ある夏の思い出

shoichi

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第4章

真相

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今日一日の出来事を、見たこともない親父に話すように、星矢に話していた。

「…で、生徒指導室で。」

その時、言葉が止まってしまった。

「で?どした?」

口を、まごまごしていると、

「あっ。俺のことか?」

そう言って、笑いながら話す星矢。

今度は、僕が聞き役に徹した。

「なん…つーかな。」

上を見ながら話す星矢が、少しだけ悲しそうな目をして話し始める。

「施設で、育ってさ…。」

家族を知らないと言う星矢は、中学生の頃、早く独り立ちをしたくて、朝は新聞配達、昼間は学校、夜は塗装屋での手伝い。とか。

その新聞配達の途中、引き逃げに遭遇して、直ぐに通報したはいいけれど、疑われ、身内がいない星矢を学校の担任が引き取りにきた。とか。

「それから、あだ名、犯罪者だぜ?ひどくね?」

桐崎くんは、ジャックナイフだよ。と一瞬言おうかと思ったけれど、笑いながら話す星矢を、もう少しだけ見ていたい。と思った僕がいる。

それからは、塗装屋で修行させてもらって、今は独立したと自慢気に話す。

「ほら。」

携帯電話から繋がったインターネットの先に、塗装屋橘。とホームページが出てきた。

「星矢、社長なの!?」

頭を掻きながら、いや、そだけど。と、まだまだ、顧客も少なく、ギリギリの生活を続けているらしい。

「俺の存在意義ってあるのかな?って、そこに立ったこともあったな。」

星矢は、フェンスの向こう側を指差す。

「いつも、上手くいかないことあると、ここに来るんだ。そしたら、お前がいた。」

誰かに認めてもらいたくて、存在を知ってもらいたくて、必死になっていた。と話す星矢。

「何か…お前、放っておけなくてな。」



そう言いながら、笑いながら、僕の頭を撫でてくれた。
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