55 / 59
3
ここの常識って??
しおりを挟む
朝、目が覚めると晴はもう制服に着替えていて、用事で先に出ると言ってコーヒーだけを飲んで学校へと出かけていった。
僕にはちゃんと朝食を食べる様にと、そこは抜け目ない晴。
昨日のケーキからお風呂コースで結局晴のペースに流されて、考え事も吹き飛んじゃった。
朝食も無駄に豪華に用意されていて、抜け目ないイケメンにちょっと腹立たしく思っちゃったり。
んー、さっさと食べて早めに学校行こう、少しでも雰囲気に慣れとかなきゃね!
ご飯を食べて制服に着替え、玄関のドアを開けた。
「おっと」
誰かいたみたいで、謝ろうと顔を上げると、凌ちゃんがいた。
「あ、凌ちゃん、おはよ!」
「おはようさん!」
毎日見ていた顔がそこにある、すごい安心感!
「朝に智と会えるなんて最高の1日になるんちゃう?!」
「何言ってんの、凌ちゃん、寝ぼけてる?」
彼のおでこに手を当てて熱を測るフリをする。
「あー幸せ、もう今日死ぬんちゃうかな、俺」
おでこに当てた手でそのまま軽く叩いた。
「いてっ」
「バカばっかり言ってないで早く学校に行くよ!」
「はーい、でも中学の時は同じ教室に行けたのに、クラスが別なんてなんか変な感じやな」
「だね、凌ちゃんが越して来てからはずっと一緒に学校行ってたもんね」
「寂しいんちゃう?」
ちょっと図星。
「大丈夫、翼君もいるし、友達も出来たし」
「マジで?良かったやん、どんなやつ?」
「んー、まだわかんない、でもとっても可愛いよ、オメガの人って綺麗だし、皆んな可愛いよねー、」
「そうやなぁ、まぁ可愛いなぁ…でも」
凌ちゃんは僕を覗き見た。
「俺は智の方が可愛いと思うで!」
とニコッと笑った。
昨日も思ったけど、やっぱイケメンってなんかムカつく。
けど、元気づけようとしてくれてるんだな、くらいはわかる。
「ありがと、でも言われるなら”カッコいい”とか言われたいよね、男だもん」
「…それは違うと思う」
「やっぱムカつく!」
そうこうしているうちにアルファ棟とオメガ、ベータ棟の間に着いた。
「智~寂しいよ~一緒に過ごせるように頑張ったのに~」
と縋り付くジェスチャー。
もうウザイ、そう言ってアルファ棟へ押しやった。
「はいはい、わかりました、お昼、晴翔様とご飯せーへんねやったら俺と一緒してー!」
メールしてな~と言って教室へ向かっていった。
ほんと朝から賑やかなんだから。
階段を登り幾つか教室を過ぎ自分のクラスのドアを開けた。
ざわついていた教室内が僕の顔を見た途端、静まり返った。
え?なに?なに?僕?
教室に入る一歩が進まない。
嫌な汗が背中を伝って動けなくなる。
クラスメイトが僕を見ながら囁き合う姿。
居ても立っても居られなくなって後退ろうとした時肩を叩かれた。
「おはよ、智洋」
「あ…翼くん‥」
たぶんちょっと僕うるっときてる、涙溢れそう。
「え?どうしたの?大丈夫??」
何かを察してくれたのか、翼君が教室を見渡して僕の座席まで連れて行ってくれた。
「大丈夫だよ、座ってて」
優しい声が身に染みる。
「ねぇ、皆んな、何だか雰囲気おかしいんだけど、僕のクラスで何かあるなら対処するから言ってよ」
また教室がざわついて、クラスメイトの1人がこんなことを言った。
「川崎君?が神戸君と一緒の寮で住んでるって話が出回っていて、”特別扱い”じゃないのかな、って‥…」
やっぱそうなるよね、僕だってそう思って反対したのに、晴があんなだから反対し切れなかったんだ…
僕が何も言わないからクラスメイト達がそれを肯定と捉えたようで、またざわつき出した。
それまで黙って聴いていた翼君が手を叩いてこちらを見るようにと声を掛けた。
「ここにいるのは川崎君以外、慶明中からだよね?高校のトップ合格者の恩恵って知らないはずないと思ったんだけど?」
その時周りが一瞬静かになった。
「だよね?知ってるよね?」
「…………」
「学校側に常識範囲内での注文が出来る、ってやつ。僕はオメガのトップ合格者だから僕もお願いはしてるよ。こんな所では言わないけど。けどさ、晴翔のお願いは智洋君を自分の部屋に住ませること、なんだ。部屋の入り口は一つだけど、中は2人の部屋が別にあるって聞いてる。”あの”晴翔が決めたんだ、文句あるなら晴翔にいいな、僕でも良いけど?」
そんなのあったんだ。
全く知らなかった、でもそんな事で納得できるわけもないよね?
