14 / 100
1章
14 恥ずかしいのは気持ちがいい
しおりを挟む
「いい子だね。……それで、この染みはなにかな?」
リアンは優しい口調でとんでもないことを聞いてくる。そんなの、答えられるわけがない。
「……あ、あの、え……っその……」
「言えるよね? 『言って』」
にこやかな笑みを浮かべて、目の前の美しい男は甘く鋭い声で命令する。
欠片残っていた羞恥心が広がって、全身が恥ずかしさで熱くなった。だが、その命令は身体中に染みわたるように甘美に響く。
答えたくない。
(答えなくては)
「せ、せ、……」
言葉につまっているそばから、股間が再び元気を取り戻して、ズボンの前を押し上げる。
(あぁ……)
この身体は一体どうしてしまったのか。健介にはわからない。馬鹿みたいに反応するそこに熱がこもって、一層身体を熱くする。
ただただ、健介は初めて浴びるDomからの命令に溺れ、とろけるような感覚に脳が侵されていた。
恥ずかしい……のは、気持ちがいい。
「き、気持ちがよくて、しゃ、しゃ、射精して、しまいました」
愚かしくも素直に現状を報告した。
「よく言えたね。えらいえらい。『いいこ』だ」
そう言って、リアンは健介の頭や頬を両手で何度も優しくなでる。
「気持ちよかったのか。嬉しいな」
輝くような美しい笑みを浮かべて、リアンは健介を見つめる。正面に立ったリアンは両手で健介の頬を包むと、身体をかがめる。見上げる健介の額に小さくキスをした。
神からの祝福のように、健介の身体を喜びが駆け抜ける。熱を持った股間がずくりとうずく。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
Subの自分が言われた命令にきちんと答えたことで、褒められる。それと同時にSubが命令を守れたことをDomが喜んでいる。
それだけで、健介は天にも昇る気持ちになった。
リアンは次にどんな命令をくれるのだろうか。期待で胸を高まらせ、濡れたような黒い瞳で薄青と榛を見あげる。
リアンは視線をすっと外すと、立ち上がり、健介の両脇に手を差し込む。
何をされるのかと思った瞬間、ぐっと持ち上げられた。
(お、わっ)
信じられない。ひょろがりである認識はあるが、これでも健介は一般的な日本人男性なので、それなりの大きさと重量がある。それなのに、膝たちの健介を踏ん張りもせず、すっと抱き上げたのだ。反射的にリアンの腰に足を巻き付けてしまう。
「うん。いいこだ」
満足気に呟いて、健介の尻に片腕を回すと、そのまま歩きだす。
健介を抱き上げたその腕は太く逞しく、股間が当たる腹筋は硬く引き締まっている。
歩くたびに上下に揺れる振動が腹筋に密着した股間を刺激する。
「ん、ぅ」
思わず漏れた健介の呻き声には甘い響きが乗っていた。無意識のうちに自ら腰をリアンにこすりつけたくなり、はっとする。
「可愛いね」
聞き間違いだろうか。
冴えないモブ顔のおっさんである自覚が健介にはある。
どんなに間違っても可愛いと形容されることは、万が一にもない。
健介は自分の自己肯定感が低いことは自覚している。だが、自己肯定感の高低は関係なく、言われるはずがない言葉であることは理解できる。
何故か知らないが一人勝手に盛り上がって、股間を滾らせているおっさんだ。あまつさえ、滾らせるだけならまだしも、すでに暴発しているのだ。
キモいと言われることはあれど、「可愛い」にはならない。
うん。そう。聞き間違い。
一人でせわしく納得する。
健介が自問自答している間に目的の場所に着いたのか、「おろすね」と声をかけて、降ろされた。
腰に巻き付けた足を外して、座らされたのはベッドの上で……。
これは……。これから一体何をするのだろう。
惚けて見上げる健介をリアンが眺めながら、「『脱いで』」と命令した。
(え?)
聞き間違いだろうか。
いま、「脱げ」と言われた。
この貧相な身体と勃起した下半身を美しく逞しいこの男の前で晒せ……と?
