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大嫌いな同級生
いち
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エストは自らが優秀だと自負していた。地元で類を見ない成績を残し、最年少で神学校へ入学し、そこでも並ぶもののない成績を残した。
彼はこれからも自らが、出世の道を突き進んでいくのだと信じていた。
##
ガンガン、ガンガンと扉を叩く。専用の箒で殴るようにしているため、拳は別に痛くない。近隣の部屋の奴らが、たまに何だ何だという顔をして見てくるが……もう半年も続いていることだ。いい加減慣れろ、とエストは思う。
最も、慣れたくないのはエスト自身も一緒だが。
辛抱堪らず、エストはとうとう叫ぶ。
「……おいっ、いい加減起きろ!今日という今日は、遅れたら置いていくからな!」
すると、十数秒間ほど経って、目の前の扉がガチャリと開く。
「……………あと十分………」
「そんな時間は無い、さっさと支度しろ!」
半分寝たような顔で出てきたダル・エドバイダに、エストは怒鳴りつける。その勢いのまま部屋へ押し入って着替えの制服を投げつけ、ノロノロ着替えるダルをイライラと横目に見ながら、とっちらかった机の上から必要な教科書類を見付けボロボロの鞄に詰めていく。
「エスト、ん」
やっと着替えたか、と振り返るとダルはシワシワのシャツをボタンをずらしたまま着ていた。そして、手にはまるで結べというように差し出されたネクタイが……。
「…………っったく! さっさと貸せ!」
「はい」
差し出されたネクタイを受け取り、ついでにボタンも直して、二人分の鞄を抱えてエストは走る。
未だに眠そうに目を擦るダルも仕方なさそうに走って着いてくる。遅い。エストは少し戻ってダルの手を引っ張った。
「遅れたらおまえのせいだからな!」
「手、いたい」
「なら急げ!」
この男は教会に同時入庁した同期。そして厄介なことに、エストの相棒でもあり、それまで敵なしだったエストの鼻っ柱を折ったライバルでもあった。
彼はこれからも自らが、出世の道を突き進んでいくのだと信じていた。
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ガンガン、ガンガンと扉を叩く。専用の箒で殴るようにしているため、拳は別に痛くない。近隣の部屋の奴らが、たまに何だ何だという顔をして見てくるが……もう半年も続いていることだ。いい加減慣れろ、とエストは思う。
最も、慣れたくないのはエスト自身も一緒だが。
辛抱堪らず、エストはとうとう叫ぶ。
「……おいっ、いい加減起きろ!今日という今日は、遅れたら置いていくからな!」
すると、十数秒間ほど経って、目の前の扉がガチャリと開く。
「……………あと十分………」
「そんな時間は無い、さっさと支度しろ!」
半分寝たような顔で出てきたダル・エドバイダに、エストは怒鳴りつける。その勢いのまま部屋へ押し入って着替えの制服を投げつけ、ノロノロ着替えるダルをイライラと横目に見ながら、とっちらかった机の上から必要な教科書類を見付けボロボロの鞄に詰めていく。
「エスト、ん」
やっと着替えたか、と振り返るとダルはシワシワのシャツをボタンをずらしたまま着ていた。そして、手にはまるで結べというように差し出されたネクタイが……。
「…………っったく! さっさと貸せ!」
「はい」
差し出されたネクタイを受け取り、ついでにボタンも直して、二人分の鞄を抱えてエストは走る。
未だに眠そうに目を擦るダルも仕方なさそうに走って着いてくる。遅い。エストは少し戻ってダルの手を引っ張った。
「遅れたらおまえのせいだからな!」
「手、いたい」
「なら急げ!」
この男は教会に同時入庁した同期。そして厄介なことに、エストの相棒でもあり、それまで敵なしだったエストの鼻っ柱を折ったライバルでもあった。
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