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shoichi

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最後の恋

大切な人

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仕事を終え、家に着き、重たい荷物を投げ捨てた僕は、あいの番号に通話ボタンを押した。

耳に添えた受話器から、聞こえる音。

いつもと、何も変わらない午前と呼ばれる夜だった。

「もしもし。」

「うん。」

電話の向こう側から、切なさと、愛しさ混じりの声に、震える僕の声。

「あのさ…」
「ゆうくんには、あいより良い人がいるって。」

何も考えていなかった真っ白な頭の中。

君も強がりのセリフだったら嬉しいな。という思いと、切ないな。と思う気持ちから、上手く伝えきれない言葉が出てくるんだ。

「そんなの、どうでもいいよ。」

あいを好きだった。その気持ちに、そんな言葉、ちょっと胸に突き刺さるな。

また、君の前で泣いてしまう僕がいる。

好き。って思いは、消すこともできないし、忘れることもできないんだね。

「あのさ…」

君が笑う声。それと、今まで二人歩いた道が、嘘じゃないこと。

「最後に、お願いがある。」

それを、聞かせてほしかった。

「…何?」

「今だけ、戻ろうよ。付き合って。」

できるだけ笑って、そんな言葉が出てきた。

「何それ。」

君が笑ってくれたから、それだけでも良かったんだ。

「お願い。」

手を合わせたように、頭を下げるように、続いた会話。

「今だけ?」
 
「そう。今だけだから。」

本音をいうと、ただの一秒でも、長く話しをしたいだけなんだけど。

「あいは、何すればいいの?」

窓越しの紅葉が、サラサラ。と風に乗っては、地面に落ちるのを見守った。

「俺が言う言葉に、付き合ってたら、これを言うだろうな?って思ったことを、言ってほしいんだ。」

昔と同じように、

「いいよ。」

と笑う、あいがいた。

少しの沈黙の後に、脚本家のように、沢山の言葉を描く。

「ねぇ…。」

口を割った僕がいて。

「ん?」

待っていたように、答える君がいて。

戸惑う気持ちも分からないように、

「何?」

と急かす、あいだった。

「…ごめん。ちょっとだけ待って。」

いいよ。と、いつまでも待ってくれる君が、いなくなることが僕は怖かったけれど。

「よし。あのさ…。」

あのさ。と、二回くらい呟いた後、

「うん。」

ちゃんと、聞いてるよ。と、言ってくれるあいに背中を押された。





「愛してるよ。」 
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