どんな拷問かよ、と健介は心の中で愚痴る。
嫌だ。
でも、褒められたい。
でも、きっとがっかりされる。
でも、言われた通りにしたい。
でも、でも、でも……。頭の中でぐるぐると悩む。
「ほら、できるよね?」
リアンが追い打ちをかけるように健介を急き立てた。
健介は観念し、ままよとズボンに手をかけて、一気に引き下ろす。
気づけば勢い余って、下着まで一緒におろしていた。
「お、わっ」
慌てて、下着をあげようとすると、「『止まって』」とリアンの鋭い声が響いた。
パンツをあげたいのに、がちっと固まったように身体が動かない。
自分の意思とは関係なく、身体を動かすことは出来ない。支配されているという感覚だった。
中腰のまま、中途半端な位置に持ち上げたパンツ。客観的に見たら、かなり情けない恰好だった。
「『いいこ』。そのまま、上も全部『脱いで』」
健介は持っていたパンツを離す。ぼろぼろの上着に手をかけてめくりあげて、頭から引き抜き、床に投げ捨てる。するとあばらの浮いた貧相な身体が眼に入る。それを気にしないように目の前を真っ直ぐに見つめ、すっぽんぽんのままベッドとリアンの間に立ち、次の命令を待った。
「『いいこ』だ。じゃあ、そのままベッドに『仰向けになって』」
リアンは優しい口調でとんでもないことを聞いてくる。そんなの、答えられるわけがない。
「……あ、あの、え……っその……」
「言えるよね? 『言って』」
にこやかな笑みを浮かべて、目の前の美しい男は甘く鋭い声で命令する。
欠片残っていた羞恥心が広がって、全身が恥ずかしさで熱くなった。だが、その命令は身体中に染みわたるように甘美に響く。
答えたくない。
(答えなくては)
「せ、せ、……」
言葉につまっているそばから、股間が再び元気を取り戻して、ズボンの前を押し上げる。
(あぁ……)
この身体は一体どうしてしまったのか。健介にはわからない。馬鹿みたいに反応するそこに熱がこもって、一層身体を熱くする。
ただただ、健介は初めて浴びるDomからの命令に溺れ、とろけるような感覚に脳が侵されていた。
恥ずかしい……のは、気持ちがいい。
「き、気持ちがよくて、しゃ、しゃ、射精して、しまいました」
愚かしくも素直に現状を報告した。
「よく言えたね。えらいえらい。『いいこ』だ」
そう言って、リアンは健介の頭や頬を両手で何度も優しくなでる。
「気持ちよかったのか。嬉しいな」
輝くような美しい笑みを浮かべて、リアンは健介を見つめる。正面に立ったリアンは両手で健介の頬を包むと、身体をかがめる。見上げる健介の額に小さくキスをした。
神からの祝福のように、健介の身体を喜びが駆け抜ける。熱を持った股間がずくりとうずく。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
Subの自分が言われた命令にきちんと答えたことで、褒められる。それと同時にSubが命令を守れたことをDomが喜んでいる。
それだけで、健介は天にも昇る気持ちになった。
リアンは次にどんな命令をくれるのだろうか。期待で胸を高まらせ、濡れたような黒い瞳で薄青と榛を見あげる。
リアンは視線をすっと外すと、立ち上がり、健介の両脇に手を差し込む。
何をされるのかと思った瞬間、ぐっと持ち上げられた。
(お、わっ)
信じられない。ひょろがりである認識はあるが、これでも健介は一般的な日本人男性なので、それなりの大きさと重量がある。それなのに、膝たちの健介を踏ん張りもせず、すっと抱き上げたのだ。反射的にリアンの腰に足を巻き付けてしまう。
「うん。いいこだ」
満足気に呟いて、健介の尻に片腕を回すと、そのまま歩きだす。
健介を抱き上げたその腕は太く逞しく、股間が当たる腹筋は硬く引き締まっている。
歩くたびに上下に揺れる振動が腹筋に密着した股間を刺激する。
「ん、ぅ」
思わず漏れた健介の呻き声には甘い響きが乗っていた。無意識のうちに自ら腰をリアンにこすりつけたくなり、はっとする。
「可愛いね」
聞き間違いだろうか。
冴えないモブ顔のおっさんである自覚が健介にはある。
どんなに間違っても可愛いと形容されることは、万が一にもない。
健介は自分の自己肯定感が低いことは自覚している。だが、自己肯定感の高低は関係なく、言われるはずがない言葉であることは理解できる。
何故か知らないが一人勝手に盛り上がって、股間を滾らせているおっさんだ。あまつさえ、滾らせるだけならまだしも、すでに暴発しているのだ。
キモいと言われることはあれど、「可愛い」にはならない。
うん。そう。聞き間違い。
一人でせわしく納得する。
健介が自問自答している間に目的の場所に着いたのか、「おろすね」と声をかけて、降ろされた。
腰に巻き付けた足を外して、座らされたのはベッドの上で……。
これは……。これから一体何をするのだろう。
惚けて見上げる健介をリアンが眺めながら、「『脱いで』」と命令した。
(え?)
聞き間違いだろうか。
いま、「脱げ」と言われた。
この貧相な身体と勃起した下半身を美しく逞しいこの男の前で晒せ……と?
どんな拷問かよ、と健介は心の中で愚痴る。
嫌だ。
でも、褒められたい。
でも、きっとがっかりされる。
でも、言われた通りにしたい。
でも、でも、でも……。頭の中でぐるぐると悩む。
「ほら、できるよね?」
リアンが追い打ちをかけるように健介を急き立てた。
健介は観念し、ままよとズボンに手をかけて、一気に引き下ろす。
気づけば勢い余って、下着まで一緒におろしていた。
「お、わっ」
慌てて、下着をあげようとすると、「『止まって』」とリアンの鋭い声が響いた。
パンツをあげたいのに、がちっと固まったように身体が動かない。
自分の意思とは関係なく、身体を動かすことは出来ない。支配されているという感覚だった。
中腰のまま、中途半端な位置に持ち上げたパンツ。客観的に見たら、かなり情けない恰好だった。
「『いいこ』。そのまま、上も全部『脱いで』」
健介は持っていたパンツを離す。ぼろぼろの上着に手をかけてめくりあげて、頭から引き抜き、床に投げ捨てる。するとあばらの浮いた貧相な身体が眼に入る。それを気にしないように目の前を真っ直ぐに見つめ、すっぽんぽんのままベッドとリアンの間に立ち、次の命令を待った。
「『いいこ』だ。じゃあ、そのままベッドに『仰向けになって』」
100
お気に入りに追加
352
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

影の薄い悪役に転生してしまった僕と大食らい竜公爵様
佐藤 あまり
BL
猫を助けて事故にあい、好きな小説の過去編に出てくる、罪を着せられ処刑される悪役に転生してしまった琉依。
実は猫は神様で、神が死に介入したことで、魂が消えかけていた。
そして急な転生によって前世の事故の状態を一部引き継いでしまったそうで……3日に1度吐血って、本当ですか神様っ
さらには琉依の言動から周りはある死に至る呪いにかかっていると思い━━
前途多難な異世界生活が幕をあける!
※竜公爵とありますが、顔が竜とかそういう感じては無いです。人型です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる