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6章
5 疑惑1
しおりを挟む「電話してきた時にはお前は『メイト』だとしか言っていなかった。翌日に電話を再度かけてきた時に、『人狼に目の前で変化した』と言っていた。」
リアムは「いま、そんなことが重要か?」とあからさまに苛立ちを表す。
レナートは相変わらず、何かを考えているという様子でいた。
リアムは落ち着かなさげに手に中のカップをもて遊ぶ。入れてもらったコーヒーは既にほぼ飲み終えており、カップの底が見えていた。
「どういうことだ?」
いっこうに思考の彼方から戻らないレナートを呼び戻すために声をかける。
シロウオーガミはどのタイミングで人狼になったのか──。
レナートはシロウが何に気を取られたのかがわかった気がした。
コミュニティやメイトの話以外にした人狼の話──後天的人狼について。
思考の世界から戻った様子のレナートに射るような目で真っ直ぐ見つめられ、リアムは何がなんだかわからなくなる。
「リアム、お前、オーガミ君を人狼にしたのか?」
リアムは言われた意味がわからなかった。
(俺がシロウを人狼に?)
「どういうことだ?」
あまりに唐突かつ、意味がわからない質問にど直球に聞き返す。
「私が初めて会った時、オーガミ君は人狼では無かった。では、いつ人狼になったんだ?」
やっとリアムにもレナートの質問の意味が理解出来た。
まさに言葉の通り、レナートはリアムがシロウの意志とは関係なく、勝手に人狼に変えたと考えているようだ。
「違う!俺はシロウに何もしていない!!連れて帰ってから薄かった人狼の匂いがどんどん濃くなっていって……まさに目の前で人狼に変化していくようだった。」
慌てて、誤解を解こうと弁明する。
しかし、今の説明では全く答えになっていなかった。後天的人狼は血を分け与えられてから、段々と人狼に肉体が変化していくのだから。
いやいやとリアムは勢いよくかぶりをふり、再度説明を行おうとした。
だが、どう弁明したところで、リアムがシロウを人狼にしたのではないと説明も証明もできないことに気づく。
レナートにも、リアムがシロウを人狼にしたのかそうではないのか判断は出来なかった。
人狼では無かったシロウが次に会った時に人狼になっていたのならば、その間に何らかの変化が発生する事象があったはずなのだ。
それは状況だけでいうなら、リアムが絡んでいないという方が無理があるのである。
「まぁ、仮にお前がオーガミ君を人狼にしていたとして、その理由はメイトの絆をわからせるためだろうし……。」
「だから、俺はしてないって!」
兄に叱られる弟のような様相に、不本意だと言わんばかりのリアムを他所に、レナートにはシロウが突然目の前から消えた理由がおおまかに理解できた。
「お前に証明する方法がないように、オーガミ君は私の話を聞いて、自分は後天的人狼で、お前に人狼にさせられたと思ったに違いない。そりゃ、自分の体を勝手に変えるような奴とは一緒にいたくないよな。」
そう言ってレナートは同情の視線をおくる。
絶望。
レナートの説明を聞き、シロウにそんな勘違いをされていることに、リアムはまさに絶望感を感じた。
「冤罪だ……俺は何もしてないのに──。」
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