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第六章 ジオルグの求愛
49. 隠れ家③ ※
しおりを挟むだからどうか君の中に入らせてくれ、と熱っぽく請われ。
俺は、知らず強ばりかけていた身体の力をゆっくりと抜いていく。
それを見逃さず、ジオルグは腰を押し出した。新たな香油を塗されていた亀頭が、ぐぷりと窄まりの中に沈み込む。そのまま勢いよく腰を進められ、一気に根元近くまで呑み込まされた。
「ひッ、い……ぁあっ」
指で解されただけの隘路を、指よりも太くて長い熱塊に貫かれ、その凄まじい圧迫感に息が詰まりそうになる。
だが、あの凶器を見た瞬間に想像していたような痛みはなかった。それだけ丹念に解され、拡げられていたのだろう。
はっ、とジオルグが短く息を吐く。
「──思っていた以上だ。君の中は熱くて、狭くて……、気を抜くと、すぐに持っていかれそうになる」
「俺も……まさか、あなたのが、ここに入るだなんて……」
臍下あたりを撫でながら言うと、ジオルグは一度大きく腰を引き、また突き上げた。俺が悲鳴を上げると、奥に押し当てたまま動きを止める。宥めるようなキスが、頬や顎にやわらかく降ってくる。
「すまない。痛むか?」
「……大丈夫、です」
胸を喘がせながら、なんとか答える。逞しい背に手を回すと、ジオルグは今度は様子を窺うようにゆっくりと腰を動かし始めた。
ジオルグの動きに身体が馴染み始めると、次第に中の抵抗感が消えていき、芯が疼くような快感が断続的に訪れるようになった。
動きが激しくなるにつれ、塗された香油とジオルグ自身から滴る先走りとで、俺の中からは、ずちゅ、ずちゅ、と耳を覆いたいほど濡れた恥ずかしい音が聞こえ出す。
そして、さっき指で探り当られていたしこりのようなものに押し当たった瞬間、それまでのものとは全然違う、全身が痺れるような鋭い快感に襲われた。
「ッあ! そこ……は、だめ、ンッ……、あぅッ」
「駄目じゃない。ここは君の良いところ、だろう?」
ジオルグは、今度は容赦しなかった。そこを狙って、さらに煽るように何度も先端を突き立てられる。
「ダメッ、もう、お、おかしく、なっ……ぁ、あーッ」
「くっ、シリル……!」
底なしの快感の渦に巻き込まれていくような、激しい感覚に襲われる。
その一瞬、完全に意識が飛んでいた。気づけば身体がビクッビクッと痙攣していて、自分が二度目の射精をしたことを知る。
ジオルグと繋がったまま、指先すらも動かすのが億劫なほど、ぐったりと横たわっていた。
上がりきった呼気がようやく落ち着きはじめると、ジオルグが深く唇を塞いできた。
今の締めつけに耐えきったらしく、彼の陰茎は硬度と角度を保ったまま、俺の弛緩した胎内をゆっくりと抜き差ししている。さっきよりもっと深いところまで挿入っていた。
「シリル……」
いたわりのこもった手つきで、汗に濡れた前髪をかきあげられた。
「ん、ジル……まだ……?」
「……もう終わってほしいか?」
無理をさせたか、と気遣う声で訊かれ、俺は必死に首を横に振る。
「違う……、気持ちいいの、俺ばっかりで。あなたは、物足りないんじゃないかっ、て……」
「──莫迦なことを」
俺を見下ろす金色の目が、獣のそれのように炯った。
「あっ」
「優しくしてやれるのは、これきりかもしれないのに。君が煽ってどうする」
少し怒ったような声で言い、ジオルグは、乱暴に俺の腿を抱え直すと、根元まで嵌めたまま、強く奥を穿ってきた。
「ん、ぅっ、あ、あ、おくだめ、つよい……ッ」
「……駄目だ。君がそのつもりなら、もっと、我を失うほどに溺れてもらわねば」
逃げるのは許さないとばかり、身体の重みで上から完全に押さえつけられ、がつがつと腰を打ち付けられる。
そして。俺の中で快感とはまた別の何かが『起きた』のは、このときだった。
「ぁ、ふっ、ジル、まって……ん……ッ」
……変だった。何かがおかしい。待って、と告げても聞き入れてもらえなかった。ベッドが軋むほどに突き上げられ、もう制止の声すらまともに上げることができない。
──これ、何。急に、胎の中が、熱く……。
いや、そこだけじゃなく、身体中の血が沸騰したように熱い。
ジオルグと繋がった場所から、血管の中に何か熱いものが流れ込み、それが身体中を一気に駆け巡る。脳まで白く灼かれるような感覚──。
「ジル……、なん、か、変っ、熱、いっ」
「ああ……、熱いな」
汗と涙に濡れる顔をべろりと舐められ、その獣じみた仕草にぞくりと震えた。
「君の血が、私の魔力を求めて暴れている」
「……え? な、に?」
「ようやく、繋がり始めた」
それ以上、説明の言葉はなく。ジオルグは、熱に冒されきった俺の身体をひたすら貪るように抱き続け、やがて俺の中に熱い精を解き放った。
この部屋に入ったとき、日はまだ高いところにあった。
今、外はもう、黄昏。暮れ落ちる寸前の昏い光が、宵闇の気配を濃くしていく。
ジオルグが、俺の中に三度目の精を吐き出した時、それまでにも何度か途切れていた俺の意識は、完全に闇の奥底へと落ちていった。
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