ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。

１章

第１話 え、なに？

この世界には二種類の人間がいる。

「シエル」

それは即ち貴族と、貴族じゃない人間である。

「次の魔道実習の時間、二人組のペアでやるんだって。もしどうしてもっていうなら、僕が組んであげてもいいけど？」

目の前で整ったアーモンド型の目で、傲慢に俺を見つめる彼は、前者。

「いや、いいです」

そして、俺は圧倒的多数である、後者だ。


♯♯


「全く、あり得ないんだけど！　僕がわざわざ声をかけてあげたのに、断るなんてさ！」
「いや、それを言うなら。俺だって断った筈なのに結局ペア組まされてるの、普通にあり得ないんですが」
「はあ？　平民が、僕の命令を断れるわけないでしょ？」

　ふん、と当たり前のように理不尽なことを言うこの男。名門貴族の公子さまなので、確かにこの学園で逆らえる人間は教師を含めてもいない。俺ははあっ、とため息をついた。

「………というかなんで、そんなに俺と組みたいんですか。わざわざ、命令までして？」

　不満を隠しきれず、聞いてしまった。ばっ、と周りの人間がこちらを見た。え、なに？　俺？

「ーーー勘違いするなよ！　優秀な僕と、魔力が釣り合うのがおまえだけだから、仕方なく！　そう、仕方なく組んでやってるんだ！！」

　と、アステオはそう言い捨てて逃げ去った。心なしか、顔が真っ赤に染め上がっていたような………。

　はあぁ、と俺はまた溜め息をつく。
　こんなことなら、あのとき関わらなきゃよかったのかなぁ。