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11章
1どうしてあなたが
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「櫻子から誘われた?金曜に櫻子と食事をしたんだろう?その時?俺、シロウが今日来るなんて、聞いてなかったよ!」
返事をする間も無く、喋り続ける目の前の姉の婚約者をシロウは穴が開きそうなほど見つめた。驚きに何も答えられずにいるシロウに構わず話を続けている。
この高級ホテルのような……。家と呼ぶにはいささか大きすぎる屋敷のシャンデリアが煌めく広場で、いるはずの無い人が無邪気に自分に話しかけ続けている。
そんなノエルを前にシロウは混乱を極めていた。
(なんで?なんでこの人がここにいるんだ!)
この場所になぜいるのかはわからないが、サクラコと会っている時のそのままに気のいいお兄さんな雰囲気ではあるが、この場に不釣り合いな自分とは違って、ノエルはごく自然にこの場に馴染んでいる。
そもそも、リアムは群れの仲間や親族が集まる、ごく内輪の集まりだと言っていたのに……。
ノエルもまさか、群れの仲間──人狼だというのか。
周りを見るとはなからごく内輪と呼ぶ人数がそもそも自分とは桁違いなことを思い知る。この付近にいる人だけでも10人以上はいるこの状況で、エントランスがパーティの会場でない限り、この人たちが来客の全てではない。
開け放たれた屋敷の入口からはまばらだがまだ人が入って来ているようでもある。いったいどれ程の集まりなのか、シロウにはもう想像もつかなかった。
「どうやってここまで来たの?大変だっただろ?田舎だから」
シロウの思案をよそに、何事でもないかのような質問をするノエルになんと答えたら良いかわからず、シロウは視線を泳がせあいまいに頷く。
「櫻子にはもう会った?女の人はさ、色々準備が必要じゃない」
喋り続けていた義理の兄となる人物が何かに気づき、シロウの後ろに手を上げて、声をかけた。
「おい、リアム。こっちだ」
(リアムさん!?)
二人は知り合いなのか。
後ろを振り向くと必死の形相のリアムがこちらに向かって歩いて来る。
シロウとノエルのところまでまだリアムが到着するより前に、ノエルは大声で「リアム、紹介するよ。こちらは大神獅郎。俺の婚約者の弟で、俺の将来の弟だよ」とにこやかに紹介した。
シロウには全く事情がわからなかった。
ようやく隣に着いたリアムも困惑の表情を浮かべている。そんな二人をよそに、ノエルが今度はシロウにリアムを紹介した。
「シロウ。こっちは俺の従兄だ。いいやつだけど遊び人だからあんまり近寄っちゃダメだよ」
笑顔でそう言うノエルに、シロウはどのような表情をするべきかわからなかった。
近寄るもなにも、すでにそれ以上の関係である。
シロウの頭は恐慌をきたしていた。
(いとこ?従兄だって!?)
あまりにも似ていない。確かに纏う雰囲気は多少……本当に多少は似ているかもしれない。
だが、リアムの金髪碧眼のいかにも白人な顔立ちに対して、ノエルは黒髪、黒目の日系人だ。
姉から最初に紹介されたときも、少々彫りの深い日本人だと思ったくらいなのだ。
それが従兄弟だという。
どういうことか全く分からない。リアムはやはりシロウを以前から知っていたのか。
返事をする間も無く、喋り続ける目の前の姉の婚約者をシロウは穴が開きそうなほど見つめた。驚きに何も答えられずにいるシロウに構わず話を続けている。
この高級ホテルのような……。家と呼ぶにはいささか大きすぎる屋敷のシャンデリアが煌めく広場で、いるはずの無い人が無邪気に自分に話しかけ続けている。
そんなノエルを前にシロウは混乱を極めていた。
(なんで?なんでこの人がここにいるんだ!)
この場所になぜいるのかはわからないが、サクラコと会っている時のそのままに気のいいお兄さんな雰囲気ではあるが、この場に不釣り合いな自分とは違って、ノエルはごく自然にこの場に馴染んでいる。
そもそも、リアムは群れの仲間や親族が集まる、ごく内輪の集まりだと言っていたのに……。
ノエルもまさか、群れの仲間──人狼だというのか。
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開け放たれた屋敷の入口からはまばらだがまだ人が入って来ているようでもある。いったいどれ程の集まりなのか、シロウにはもう想像もつかなかった。
「どうやってここまで来たの?大変だっただろ?田舎だから」
シロウの思案をよそに、何事でもないかのような質問をするノエルになんと答えたら良いかわからず、シロウは視線を泳がせあいまいに頷く。
「櫻子にはもう会った?女の人はさ、色々準備が必要じゃない」
喋り続けていた義理の兄となる人物が何かに気づき、シロウの後ろに手を上げて、声をかけた。
「おい、リアム。こっちだ」
(リアムさん!?)
二人は知り合いなのか。
後ろを振り向くと必死の形相のリアムがこちらに向かって歩いて来る。
シロウとノエルのところまでまだリアムが到着するより前に、ノエルは大声で「リアム、紹介するよ。こちらは大神獅郎。俺の婚約者の弟で、俺の将来の弟だよ」とにこやかに紹介した。
シロウには全く事情がわからなかった。
ようやく隣に着いたリアムも困惑の表情を浮かべている。そんな二人をよそに、ノエルが今度はシロウにリアムを紹介した。
「シロウ。こっちは俺の従兄だ。いいやつだけど遊び人だからあんまり近寄っちゃダメだよ」
笑顔でそう言うノエルに、シロウはどのような表情をするべきかわからなかった。
近寄るもなにも、すでにそれ以上の関係である。
シロウの頭は恐慌をきたしていた。
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あまりにも似ていない。確かに纏う雰囲気は多少……本当に多少は似ているかもしれない。
だが、リアムの金髪碧眼のいかにも白人な顔立ちに対して、ノエルは黒髪、黒目の日系人だ。
姉から最初に紹介されたときも、少々彫りの深い日本人だと思ったくらいなのだ。
それが従兄弟だという。
どういうことか全く分からない。リアムはやはりシロウを以前から知っていたのか。
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