前の席の手塚君が後ろを振り返った。
「ごめんね、皆んな”あの神戸君”の事だから神経質になっちゃってるんだよね、本当ごめん」
彼のその一言で周りの皆んなも僕の周りに集まって来て謝ってくれた。
でもおかしいよね、皆んな1人部屋なのに僕だけって、絶対ダメなんだと思う。
「おかしいのわかってるの、ごめんね。僕が何言っても晴聴いてくれないから…」
「大丈夫、”あの神戸君”だもん、それなら仕方ない、ってみんなわかってるから!」
手塚君はそう言うけど…そう思って周りを見渡すと、皆んなも首を縦に振っている。
「まぁさ、そんなもんなんだよ、この慶明のトップにいるってことは。俺だって晴翔には敵わないんだし」
なるほど、なんて思えない。
けど、僕にはどうしようもないし…。
「あいつに逆らえる奴なんてここの生徒会長くらいなもんだ、堂々としときなよ」
胸のモヤモヤが消えそうにないけど、このことは入学式前に僕たちの中で答えは出てる。
そうこうしているうちに鐘が鳴って先生が入って来た。
落ち着きを取り戻したクラスメイト達は何事もなく真面目に授業を受けだした。
常識が常識でない世界線にいるようで、僕はやっぱりここでは1人なんだな……そう思った。
僕にはちゃんと朝食を食べる様にと、そこは抜け目ない晴。
昨日のケーキからお風呂コースで結局晴のペースに流されて、考え事も吹き飛んじゃった。
朝食も無駄に豪華に用意されていて、抜け目ないイケメンにちょっと腹立たしく思っちゃったり。
んー、さっさと食べて早めに学校行こう、少しでも雰囲気に慣れとかなきゃね!
ご飯を食べて制服に着替え、玄関のドアを開けた。
「おっと」
誰かいたみたいで、謝ろうと顔を上げると、凌ちゃんがいた。
「あ、凌ちゃん、おはよ!」
「おはようさん!」
毎日見ていた顔がそこにある、すごい安心感!
「朝に智と会えるなんて最高の1日になるんちゃう?!」
「何言ってんの、凌ちゃん、寝ぼけてる?」
彼のおでこに手を当てて熱を測るフリをする。
「あー幸せ、もう今日死ぬんちゃうかな、俺」
おでこに当てた手でそのまま軽く叩いた。
「いてっ」
「バカばっかり言ってないで早く学校に行くよ!」
「はーい、でも中学の時は同じ教室に行けたのに、クラスが別なんてなんか変な感じやな」
「だね、凌ちゃんが越して来てからはずっと一緒に学校行ってたもんね」
「寂しいんちゃう?」
ちょっと図星。
「大丈夫、翼君もいるし、友達も出来たし」
「マジで?良かったやん、どんなやつ?」
「んー、まだわかんない、でもとっても可愛いよ、オメガの人って綺麗だし、皆んな可愛いよねー、」
「そうやなぁ、まぁ可愛いなぁ…でも」
凌ちゃんは僕を覗き見た。
「俺は智の方が可愛いと思うで!」
とニコッと笑った。
昨日も思ったけど、やっぱイケメンってなんかムカつく。
けど、元気づけようとしてくれてるんだな、くらいはわかる。
「ありがと、でも言われるなら”カッコいい”とか言われたいよね、男だもん」
「…それは違うと思う」
「やっぱムカつく!」
そうこうしているうちにアルファ棟とオメガ、ベータ棟の間に着いた。
「智~寂しいよ~一緒に過ごせるように頑張ったのに~」
と縋り付くジェスチャー。
もうウザイ、そう言ってアルファ棟へ押しやった。
「はいはい、わかりました、お昼、晴翔様とご飯せーへんねやったら俺と一緒してー!」
メールしてな~と言って教室へ向かっていった。
ほんと朝から賑やかなんだから。
階段を登り幾つか教室を過ぎ自分のクラスのドアを開けた。
ざわついていた教室内が僕の顔を見た途端、静まり返った。
え?なに?なに?僕?
