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shoichi

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去年の夏が好きだった

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『明日、友達と祭り行くね!!』

そんなメール、欲しくない。

『明日、海に行く~!!』

ずっと、そんなメールが、大嫌いだった。

『いいなぁ。俺も、あいと行きたい。』

一緒に行こう?とか、夏の間は、誘われたことなんて、無かったから。

『あいも、ゆうくんと行きたかったなぁ。』

過去形になっていることに、少し苛立ちを感じたが、あいの笑う顔が大好きだから。

『変な男に付いて行くなよ。』

とか、

『あい、太ってるから波に拐われないね。』
 
なんて、背伸びした答えは、なんて悲しいことでしょう。

もうすぐ、離れてしまうから、少しの時間も大事にしたかった。

君の我が儘なら、全部聞くつもりだから。

だけど、喧嘩しないとあいからは、会いたい。なんて言葉、聞いたことなかったから、バイトを沢山入れていたんだ。

ヘルメットを被り、バイクに乗って、配達を繰り返す。

風切り音が気持ち良くて、くだらない事も、空気に溶けていく。

空に上がる花火を、一人で見上げながらの仕事でも、あいの隣りにいるような感じがする。そう、思えるように成長したよ?
 
勿論、僕以外の人と笑っている姿を想像すると、妬いたり、寂しくなったりするけれど、その笑顔は、僕の物。だと、思えるくらい、君も、愛をくれているからなのかな。

ちょっと、ズルイな。

『花火、綺麗だったね。』

ほんの少しでも、君の近くにいたいから。

『見てたの?バイトは?』

『配達の途中で、少しね。』

まだ、バイトが終わるまで、十五分近くあったから、隠れて、あいにメールを打っていた。

『なんだ。ビックリした。』

メールの中でも、笑ってくれているのに、
 
『は?何で、驚くの?男といるの?』

好きなのに…好きすぎて…不安を隠せなくなるんだ。

『だから、そういう意味じゃないって。』

重たい愛の引き金を、引いてしまうんだ。

『もういいよ。』

君の笑顔は、僕の物。だと思ってた。

ただ、君の笑顔を奪うのも、僕だと気付いてた。

こんな日は、一人寂しい部屋で、いつも君の泣いてる声に苦しんで、小さな自分が情けなくて、それでも、自分から口にする、別れよう。の言葉に脅えて、電話の後で、泣きながら、ゴメンね。と、声を殺して、左手で目を抑え、メールをしてるんだよ。 
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