ラブレター

shoichi

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缶コーヒー

ピアノの音色

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また、ネックレスを付けてない。とか、どうとかで、喧嘩してしまった。

「大事な時に、付けるから。」

「それが、いつなんだよ!!」

本当に、何もかもが思い通りにいかないことが、とても寂しかった。

「今度の、ピアノの演奏会の時に、付けるから。」

僕が、バイトだってこと、君は知ってるはずなのに。

「俺が見なきゃ、意味ない。」

「大事な物だからこそ、普段、身に着ける物じゃないでしょ?」

変な言い訳のような言葉に、丸めこまれた。

『ゆうくん、あいの演奏会、見に行く?』

あいの友達からのメールが、その当日の朝に入ってきた。

『今、もう、バイトだからね。分かんない。時折り、状況を教えてよ。』

分かったよ。と、可愛らしい絵文字を見て、携帯を閉じる。

『あいの番まで、まだまだだよ。』

バイクのメーターを、いつもより上げて。

『今、全体の休憩みたい。そろそろなんじゃないかな?』

「ありがとうございます!!また、宜しくお願いします!!」

器用な笑顔を、作りながら。

『次の次!!』

「これを配達した後、一旦、あがっていいぞ。ほら、これは昼飯代だ。」

ヘルメットを被るスピードまで、急ぐ気持ち。
 
『始まったよ。来れないの?一緒に見たかったね。』

君には、届かないのかな。

息を切らし、大きなホールへの大きな扉へ、タックルするようにし、一番下の階から、あいを見つけた。

~♪~~♪♪

もう、終わり頃だったけど、流れる汗が、少し利いた冷房に冷やされ、だけど、何故かな。

その綺麗な音に、メロディーに、涙が出そうになったんだ。

弾き終えたあいが、大勢の観客の前で一礼をし、凄い拍手の雨が降り注いだ。

「あっ…。」

小さく声が漏れたことに、僕と同じように立ち見をしていた近くのおばさんが、僕へ、振り返った。

そこに…その首元に…、確かにそれは光っていたんだ。

その場を、急ぎ足で隠れようとするあいを見た後に、また、扉を開け、眩しい日に、目が眩(くら)んだ。

『ラスト、少し失敗した人、手挙げて。』

また、強がりのメールを君に打ってしまう。

『あい、終わったよ。』

同時に貰う、そのメールには、

『上手だったね。』

そんな、返事を返してた。

『え?来てたの?』

『ごめん、間に合うようにしたかったから、一通も、メール入れれなかった。』
 
ホールの外には、まだ、僕一人で、そんな時、あいが現れて、

「ゆうくん!!」

と、可愛い笑顔で、おう。とかカッコつけ、頭を撫で、まぁまぁだったかな。とか、そんなドラマのような、漫画のようなことを、夢見てた。

駐車場へ歩きながら、バイクへ跨(またが)り、エンジンをおもいっきり、ぶっ放した。

『見に来てたの?声、かけてくれたら、良かったのに。』

思い描くのは、そんなメールじゃなくて、バイトは?とか、びっくり。だとか、あいの近くにいることを、当たり前に思ってほしくないような、内容がいいんだけれど。

『どこにいるか、分かんないし、なら、今から会えんの?』

分かってる。

だから、音を立てるバイクと共に、その場を去った。

昼飯を買うために、昔、あいとの、初デートに使ったコンビニへ行き、いろいろ見て回った。

『ごめん。共演者や、友達がいるから。』

パンとジュースと、シュークリームを、一コインで買った。

『へいへい。今日は、お疲れ。ぢゃ、またね。』

共演者より、友達より、僕は格下なのかな。

『暇になったら、メールする。』

『いらない。どうせ、すぐバイトだし。今日は、ゆっくりしな。』
 
もっと、喜んでほしかったな。なんて、思いながら、家へ着き、テレビを付け、パンを頬張った。

そのせいか分からないけれど、少しだけ、頬を膨らませた。

『ゆうくんが、バイト終わったら、メールしたいな?』

その言葉に、素直になれない想いが交差する。

『いや、いい。ただ、ちゃんと、約束、覚えてくれてたんだ?』

面白くもない番組を消し、飲み物を口に含んだ後、ポケットから、クシャクシャになった煙草を取り出し、火を点けた。

『うん!!』

ありがと。なんて、送るのは、僕で間違ってないよね?

溜め息混じりに吐き出された煙が、明るい日差しへ、消えていく。

『ぢゃ、終わったらな。』

可愛いあいが、今日は綺麗に見えたから、大勢の客に、少し、妬いたんだ。

僕のあいなんだ!!って、駄々(だだ)をこねたいくらいに。

『ありがと。』

シュークリームが、少し、型崩れになりながらも、不器用に、それを食べた。

手を拭き、あいを思い浮かべ、部屋に置いてあるピアノに手をかけ、二人とも、片思いじゃないのに。なんて、そんな怒りを乗せ、弾かれる僕のメロディーは、君の耳に入ることはあるのかな。

ただね、今日だけは…あいがいた、あの場所には…。

二人で作ってきた永遠が、あった気がしたんだ。 
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