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缶コーヒー
ありがとう
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初めての一人暮らしを夢見る。と言うよりも、今の現状から逃げ出したくて決めたこと。
両親からの無言のプレッシャー、好きなことだけをしている自分への罪悪感、そして、いつも傷付けてしまっている、あいから。
あいを幸せにしたい。と思う反面、あいには自分よりも…。と思ってる気持ちが、矛盾してしまっている。
そんな、思いも伝えきれないから、純粋に笑ってくれるあいが愛しすぎた。
「これ。」
今日は、僕があいの左側に座ってた。
「ん?なぁに?」
突然、車の後ろから取り出された大きな箱。
はい。と可愛い顔をしながら、僕の手に置かれた。
「え?何?今日は、何か特別な日だっけ?」
本当に、え?だけが、頭の中をグルグルしていた僕だったが、開けて。と言われて、恐る恐るラッピングを丁寧に破っていた。
「お~。え?何?急にどうしたの?」
ふふ~ん。と、ニコニコしていた、あいが可愛くて、一秒もないキスをした。
「前に、欲しいって言ってたから。」
ブーン。と、一台の車が、止まっていた僕たちを追い抜いて行く音よりも、
「おっ、マジか。」
普段は眠たそうだ。と言われる僕の目と、ただ、何気無いことだったことを覚えてたあいに告げた言葉の方が、大きかった。
「貰っていいの?」
「あい、サイズ合わないし。」
子供のように、はしゃいだ僕と、綺麗な瞳で僕を覗き込む君と。
「ありがとう。ボロボロになっても、履くから。」
宝箱から取り出された、少し前に、良いな。と呟いていたセピア色のスニーカー。
「俺、何も準備してないじゃん。言ってくれよ。」
いいの。と微笑む彼女に、また、軽くキスをしていた。
今週、予約していた飛行機のチケットがお尻の下にある財布の中から、風に持っていかれればいいのに。なんて、思う気持ちは、触れ合う唇からは、声になって出てこなかった。
「あと、これ。」
笑いながら、姿を現した二本の歯ブラシ。
「あっ、あいの分もあるじゃん。」
違うよ。って、真剣に、専門の勉強してるからって、歯磨きの説明なんてしなくても、
「本当は、一回使っただけでも、変えた方がいいんだよ?」
いいんだよ?
「歯磨き粉もね、付けずに、長く磨けば磨くほど、いいんだよ?」
楽しそうに話すあいを見ていて、はいはい。と、緩い茶色のパーマを、ポンポン。と撫でた。
「ちゃんと、使ってね。」
「ありがとう。行ってくるから。」
うん。と、最後まで笑顔でいてくれた君に、もう一度だけ伝えたかった。
ありがとう。ってさ。
両親からの無言のプレッシャー、好きなことだけをしている自分への罪悪感、そして、いつも傷付けてしまっている、あいから。
あいを幸せにしたい。と思う反面、あいには自分よりも…。と思ってる気持ちが、矛盾してしまっている。
そんな、思いも伝えきれないから、純粋に笑ってくれるあいが愛しすぎた。
「これ。」
今日は、僕があいの左側に座ってた。
「ん?なぁに?」
突然、車の後ろから取り出された大きな箱。
はい。と可愛い顔をしながら、僕の手に置かれた。
「え?何?今日は、何か特別な日だっけ?」
本当に、え?だけが、頭の中をグルグルしていた僕だったが、開けて。と言われて、恐る恐るラッピングを丁寧に破っていた。
「お~。え?何?急にどうしたの?」
ふふ~ん。と、ニコニコしていた、あいが可愛くて、一秒もないキスをした。
「前に、欲しいって言ってたから。」
ブーン。と、一台の車が、止まっていた僕たちを追い抜いて行く音よりも、
「おっ、マジか。」
普段は眠たそうだ。と言われる僕の目と、ただ、何気無いことだったことを覚えてたあいに告げた言葉の方が、大きかった。
「貰っていいの?」
「あい、サイズ合わないし。」
子供のように、はしゃいだ僕と、綺麗な瞳で僕を覗き込む君と。
「ありがとう。ボロボロになっても、履くから。」
宝箱から取り出された、少し前に、良いな。と呟いていたセピア色のスニーカー。
「俺、何も準備してないじゃん。言ってくれよ。」
いいの。と微笑む彼女に、また、軽くキスをしていた。
今週、予約していた飛行機のチケットがお尻の下にある財布の中から、風に持っていかれればいいのに。なんて、思う気持ちは、触れ合う唇からは、声になって出てこなかった。
「あと、これ。」
笑いながら、姿を現した二本の歯ブラシ。
「あっ、あいの分もあるじゃん。」
違うよ。って、真剣に、専門の勉強してるからって、歯磨きの説明なんてしなくても、
「本当は、一回使っただけでも、変えた方がいいんだよ?」
いいんだよ?
「歯磨き粉もね、付けずに、長く磨けば磨くほど、いいんだよ?」
楽しそうに話すあいを見ていて、はいはい。と、緩い茶色のパーマを、ポンポン。と撫でた。
「ちゃんと、使ってね。」
「ありがとう。行ってくるから。」
うん。と、最後まで笑顔でいてくれた君に、もう一度だけ伝えたかった。
ありがとう。ってさ。
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