【完結】うちの魔術開発研究室室長さまがモテ過ぎています(主に男に)

いかくもハル

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番外編

あるモブ騎士のつぶやき

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やぁ、みんな元気かな。
俺は名乗るほどのこともない、騎士団第一隊の騎士だ。
どこにでもいるモブ中のモブ。
騎士歴4年、年齢は25歳。彼女も彼氏もいないよ、今は。

ちなみにここ、グリードエンド王国は同性同士でも結婚できる為、恋人は異性同性どっちも対象という人が割と多い。
俺もそう。男でも女でも見た目好みで気が合えばOK。
あ、でも、男の場合は攻め専門。これは譲れない。
おっと、俺の趣味はどうでも良いんだよ。

そんな事より、今年の新人隊員は男女共に豊作という噂だった。
確かに、ざっと見てもキラキラした見目麗しい子たちが目に付く。
治癒魔法と防御魔法が得意な魔術騎士希望のアリエル・シェードは小柄でふわふわしてて、大変可愛らしいと男性騎士から人気が高い。
しかし、長年付き合っている彼氏一筋と、言いよる相手を片っ端から振り、見た目に反した中々の男前っぷりで付け入る隙を見せない。うーん、惜しい。


豊作のキラキラ新人の中でも、シェリル・デパルは群を抜いた目立つ容姿をしていた。
入隊してから一番の注目の的だった。

黄金を溶かし込んだような輝かしい金髪に、長いまつ毛に縁取られた柔らかな若草色の瞳は吸い込まれそうだし。
薔薇の花びらのような唇も、形の良い繊細な鼻もさすが父親が美男俳優と言われるだけある美形っぷりで、そこだけ異空間みたいに見えた。

姿勢が良く、細身でスラリと背が高くて、でも出るべきところは出てる抜群のスタイルの持ち主なのもポイントが高い。
何で騎士何になった???その容姿ならモデルの方が合ってるんじゃ無いの??

まぁ、彼女は王国調査局局長、泣く子も黙る鬼の局長サマンサさんだから、小さい頃から特訓を受けて強いって聞いたことがあるけど。
それでも、ねぇ。騎士の訓練舐めたらいかんよ。

毎年、騎士団に入っても、訓練が始まって夏になる頃には入隊した3割ほどが辞めていく。
一年経つ頃にはさらに2割程減る。
振るい落とされて残っている者は心身共に鍛えられた精鋭という事になる。

特にかわい子ちゃんは生き残る確率が低い。
それは何も訓練が厳しいだけでは無い。

訓練の視察に訪れた王城の高官やその縁者に見初められてとっと結婚し、辞めて行く子も少なく無い。
第一隊は要人護衛だからね。他の隊に比べてお偉いさんとの付き合いは多いのよ。
玉の輿ってヤツなのかな。
それが目的の子もぶっちゃけいる事も確か。
もちろん、先輩騎士たちが我先にと自分を売り込んで嫁にする場合もある。

だから、新人美人隊員は熾烈な嫁取り合戦に否応無しに巻き込まれてるんだよね。

「今年は何人残るかね~」とか、「誰が一抜けするかね~」など、同僚たちの酒のツマミになってたりする訳よ。
中にはコッソリ賭けてたりしてる奴らもいて。
とにかく、毎年、新人は注目の的ってこと。


その一番の注目株のシェリルが初めて訓練場で木剣を持って先輩隊員と打ち込みをする事になった。

余計な装飾もない、身体にピッタリの胴衣に細身のパンツの白の訓練着ですら、シェリルは着こなしていた。
「スタイル良っっっ!!」って、誰もが思った。
もちろん、俺も思った。脚長だから並びたくねーって。

そんなシェリルは一体どんな動きをするのだろうか、一挙手一投足に注目が集まるのは当然の事だった。
申し訳ないが、俺も含め、邪な目で見てるヤロウどもも多かったと思う。


先輩騎士と向き合い、お互いに礼をしてさぁ、打ち込みだ!っていう時、訓練場にメキッバキバキッと不穏な音が響いた。
瞬間、「すみません。木剣、握りつぶしちゃいました」と慌てたように言うシェリルの声が聞こえた。

なぬっっっ!?その場にいた誰もがそう思っただろう。
何故なら、木剣って、目一杯打ち込んでも折れないよう、物凄く硬い木で出来ているからだ。
一瞬何を言われたのかわからなくて、反応に遅れた先輩に向かって、眉を下げ済まなそうにシェリルは言った。

「ちょっと、緊張して力加減間違えました」
「は?」

相対した先輩は勿論、その場にいた全員があんぐりと口を開けて固まった。

どこの世界に打ち合わせる前に木剣を握り潰すヤツがいる!?

握りの部分がボロボロになった木剣を見て、邪な目で見ていたヤロウ共は己の息子を握りつぶされたかのように錯覚して、ヒェェと蒼ざめて慄いた。
すんませんっ!訓練中に邪な目で見てすんませんっっ!!


後から聞いたら、「剛腕」という能力を持ってるらしい。
何と、母譲りというのだ。しかも姉も持っていると言う。
恐ろしいなデパル姉妹。

シェリルは飛んできたエメル隊長にこっ酷く怒られていた。
木剣だけじゃなく、ドアノブも破壊していたらしい。
とんだ破壊王じゃないか。

それだけでは無い。
力加減は上手くなったものの、いざ、剣を打ち合わせようとしても、彼女はスピードが早すぎる上に動体視力も半端なく、全く太刀打ち出来ない。訓練にならないのだ。
何だこの新人は。本当に人間か?ゴリラじゃないのか??

仕方なくシェリルだけ大剣並みの大きさで動きを制限せざるを得ない状態となってしまった。

ついたあだ名はまんま「ゴリラ」
この非常識なゴリラに嫁はおろか、交際を申し込もうなどという強者は騎士団にはいなかった。


そうこうしてるうちに、シェリルはその腕を見込まれて、魔術研究所のアシュレイ・ロックスの護衛に抜擢された。
あれだろ、アシュレイ・ロックスって、第二隊のグラント隊長の弟で、魔術の天才って言われて、その上凄いイケメンで結婚したい男No.1なんだよな。

うちのゴリラが護衛で大丈夫か?
くれぐれも粗相をするなよ、と誰もが思っていた。


しかし、その後、アシュレイ・ロックスとシェリルが結婚する事になったと聞いて、第一隊は騒然となった。

嘘だろっ!あの怪力ゴリラっぷりを見て、結婚したいと思ったのか?アシュレイ・ロックス。
あの人、確かうちの訓練場に来て、シェリルの訓練見に来てたよな。しかも楽しそうに。
凄いな。あれ見て結婚したいと思えるなんて。
天才の考える事はわからない。

まぁ、シェリルは性格は良いんだよな。
気遣いできるし、愛想も良いし。

ただ、戦闘訓練中は集中してくると、普段はどちらかというと、ほんわかとしてるのが想像も出来ないくらいどんどん研ぎ澄まされて、戦いの神が乗り移ってるんじゃ無いかってくらい鬼気迫って見える時がある。
なんて言うんだっけ?狂戦士ベルセルクっていうのかな、あれは。

しかも、護衛から戻って来たら妖精眼とかになってて。
最近の訓練を見てる限りでは、ゴリラどころか怪物じみている。


そのアシュレイ・ロックスも魔術師を騙った詐欺グループの逮捕時には、隠れ家にしていた洞窟を山ごと吹き飛ばしたんだと。ヤツも人間離れしてる。
なるほど怪物シェリルには怪物アシュレイじゃ無いと相手にならないってか。

誰もが納得した瞬間だった。

—————————————————————————-

皆様、明けましておめでとうございます。
今年もボチボチ思いつくまま書いて行きますので、ご興味があればお付き合い頂けると幸いです。

一先ず、二人のお話はこれで終わろうかと思います。
また思いついたら書き足すかもしれません。

ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。
今年一年良い年でありますように。

いかくも ハル
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