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枇杷の木
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昔、晴と神戸の庭で鬼ごっこをしていた。
鬼が晴。
どこに隠れようか迷っていたら庭師さんが手招きしてここはどうかと教えてくれた。
門から玄関まで両脇に庭園が広がっていて、その脇に大きな枇杷の木が植えられていた。
それまで、そこに木が植えられているなんて気づきもせず、ちょっと不思議な感覚で見上げていた。
その影に隠れると見えないよ、と言われてそこにちょこんと座り、晴が見つけてくれるのを待っていた。
秋が訪れたすぐぐらいの季節だったので、吹く風が適度に気持ちよく、僕はうつらうつらしてしまい、そのまま寝てしまったんだよね。
どれくらいたったのか、気がついた時周りは真っ暗だった。
そして心配した顔の晴に抱きしめられていた。
あれ?
晴に見つかっちゃったね~
なんて呑気に言ってるとめちゃくちゃ怒られてびっくりしちゃった。
あれから5時間も経っていたらしく、よく見たら晴だけじゃなく、ばあちゃんや山科さん、後使用人さんも何人かいた。
僕にこの場所を教えてくれた庭師さんは昼まで仕事だったらしく、僕の鬼ごっこは見つけられないまま慌てふためいた晴によってみんなを巻き込む大事件に発展してしまった。
呑気だったのは僕だけみたい。
でもとても気持ちが良くて、心地よかったんだよね!
目が覚めてなんでそんな事を思い出していたんだろうと起き上がったら横にいる晴がまさかのあの時と同じ顔で僕をのぞいていたからだと気がついた。
「なかなか起きなくて心配した」
晴、僕、あの時と同じで心地よかったよ。
「ごめんね、あまりにも気持ちよくてぐっすり寝ちゃってたみたい」
「…なんかあの時みたいだ、心配かけんな、って俺が原因か」
「そうだよ、そーっ。晴が原因なんだから僕を労りなさい!」
なんて掛け合いができてるそんな状況がなんだか嬉しくて
「晴、大好き」
って言っちゃってた。
まぁ、それを言ってもいつもと同じで答えは返ってこないんだけど、
「うん」と
少しの間がなんだかむず痒かった。
こんな時の沈黙は僕の心に悪いので、打開策!
「今何時?僕お腹空いちゃった」
悲しくなるのは厳禁なので、とても空いてるぞー、って顔をしてみた!
その時ダイレクトにお腹もぐーぐーなったのでそれはそれでナイスタイミングだ!
ソファの前に用意してある、とそこ指し示している場所を見ればサンドイッチとスープが置いてあった。
やったぁ!
そう言ってベットを降りようとして、身体のあちこちが痛くて動けないことにやっと気づいた。
うわぁ、これってあれだよね、動けなくなるアレ!
嬉しいような恥ずかしいような。
なので両手を広げて連れてけ、と晴に指示する事にしてソファまで連れて行ってもらった。
今日はとことん甘えてやる!
そうだよね、たまにはいいよね!
サンドイッチをモグモグ食べて僕の口はリスみたいになっていた。
「晴は食べないの?」
「俺はいい、色んな意味で胸いっぱいだから」
ふーん。
そーなんだ。
気にしたらダメ。
結局何をしてもスッキリなんて出来ないんだ。
明るくしようとしても、晴の一言でいつも気持ちが持ってかれちゃう。
後一口で食べ終わる。
スープを飲み終えて最後の一口を頬張りながら晴を見て
「晴をくれてありがとね!僕幸せだ!」
独り言だよー、気にしなくていいからね!
でもなんだかもうここに居たくない。
だから、
「晴。家まで送って、ばあちゃん達が心配するから」
逃げる事にする!
僕の部屋に帰りたい。
晴は何も言わず家まで送ってくれた。
それから半月後、ラット状態の晴を僕は無理矢理受け入れる事になったんだ。
鬼が晴。
どこに隠れようか迷っていたら庭師さんが手招きしてここはどうかと教えてくれた。
門から玄関まで両脇に庭園が広がっていて、その脇に大きな枇杷の木が植えられていた。
それまで、そこに木が植えられているなんて気づきもせず、ちょっと不思議な感覚で見上げていた。
その影に隠れると見えないよ、と言われてそこにちょこんと座り、晴が見つけてくれるのを待っていた。
秋が訪れたすぐぐらいの季節だったので、吹く風が適度に気持ちよく、僕はうつらうつらしてしまい、そのまま寝てしまったんだよね。
どれくらいたったのか、気がついた時周りは真っ暗だった。
そして心配した顔の晴に抱きしめられていた。
あれ?
晴に見つかっちゃったね~
なんて呑気に言ってるとめちゃくちゃ怒られてびっくりしちゃった。
あれから5時間も経っていたらしく、よく見たら晴だけじゃなく、ばあちゃんや山科さん、後使用人さんも何人かいた。
僕にこの場所を教えてくれた庭師さんは昼まで仕事だったらしく、僕の鬼ごっこは見つけられないまま慌てふためいた晴によってみんなを巻き込む大事件に発展してしまった。
呑気だったのは僕だけみたい。
でもとても気持ちが良くて、心地よかったんだよね!
目が覚めてなんでそんな事を思い出していたんだろうと起き上がったら横にいる晴がまさかのあの時と同じ顔で僕をのぞいていたからだと気がついた。
「なかなか起きなくて心配した」
晴、僕、あの時と同じで心地よかったよ。
「ごめんね、あまりにも気持ちよくてぐっすり寝ちゃってたみたい」
「…なんかあの時みたいだ、心配かけんな、って俺が原因か」
「そうだよ、そーっ。晴が原因なんだから僕を労りなさい!」
なんて掛け合いができてるそんな状況がなんだか嬉しくて
「晴、大好き」
って言っちゃってた。
まぁ、それを言ってもいつもと同じで答えは返ってこないんだけど、
「うん」と
少しの間がなんだかむず痒かった。
こんな時の沈黙は僕の心に悪いので、打開策!
「今何時?僕お腹空いちゃった」
悲しくなるのは厳禁なので、とても空いてるぞー、って顔をしてみた!
その時ダイレクトにお腹もぐーぐーなったのでそれはそれでナイスタイミングだ!
ソファの前に用意してある、とそこ指し示している場所を見ればサンドイッチとスープが置いてあった。
やったぁ!
そう言ってベットを降りようとして、身体のあちこちが痛くて動けないことにやっと気づいた。
うわぁ、これってあれだよね、動けなくなるアレ!
嬉しいような恥ずかしいような。
なので両手を広げて連れてけ、と晴に指示する事にしてソファまで連れて行ってもらった。
今日はとことん甘えてやる!
そうだよね、たまにはいいよね!
サンドイッチをモグモグ食べて僕の口はリスみたいになっていた。
「晴は食べないの?」
「俺はいい、色んな意味で胸いっぱいだから」
ふーん。
そーなんだ。
気にしたらダメ。
結局何をしてもスッキリなんて出来ないんだ。
明るくしようとしても、晴の一言でいつも気持ちが持ってかれちゃう。
後一口で食べ終わる。
スープを飲み終えて最後の一口を頬張りながら晴を見て
「晴をくれてありがとね!僕幸せだ!」
独り言だよー、気にしなくていいからね!
でもなんだかもうここに居たくない。
だから、
「晴。家まで送って、ばあちゃん達が心配するから」
逃げる事にする!
僕の部屋に帰りたい。
晴は何も言わず家まで送ってくれた。
それから半月後、ラット状態の晴を僕は無理矢理受け入れる事になったんだ。
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