ある夏の思い出

shoichi

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第1章

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そこに、真っ黒のビックスクーターが止まってあった。

「俺の、マジェンヌちゃん。宜しくな。」

そう言って、座席の下から取り出したヘルメット。

「乗れよ。」

颯爽と跨ったおっさんと、戸惑うことしかできない僕。

見よう見真似で、座った瞬間、

「捕まれよ。」
「え?」

爆音が鳴った瞬間、体が後ろへ持って行かれた。

慌てて、名前も知らない自称十七歳と言う、運転をしている男の上着を握りしめた。

後ろからでは顔は見えないけれど、きっと不敵に笑ったであろう。と、加速したバイクが物語っていた。



「どうだ?気持ち良いだろ?」

少し街中を外れたコンビニへ立ち寄り、一時停車。

「は、はい!!」

初めて乗ったバイクに、興奮した心が追いついていなかった。

「ちょっと、待ってろ。」

そう言い残し、自称十七歳の男は、店内へ入っていった。

ものの数分で出てきたと思った矢先に、タバコに火を点けていた。

「ほら。」

と差し出した手には、ブラックの缶コーヒーが収まっていた。

「あ…ありがとうございます。それと、」

「あ?」

「名前を…。」

「星矢でいいよ。」

ここに座れ。と、夜更かしはコンビニでするもんだ。と笑いながら話す星矢。

「お前は?名前。」

「言いたくない。」

「言えよ!!」

その顔、やめてください。

「ソラ。宇宙って書いて、そらだよ。」

「へー。キラキラしてんな。まぁ、俺もキラキラ光る星だからな。」
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