小袖のかなづくし手帖

免佐之

免佐之めざし


　かな書道のしの形と大きさになれるまで散々苦労しました。

　上代様じょうだいよう(＊1)のかなは活字と違ってそれぞれに大きさが異なり、なれるまでは大変ですが、なれてしまえば自然と字の大きさに変化が出て、伸びたり縮んだり生きているようです。


◇補足

＊1

　中国風の書法を唐様からよう、それに対する日本独自の書法を和様わようと呼びますが、その中でも平安時代に完成された和様の書風を上代様といいます。

　一般的に唐様の書風は筆を立てて紙に押しつけるように、和様の書風は筆を少し傾けて円を書くように揮毫きごうするといわれます。

　実際、唐様の引き締まった書体のときは書いていてめっぽう疲れるのですが、和様の筆の持ち方(筆を傾けるというのか少し支点を浮かせる感じ)のときは、穂先が自由に動く分、曲線や円運動がだいぶ楽になり、線も勢いがあるのにリラックスしたような、柔和な感じに仕上がります。

　女手と呼ばれていた時代のことを思うと、かな文字にはどこか、筋力の少ない女性たちの身体性が滲み出ているように思います。