の成長を見守ることで不問にした。その後、公爵は宰相となり成長したかに見えたが、危機管理能力は甘いままだったようだ。大事な嫡男に貴族の覚悟さえ教えていなかった。
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