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15章
3 意外な展開
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車をホテルのパーキングスタッフに預けて、専用のエレベーターで最上階の部屋へと上がる。エレベーターを降りたフロアは一部屋だけ、ここを訪れる人は限られている。鼻をひくつかせて、何気なく空気をくんと吸うと、今日もまたジェイムズの匂いがはっきりと残っていた。
(今日も……か)
リアムは先週でシロウの人狼勉強会は終わったものと思っていた。しかし、この三日間もジェイムズの匂いは薄れることなく、毎晩廊下に(何なら部屋の中にも)残っている。どうやら、今週も引き続きシロウの元を訪れているようだ。
「シロウを助けてくれた恩人」ということはわかってはいても、部屋で二人きりで過ごしていることを想像すると、少しだけ胸がもやっとする。
カードキーで解錠して扉を開ける。開けた先の真っ暗な部屋の中から、シロウの甘い香りがふわりと鼻を掠める。それだけで、リアムのささくれだった心は少しだけ癒された。
それと同時にリアムの股間が熱を帯びる。触れ合いもなく、寝顔を見るだけの日々に滾ってはそのまま放置されるリアムの下半身は、わかってはいるのに反応せずにはいられないようだ。
(風呂に入ってさっさと寝よう……)
シロウの部屋の前を通り過ぎて、その静かな部屋の気配に、小さくため息をつく。
今日も寝顔だけでも確かめにいこうと思う。
首元のネクタイを緩めながら暗い廊下を歩く。突き当たりにある自室の扉をあけたリアムはそこに思いもよらない人がいたことに驚いた。
扉を開けると真っ暗なはずの寝室がほのかに明るい。
目の前の大きなベッドは今日もいつもと変わらず綺麗に整えられている。一点、いつもと違うのは、その端にシロウがちょこんと座っていることだった。
「な……んで……」と声に出した後に、慌てて慌てて「何かあった?」と尋ねる。
夕方メッセージを送った時には普通だった。
わざわざ寝ずに待ってまで、何か伝えたいことが……この数時間の間にあったのではないかと、不安が頭をもたげる。
「いや、あの……。何もないです。何も」
シロウも慌てたようにベッドから立ち上がり、胸の前に上げた両手を小さく振る。
その様子にリアムはあからさまにほっとして、肩に入れていた力を抜いた。それと同時に「ならなぜ?」という疑問が頭に浮かぶ。
リアムは足早にベッドに近づいて、シロウの存在を確かめようとした。引き留めないと、このままシロウが部屋を出ていってしまうのではないかと心許なかった。
「ただいま」
優しく声をかけてシロウを見つめる。
「おかえりなさい」
少しだけ眠そうな声で小さく言うシロウの頬に手を添える。
「もう寝ているかと思ったよ」
「あの……。会えないな……って思って待っているだけじゃなくて、自分が起きて待っていれば良いんだって……そしたら会えるかなって」
今までは、押しているリアムに半ば流されるように受け身だったシロウが、自分から会いたいと思い、それを行動に移してくれた。その小さな変化がリアムには存外に嬉しかった。
ベッドわきに立つシロウを思わず抱きしめる。シロウもリアムの背中に腕を回し、再び「おかえりなさい」と小さな声でつぶやいた。
部屋に漂っていた甘い桜の香りがひと際強くなる。リアムの目が狼のそれに変化し、犬歯がぬっと伸びる。
先ほどからゆるく立ち上がっていた股間はいまやがちがちに硬くなっていた。
部屋の中は欲情と勃起の匂いが漂っている。
「シロウ、もう少し起きていられる?シャワーを急いで浴びてくる。今日は一緒に寝よう」
もし、シャワーからあがった時にシロウが寝てしまっていても構わなかった。ただ、今日はシロウを抱きしめて眠ることが出来る、それだけでリアムの疲れは吹っ飛んでいくことは間違いなかった。
(今日も……か)
リアムは先週でシロウの人狼勉強会は終わったものと思っていた。しかし、この三日間もジェイムズの匂いは薄れることなく、毎晩廊下に(何なら部屋の中にも)残っている。どうやら、今週も引き続きシロウの元を訪れているようだ。
「シロウを助けてくれた恩人」ということはわかってはいても、部屋で二人きりで過ごしていることを想像すると、少しだけ胸がもやっとする。
カードキーで解錠して扉を開ける。開けた先の真っ暗な部屋の中から、シロウの甘い香りがふわりと鼻を掠める。それだけで、リアムのささくれだった心は少しだけ癒された。
それと同時にリアムの股間が熱を帯びる。触れ合いもなく、寝顔を見るだけの日々に滾ってはそのまま放置されるリアムの下半身は、わかってはいるのに反応せずにはいられないようだ。
(風呂に入ってさっさと寝よう……)
シロウの部屋の前を通り過ぎて、その静かな部屋の気配に、小さくため息をつく。
今日も寝顔だけでも確かめにいこうと思う。
首元のネクタイを緩めながら暗い廊下を歩く。突き当たりにある自室の扉をあけたリアムはそこに思いもよらない人がいたことに驚いた。
扉を開けると真っ暗なはずの寝室がほのかに明るい。
目の前の大きなベッドは今日もいつもと変わらず綺麗に整えられている。一点、いつもと違うのは、その端にシロウがちょこんと座っていることだった。
「な……んで……」と声に出した後に、慌てて慌てて「何かあった?」と尋ねる。
夕方メッセージを送った時には普通だった。
わざわざ寝ずに待ってまで、何か伝えたいことが……この数時間の間にあったのではないかと、不安が頭をもたげる。
「いや、あの……。何もないです。何も」
シロウも慌てたようにベッドから立ち上がり、胸の前に上げた両手を小さく振る。
その様子にリアムはあからさまにほっとして、肩に入れていた力を抜いた。それと同時に「ならなぜ?」という疑問が頭に浮かぶ。
リアムは足早にベッドに近づいて、シロウの存在を確かめようとした。引き留めないと、このままシロウが部屋を出ていってしまうのではないかと心許なかった。
「ただいま」
優しく声をかけてシロウを見つめる。
「おかえりなさい」
少しだけ眠そうな声で小さく言うシロウの頬に手を添える。
「もう寝ているかと思ったよ」
「あの……。会えないな……って思って待っているだけじゃなくて、自分が起きて待っていれば良いんだって……そしたら会えるかなって」
今までは、押しているリアムに半ば流されるように受け身だったシロウが、自分から会いたいと思い、それを行動に移してくれた。その小さな変化がリアムには存外に嬉しかった。
ベッドわきに立つシロウを思わず抱きしめる。シロウもリアムの背中に腕を回し、再び「おかえりなさい」と小さな声でつぶやいた。
部屋に漂っていた甘い桜の香りがひと際強くなる。リアムの目が狼のそれに変化し、犬歯がぬっと伸びる。
先ほどからゆるく立ち上がっていた股間はいまやがちがちに硬くなっていた。
部屋の中は欲情と勃起の匂いが漂っている。
「シロウ、もう少し起きていられる?シャワーを急いで浴びてくる。今日は一緒に寝よう」
もし、シャワーからあがった時にシロウが寝てしまっていても構わなかった。ただ、今日はシロウを抱きしめて眠ることが出来る、それだけでリアムの疲れは吹っ飛んでいくことは間違いなかった。
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