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凌太と晴翔
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部屋に戻ってから智をソファに座らせ、暖かいココアを飲ませると俺の肩に寄りかかった智から寝息が聞こえてきた。
ソファで寝かせるわけにもいかず寝室に連れて行き、ベットに寝かせ、灯りを消した。
一体どう言うことなん?
机にあった2人分のコップをキッチンで洗いながらムカつく気持ちが沸々と湧いてきた。
あいつに智を譲った訳じゃない、智があいつを選んだから俺は見守ると決めただけだ。
なのに入学してから晴翔は生徒会で忙しいのか、智を不安にさせてばかりか、ほったらかしに近い。
泡だらけのスポンジを強く握りしめた。
あいつが、晴翔が憎いし妬ましい。
俺が欲しいものを持っていながら大事にしない傲慢さ。
俺の方が大切にできる、優しくできる、あいつより愛してやれるはずだ、なのに智があいつを見るたびに、伸ばしかけた手を引っ込めてしまう。
届かない手は届かない想いと同じなのだ。
シンクに両手をついて怒りを抑えるようにため息をつく。
あれはなんだ。
智は晴翔に今日会ったことをメールに書いて送ってるはずだ、なのに返信もなく、なんで手塚を抱えているんだ。
「ムカつくな」
ベータには居心地の悪いこの学校に入学させ、自分がほぼ全ての生徒達からどのように思われていかなんてわかっているはずなのに、それでも自分の部屋に智を住まわせているのはあいつの独占欲でしかない。
「あー!!腹立つ!!」
どうすればいい、何をしたら智に負担をかけず、この腕に抱き止められる?
手を洗い寝室で寝ている智のベットに腰をかけた。
泣き腫らした目元をそっと親指で拭い、そのまま手を頬にすべらせる。
見守るだけ、横に肩を並べるだけでいいとそう思っていた、出会ったあの頃から晴翔の存在を知るまでは確実に智を手に入れるつもりだったのに…
だから余計に腹が立って仕方がない。
「好きだよ、智」
どうしようもない程、想いが溢れて止まらない。
あいつが構ってやらないから
だから俺がこんな想いをしなきゃならない。
俺の自由で居られる時間は限られている。
智を手に入れたとしても俺も晴翔と同じく影のように囲い込むしかないのが現実だ。
ベットから立ち上がり智の寝息を確かめてリビングへと向かうとインターホンが鳴った。
モニター越しに晴翔が写っている。
「どなたですかー?」
「見えてるんだろ、開けてくれ」
「俺には用がないんやけど?帰ってくれる?」
「智、居るんだろ。連れて帰るから開けろ」
「無理でーす、帰って」
「頼む、開けてくれ」
「何?」
ドアを開け晴翔を睨みつけた。
あの場に俺たち2人がいた事に気付いていてここに来たってとこか。
「智は?」
「寝てる、で?」
「連れて帰る」
靴を脱ぎ部屋に上がり込もうとする晴翔を手で制した。
「お前、何勝手なことゆってんねん、渡すわけないやろ」
「お前の意見は聞いてない、俺は智洋を迎えにきたんだ、早く渡せ」
こいつ何言ってんねん、なんの説明もなくどこまで俺様なん?
「ちゃんと智に説明できんのか手塚の事。」
「お前に言われなくてもその為に連れて帰るんだ」
「なぁ、お前これからもずっと智をあんな環境で過ごさせるつもりなのか?」
元々ベータにとってこの慶明という学校はシステム的に優遇された場所じゃない。
智自身もアルファやオメガに引けを取らない程優秀だ。
ベータが集まる私立や公立の高校でも智を受け入れても遜色ない学校なんていくらでもあった、当の本人も地元の高校に進学予定だった筈だ。
「なんで智を地元の高校に入学させてやらなかったんだ、お前のそばにいる事であいつが困る立場になる事なんてわかってたんちゃうんか!?」
「お前には関係ないだろう、あいつは俺が守る」
その言葉で怒りが湧いて壁に手を思いっきり叩きつけ、思わず大きな声を出してしまった。
「お前がほったらかしにして、たった1人が煽り周りがそれに同調した、これがお前の”守った”ってことなのか?何度も言うが、こうなる事はわかっていただろう!守ってやれないなら智は俺が貰うぞ、だから出ていけ!」
そう言った瞬間、晴翔から物凄い怒りのフェロモンが出て、俺に向けてきた。
「お前のことは智洋の親友だと思って我慢してきたが、近くに居させるべきじゃない、そういう事か?」
足元から崩れ落ちそうになるくらい強いフェロモン。
こいつには敵わないが、俺も上位アルファだ、これくらいのフェロモンで負けるわけにはいかない。
「は…やっぱすげーな、俺でもクラクラするわ…」
少しよろけて壁に背を預けたと同時に晴翔に片手で首を締め付けられ顔を近付け低い声で言った。
「あいつが悲しむから今は何もしないが、自分の立場は弁えておけ」
手を振り払い締め付けられた反動で咳き込んで背中から崩れ落ちた。
上から睨みつけた晴翔は俺をゴミのようにあしらい
「あいつは俺の”モノ“だ、忘れるなよ」
そう言って部屋に上がり込み言ってもいないのに寝室から智洋を抱き抱え部屋を出て行った。
なんで智のいてる場所わかんねん、番でも無いのに。
智はベータやぞ。
「ははっ…結局俺って何にも手に入れらへんって事なんか…」
誰かの1番になりたい、たったそれだけのことなのに俺にはいつだって手の届かない所にある。
「要らないものは手に入るのにな…」
玄関から動けず壁に背を預けながら天上を見上げて目を閉じた。
閉じた瞼から静かに涙がこぼれ落ちる。
「あー、幸せになりたい」
ソファで寝かせるわけにもいかず寝室に連れて行き、ベットに寝かせ、灯りを消した。
一体どう言うことなん?
