100 / 121
ラッキーボーイ
色褪せた景色
しおりを挟む
「もしもし。メール見たよ。」
お酒が入っていたせいか、僕はあいに電話をして、強い口調になっていた。
「頑張る。って、何なのかな。」
鼻で笑いながら、好きになってもらう。と、もう、嫌われてもいい。と、思っていた事実。
「もう、困らせたくないから、笑っててくれな?ありがとね。」
「…違う。」
「違う。って何?」
怒ってるんじゃない。必至なんだ。って、伝わるわけもなく、また、あいを悲しませてしまう。
もう、君の隣にいるのが僕じゃなくてもいいから、笑っててほしい。と素直に考えていたから。
「俺は、笑ってる、あいが好きだから。」
頑張る。という路線を、僕はもう外れたかった。
頑張る。って、自分じゃなく、人が決める。と誰もが言うけれど、認めてもらったり、見てくれる人がいないと、無意味なことだ。と僕は思っていたから。
「ごめん。仕事終わったけど、一応、接客中だから。」
これ以上、汚い言葉を吐きたくなくて、優しい言葉をかけられたくなくて、僕は逃げるように、電話を終わらせようとしていた。
「じゃ、幸せになれよ。」
「違う。」
通話終了ボタンを押した。
「…………。」
こんなはずじゃなかったのに。と、膝を落として、地面に座った。
と同時に、僕の目から、ゆっくり涙が、次々と零れた。
『ごめん。今のゆうくんとは、戻れない。』
もう一度見直したメールに、心が真っ白になる。
ポケットから取り出した煙草を口に咥え、フーッ。と、深呼吸してから、涙目を拭いた。
眩しい携帯電話の電源を落とし、お店へ戻った。
「どうした?」
暗い室内で良かった。と思いながら、何でもありません。と答える自分。
「さぁ、誰から唄おうか?」
ステージに、接客していたお兄さん達が集まり、散らばったお客達に声を掛ける。
「こいつが、唄う。」
と、学校の先生に、はーい。と手を上げるように、伸ばされた目の前の人。
その手が、僕に向けられる。
「よし、おいで。」
いやいや、今は無理です。と駄々を捏ねても、ベース担当の人に、引きずられながら、立たされた小さなステージ。
お客の拍手と、目の前のマイクと、ホストのお兄さんの声と。
「何、唄おうか?」
スポットライトに照らされ、準備を始めるバックバンドの人達。
ジャーン…♪
鳴り出すエレキギターの音、それに合わせ、ベースが重なり、続くドラムのリズム。
鳴りだした音楽に、唄い始めた僕の声。
歌詞を目で追いながら、途中まで唄っていたのが、
「ご…ごめんなさい。」
僕は、気持ちを抑えることができず、人前で声を出して、泣いてしまった。
すぐに気付く、ざわめく店内。
大丈夫、大丈夫。と声をくれた、お店のメンバー。
重たい足を、席に運ばせ、
「歌手になりたいのだから、人前にも慣れなきゃな。」
と検討違いの言葉に、すみませんでした。としか言えない、僕がいた。
唄っている最中に、頭の中が思い出でいっぱいに。
座って、また、違う演奏が始まり、それを見ながら、置いてあった焼酎を飲み干す。
もう、戻ることができない。と言うような歌詞に、心が同調(シンクロ)してしまった。
君に届かなかった言葉に、届かせたかった儚い思い。
そんな気持ちを、二杯目の焼酎と一緒に、一気に飲み干した。
お酒が入っていたせいか、僕はあいに電話をして、強い口調になっていた。
「頑張る。って、何なのかな。」
鼻で笑いながら、好きになってもらう。と、もう、嫌われてもいい。と、思っていた事実。
「もう、困らせたくないから、笑っててくれな?ありがとね。」
「…違う。」
「違う。って何?」
怒ってるんじゃない。必至なんだ。って、伝わるわけもなく、また、あいを悲しませてしまう。
もう、君の隣にいるのが僕じゃなくてもいいから、笑っててほしい。と素直に考えていたから。
「俺は、笑ってる、あいが好きだから。」
頑張る。という路線を、僕はもう外れたかった。
頑張る。って、自分じゃなく、人が決める。と誰もが言うけれど、認めてもらったり、見てくれる人がいないと、無意味なことだ。と僕は思っていたから。
「ごめん。仕事終わったけど、一応、接客中だから。」
これ以上、汚い言葉を吐きたくなくて、優しい言葉をかけられたくなくて、僕は逃げるように、電話を終わらせようとしていた。
「じゃ、幸せになれよ。」
「違う。」
通話終了ボタンを押した。
「…………。」
こんなはずじゃなかったのに。と、膝を落として、地面に座った。
と同時に、僕の目から、ゆっくり涙が、次々と零れた。
『ごめん。今のゆうくんとは、戻れない。』
もう一度見直したメールに、心が真っ白になる。
ポケットから取り出した煙草を口に咥え、フーッ。と、深呼吸してから、涙目を拭いた。
眩しい携帯電話の電源を落とし、お店へ戻った。
「どうした?」
暗い室内で良かった。と思いながら、何でもありません。と答える自分。
「さぁ、誰から唄おうか?」
ステージに、接客していたお兄さん達が集まり、散らばったお客達に声を掛ける。
「こいつが、唄う。」
と、学校の先生に、はーい。と手を上げるように、伸ばされた目の前の人。
その手が、僕に向けられる。
「よし、おいで。」
いやいや、今は無理です。と駄々を捏ねても、ベース担当の人に、引きずられながら、立たされた小さなステージ。
お客の拍手と、目の前のマイクと、ホストのお兄さんの声と。
「何、唄おうか?」
スポットライトに照らされ、準備を始めるバックバンドの人達。
ジャーン…♪
鳴り出すエレキギターの音、それに合わせ、ベースが重なり、続くドラムのリズム。
鳴りだした音楽に、唄い始めた僕の声。
歌詞を目で追いながら、途中まで唄っていたのが、
「ご…ごめんなさい。」
僕は、気持ちを抑えることができず、人前で声を出して、泣いてしまった。
すぐに気付く、ざわめく店内。
大丈夫、大丈夫。と声をくれた、お店のメンバー。
重たい足を、席に運ばせ、
「歌手になりたいのだから、人前にも慣れなきゃな。」
と検討違いの言葉に、すみませんでした。としか言えない、僕がいた。
唄っている最中に、頭の中が思い出でいっぱいに。
座って、また、違う演奏が始まり、それを見ながら、置いてあった焼酎を飲み干す。
もう、戻ることができない。と言うような歌詞に、心が同調(シンクロ)してしまった。
君に届かなかった言葉に、届かせたかった儚い思い。
そんな気持ちを、二杯目の焼酎と一緒に、一気に飲み干した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる