【完結】うちの魔術開発研究室室長さまがモテ過ぎています(主に男に)

いかくもハル

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暴れん坊バース

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~アシュレイ~

あの忌々しい駄犬ことジョー・ルールはあれからシェリルに絡む事もなく、今のところ大人しくしているようだ。
今度ちょっかいかけて来たら問答無用で去勢してやる。


そんな事より、偽魔術師を騙る詐欺グループの捜索は、兄貴たち第二隊と魔術師間で共同戦線を張る事になった。
似たような事件を集め、検証したところ、やはり同じ詐欺グループであると結論付けられた。

巧妙に隠れているのか、中々尻尾を出さず、捜査は難航したまま、いつの間にか季節は夏から秋に変わろうとしていた。


そして俺はシェリルを伴い、北区のロックス領に来ている。
シェリルのお披露目とロックス領恒例行事のお屋敷渡りの手伝いを兼ねてだ。


ロックス領は魔馬である一角獣ユニコーンと軍馬種のトラケナーを掛け合わせた魔軍馬、デーモントラケナーの原産地でもある。
ロックス領で馬と言えば、このデーモントラケナーを指す。

俺たちが乗っているのも、もちろんデーモントラケナーだ。
普通の馬より体が大きく、知能も高く、人にも良く慣れ軍馬としては最高の相棒となりうる。
普通の馬と大きく違うのは一角獣の名残で額に角がある事だ。
この角が長く立派になる程、先祖返りと言われ魔馬に近くなり、体もデカく、気性も荒くなる。


俺はシェリルの乗る一際立派な体躯の黒馬を見やった。
その馬の額には黒々と輝く立派な角が隆々と伸びていた。

ロックス領のお荷物馬、暴れん坊のバース(♂)だ。


コイツが未だかつてこんなに大人しく従順に人を乗せてるのを見た事があっただろうか、いや無い。

何しろ、動物という動物に好かれる弟のジルベルトだって手を焼いているくらいなのだ。
辛うじて、人に慣れさせるためにと兄貴を乗せることもあるが、それもかなり渋々といった様子である。
コイツには逆らったらヤバイという野生の勘に従ってるだけだろう。


少し前に俺たちは馬達が放牧されている場所にたどり着いた。
お屋敷渡りでは馬に乗って移動する為、その馬を探しに来たのだった。
長い距離だし、馬との相性は大事だ。
俺には既にいつもの相棒が居るので、シェリルが乗る馬を見に来た。
デーモントラケナーは訓練で乗った事もあるというので乗馬には問題なさそうだった。

広い草原の中、シェリルを見るなり何かを察知したのか、ヤツは一目散に駆け寄って来た。

周りの者達はあの暴れん坊が見知らぬシェリルを襲うのではないかと慌てて彼女を避難させようとした。
俺もすぐ作動できるようバリアを展開しようとした。

慌てる周りをよそに、彼女の妖精眼とバースの黒眼がヒタリと合う事しばし・・・・・・

何かが通じ合ったのか、シェリルがそっと寄り添うバースの首をポスポスと優しく叩いた。

「私、この子に乗ります」

こちらを振り向いてニコリと笑った。

その場にいた全員があんぐりと口を開けたのは言うまでもない。
バースはそんな俺たちを見て、バカにしたようにヒヒヒ~ンと嘶いた。

アイツ、絶対いつか馬刺しにしてやる!!



****

「本当にいい子だねぇ~、バースは」

パカポコとのどかに馬を歩かせながらシェリルが言った。
ヤツはご機嫌にヒヒンヒヒンと相槌を打っている。
シェリルはコイツがお荷物馬の暴れん坊だとは知らない。

しかし・・・動物は本能で自分より強いものに従うというが、コイツはシェリルの強さを本能で嗅ぎ分けたのだろうか?
まぁ、シェリルの強さは本物なんだが。
後はやはり、妖精眼が先祖返りの魔獣の中の何かに作用したのか?

いずれにせよ、うちの悩みの種のバースを大人しく従わせることの出来る人がいたというのが驚きだ。
さすがシェリル。妖精に続き、またしても珍妙な物に好かれた。

元々シェリルはロックス家に好意的に受け入れられていたが、更にバースの件で『救世主』として一気に熱烈歓迎ムードに沸いた。
ブラッシングのたびに髪を齧られ、ベチョベチョになるジルは心中拝まんばかりだろう。

明日からのパートナーとなる馬たちとの顔合わせも無事終わり、それぞれ乗っていた馬から降り、鞍を外す。

「乗せてくれてありがとう。明日からよろしくね、バース」

ヒヒンと一声甘えるように鳴いて、スリスリとシェリルに顔を擦り付ける。
いつもの暴君ぶりはチラとも出さず、イイ子ぶってるバースを呆れたように見た。

「じゃあ、明日ね」

バースは大人しく草原の中へ戻って行った。
俺も自分の相棒のテト(♀)を撫でた。
テトは被毛が淡いクリーム色をしていて、日に当たると金色にも見える、凄く綺麗な馬だ。
バースとも仲がが良い。

「アシュレイさんのテト、凄く綺麗ですね。撫でても良いですか?」
「良いよ。テトは賢くて優しい馬なんだ」
「アシュレイさんが馬に乗ってると、何だか王子様みたいですよね」

シェリルがテトを撫でながら、ふふっ、と笑った。
は?王子??

「俺は王子って柄じゃないだろ」
「見た目は王子様ですよ」

王子と言われて、グリードエンドの王族を思い出し、あのクセ者揃いの面々が思い浮かんでゲンナリした。

「うちの王族たちのメンバーを考えると、褒め言葉には聞こえない」
「いや、もっと一般的なイメージの王子様ですよ!童話の中とかの」
「ふはっ、そうか。じゃあ褒めてくれたんだな、ありがとう」


俺とシェリルは草原を後にし、夏の間滞在している屋敷に戻った。
屋敷と言われる通り、中々立派な建物だ。
初めて来たシェリルはビックリしてキョロキョロしていた。

「凄い立派なお屋敷なんですね。というかもはや城ですよね」
「古いんだけど、手入れはしてあるから綺麗だろ」
「凄く素敵!!」

わぁ~と天井のシャンデリアを見ているシェリル。

「アシュ兄、おかえり」

ジルベルトがやって来た。
ジルは188cmの俺より少し背が高く、力仕事も多いせいか、体もガッチリしている。年は3つ下の25歳だ。
顔はやはり似ているが、兄貴により似ている。

「いらっしゃい、シェリルさん。バースを手懐けるなんて凄いよ!本当にビックリした」
「バース?凄くイイコですよ」
「アイツには手を焼かされてるんだ。本当に助かった」
「そうなんですか!?」

ジルからしたら、あんなに手を焼く動物がいる事にびっくりだろう。

「アシュ兄、歓迎会するから、一風呂浴びて、着替えて広間に来てよ」
「わかった。部屋にもどって荷物置いたら行くよ」

この時期は親戚が集まるから屋敷内がロックス一族でごった返している。
俺はいつも滞在している部屋にシェリルと共に行き、荷物を置いて、ついでに部屋付きの温泉に入って広間に下りて来た。

「よぅ、アシュレイ!久しぶりだなっ!」
「ご無沙汰です、フランクおじさん」

フランクおじさんは父の弟だ。
ロックス領の現当主。

「結婚するんだって?おめでとう。兄さんと義姉さんが喜んでたぞ。よろしくな、シェリルさん」
「はい。よろしくお願いします」
「じゃあまた後でな」

慌ただしくおじさんはどっかに行ってしまった。
親戚が一同に会するのだから、バタバタするだろうな。

俺が結婚する話は周知されているのか、皆は俺たちを見ると寄って来てくれたので、シェリルを皆に紹介した。
バースの件がある為、皆の熱烈歓迎ぶりにシェリルは若干の戸惑いを見せながらもニコニコと応対していた。

歓迎会とシェリルのお披露目は終始和やかムードで終わった。

部屋に戻り、寝室のデカいベッドに転がり込む。

「明日は早いし、そろそろ寝ようか」
「そうですね、明日から長距離移動ですもんね」

明日からいよいよお屋敷渡りが始まる。











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