机にあった2人分のコップをキッチンで洗いながらムカつく気持ちが沸々と湧いてきた。
あいつに智を譲った訳じゃない、智があいつを選んだから俺は見守ると決めただけだ。
なのに入学してから晴翔は生徒会で忙しいのか、智を不安にさせてばかりか、ほったらかしに近い。
泡だらけのスポンジを強く握りしめた。
あいつが、晴翔が憎いし妬ましい。
俺が欲しいものを持っていながら大事にしない傲慢さ。
俺の方が大切にできる、優しくできる、あいつより愛してやれるはずだ、なのに智があいつを見るたびに、伸ばしかけた手を引っ込めてしまう。
届かない手は届かない想いと同じなのだ。
シンクに両手をついて怒りを抑えるようにため息をつく。
あれはなんだ。
智は晴翔に今日会ったことをメールに書いて送ってるはずだ、なのに返信もなく、なんで手塚を抱えているんだ。
「ムカつくな」
ベータには居心地の悪いこの学校に入学させ、自分がほぼ全ての生徒達からどのように思われていかなんてわかっているはずなのに、それでも自分の部屋に智を住まわせているのはあいつの独占欲でしかない。
「あー!!腹立つ!!」
どうすればいい、何をしたら智に負担をかけず、この腕に抱き止められる?
手を洗い寝室で寝ている智のベットに腰をかけた。
泣き腫らした目元をそっと親指で拭い、そのまま手を頬にすべらせる。
見守るだけ、横に肩を並べるだけでいいとそう思っていた、出会ったあの頃から晴翔の存在を知るまでは確実に智を手に入れるつもりだったのに…
だから余計に腹が立って仕方がない。
「好きだよ、智」
どうしようもない程、想いが溢れて止まらない。
あいつが構ってやらないから
だから俺がこんな想いをしなきゃならない。
俺の自由で居られる時間は限られている。
智を手に入れたとしても俺も晴翔と同じく影のように囲い込むしかないのが現実だ。
ベットから立ち上がり智の寝息を確かめてリビングへと向かうとインターホンが鳴った。
モニター越しに晴翔が写っている。
「どなたですかー?」
「見えてるんだろ、開けてくれ」
「俺には用がないんやけど?帰ってくれる?」
「智、居るんだろ。連れて帰るから開けろ」
「無理でーす、帰って」
「頼む、開けてくれ」
「何?」
ドアを開け晴翔を睨みつけた。
あの場に俺たち2人がいた事に気付いていてここに来たってとこか。
「智は?」
「寝てる、で?」
「連れて帰る」
靴を脱ぎ部屋に上がり込もうとする晴翔を手で制した。
「お前、何勝手なことゆってんねん、渡すわけないやろ」
「お前の意見は聞いてない、俺は智洋を迎えにきたんだ、早く渡せ」
こいつ何言ってんねん、なんの説明もなくどこまで俺様なん?
「ちゃんと智に説明できんのか手塚の事。」
「お前に言われなくてもその為に連れて帰るんだ」
「なぁ、お前これからもずっと智をあんな環境で過ごさせるつもりなのか?」
元々ベータにとってこの慶明という学校はシステム的に優遇された場所じゃない。
智自身もアルファやオメガに引けを取らない程優秀だ。
ベータが集まる私立や公立の高校でも智を受け入れても遜色ない学校なんていくらでもあった、当の本人も地元の高校に進学予定だった筈だ。
「なんで智を地元の高校に入学させてやらなかったんだ、お前のそばにいる事であいつが困る立場になる事なんてわかってたんちゃうんか!?」
「お前には関係ないだろう、あいつは俺が守る」
その言葉で怒りが湧いて壁に手を思いっきり叩きつけ、思わず大きな声を出してしまった。
「お前がほったらかしにして、たった1人が煽り周りがそれに同調した、これがお前の”守った”ってことなのか?何度も言うが、こうなる事はわかっていただろう!守ってやれないなら智は俺が貰うぞ、だから出ていけ!」
そう言った瞬間、晴翔から物凄い怒りのフェロモンが出て、俺に向けてきた。
「お前のことは智洋の親友だと思って我慢してきたが、近くに居させるべきじゃない、そういう事か?」
足元から崩れ落ちそうになるくらい強いフェロモン。
こいつには敵わないが、俺も上位アルファだ、これくらいのフェロモンで負けるわけにはいかない。
「は…やっぱすげーな、俺でもクラクラするわ…」
少しよろけて壁に背を預けたと同時に晴翔に片手で首を締め付けられ顔を近付け低い声で言った。
「あいつが悲しむから今は何もしないが、自分の立場は弁えておけ」
手を振り払い締め付けられた反動で咳き込んで背中から崩れ落ちた。
上から睨みつけた晴翔は俺をゴミのようにあしらい
「あいつは俺の”モノ“だ、忘れるなよ」
そう言って部屋に上がり込み言ってもいないのに寝室から智洋を抱き抱え部屋を出て行った。
なんで智のいてる場所わかんねん、番でも無いのに。
智はベータやぞ。
「ははっ…結局俺って何にも手に入れらへんって事なんか…」
誰かの1番になりたい、たったそれだけのことなのに俺にはいつだって手の届かない所にある。
「要らないものは手に入るのにな…」
玄関から動けず壁に背を預けながら天上を見上げて目を閉じた。
閉じた瞼から静かに涙がこぼれ落ちる。
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