教室に入る一歩が進まない。
嫌な汗が背中を伝って動けなくなる。
クラスメイトが僕を見ながら囁き合う姿。
居ても立っても居られなくなって後退ろうとした時肩を叩かれた。
「おはよ、智洋」
「あ…翼くん‥」
たぶんちょっと僕うるっときてる、涙溢れそう。
「え?どうしたの?大丈夫??」
何かを察してくれたのか、翼君が教室を見渡して僕の座席まで連れて行ってくれた。
「大丈夫だよ、座ってて」
優しい声が身に染みる。
「ねぇ、皆んな、何だか雰囲気おかしいんだけど、僕のクラスで何かあるなら対処するから言ってよ」
また教室がざわついて、クラスメイトの1人がこんなことを言った。
「川崎君?が神戸君と一緒の寮で住んでるって話が出回っていて、”特別扱い”じゃないのかな、って‥…」
やっぱそうなるよね、僕だってそう思って反対したのに、晴があんなだから反対し切れなかったんだ…
僕が何も言わないからクラスメイト達がそれを肯定と捉えたようで、またざわつき出した。
それまで黙って聴いていた翼君が手を叩いてこちらを見るようにと声を掛けた。
「ここにいるのは川崎君以外、慶明中からだよね?高校のトップ合格者の恩恵って知らないはずないと思ったんだけど?」
その時周りが一瞬静かになった。
「だよね?知ってるよね?」
「…………」
「学校側に常識範囲内での注文が出来る、ってやつ。僕はオメガのトップ合格者だから僕もお願いはしてるよ。こんな所では言わないけど。けどさ、晴翔のお願いは智洋君を自分の部屋に住ませること、なんだ。部屋の入り口は一つだけど、中は2人の部屋が別にあるって聞いてる。”あの”晴翔が決めたんだ、文句あるなら晴翔にいいな、僕でも良いけど?」
そんなのあったんだ。
全く知らなかった、でもそんな事で納得できるわけもないよね?
前の席の手塚君が後ろを振り返った。
「ごめんね、皆んな”あの神戸君”の事だから神経質になっちゃってるんだよね、本当ごめん」
彼のその一言で周りの皆んなも僕の周りに集まって来て謝ってくれた。
でもおかしいよね、皆んな1人部屋なのに僕だけって、絶対ダメなんだと思う。
「おかしいのわかってるの、ごめんね。僕が何言っても晴聴いてくれないから…」
「大丈夫、”あの神戸君”だもん、それなら仕方ない、ってみんなわかってるから!」
手塚君はそう言うけど…そう思って周りを見渡すと、皆んなも首を縦に振っている。
「まぁさ、そんなもんなんだよ、この慶明のトップにいるってことは。俺だって晴翔には敵わないんだし」
なるほど、なんて思えない。
けど、僕にはどうしようもないし…。
「あいつに逆らえる奴なんてここの生徒会長くらいなもんだ、堂々としときなよ」
胸のモヤモヤが消えそうにないけど、このことは入学式前に僕たちの中で答えは出てる。
そうこうしているうちに鐘が鳴って先生が入って来た。
落ち着きを取り戻したクラスメイト達は何事もなく真面目に授業を受けだした。
常識が常識でない世界線にいるようで、僕はやっぱりここでは1人なんだな……そう思った。
1
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
婚約者は愛を見つけたらしいので、不要になった僕は君にあげる
カシナシ
BL
「アシリス、すまない。婚約を解消してくれ」
そう告げられて、僕は固まった。5歳から13年もの間、婚約者であるキール殿下に尽くしてきた努力は一体何だったのか?
殿下の隣には、可愛らしいオメガの男爵令息がいて……。
サクッとエロ&軽めざまぁ。
全10話+番外編(別視点)数話
本編約二万文字、完結しました。
※HOTランキング最高位6位、頂きました。たくさんの閲覧、ありがとうございます!
※本作の数年後のココルとキールを描いた、
『訳ありオメガは罪の証を愛している』
も公開始めました。読む際は注意書きを良く読んで下さると幸いです!
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
きょうもオメガはワンオぺです
トノサキミツル
BL
ツガイになっても、子育てはべつ。
アルファである夫こと、東雲 雅也(しののめ まさや)が交通事故で急死し、ワンオペ育児に奮闘しながらオメガ、こと東雲 裕(しののめ ゆう)が運命の番い(年収そこそこ)と出会います。
愛欲の炎に抱かれて
藤波蕚
BL
ベータの夫と政略結婚したオメガの理人。しかし夫には昔からの恋人が居て、ほとんど家に帰って来ない。
とある日、夫や理人の父の経営する会社の業界のパーティーに、パートナーとして参加する。そこで出会ったのは、ハーフリムの眼鏡をかけた怜悧な背の高い青年だった
▽追記 2023/09/15
感想にてご指摘頂いたので、登場人物の名前にふりがなをふりました
婚約者は俺にだけ冷たい
円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。
そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。
それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。
しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。
ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。
前半は受け君がだいぶ不憫です。
他との絡みが少しだけあります。
あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。
ただの素人の小説です。
ご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる