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一縷の望み

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「…で、メールの交換したんだ」
あの後、目を覚ました馨がベットの中で”凌太”との経緯を語った。
逃げ道のない中で彼が光の道を指し示してくれたんだと。
あの日から、あと2週間で一年を迎えるので、メールをしようとしていたんだ、と馨は言った。

俺の知らない所で、知らない男と会っていた、それだけでも腹立たしいが、あれ程楽しそうな馨を見たのも久しぶりだった、会わせたくないが近況報告だけならまだ我慢はできる。

「俺もついていく」
「ええっっ、やだ!絶対いやだ!」
「近くにいるだけだ、邪魔はしない、それならいいだろう?」
「凌太に見られないようにしてよ、じゃないと1人で行く!」
「わかった、ホテルのロビーで待ってるから」
それで馨も諦めたようで、嫌嫌ながらも納得し、満面の笑みを浮かべてベットから飛び起きた。
「連絡していいよね?」
そう言って服も着ずにスマホの画面を立ち上げ、両手でメールを打ち始めた。

俺にはあんな顔はさせられない、俺が与えるのは脅して従わせる事だけだ。
違う形で出会えていたら、俺がもっと良い家に生まれていれば馨との未来を変えられたのか?

「なぁ慎太郎、目、不自由じゃない?」
「…不自由だと馨がずっと面倒みてくれるのか?」
一縷の望みに縋りたい、どんな形でも馨と一緒にいたい。たとえ神戸の家に嫁いでも、子供を産んでも。
馨は服を着替え終わるとこちらを向いて
「当たり前じゃん、面倒みるよ、みさせてよ。今みたいな関係は続けられない…と思うけど、俺にはなんだかんだ慎太郎が必要だしさ!」
思わずそのままギュッと抱きしめた。

本当に…そうなれば幸せだな…








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