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7話
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うつらうつらと眠っていたサディアスがふと人の気配を感じて目を開けると、カイル皇子が顔にかかる銀髪を優しくかき分けていた。
「起こしてしまったな……調子はどうだ?」
二日ぶりに見るカイルの優しげな青い瞳に、サディアスは一瞬見惚れた。
「もう大丈夫です。息苦しさもなくなりました」
……殿下に優しくしていただくと、別の意味で息が苦しくなるが……
サディアスは穏やかな顔で、少し疲れの見えるカイルを見返した。
「エラ殿に作ってもらった治療薬を『聖女の涙』として、国内に行き渡らせる手筈が整った。既に死傷者が出てしまってはいるが、まもなく治療も追いついてくる」
「ようございました」
サディアスはカイルの報告に、安堵のため息をついた。
聖女の祝福のキスと、唾液を溶かした水が、同じ効果だというのが信じがたいが、エラが国内の患者一人一人にキスをしていく訳にもいかない。
突拍子もないアイデアだったが、国難は回避されたと考えていい。
そして、何よりも、あの夢と違ってカイル殿下はこの病に罹患していないし、いざとなれば治療も可能だ。
「サディアス」
カイルがじっとサディアスを見つめた。
「お前の予知夢で私は死んでいたのか?」
カイルの硬い表情に、サディアスは以前、カイル皇子が亡くなる夢を見たと騒いでしまったことを思い出した。
「私の夢では、カイル殿下はこの流行病に罹患し、お亡くなりになっていました。しかし、治療の手段もあります。もう心配はありません」
サディアスの説明にカイルは少し思考を巡らし、口元を緩めた。
「お前は、私を死なせないために聖女を探し出したということか?」
カイルの瞳が期待にきらりと光っているように見える。
「……はい。殿下を失うようなことを防げ、本当に……」
サディアスが全てを言い終わらないうちに、カイルはその唇を唇で塞いだ。
カイルの湿った舌が貪るように口内を蹂躙し、息が上がる。
長いキスの後、唇を離したカイル皇子の息も少し上がっていた。
「サディアス……お前のことが好きだ。幼き頃からずっと、お前のことが好きだった」
熱にうなされるようにカイル皇子の青い瞳がじっとこちらを見つめている。
思いもよらない言葉に、サディアスの頭の中は白い光に満たされ、うまく思考が回らなくなってしまった。
「殿下……身に余る光栄……」
「好きです……我が君……カイル殿下が私の全てです」
サディアスのうわ言のような言葉に、カイルは顔をくしゃりと歪めた。
今度はゆっくりとカイルの口付けが唇に降ってきた。
「サディアス……好きだ……」
カイルはサディアスの顔を愛おしげに手で包みながら、唇にも、頬にも、額にもキスの雨を降らせた。
二人の間を邪魔している布団をカイルは退けると、サディアスに体重がかからないように腕で体を支えながら、深く口付けてきた。
口内を蠢くカイルの舌に刺激され、体が火照り、下半身に血が集まっていく。
サディアスは、膝を曲げた脚の間に陣取ったカイル皇子に、快楽の刺激を探す自分の性器を思わず押し付けそうになって、ぐっと堪えた。
……殿下に私の勃起したペニスを擦り付けるなど……
……そんなことをしてはいけない……
……あぁ、殿下。
……擦り付けたい……
……もう少し体を……私のペニスの上に……
欲情した目で見上げるサディアスをカイルは炎が揺れるような瞳で見つめ、シルクのパジャマのボタンに指をかけた。
露わにされたサディアスの胸元はすっかり黒い痣が消え、白く透き通る胸が緊張で強張っている。
カイルは、期待に先端を尖らせているピンクの肉芽をゆっくりと舐め上げた。
ビクリとサディアスが胸を反らせてのけぞった。
その反応に気をよくしたカイルは、舌先を尖らせ、弾くようにサディアスの乳首をいじめた。
「あぁっ……殿下……あぁっ!」
サディアスが苦しげに、カイルの腕を強く握った。
逃げるように体を捻るサディアスの股間が硬く隆起し、こちらの下腹を押し上げていることに気が付いたカイルは、サディアスのボトムに指をかけ、下穿きもろとも引き下ろした。
弾かれるように飛び出したペニスの先端は既に大量の我慢汁が滴っており、カイルがぬるりと亀頭を指でなぞると、サディアスは待ち侘びた快感に腰をビクビクと震わせた。
カイルはその透明な液を指に纏わせ、サディアスの奥の蕾に触れた。
蕾を摩りながら、指先をツプリと挿し入れたカイルが、厳しい瞳でサディアスを見上げた。
「サディアス、なぜお前のここは縦に割れ、しかもこんなに柔らかいのだ?」
カイルの責めるような声に、サディアスはしまった……と顔を硬くした。
「誰だ? お前のここをこんなにいやらしく変えてしまったのは?」
カイルの声は十分な怒気をはらんでいる。
「……道具で……道具で、快楽を得ておりました……」
サディアスは夜な夜なカイルをおかずに後ろを慰めていたという、絶対に知られたくない秘密に勘づかれ、血の気が引いていくのを感じた。
「道具?」
訝しげに眉を顰めたカイルは、ベッドサイドの引き出しをおもむろに確認し始めた。
二段目の引き出しに入っていた、立派なディルドと液体が入った瓶を手に取ったカイルは、サディアスの前にそれを持ってきた。
「もう、これを使うことは許さん」
カイルはディルドをベッドの向こうに投げ捨てた。
……あぁぁぁぁ……
……カイル殿下の戦闘時の拡張率と反りを予測して、特注で作ったディルドがぁぁぁぁ……
カイルは、悲しそうにガタリと床に転がったそれに目をやっているサディアスに跨り、肩にモールの装飾が施された上着と、その下に着ていたシャツを脱いだ。
サディアスは目の前の彫刻のように美しいカイルの体に、大切にしてきたディルドのことを一瞬にして忘れた。
「脱がせろ」
カイルは、サディアスの手を自身のベルトに誘った。
サディアスは言われるままカチャカチャとベルトを外し、ペニスの隆起で下ろしにくくなってしまっているジッパーをゆっくりと引いた。
トラウザーズを引き下ろすと、鍛え上げられた太ももの間で、下穿きを押し上げるそれが雄々しさを主張してくる。
……あぁ、ずっと妄想でしか想像したことのない、カイル殿下の性器が目の前に……
サディアスは吸い込まれるように、下穿きの上からそれに唇を這わせた。
ずっしりと重みのある陰嚢を下から持ち上げるように揉みほぐし、下穿きの中で苦しげに少し左に曲がりながら収められている竿の太さを確かめるように唇を這わす。
一日激務をこなしてきたであろうカイル皇子のそこは、汗っぽい匂いと男臭い香りがほのかに香っている。
夢中になって、下穿きの上からカイル皇子のペニスを貪っていると、布がずれて、ペニスの先端が下穿きの上に出てきてしまった。
サディアスが蜜の滴るカイルの亀頭の割れ目を舌でほじくると、カイルは「うっ……」と息を飲みながら、サディアスの頭を右手で押さえつけた。
サディアスは夢見心地のまま、カイルの下穿きの紐を解き、現れたそれをうっとりと眺めた。
あぁ……
太さ、長さ、傾斜角共に私の予想した通りの逸物……
あぁ、なんというカリの高さ……
美しくも、雄々しく、逞しい……
サディアスは顔を近づけていくと、パクリとその象徴を口に入れた。
口の中でドクドクと脈打つそれは熱く、柔らかいようで硬く、冷たいおもちゃなど比較にならない。
たっぷりと唾液を絡ませながら口内と舌でペニスの存在を味わっていると、カイルが苦しげにサディアスの顔を引き離した。
「もう、限界だ……」
苦しげにサディアスを見下ろしたカイルは、サディアスの背をベッドに倒すと、息を整えながらサディアスの蕾に瓶から出した粘度の高い液体を塗り込んだ。
カイルがペニスを右手で持ち、サディアスの蕾に当てがった。
……欲しい……
カイル殿下のペニスが欲しい……
この体を貫いて、蹂躙して欲しい……
……あぁ、早く……
……早く、挿れて欲しい……
待ち侘びるサディアスの期待に応えるように、カイルが腰に体重をかけてきた。
ぬっぷりと隘路を分け入ってくるその熱い杭が、体を内側から圧迫する。
あぁ……
それを想像しながら自分を慰めるようになったのは、いつからだったろうか?
真剣に内政学に聞き入るまだ若い皇子にあろうことか欲情を感じてしまい、自己嫌悪に苛まれたのは、もう遥か昔の出来事だ。
触れたかった。
その欲望を自分に向けて欲しかった。
皇子の相手をする様々な人への嫉妬などは隠し、殿下と一番長く時間を共にしているのは結局私だ。殿下に一番に信頼を寄せられているのは私だと、何度も言い聞かせた。
サディアスは根本までペニスを挿入され、両足を広く割開くようにかけられているカイルの体の重さに酔った。
カイルが気持ちよさそうに、腰をゆっくりと擦り付けてくる。
自分の体の中で蠢く生き物は、それ自身がまるで意思を持っているかのようにドクドクと脈動している。
「……殿下……」
あまりの愛おしさに、その名を呼ばずにいられない。
「……カイル殿下……私の太陽……」
カイルが優しげな瞳でこちらを見てくれる。
「サディアス。愛している」
繋がったまま落とされる口付けに、涙が滲んだ。
カイルとサディアスはその夜、疲れ果て体が動かなくなるまで、何度も体をつなげ合った。
※
サディアスはその後、カイル皇子の強い意向で王宮に住居を移すことになった。
唯一の皇太子が毎晩城外に抜け出すのを、近衛が嫌がったのも一つの理由だ。
聖女エラはサディアスの不在を寂しがったが、最近王宮図書室の司書バルデリアスがサディアスの元に交際の挨拶に訪れた。
バルデリアスは誠実な思慮深い青年で、彼ならば、なにかと重積を抱える聖女を支えることができるだろう、とサディアスは安心している。
サディアスは王城奥の庭園のガゼボでカイルと共に朝食をとりながら、朝日に透けるカイルの金髪を眩しそうに見つめた。
「……で、お前の夢の中で、私は死に際に何と言っていた?」
カイルの質問に、サディアスはそういえば、と未だ鮮明に残る記憶を辿った。
「私と行ってみたかった場所があった。とおっしゃってました」
それを聞いて、カイルは微笑みながらサディアスの手に右手を重ねた。
「お前の母君の母国、オーケシュアに一緒に行ってみたかったのだ。夜空に広大な光のカーテンがかかるのだろ? どんなに美しいだろうか」
それを聞いてサディアスは、普段人には見せないような晴れやかな笑顔をカイルに向けた。
「オーケシュアから、国交樹立の打診が届いております。行きましょう」
ここではないずっと遠くの世界。
賢王と優秀な宰相が治める国は周りの国々と交流を深め、天災に見舞われることもなく、平和に豊かに栄えたのでした。
―― fin. ――
「起こしてしまったな……調子はどうだ?」
二日ぶりに見るカイルの優しげな青い瞳に、サディアスは一瞬見惚れた。
「もう大丈夫です。息苦しさもなくなりました」
……殿下に優しくしていただくと、別の意味で息が苦しくなるが……
サディアスは穏やかな顔で、少し疲れの見えるカイルを見返した。
「エラ殿に作ってもらった治療薬を『聖女の涙』として、国内に行き渡らせる手筈が整った。既に死傷者が出てしまってはいるが、まもなく治療も追いついてくる」
「ようございました」
サディアスはカイルの報告に、安堵のため息をついた。
聖女の祝福のキスと、唾液を溶かした水が、同じ効果だというのが信じがたいが、エラが国内の患者一人一人にキスをしていく訳にもいかない。
突拍子もないアイデアだったが、国難は回避されたと考えていい。
そして、何よりも、あの夢と違ってカイル殿下はこの病に罹患していないし、いざとなれば治療も可能だ。
「サディアス」
カイルがじっとサディアスを見つめた。
「お前の予知夢で私は死んでいたのか?」
カイルの硬い表情に、サディアスは以前、カイル皇子が亡くなる夢を見たと騒いでしまったことを思い出した。
「私の夢では、カイル殿下はこの流行病に罹患し、お亡くなりになっていました。しかし、治療の手段もあります。もう心配はありません」
サディアスの説明にカイルは少し思考を巡らし、口元を緩めた。
「お前は、私を死なせないために聖女を探し出したということか?」
カイルの瞳が期待にきらりと光っているように見える。
「……はい。殿下を失うようなことを防げ、本当に……」
サディアスが全てを言い終わらないうちに、カイルはその唇を唇で塞いだ。
カイルの湿った舌が貪るように口内を蹂躙し、息が上がる。
長いキスの後、唇を離したカイル皇子の息も少し上がっていた。
「サディアス……お前のことが好きだ。幼き頃からずっと、お前のことが好きだった」
熱にうなされるようにカイル皇子の青い瞳がじっとこちらを見つめている。
思いもよらない言葉に、サディアスの頭の中は白い光に満たされ、うまく思考が回らなくなってしまった。
「殿下……身に余る光栄……」
「好きです……我が君……カイル殿下が私の全てです」
サディアスのうわ言のような言葉に、カイルは顔をくしゃりと歪めた。
今度はゆっくりとカイルの口付けが唇に降ってきた。
「サディアス……好きだ……」
カイルはサディアスの顔を愛おしげに手で包みながら、唇にも、頬にも、額にもキスの雨を降らせた。
二人の間を邪魔している布団をカイルは退けると、サディアスに体重がかからないように腕で体を支えながら、深く口付けてきた。
口内を蠢くカイルの舌に刺激され、体が火照り、下半身に血が集まっていく。
サディアスは、膝を曲げた脚の間に陣取ったカイル皇子に、快楽の刺激を探す自分の性器を思わず押し付けそうになって、ぐっと堪えた。
……殿下に私の勃起したペニスを擦り付けるなど……
……そんなことをしてはいけない……
……あぁ、殿下。
……擦り付けたい……
……もう少し体を……私のペニスの上に……
欲情した目で見上げるサディアスをカイルは炎が揺れるような瞳で見つめ、シルクのパジャマのボタンに指をかけた。
露わにされたサディアスの胸元はすっかり黒い痣が消え、白く透き通る胸が緊張で強張っている。
カイルは、期待に先端を尖らせているピンクの肉芽をゆっくりと舐め上げた。
ビクリとサディアスが胸を反らせてのけぞった。
その反応に気をよくしたカイルは、舌先を尖らせ、弾くようにサディアスの乳首をいじめた。
「あぁっ……殿下……あぁっ!」
サディアスが苦しげに、カイルの腕を強く握った。
逃げるように体を捻るサディアスの股間が硬く隆起し、こちらの下腹を押し上げていることに気が付いたカイルは、サディアスのボトムに指をかけ、下穿きもろとも引き下ろした。
弾かれるように飛び出したペニスの先端は既に大量の我慢汁が滴っており、カイルがぬるりと亀頭を指でなぞると、サディアスは待ち侘びた快感に腰をビクビクと震わせた。
カイルはその透明な液を指に纏わせ、サディアスの奥の蕾に触れた。
蕾を摩りながら、指先をツプリと挿し入れたカイルが、厳しい瞳でサディアスを見上げた。
「サディアス、なぜお前のここは縦に割れ、しかもこんなに柔らかいのだ?」
カイルの責めるような声に、サディアスはしまった……と顔を硬くした。
「誰だ? お前のここをこんなにいやらしく変えてしまったのは?」
カイルの声は十分な怒気をはらんでいる。
「……道具で……道具で、快楽を得ておりました……」
サディアスは夜な夜なカイルをおかずに後ろを慰めていたという、絶対に知られたくない秘密に勘づかれ、血の気が引いていくのを感じた。
「道具?」
訝しげに眉を顰めたカイルは、ベッドサイドの引き出しをおもむろに確認し始めた。
二段目の引き出しに入っていた、立派なディルドと液体が入った瓶を手に取ったカイルは、サディアスの前にそれを持ってきた。
「もう、これを使うことは許さん」
カイルはディルドをベッドの向こうに投げ捨てた。
……あぁぁぁぁ……
……カイル殿下の戦闘時の拡張率と反りを予測して、特注で作ったディルドがぁぁぁぁ……
カイルは、悲しそうにガタリと床に転がったそれに目をやっているサディアスに跨り、肩にモールの装飾が施された上着と、その下に着ていたシャツを脱いだ。
サディアスは目の前の彫刻のように美しいカイルの体に、大切にしてきたディルドのことを一瞬にして忘れた。
「脱がせろ」
カイルは、サディアスの手を自身のベルトに誘った。
サディアスは言われるままカチャカチャとベルトを外し、ペニスの隆起で下ろしにくくなってしまっているジッパーをゆっくりと引いた。
トラウザーズを引き下ろすと、鍛え上げられた太ももの間で、下穿きを押し上げるそれが雄々しさを主張してくる。
……あぁ、ずっと妄想でしか想像したことのない、カイル殿下の性器が目の前に……
サディアスは吸い込まれるように、下穿きの上からそれに唇を這わせた。
ずっしりと重みのある陰嚢を下から持ち上げるように揉みほぐし、下穿きの中で苦しげに少し左に曲がりながら収められている竿の太さを確かめるように唇を這わす。
一日激務をこなしてきたであろうカイル皇子のそこは、汗っぽい匂いと男臭い香りがほのかに香っている。
夢中になって、下穿きの上からカイル皇子のペニスを貪っていると、布がずれて、ペニスの先端が下穿きの上に出てきてしまった。
サディアスが蜜の滴るカイルの亀頭の割れ目を舌でほじくると、カイルは「うっ……」と息を飲みながら、サディアスの頭を右手で押さえつけた。
サディアスは夢見心地のまま、カイルの下穿きの紐を解き、現れたそれをうっとりと眺めた。
あぁ……
太さ、長さ、傾斜角共に私の予想した通りの逸物……
あぁ、なんというカリの高さ……
美しくも、雄々しく、逞しい……
サディアスは顔を近づけていくと、パクリとその象徴を口に入れた。
口の中でドクドクと脈打つそれは熱く、柔らかいようで硬く、冷たいおもちゃなど比較にならない。
たっぷりと唾液を絡ませながら口内と舌でペニスの存在を味わっていると、カイルが苦しげにサディアスの顔を引き離した。
「もう、限界だ……」
苦しげにサディアスを見下ろしたカイルは、サディアスの背をベッドに倒すと、息を整えながらサディアスの蕾に瓶から出した粘度の高い液体を塗り込んだ。
カイルがペニスを右手で持ち、サディアスの蕾に当てがった。
……欲しい……
カイル殿下のペニスが欲しい……
この体を貫いて、蹂躙して欲しい……
……あぁ、早く……
……早く、挿れて欲しい……
待ち侘びるサディアスの期待に応えるように、カイルが腰に体重をかけてきた。
ぬっぷりと隘路を分け入ってくるその熱い杭が、体を内側から圧迫する。
あぁ……
それを想像しながら自分を慰めるようになったのは、いつからだったろうか?
真剣に内政学に聞き入るまだ若い皇子にあろうことか欲情を感じてしまい、自己嫌悪に苛まれたのは、もう遥か昔の出来事だ。
触れたかった。
その欲望を自分に向けて欲しかった。
皇子の相手をする様々な人への嫉妬などは隠し、殿下と一番長く時間を共にしているのは結局私だ。殿下に一番に信頼を寄せられているのは私だと、何度も言い聞かせた。
サディアスは根本までペニスを挿入され、両足を広く割開くようにかけられているカイルの体の重さに酔った。
カイルが気持ちよさそうに、腰をゆっくりと擦り付けてくる。
自分の体の中で蠢く生き物は、それ自身がまるで意思を持っているかのようにドクドクと脈動している。
「……殿下……」
あまりの愛おしさに、その名を呼ばずにいられない。
「……カイル殿下……私の太陽……」
カイルが優しげな瞳でこちらを見てくれる。
「サディアス。愛している」
繋がったまま落とされる口付けに、涙が滲んだ。
カイルとサディアスはその夜、疲れ果て体が動かなくなるまで、何度も体をつなげ合った。
※
サディアスはその後、カイル皇子の強い意向で王宮に住居を移すことになった。
唯一の皇太子が毎晩城外に抜け出すのを、近衛が嫌がったのも一つの理由だ。
聖女エラはサディアスの不在を寂しがったが、最近王宮図書室の司書バルデリアスがサディアスの元に交際の挨拶に訪れた。
バルデリアスは誠実な思慮深い青年で、彼ならば、なにかと重積を抱える聖女を支えることができるだろう、とサディアスは安心している。
サディアスは王城奥の庭園のガゼボでカイルと共に朝食をとりながら、朝日に透けるカイルの金髪を眩しそうに見つめた。
「……で、お前の夢の中で、私は死に際に何と言っていた?」
カイルの質問に、サディアスはそういえば、と未だ鮮明に残る記憶を辿った。
「私と行ってみたかった場所があった。とおっしゃってました」
それを聞いて、カイルは微笑みながらサディアスの手に右手を重ねた。
「お前の母君の母国、オーケシュアに一緒に行ってみたかったのだ。夜空に広大な光のカーテンがかかるのだろ? どんなに美しいだろうか」
それを聞いてサディアスは、普段人には見せないような晴れやかな笑顔をカイルに向けた。
「オーケシュアから、国交樹立の打診が届いております。行きましょう」
ここではないずっと遠くの世界。
賢王と優秀な宰相が治める国は周りの国々と交流を深め、天災に見舞われることもなく、平和に豊かに栄えたのでした。
―― fin. ――
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サディアスはガードが強い。
最後まで読んでホッとしました。
幸せになってよかった!
素敵な物語をありがとうございましたm(_ _;)m